新本格30周年記念アンソロジー「謎の館へようこそ 白」あらすじとネタバレ感想

「謎の館へようこそ 白」のあらすじと感想をまとめました。

新本格30周年記念アンソロジーの1つで白と黒があるようですが、今回は白の方です。テーマを「館」に設定しています。館とくれば密室物が思い浮かびます。期待の一冊でした。

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「謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー」書籍概要

テーマは「館」、ただひとつ。今をときめくミステリ作家たちが提示する「新本格の精神」がここにある。「BOOK」データベースより

  • 謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー(2017年9月/講談社タイガ)

陽奇館(仮)の密室 東川篤哉

天才マジシャン・花巻天界が建設途中の「陽奇館」で殺害された。山中で道に迷い花巻の家で一泊することになった探偵の四畳半一馬と助手の間広大(通称:大広間)は、事件当夜屋敷にいた関係者兼容疑者の前で事件解決を宣言した。

容疑者は4人、地元の建設会社社長で陽奇館の建設を請け負っているものの金銭トラブルで工事が頓挫している古舘建夫、花巻が所属する芸能事務所社長だが実態は花巻の操り人形で険悪の仲の星村祐輔、師匠の花巻を凌ぐ腕を凌ぐものの独り立ちを邪魔されている月島綾子、花巻のライバルのプロマジシャン・氷室麗華。花巻を殺害する動機を持った人間ばかりであるものの、殺害現場は完全な密室だった。

現場となった部屋はドアと窓が一つずつあり、ドアは室内から掛け金を回して施錠するもの、窓はクレセント錠でどちらもしっかり施錠されていたため四畳半たちが窓ガラスを割って中に入った。花巻天界は首を絞められ窓のそばに転がっていた。室内は殺風景でテーブルとパイプ椅子、作り付けの本棚があるだけだった。検証によって、糸や針、ドライアイスを使ったトリックは否定された。花巻の首に巻かれたタオルから関係者らは一旦は自殺と判断したものの、首の骨が折れるほど力をこめることはできないと四畳半は否定した。密室のトリックが解けず手詰まりになった頃、間は陽奇館が建設途中の陽奇館(仮)であることに気が付いた。

 

事件の真相(トリック)に気が付いた探偵と助手でしたが、犯人の手によって闇に葬られました。

銀とクスノキ~青髭館殺人事件~ 一肇

あたしこと楠乃季は、青髭館で同級生の七雲恋を殺した。母の再婚相手とうまくいかないあたしと違い、七雲はあたしが憧れるもの、容姿や成績、服や持ち物すべてを持っていた。あたしが密かに好意を持っている軽音部の清生くんとも仲が良く、あたしの悪口を清生くんに吹き込んでいる。過去に何人もの人間が殺害され今でも訪れた人が忽然と姿を消すと噂の廃墟・青髭館に興味を持っていた七雲を誘い、2人で屋敷内に侵入した。どうやって完全犯罪で七雲を消そうかと考えていたあたしは、七雲から「下位交換」呼ばわりされたのに我を忘れ、気が付けばそばにあった重そうな花瓶を何度も七雲の後頭部に打ち付けていた。

翌日、七雲の遺体を放置して逃げてしまったことに気づき、放課後と同時に青髭館に向かった。けれどガラクタが散乱する部屋の中、七雲の遺体だけがなかった。茫然としていると屋敷の庭に人の気配を感じた。同じ高校の制服を着た男が庭のクスノキを周辺を熱心に調べている。罪善と名乗った同級生は自らを名探偵と称し、青髭館からなぜ人が消えるのか、本当に過去にそのようなことが起こっていたのかを知るのが自分の宿業だといい、館の最初の持ち主について教えてくれる。罪善の話を聞くうち、あたしは彼がまだ七雲の遺体を見つけていないことを知った。そして青髭館には隠し部屋もホームレスが住み着いていることもないらしい。

七雲が学校に来ないことで、仲が良いと思われているあたしに担任が何か知らないかと聞きに来た。あたしは七雲が行方不明になっていることを罪善に話し、改めて2人で館に調査に行くことになる。だがそれがあたしが罪善を見た最後だった。放課後、下駄箱で白い封筒を見つけた。中は「ご友人を預かっています」とあり、罪善から聞いた青髭館の噂の大元になった初代当主の名前であたしを呼び出すものだった。

 

ある意味絶対に捕まらない完全犯罪です。

文化会館の殺人ーDのディスパリシオン 古野まほろ

井の頭文化会館で吹奏楽のアンサンブルコンテストが開催された。金管部門の1番手は、名門吉祥寺南女子高のホルン四重奏。だが出だしのごく基本的なDの音を数拍伸ばすのに失敗し、演奏は無残な状態だった。次の演奏を聞く気になれずホールを出た唯花と警視庁の友永警視は、演奏者の1人、2年生の美智子と会った。出だしを担当した3年の御殿山絵未が姿を消したという。絵未はソロの失敗を気にしかなり落ち込んでいた様子だったらしい。そのうち残りの2人も集まってくる。同じく3年生で絵未とは入学以来ずっと励まし合ってきた戦友ともいえる椎菜と2年生の輝美。絵未の楽器が楽屋になかったことから、一人で先に学校へ帰ってしまったかもしれないと椎菜はいい、念のため椎菜はバスを使って、美智子は駅に出て電車を使って、輝美は徒歩で、それぞれ絵未を探しながら学校へ戻ることにした。

