秋吉理香子『暗黒女子』あらすじとネタバレ感想

秋吉理香子さんの「暗黒女子」のあらすじと感想をまとめました。

ある女子高で起こった女子生徒の不可解な死をめぐり、文学サークルのメンバーがそれぞれの視点で事件の概要と犯人を推測していくという連作短編ような形式で読みやすかったです。

読み終わった後の感想は「確かに暗黒女子だ」でした。

「暗黒女子」書籍概要

ミッション系の女子高で起きた転落事件。文学サークルの中に彼女を殺した人物がいると噂される中、サークルの定例会「闇鍋会」が始まった。

  • 暗黒女子(2013年6月/双葉社)
  • 暗黒女子(2016年6月/双葉文庫)
  • 暗黒女子(2017年3月/双葉社ジュニア文庫)
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聖母女子高等学院の憧れの存在・白石いつみが、テラスから花壇へと落ちた。その手にはすずらんが握られていた。いつみは学院の経営者の娘で、親友で幼馴染の小百合とともに廃部となっていた文学サークルを復活させていた。プロ顔負けのキッチンを備え贅を尽くしたサロンへは会長であるいつみの声がかからないと入部できず、現メンバーはいつみと小百合をのぞいて5人。

文学サークルでは学期ごとに一度、闇鍋を囲んだ定例会を催すことになっている。鍋を囲みながら各自、自作の短編小説を順番に朗読していくのだ。今回の小説のテーマは「前会長である白石いつみの死」。それぞれの視点から捉えたいつみの死を発表していくことで、なぜいつみは死ななくてはならなかったのか、本当にこの中の誰かがいつみを殺したのかを探し出していく。

登場人物

  • 澄川小百合:3年生。いつみの幼馴染兼親友。副会長を務めていたが、いつみの死後は会長となる。
  • 白石いつみ:3年生。文学サークル前会長。女子生徒の憧れの的。自殺か他殺かは不明。
  • 二谷美礼:文学サークル所属の1年生。奨学生。
  • 小南あかね:文学サークル所属の2年生。料理好きでサロンのおやつを作っている。
  • ディアナ・デチェヴァ:文学サークル所属の留学生。ブルガリア出身。
  • 古賀園子:文学サークル所属の3年生。医者を目指している。
  • 高岡志夜:文学サークル所属の2年生。現役ライトノベル作家。
  • 北条:文学サークル顧問の国語教師。

一人目:二谷美礼 朗読小説「居場所」

4人兄弟の一番上で母子家庭の美礼は、毎月父親からの養育費は入るものの生活に余裕はなく、奨学制度を利用して聖母女子高等学院に入学した。だがお金持ちばかり集まる高校で居場所はなく、趣味の読書と禁止されているアルバイトをする日々だった。

いつものようにひと気のないテラスで読書をしていると、いつみに声をかけられサロンに誘われた。あかねの作る美味しいお菓子でのティータイムに貴重な本の数々。だが放課後はアルバイトのためなかなかサロンに顔を出すことができない。禁止されているアルバイトを美礼がしていることを知ったいつみは、自分の弟の家庭教師をすればいいと提案した。

白石家へと出入りするようになった美礼は、ある日、いつみと父親が争っている姿を目にした。その後しばらくいつみは学校を休んだ。肺炎で入院していたという。退院後のいつみはやつれている様に見えた。自分には殺したいほど憎い人物がいるといい、それは父と不倫をしている古賀園子だと美礼に告げる。

いつみが手にしていたすずらん、それは園子しか使っていないすずらんの香りのする香水を示しているのだ。

二人目:小南あかね 朗読小説「マカロナージュ」

他の女子たちとは違い、あかねはいつみを苦手としていた。料理好きのあかねの実家は料亭で兄が後を継ぐと決まっていた。だがひょんなことから洋食屋を父が持つことになり、そこのメニュー作りにあかねも参加することになった。ゆくゆくは経営も任されることになるその店への思いも期待も強かったが、実家の料亭が火事で燃えてしまい洋食屋の話も立ち消えになった。

落ち込むあかねに、いつみが声をかけてきた。サロンに備えてある立派なキッチンに心を惹かれたあかねは入部し、思う存分腕を振るった。サロンのキッチンはあかねのお城になったのだ。苦手としていたいつみとも打ち解けてきた。

そのうち、いつみの様子がおかしいことに気づいた。困りごとがあるという。奨学生の美礼が、弟の家庭教師をしたいと無理やり家に入りこんでくるらしい。そして家から色々なものを盗っていくらしい。学院の生徒は身内みたいなものだから警察には届けないといういつみだったが、だんだんとふさぎ込むようになり口数も減っていき、ある日テラスから転落した。

いつみが手にしていたすずらん、それは美礼が盗ったといういつみが大切にしていたもの・すずらんの模様が入ったバレッタを示しているに違いない。

三人目:ディアナ・デチェヴァ 朗読小説「春のバルカン」

ディアナのふるさと、ブルガリアのレバゴラド村は目ぼしい観光資源もなく、子供たちも学校が終わるとアルバイトをするのが当たり前の地域だった。足の悪いディアナは働いていないが、双子の姉エマは旅行会社でアルバイトを始めていた。そして村の家に泊まり村の生活を体験するというホームスティの企画を立て好評を得ていた。

その制度を利用し日本からいつみが二週間のホームステイにやってきた。引率の北条先生は忙しくあちこち飛び回っていたため、もっぱらエマとディアナがいつみの案内を務めた。村の祭り「ラミアーの宴」で踊るいつみは美しく、また日本から持ってきた着物の機能美に魅了されたディアナは、日本といつみ自身に憧れを持つ。一年後の再会を約束し、ディアナはいつみを驚かせるため日本語の勉強を頑張った。

