相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』あらすじとネタバレ感想

相沢沙呼さんの「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のあらすじと感想をまとめました。

3つの短編でそれぞれ事件を解決しつつ、4話目の最終話で1~3話を絡めた大きな事件を解決するという構成でした。表紙イラストの女性と本文中の女性のイメージが合わず、?マークを飛ばしながら読んでいたのですが、最後に綺麗に繋がりました。

ある程度読んだところでメインの犯人にピンとくるので、どう推理を犯人のところまで繋げていくのか楽しみながら読みました。

スポンサーリンク

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」書籍概要

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた―。「BOOK」データベースより

  • medium 霊媒探偵 城塚翡翠(2019年9月12日)
created by Rinker
¥1,870(2020/10/30 21:42:28時点 楽天市場調べ-詳細)

プロローグ

城塚翡翠という女性の霊媒の力を利用していくつかの事件を解決し、マスコミの注目も浴びていた作家の香月史郎は、ここ数年、関東地方で起きている連続死体遺棄事件の被害者遺族から直々に犯人を見つけてほしいと懇願された。犯人は狡猾で全くと言っていいほど尻尾を掴ませることなく判明しているだけで8人の女性を殺害、遺棄しているが、殺害場所すら判明しないため捜査は難航していた。亡くなった場所に残るという痕跡を嗅ぐ翡翠の力では、殺害場所が判明しないかぎり力が発揮できない。未来を視ることはできないが、翡翠は防ぎようのない死が自分のすぐそこまで迫っているのを感じると話していたことがあった。香月が依頼を引き受ければ、彼女はこの犯人と対峙し手死ぬことになるのだろう。どうすべきか思案する香月は、翡翠と出会った最初の事件を思い浮かべた。

第1話 泣き女の殺人

香月は同じ大学の写真サークルの後輩、倉持結花から一緒に霊能者に会いに行ってほしいと連絡を受けた。1ヶ月ほど前に友人と遊んだ際、酔った勢いで結花たちは占い師に運勢を占ってもらった。占い師は結花に「女の人が結花を見て泣いている」と告げた。その数日後から寝ている時に傍らに女性が立ちすすり泣くという経験を何度かした。結花が相談すると占い師は霊媒と呼ばれている人物を紹介してくれた。相談料はいらないというが壺やお札を買わされるかもと不安になり、香月に声をかけたというわけだ。

霊媒はタワーマンションの一室に住んでいる城塚翡翠で、千和崎真というアシスタントの女性がいた。千和崎の案内で翡翠に会った結花は香月が聞いた内容を説明していく。人形のように完璧に整った容姿と冷静なまなざし、抑揚のない口調で翡翠はデパートの受付をしている結花の職業を当て、結花の部屋の写真を見た後考え込むようにして部屋の外で待つように言う。その後香月だけが呼ばれ、嫌な予感がするので結花に注意を払うよう告げる。そして後日、翡翠が結花の部屋を直接見に行くことが決まった。

約束の日、待ち合わせの駅へと着いた香月は、男性数人に囲まれナンパされている翡翠を見つける。翡翠は視る力を使って男たちを撃退すると、声を掛けてきた香月に気づき顔を赤くし挙動不審ぎみにオロオロとする。俯き加減で香月と目も合わせない。タワーマンションでの神秘的な印象と全く違うと驚く香月に対し、あれは普段のふわふわした印象だと説得力がないと千和崎に言われてやっている演技だと返した。待ち合わせにやってこない結花を心配し、2人は直接結花のマンションへと向かう。部屋の扉の前に立った翡翠は、ドアを開けるか管理人を呼んだ方がいいと切迫した雰囲気でいう。ドアには鍵が掛かってなかった。ベランダに面する窓が開けっぱなしのリビングの中央あたりに倒れている結花を見つける。すでに息をしていなかった。犯人は女の人です、と漏らす翡翠の視線の先には涙の跡のような小さな透明な水滴があった。

