学園ミステリーアンソロジー「放課後探偵団」あらすじとネタバレ感想

「放課後探偵団」のあらすじと感想をまとめました。

学園ものということで、殺人事件が起こったりというような物騒な物はなく、日常系ミステリーばかりが集まっています。

なかにはシリーズ物の短編もありますが、前作を知らなくても問題なく読めました。市井豊さんの短編目当てで読み始めたのですが、どれも面白かったです。

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「放課後探偵団」書籍概要

東京創元社からデビューした1980年代生まれの新人五人が、〈学園〉というくくりで若い読者層に向けてミステリを書く、というのが今回のコンセプトです。これからのミステリの一翼を担う作家たちのショーケースを作ろう、という意図も無論あります。楽しんで戴けることを願っています。 出版社のコメントより

  • 放課後探偵団(2010年11月/創元推理文庫)

似鳥 鶏「お届け先には不思議を添えて」

映研OBの藤本が、大学の後輩にあたる玉井という人物が部室にあるVHSテープを格安でDVD化してくれると言う話を持ってきた。映研の辻、その場に居合わせた美術部の葉山と演劇部の三野も大量のテープを段ボールに詰めて発送する手伝いをした。その途中、三野が演劇部のテープのDVD化も頼めないかと10本ほど追加で箱に詰めた。送ったのは3箱で毎年の文化祭でのステージを撮影したもの。そのうち1箱が、テープが伸びていたりグチャグチャになって再生不良だったと返送されてきた。送る前に分かりやすい不良テープはなかったのにと一つ再生してみると、中身は5分くらいで終わるまるで見覚えのないものだった。一体どこでテープの中身が入れ替わってしまったのか、元々のテープはどこにいったのか、辻と葉山は検証していった。

箱詰めは3人で行い、藤本の車で運びコンビニからゆうパックで送った。封をした箱は三野が格好つけて2箱持ち、あまりの重さに途中休憩しているのを1箱持つ葉山が追い抜いた。車に積む前、藤本が一度すべて開封し蟻が入る隙も無いほど芸術的に詰められているテープを葉山も確認した。藤本がテープを入れ替える時間はなかった。どのコンビニで送るかはその時決めた。ゆうパックは伝票番号があれば配達時間の変更はできるが、差し止め等は送った辻の本人確認も必要で、その形跡はない。受け取ったのは玉井の奥さんで荷物は玄関に置かれたまま玉井の手に渡り開封して不良が判明した。

無くなったテープは年代別に箱に詰められていたうち、藤本の世代のライブステージが撮影されているものだった。バンドを組んでいた藤本やその仲間たちが見られたくない映像が残っているテープの隠滅を目論んだと考えたものの、すり替え方法が全く分からなかった。

どのタイミングでもテープを入れ替える時間がないが、玉井の手元に着いた時点でテープは入れ替わっていた。テープの紛失は辻の責任になってしまうため、葉山は昨年卒業した先輩の伊神に連絡を取った。電話で話を聞いた伊神は、犯人は明らかだがなぜ卒業して何年も経った今になって映像を消す必要が生じたのかと疑問を口にし、葉山に様々な指示を出し検証していった。

 

めちゃくちゃ手の込んだトリックですり替えが行われていたうえ、伊神によってすり替え自体失敗してしまい、目的のビデオは辻や葉山たちの前で流れてしまいました。最終的には笑い話になったようですが確かに消したい黒歴史です。

鵜林 伸也「ボールがない」

60人いる野球部員のうち監督の運転するバスで練習試合へと向かった40人からあぶれた1年生たちは、グラウンドで練習を行っていた。ボール管理の厳しい監督から渡されたのは100球。練習が終わり集めたボールを数えると99球しかない。試合で負けて機嫌の悪い監督に見つかるまで帰るなと怒られ、女子マネージャー2人を入れた居残り組はかれこれ1時間ボールを探し続けていた。ケンジ、ミノ、コースケ、ツカサの4人は闇雲に探しても見つからないのだから、論理的にいこうというコースケの提案でボールが無くなったと思われる状況を検証していった。

フリーバッティングで初めてミノがホームランを打ちボールは外野フェンスを越えて飛んでいった。そのボールはマネージャーの葉子が自分が拾いに行って元に戻したと言う。縫い目がほどけたボールを繕ってもらうためマネージャーに渡したとツカサが思い出したが、葉子が修繕して戻したと言う。練習中、副顧問が掃除をしていた。側溝に落ちたのではと全部の蓋を開けて泥を攫ったが出てこなかった。体調不良で途中で帰った部員がうっかり持ち帰ったのではと探したが、部室で寝ていた部員からはボールは見つからなかった。