一年後、再びいつみがブルガリアにやってきたが、一緒に高岡志夜もいた。だが志夜の態度は悪く、どうやらいつみに対し敵意を持っているようだった。

その後いつみの口添えで、聖母女子高等学院がブルガリアからの留学生を受け入れることになった。定員は1人だったためエマが推薦されたが、直前になって階段から落ちて骨折してしまったためディアナが留学生となった。いつみに誘われ文学サークルにも入ったが、そこでも志夜がいつみに反発する姿を目にする。

学校行事のイースター&ペンテコステ祭の最中、ディアナはいつみがイースターバニーの着ぐるみを着た誰かに体育館裏へと連れていかれる姿を見かけ追いかけたところ、バニーに首を絞められているいつみを目撃して悲鳴をあげた。逃げていくバニーは着ぐるみの手袋を外しており、そこから見えたパステルグリーンに塗られた爪は志夜のものだと分かった。

いつみが手にしていたすずらん、それは志夜のデビュー作「君影草」を示している。なぜなら以前いつみから、君影草はすずらんの別名だと教わったから。

四人目:古賀園子 朗読小説「ラミアーの宴」

父の死とともに閉鎖されたクリニックの再開のため園子は医者を目指していた。小説は苦手だったが、5WIHに当てはめて読んでいけばいいことに気が付いてからはサロンでの会合も苦手ではなくなった。

イースター&ペンテコステ祭では、去年、学校経営者である白石氏(いつみの父)への報告係を務めていたが今年は実行委員長になった。学院の経営と教育に熱心な白石氏との祭りの打ち合わせのため頻繁に白石家に出入りするようになり、白石氏のパソコンの不調で仕事の遅れを手助けしたことから信頼を得、秘書でも許可されていない彼のパソコンを触ることを許されるようになった。

園子はディアナの存在が気になっていた。ブルガリアからやってきたという留学生、その見目の美しさは学校の新聖堂に飾られている絵画の中の悪魔のしもべにそっくりなのだ。

そんななか園子は、いつみがブルガリアからの留学をディアナで最後にしようと動いていることを耳にした。そうなれば観光資源に乏しいディアナの故郷は大打撃を受けるに違いない。

ある日早めに登校した園子はディアナの姿を見かけた。そこで彼女がいつも持ち歩いている物がいつみそっくりの人形だということを知り、その人形を木に磔にしてぶつぶつと呟いているのを見てしまった。それからだろうか、いつみが体調を崩し始めた。非科学的なものを園子は信じていない。だが非現実的なことでもこれが真実だ。

  • いつ:7月X日の放課後
  • 誰が:ディアナ・デチェヴァが
  • 誰を:白石いつみを
  • どこで:聖母女子高等学院 新館校舎テラスから
  • どうやって:魔力を使って
  • 何を:自ら飛び降りるように仕向ける
  • なぜ:故郷と家族を守るため

いつみが手にしていたすずらん、それはディアナの故郷に咲き誇っているというすずらんの花を意味している。

五人目:高岡志夜 朗読小説「天空神の去勢」

ラノベの文学賞をとるまでは目立たない存在だった志夜だが、いつみに声をかけられゴージャスなサロンを持つ文学サークルにメンバーになった。憧れのいつみとも仲良くなれ、一緒にブルガリアへと短期留学したことでますます仲良くなれた。ブルガリアの湖畔でのいつみは、まるで「ヴィーナスの誕生」のように美しかった。ヴィーナスは天空神ウラノスの性器を切り取り海に投げ込まれて出た泡から誕生したと言われている。男性の去勢から生まれた美なんていつみにぴったりだった。

イースター&ペンテコステ祭でも、文学サークルの売り上げは上々だった。あかねの作ったケーキやクッキーのおかげだった。だが志夜には気になることがあった。いつものようにサロンのキッチンでお菓子を作っているあかねのところへ行くと、さっと何かを隠したのだ。

その時は気に留めなかったものの、いつみの体調が悪くなるにつれそのことが思い出された。観察していると、みんなに配るお菓子は何かの目印のようにいつみのものだけ少し違った。いつみの症状はまるで薬物中毒者のようだった。あかねが何か入れたに違いない。

いつみの卒業後、サロンは封鎖されることになっていた。自分のお城がなくなるあかねにとっては一大事だった。だから毒を持ったのだ。そのことに気づいた志夜がさりげなく毒のこと知っていると仄めかしたせいで、追い詰められたあかねがいつみをテラスから突き落としたのだ。

いつみが手にしていたすずらん、それはあかねの腕に残るすずらんの形をした痣のことではないだろうか。

澄川小百合代読 朗読小説「死者の呟き」

全員の朗読が終わった時、小百合が闇鍋会の朝に届いたといういつみからの手紙を代読することになった。タイトルは「死者の呟き」

 

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小説の中で、いつみは自分は主役として輝き続けていく存在であること。そのためにも自分を引き立たせる脇役が必要で、サロンに呼ばれたメンバーたちは全員いつみの引き立て役として選んだことが書いてありました。

なぜ文学サークルを復活させようと思ったのか、なぜ彼女らを選んだのかという理由も書かれており、女子高の憧れの存在という見目麗しく慈悲深いといういつみ像が音を立てて崩れていくような、なかなか自己中心的な内容でした。

闇鍋会は、全員で持ち寄った素材(衛生的であれば食べ物でなくても良い)で鍋を作り、全員ですべて食べつくさなければならないというルールが設けられています。そしていつみの死に関する特異点・すずらんは、毒を持った花です。ぞっとするラストが待っていました。

 

「暗黒女子」というタイトルから、最初は闇鍋会でのやりとりを示しているのかと思っていましたが、登場人物全員が真っ黒でした。すごい小説もあったものです。