優花は何者かと揉み合って転倒した際テーブルの角で後頭部を強打したことによる死亡と見られた。そばにはテーブルから落ちて割れたグラスの破片らしきものが散乱していた。過去にいくつかの事件で香月の助言により解決したことで懇意になった刑事の鐘場から、香月は空き巣の犯行の線を追っていると聞く。警察で聴取されDNAの提出までした香月は犯人が女性と知っているが証拠も何もないため口にできない。優花の交友関係も当たっているが、怪しいのは西村という男くらいだという。西村は1週間ほど前から優花に交際を迫っており、ゴミ箱からはストーカー気味のラブレターが見つかった。西村と優花は、優花の親友・小林舞衣と参加した合コンで知り合ったらしい。

翡翠は優花の部屋で泣いている女性を見たと言う。アイルランドの妖精でバンシーという泣き女が泣くと死者が出るという伝説がある。小さな水滴はバンシーの涙ではないかという話を聞いた香月は翡翠の霊媒の力を信じ、翡翠だけが感じ取ることができた事象から推理を展開し論理的に犯人を見つけ出すことにした。そして再び優花の部屋を訪れた翡翠は、部屋に漂っているという優花の霊を降ろし、翡翠ごしに優花の言葉を聞いた香月は今まで見聞きしてきた事柄を組み合わせ、犯人に繋がる証拠を見つけ出した。

インタールードⅠ

手足を拘束された裸体の女性を鶴丘文樹は見下ろしていた。助けを乞う女性に鶴丘は2つ教えてほしいことがあると言う。一つは痛いか、痛くないか。ナイフを女性に突き刺し答えを待つが二つ目の質問の前に女性は死んでしまった。もう10回以上実験を繰り返し、ようやく理想の形まで持って行けた。証拠さえ残さなければ警察は鶴丘に辿り着くことはできない。鶴丘は女性の遺体を風呂場まで運ぶと念入りに痕跡を洗い流した。

第2話 水鏡荘の殺人

家主たちに次々と不幸が襲いかかるといういわく付きの水鏡荘で作家の黒越篤が仕事部屋として使っていた一室で遺体となって発見された。数時間前までは気心の知れた仲間とバーベキューで盛り上がっていたのに。黒越の遺体を観察する香月に、翡翠が犯人は別所だと告げた。

黒越にバーベキュー誘われた香月と翡翠は、1泊の予定で水鏡荘を訪れた。他の参加者は黒越の弟子の別所幸介、新谷由紀乃、編集の有本道之、若手推理作家の赤崎、新鳥、灰沢の6人。和やかにバーベキューを終え片付けを済ませると、黒越と有本が打ち合わせに入ったり、各々がリビングで談笑したりビリヤードをして過ごした。その後やってきた通いの家政婦の森畑が仕事部屋で黒越の書下ろしの新刊を少し読んだという発言を機に、出版社から送られてきたという荷物を黒越が思い出し森畑も入れた9人全員に箱の中身をぴったり配った。三人の若手作家と森畑が帰宅し、水鏡荘には黒越、別所、新谷、有本、香月、翡翠のみになった。黒越は原稿があると仕事部屋に行き、別所、新谷、有本もそれぞれの部屋へと引き上げていった。香月と翡翠は水鏡荘に起こるといわれる異変を探るべくリビングのソファに陣取った。

水鏡荘はリビングを挟んで東棟と西棟に別れる。東には来客用の部屋、西に黒越の仕事部屋があるが配管の不具合で東棟のトイレは使用できなかったため、宿泊客はリビングを通って西棟のトイレを使用しなければならなかった。深夜0時過ぎ、有本がリビングを通ってトイレへ行き15分ほどで戻ってきた。1時頃、別所がトイレへ行きやはり15分ほどで戻ってきた。最後に新谷が1時45分頃にリビングに顔を覗かせ10分ほどでトイレから戻ってくると、3人で30分ほどお茶をしながら雑談をし2時半に部屋へ戻っていった。香月と翡翠は3時頃まで粘ったが怪異は現れなかったのでそれぞれの部屋へと引き上げた。翌朝、朝食の準備をした森畑が仕事部屋へ行き黒越の遺体を発見した。死亡推定時刻は深夜0時から2時の間だという。凶器はミステリー賞のトロフィーで背後から後頭部を右側から殴りつけていたため右利きの人間と思われた。別所、新谷、有本ともに右利きで、そこから犯人は絞り込めなかった。また仕事部屋は非常にシンプルで書棚とL字形のデスク、ゴミ箱がある位で、遺体発見当時も机の上はノートパソコンとボックスティッシュがあるだけだった。