野球部には自分が活躍した時のボールを大事にする「記念ボール」という習慣があった。部室にあるだろう誰かの記念ボールを拝借して見つかったことにしようと探したが、こういう時に限ってボールは一つも見つからなかった。最初から99球しかなかったという数え間違え説、監督犯人説、誰かのいやがらせ説など思いつく限りのアイデアを検証していったが、ボールは見つからない。最終的にコースケの出した結論は、犯人はボールを故意に隠そうとしたわけではなく、自分の行為がボールの紛失させていることに気づいていないだけだというものだった。

 

ボールは見つかりました。ちょっとした青春でした。

相沢 沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」

バレンタイン当日、チョコレートに寛容な学校のせいか朝から多くのチョコが行き交っている。須川も朝からチョコを受け取っている所を片思い中の酉野に見られるという悲惨な状況に陥っていた。貰ったチョコは須川と酉野の仲を面白がってのいやがらせで、カレールーをチョココーティングしたものだった。

昼休みはチョコの交換が盛んになる。友人の三好と小岩井が携帯のアドレスを変更したり水没したりで連絡先を交換していたり、酉野が織田が持ってきた友チョコのチロルを使ったマジックを披露したりと賑わっていた。その後音楽ホールで学年集会が行われた。教室に戻ってみると、なぜか大小さまざまな多くのチョコが教壇の上に集められていた。何者かが勝手に机やロッカーからチョコを盗み出し、教壇に置いていったらしい。担任が持ち主に帰していったが、6個だけ残った。担任に頼まれ男子の信頼厚い小岩井と、顔の広い織田が6個のチョコの持ち主を探して返す役目を仰せつかり、須川も手伝うことになった。

順調に持ち主を見つけて返し終わり、残った1個は織田が心あたりがあるという女子生徒のところへ向かう。大人しそうなその子は、織田の熱い激励を受けて何やら決意をしたように須川には見えた。

チョコを受け取ったのを見られて以降酉野と微妙な空気が流れる中、須川は彼女がマジックをしている喫茶店サンドリヨンへ行くと、今回の不可解なチョコレート盗難事件(?)の詳細を話してきかせた。いったい犯人は何のためにそんなことをしたのかと疑問を口にする須川に、酉野は当てずっぽうだと言いながらもまだ一部の人間しか知らない事実を当て、犯人の名前とその意図を話し始めた。

 

バレンタインでチョコがらみということで、恋愛がらみの可愛らしい事件でした。

市井 豊「横槍ワイン」

1年生だけの映画同好会に演劇部員を紹介した縁で、聴き屋の柏木は完成映画の鑑賞会に参加することになった。集まったメンバーは柏木のほかは同好会の4人、津田(男)、鎧塚(女)、大葉(女)、小関(男)と協力者の院生・谷町(女)の5人だった。酒やつまみを買い込みを買い込み、会場である津田の家で鑑賞会が始まった。映画は全部で3本、テーブルを囲んでめいめい好きな席に座り、1時間もすると酔っ払いが一人出来上がっていた。4時間も経つ頃には場はグダグダになり、津田は好意が分かりやすい態度で隙あらば大葉にまとわりついて話しかけており、その間大葉はトイレにも行けない状況だった。

津田に別室に呼ばれた柏木は、大葉を巡って小関と三角関係なので協力してほしいと頼まれる。映画鑑賞家の今日、告白するつもりで下準備もばっちりだという。前回の大葉の家での鑑賞会では母親とも馬が合って会話が弾んだそうで、自分はおばさんキラーだと津田は胸を張った。休憩が終わり再び暗くした部屋で鑑賞会が始まって間もなく、小さな悲鳴が上がった。津田が部屋の明かりをつけると、胸元を赤く染めワインまみれになった大葉がいた。

大葉と友人の鎧塚は、津田が止める間もなく帰ってしまった。鑑賞会も中止になり全員帰っていく。柏木は津田に引き留められ、大葉は不注意で自分でワインをかぶったのではなく、メンバーの中に犯人がいると言われ2人で検証することになった。事件当時の席に並びは、左から「鎧坂・小関・大葉・谷町・津田・柏木」だった。津田は恋のライバルの小関が犯人だと息巻くが、津田なら好きな相手にワインを掛けるのかと言われ退けられた。2人は順番に犯人の可能性がある人たちを検証していくが、どれも否定され手詰まりになってしまった。

