秋吉理香子『自殺予定日』あらすじとほんのりネタバレ感想

秋吉理香子さんの「自殺予定日」のあらすじと感想をまとめました。主人公が高校生とあってか、ミステリーというより青春小説を読んでいるような印象になる一冊でした。タイトルから暗い雰囲気を想像していたのですが、読み終わったあとは180度印象が変わりました。

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「自殺予定日」書籍概要

父親の急死の原因は継母ではないかと疑う女子高生が、真相を求めて動き出す長編小説。

  • 自殺予定日(2016年4月/東京創元社)

 

女子高生の瑠璃は、ネットで見つけた自殺の名所・佐賀美野村に一人訪れた。自分の死を持って継母の犯罪を告発するためだ。父は結婚した継母・れい子と暮らしはじめて2年足らずで死んでしまった。心筋梗塞だった。父のビジネスを引き継いだれい子は、次々と新しい企画を作り事業を展開して派手に名前を売っていた。まるで瑠璃の父が死ぬのを待っていたかのように生き生きと仕事をしているれい子の姿に瑠璃は確信した。彼女が父を殺したに違いない。そして父のビジネスと乗っ取った。

だが父と懇意にしていた医師の田辺も他殺だと訴えるため駆け込んだ警察も、瑠璃の言うことを全く取り合ってくれない。こうなったら死んで告発するしかない。自殺に使うロープなどを買い込み佐賀美野村にある蒼闇の森で首をくくった。

登場人物

  • 渡辺瑠璃:女子高生。両親を病気で亡くし継母・れい子と暮らしている。六曜や風水に詳しく、料理人だった両親の影響で料理の味には敏感。
  • 椎名裕章:瑠璃の自殺を思いとどまらせる
  • 渡辺れい子:有名フードプロデューサー。瑠璃の継母。若くて美人、やり手のビジネスマン。
  • 田辺医師:田辺総合病院の院長で、瑠璃の父とは懇意にしていた。
  • 渡辺早那夫:瑠璃の父。故人。
  • 渡辺菜々美:瑠璃の母。故人。
  • 唯香・睦美・奈美恵:瑠璃の友人。瑠璃とは仲たがい中

一週間後の自殺予定日

瑠璃の自殺は失敗した。自殺の名所として不名誉な称号が付けられ多くの自殺者が訪れるようになってしまったことから、首がくくりやすい木の枝にはあらかじめ切れ込みが入れられており、体重がかかると折れるようになっていたのだ。そんな瑠璃に声を掛けてくる人物がいた。椎名裕章と名乗ると、彼は美味しいコーヒーを飲ませてやると瑠璃がチェックインしていた旅館にあるカフェレストランへと連れて行った。

裕章のおすすめ・マスターの淹れるアイスコーヒーは絶品だった。自殺を思いとどまらせようとする裕章を振り切って旅館へ戻るもののしつこく付いてくる。そのうち瑠璃は、裕章の姿が瑠璃以外には見えていないことに気が付いた。2年前、裕章も青闇の森で首をくくった一人だった。ただ彼は完遂し、地縛霊となってこの地域にとどまり続けているらしい。偶然自分の命日に自殺しようとした瑠璃と何かの力が働いて見えるようになったのではないかと裕章は推測した。残された人間の気持ちも考えてみろという裕章の言葉には説得力があった。

自殺に至る経緯を聞いた裕章は、瑠璃に継母が父を殺した証拠を見つけ出そうと持ち掛ける。証拠が見つかれば警察も動いてくれるかもしれない。それまでは瑠璃も自殺しないと約束することと提案する裕章に対し、瑠璃は捜索するのは1週間だけという期限を設けた。裕章もそれで納得し、1週間後が瑠璃の自殺予定日となった。

捜索開始

瑠璃が探すのは父の残したジャーナル(日記帳)と青色の小瓶。父は自宅で倒れた。父が倒れた現場を偶然写真に収めていた瑠璃は、父のそばに立つれい子の手に見覚えのない青い小瓶が握られていたことに今頃気が付いた。きっとあれは毒物に違いなかった。その2つをれい子が仕事で家を留守にしている間に見つけ出す。それが瑠璃が1週間のあいだにすることだった。