翡翠の能力のおかげで犯人は別所だと分かっているが証拠がない。香月は翡翠が見たという3つの夢

  1. 有本が翡翠の元に来て手を伸ばす。目眩とともに何も見えなくなる
  2. 目眩を感じ目の前に別所が現れる。別所が翡翠に手を伸ばし、去る。
  3. 新谷が翡翠の元に来て手を伸ばす。目眩とともに何も見えなくなるが、しばらくして新谷が見えるようになり、彼女が去って行った

というあいまいな内容から推理を組み立てていき容疑者を2人に絞った後、黒越のノートパソコンがどのくらいでロックが掛かるように設定されているか確認し、容疑を1人(別所)に絞り込んだ。

インタールードⅡ

実験は失敗し女性は鶴丘の質問に答えることなく死んでしまった。実験候補者の資料に目を通していた鶴丘はその中の一つに目を止めた。女性の方にフォーカスされ男の方は見切れている写真。人形のような美貌に柔らかな笑顔の女性の名前は城塚翡翠。鶴丘は、彼女で実験を行いたいという欲求に支配された。

第3話 女子高生連続絞殺事件

香月のサイン会で出会った高校2年生の藤間菜月が、自分たちの学校が巻き込まれている殺人事件を解決してほしいと訴えてきた。最初の事件は年の初めの2月中旬、菜月の友人で同じ写真部の武中遥香が何者かに絞殺され翌日遺体で発見された。マフラーか何かの柔らかい布状のものと考えられるが凶器は特定できていない。抵抗した痕跡があるが犯人によって爪を切られていたためDNAなどは検出できなかった。通っている塾のアルバイト講師と交際していたらしいが男にはアリバイがあった。2件目は6月に起きた。同じ学校に通う菜月のクラスメイトの北野由里で、遥香と同じ索状痕の残る遺体が工事が取りやめになった建設現場跡地から発見された。着ていたセーラー服は乱れ下着が脱がされていたが性的な暴行のあとはなかった。犯人に抵抗した際に落ちたのか、遺体のそばには被害者自身の靴跡が残る2つ折りの制服のスカーフがあった。やはり爪が着られ犯人のDNAは検出できなかった。

遺体発見現場で事件の再現寸劇をやった香月と翡翠は、犯人が被害者たちの顔見知りであると考え、翡翠が殺害現場で共鳴したという「先輩」「犯人は女の子」という情報をもとに、鐘場と同じ捜査一課の若手刑事・蛯名とともに菜月の高校へ行き手始めに部活動中の写真部の面々に話を聞くことになった。被害者から見て「先輩」に当たる3年生は写真部には蓮見綾子1人だけだった。写真部では各自がお気に入りのカメラを持っており、菜月は近所の写真屋で購入したというフィルムタイプのトイカメラ、蓮見はフィルムは非効率だから触る気にもなれないと一眼レフカメラを持っていた。また北見は大人しく本好きだったらしく、図書委員長をしてる3年の藁科琴音と親しかった。琴音によると由里は蓮見に憧れていたかもしれないという。翡翠の言う犯人像に一致するが、犯人に罪悪感がなければ翡翠は何も感じ取れないらしく、蓮見が犯人かどうかは分からずじまいだった。

菜月が3件目の被害者になってしまった。首筋には索状痕らしき変色、着ていたセーラー服も半ば脱がされ爪も切られているという過去の事件と同じ状況で犯人のDNAは見つからなかったが、菜月の皮膚から犯人と思しき指紋が見つかった。聞き込みで菜月と仲良くなっていた翡翠は、助けられたはずなのに何もできず友人を見殺しにしてしまったと泣き崩れ、改めて犯人を見つけ出し事件を解決することを誓った。鐘場、蛯名、香月、翡翠と4人で資料をもとに話し合いを進めていき3人を結び付けることができる人物にようやくたどり着いた。そしてこっそり入手した指紋を照合した結果、菜月の肌から見つかった指紋と一致した。