困った柏木は、同じサークル「ザ・フール」仲間の川瀬に相談した。川瀬は適当な推理をしたあと最後に、犯人はなぜ日本酒やビール、チューハイでなくワインを選んだのかと言う。翌日、大葉が大学を休んだと津田が憔悴した様子で現れた。昨日のワイン事件がよほどショックだったらしいという。津田が去って行った後に鎧坂と小関の2人連れに会う。鎧塚は津田に対して怒っており、小関は津田は不器用だから大葉にアプローチし損ねていると思っていたが勘違いだったと言い去って行く。初めて見るツーショットだったが小関と鎧坂は仲睦まじそうに見えた。

ザ・フールの部室で柏木は閃くものがあり、津田を探すと大葉に電話するよう言う。犯人は津田だからと告げると、柏木は意味が分からないと目を白黒させている津田に、事件の真相を話して聞かせた。

 

気の毒な勘違いから起きた事件でしたが、最終的に2組にカップルが生まれそうです。

梓崎 優「スプリング・ハズ・カム」

高校を卒業して15年、同窓会に出席するため鳩村は北海道に来ていた。同窓会は二部制で、一部はタイムカプセルの掘り起こし、二部が高校の食堂での同窓会だった。仕事の関係でタイムカプセルに間に合わなかった鳩村は、一足先にまだ無人の食堂に到着していた。そこに支倉が突然現れ驚く。支倉は15年前と変わらない姿をしていた。当時の思い出を話しているうち、食堂にタイムカプセルを手にした集団がやってくる。その先頭にいるのが今回の幹事で、母校で教師をしている志賀だった。スリムだった志賀はすっかりお腹の出たメタボ体型になっていた。他にも引っ込み思案だった子がすでに3児の親になっていたり、若くして亡くなっていたり……15年でさまざまな変化を経ていたものの、みんな子どもに戻ったように旧交を温めた。

タイムカプセルの中身、15年後の自分に向けたメッセージは当時から母校で教師を続けている熊野先生が代表して5人分読み上げることになった。読まれるごとに悶絶の悲鳴や笑い声が起きる中、最後のメッセージは卒業式に起きた放送室ジャックの犯人は自分だと宣言するものだった。メッセージには署名をしなかったので誰が書いたものか分からず、また同窓会の参加者の誰も名乗りを挙げなかった。

志賀(男)、鳩村(男)、支倉(女)、石橋(女)の4人は放送委員をしており、自分たちの卒業式で進行に合わせて校歌や仰げば尊しのピアノ伴奏のCDを流す役目を担っていた。厳かに式が進む中校歌を流し終えた4人は一度自分たちのクラスに戻る。タイミングを見ながら再び列から抜け出し、体育館のステージを見下ろせる2階の放送室へと向かうことになっていた。在校生の送辞が済み元生徒会長の答辞が始まると、鳩村はそっと放送室へと向かう。その時、体育館に激しいドラムの音が鳴り響いた。続いてエレキギターの音。誰かが昨年放送員が作った応援歌「燃えよ北高、バーンバーンバーン」を流しているのだ。急いで放送室へと向かった鳩村は、先に着いていた3人が入り口の前で立っているのに気が付く。ドアには鍵が掛かっていた。誰かが放送室をジャックし勝手にCDを流しているのだ。だが熊野がやってきて鍵を開けると、中には誰もいなかった。来賓や親たちが茫然とするなか卒業生たちは大いに盛り上がり、卒業間際の強烈の思い出として皆の中に残った。

タイムカプセル開封の興奮が冷めやらぬ中、当時の放送部員や生徒会長が集まり一体誰が犯人だったのか検証し始める。放送室を密室にして脱出する方法として3つのルートが上がり色々な人物が犯人候補として挙げられたが、検証の結果すべて否定されてしまった。

盛り上がった同窓会は二次会も深夜近くまで続き、その後は帰る者と三次会へなだれ込む者とで別れていく。鳩村は駅に向かう。三次会へ参加するという志賀とは次の同窓会までの宿題だと言い合って別れた。志賀には笑って否定されたが、案外犯人は同期で集まる理由を作るために事件を起こしたのかもと鳩村は口にした。駅のホームで支倉と2人きりになり楽しかった時間を振り返りながら、鳩村は犯人が誰だったのか多分分かったと話し始めた。

 

同窓会の描写が凄く上手いです。読みながらこちらも何だか懐かしい気分になってしまいました。タイトルも事件の真相に引っかけられていて「なるほど!」と思ってしまいました。

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アンソロジーは、今まで読んだことのなかった作家さんの作品を知る良いきっかけになるなと改めて思う満足の一冊でした。