瑠璃にはもう一つ心残りがあった。仲たがいしてしまった高校の友人・唯香、睦美、奈美恵の3人だ。両親の影響を受けて風水に詳しい瑠璃は、クラスで浮いた存在になっていた。3人はそんな瑠璃を面白いといって声を掛けてくれたのだが、瑠璃はその風水を悪用して唯香たちを怒らせた。縁結びの風水だと偽って、片思い中の唯香に縁切りの風水を教えたのだ。瑠璃のやったことはバレて3人から軽蔑された。仲直りの風水も試したが効果がないという瑠璃に、裕章は当たり前だと言い放った。

佐賀美野村は東京から2時間ほどのところにあった鄙びた村だった。瑠璃は村から一人で自宅へ通って探し物をする。地縛霊の裕章は村から出られないからだった。

探し物はなかなか見つからないが、佐賀美野のカフェレストランでマスターが作るごはんはどれも美味しかった。東京で店を持てばいいのにという瑠璃に、マスターは自分は元自殺志願者だったことを教えてくれる。死ぬために村に来て、今はここで料理を作っている。マスターがお手本としている料理人が瑠璃の父だということを知った。

裕章の協力でれい子のメールパスワードを突破した2人は、れい子宛に毎月借金返済の請求メールが来ていたこと、父が死んだ以降メールがぱったりなくなっていること、れい子と医師の田辺が近々会う約束をしているのを知った。だが肝心の青い小瓶(おそらく毒物)を購入した履歴は見つけられなかった。れい子の借金は父の保険金で贖われたに違いない、青い小瓶は田辺とれい子が関わっているに違いないと考えた瑠璃は、2人が会っているところを張り込むことにした。

ずっと伸ばしていた髪をばっさり切りコンタクトレンズを入れ軽く化粧をした瑠璃は、遠目ではまるで別人だった。大胆にもれい子の近くの席を確保した瑠璃は、田辺とれい子が父の死亡診断書に何らかの細工を施したらしいこと、薬(おそらく青い小瓶)はまだ処分せずにれい子が持っていることを盗み聞いた。

ジャーナルと青い小瓶の捜索はうまくいっていなかった。毎日通って家中を探し、れい子の部屋にも入って探したにも関わらず見つからない。困り果てていた時、瑠璃はふと風水を思い出した。父が死んでからは全くやっていないが、父と暮らしていた頃のれい子も風水を勉強していたことを。秘密保持の方角、北にある和室の天袋の奥にようやく目的のものを見つけた。ジャーナルと青い小瓶、それと父が書いたと思われる瑠璃宛の手紙だった。自殺予定日の前日だった。

急いで警察に届けよう。瑠璃が玄関のドアに手を掛けたその時、ドアの鍵が開いた。れい子が予定を早めて帰宅したのだ。

まとめ

その後、瑠璃とれい子は直接対決しました。そして瑠璃は、父の残したジャーナルと瑠璃宛の手紙から父の死の真相を知るのでした。

 

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読みやすく綺麗にまとまっている本だと思います。謎の追及と青春ものをうまく組み合わせてあり爽やかな読後感です。

これは書いてもたいしたネタバレにはならないと思いますが、自殺予定日になっても瑠璃は死にません。友人とのエピソードで唯香側に共感してしまったので、以降瑠璃に対する印象がガラリと悪い方向へと変わってしまいました。

瑠璃が友人を騙したくだり以降、何をしても瑠璃の行動が鼻についてしまい、またあまりにも主人公に都合の良い展開ばかりで正直いまいち入り込めませんでした。六曜にも風水にもあまり興味がないせいか、瑠璃がしょっちゅう風水を持ち出しては行動の指針などにしているのが目について仕方ありませんでした。どうやら私は瑠璃に対して良い感情を抱いていないようです。