だが犯人を尾行していた刑事がまかれた。行方を追うと写真部の別の女の子と一緒に歩いている姿を目撃されていた。犯人は自分が疑われているのに気づき、捕まるのを覚悟で最後に殺人を楽しむつもりかもしれない。必死で行方を追う香月たちだったがこのままだと間に合わない。翡翠は負担がかかることを承知で菜月の霊を呼び出し、犯人達の居場所を見つけ出した。

インタールードⅢ

鶴丘が城塚翡翠をターゲットに決めてからは呆気ないほどに順調に事が進んだ。翡翠は恐怖に震える声で助けを乞いながら鶴丘から逃れようと必死でもがく。手も足も拘束されている翡翠はどうあがいても逃れることはできない。鶴丘の掲げるナイフを見た翡翠は瞼を閉じる。その胸に向かって鶴丘はナイフを振り上げた。

最終話 VSエリミネーター

連続死体遺棄事件の依頼を引き受け犯人をつきとめることにした香月は、鐘場に連絡をとり事件の資料を見せて貰うことにした。最初に事件が発覚したのは4年前だった。ある山中の廃墟となった病院跡で女性の遺体が見つかった。死後3か月ほど経っていた。遺体には所持品も衣服もなく身元の特定に難航したものの歯形から失踪届の出されている女子大生と判明した。犯人は女性の腹部をナイフで刺して抜いた後、失血死するのを待っていた。一年後に新たな遺体が見つかり、その後も第3、第4の被害者が出るものの、犯人に繋がる痕跡が一つも見つからない。まるで犯人は警察の捜査手法を熟知しているかのような用心深さだった。

被害者は共通して女子大生か20代の女性会社員で一人暮らしをしていたが、犯人がどのようにして被害者をターゲットに選んだのかも不明のままだった。犯行の間隔は狭まっておりここ半年で3人の遺体が発見されていた。鐘場によると、2件前の遺体から若干手口が変わったようで、遺棄する前の被害者の遺体を漂白剤を使ってまで念入りに洗い流しているらしい。2件前というとちょうど香月と翡翠が出会った頃だった。今の状況だと翡翠の能力では犯人に辿り着けそうもないと香月は判断した。

翡翠を連れて遺体が見つかった場所を巡ってみたが、やはり翡翠はそこでは何も感じ取れなかった。翡翠の希望でサービスエリアで夕食をとり雑談をしていると、翡翠が香月のことを初めて会った時から誰か大切な人を失ってその傷を抱えたまま生きている人だと感じていたと話す。香月は自分が幼い頃、年の離れた血のつながらない姉が強盗に殺されたと告白する。犯人は未だ捕まっておらず、香月が推理小説を書いたり警察に協力して殺人事件を追うのは、この時の経験が影響していると語る。そして翡翠を危険な目に遭わせるわけにはいかないので、明日からは自分一人で犯人を追うという香月に対し、翡翠は香月の力になりたいと返した。サービスエリアから1時間ほどのところにあるという別荘に香月が招待すると、翡翠は小さく頷いた。

別荘に着きリビングへと入った翡翠を香月は後ろから抱きしめる。香月とじゃれ合っていた翡翠は、突然何かに気が付いたように身をこわばらせた。鶴丘が何かを感じ取って震えだす翡翠のすぐそばまで来ていた。

□□

最終的には駆け付けた鐘場たちにより犯人の鶴丘は逮捕され、翡翠も無事でした。鶴丘との対峙以降は、怒涛の推理の連続が待ち構えていて読みながら圧倒されました。プロローグも含め1話目からずっと仕込んでいたものが一気に押し寄せ飲み込まれそうな気がしました。

とはいえ一つの事件に対して複数のアプローチ(推理)が成り立つという構造だったので、一度解決した事件を改めて推理しなおすのは読みながら疲れたのも事実です。

最後まで読んで、ようやくタイトルに意味に納得できました。