唯花と友永も捜索に協力することになったが、1時間もしないうちに、絵未が校舎の4階から投身自殺を図り即死という連絡が入った。

椎菜は文化会館を出た10分後、美智子は25分後、輝美は40分後に学校に到着した。それぞれ音楽室に楽器をしまったあと、絵未の楽器もしまわれていたことから既に学校に帰ってきていると判断し絵未の教室がある4階へ向かった。冬休み中で私物がない教室で窓だけが開いており、嫌な予感を感じていた椎菜のところへ美智子がやってきた。2人で窓の下を覗くと絵未が倒れていた。その後、輝美もやってきた。

椎菜・美智子・輝美に書いてもらった手記を読んだ唯花と友永は、ストレートに消去法で犯人に辿り着けるとし、蛇足・字余り・強迫行動が今回の殺人劇での特異点だと言った。

 

館はそこまで関係していませんでした。

噤ヶ森の硝子屋敷 青崎有吾

無風の森・噤ヶ森に鬼才の建築家・墨壺深紅が建てた全面ガラス張りの館に、佐竹とその同級生たちが集まった。ビデオカメラを回す飯島、建築学科出身の笠山、森の探索好きの馬淵、車酔いで体調不良の碓井を運んだ佐竹の会社の秘書・重松は、鍵を渡すと帰っていった。外からも内からも全部丸見えの硝子屋敷を手に入れた佐竹は、その横に普通の宿泊施設を建てた。佐竹が自室の4号室へと着替えに入っていく様子を、硝子屋敷の室内で笠山と談笑していた飯島のビデオカメラが透明な壁越しに捉えていた。誰も出入りのない4号室のドアをビデオが捉え続ける中、パンという乾いた破裂音が鳴り響いた。音を聞いた飯島と笠山、森から戻ってきた馬淵、休んでいた2号室から出てきた碓井は、音が聞こえた4号室へと向かう。部屋に鍵は掛かっておらず、室内では着替え途中の佐竹が左胸を撃たれて死んでいた。窓には新品のクレセント錠がかかっているのが入り口からも分かった。

佐竹以外の誰も出入りしていない部屋でいったいどうやって佐竹は殺されたのかと茫然とする全員の耳に、火が爆ぜる音が聞こえてきた。キッチンから出火した火事は屋敷全体を燃やし尽くし、帰路の途中の重松を呼び戻し消防車が駆け付けた時には、硝子屋敷は全焼していた。飯島らが到着して30分弱での出来事だった。飯島の撮影していたビデオや遺体の状況から銃声は本物で至近距離から撃たれたことが分かった。窓は施錠され出入口はビデオによって人の出入りがなかったことが確認されている。密室殺人だった。

突然現れた仲介屋によって召喚された薄気味良悪は、事故物件収集探偵だといい、ビデオを3倍速で確認しがれきや灰に埋もれた硝子屋敷を5分ほど見たあと、刑事に事件当日の気温が20℃くらいだったことを確認するとあっさりと犯人を名指しした。

 

盲点を突かれるあっけないほど単純なトリックでした。

煙突館の実験的殺人 周木律

目が覚めると知らない場所に閉じ込められていた8人は、AIからここが煙突館と呼ばれる実験用の建物で、これから次々と発生する事件を「推理」し犯人が誰かを言い当てることができれば解放すると告げられる。だが犯人当てに失敗すると全員が殺され、犯人を指摘する機会は一度だけだという。

煙突館は8この個室と談話室からなる横並びの空間で、4号室と5号室の間に談話室があり、談話室の真上に煙突のような縦長の空間があり頑丈な金網ごしに空の様子が見える。また個室と談話室への出入りは全て天井にあるハッチを開け閉めして行うようになっていた。1号室の更科(タレント)、2室の美奈子(美大生)、3号室の四条、4号室の筧(元オリンピック体操代表候補)、5号室の田原(裁判官)、6号室の倍賞(元マジシャン)、7号室の猿渡(医学部准教授)、8号室の熱川だった。翌朝、熱川が煙突の天井からぶら下がっているのを皮切りに、倍賞、田原、筧と次々と殺されていく。どこか違和感を抱いていた四条は、悲鳴を聞いて美奈子とともに駆け付け先で更科に殺された猿渡を見た。更科は四条にも襲い掛かってくるが美奈子の機転で間一髪逃げ出す。犯人は更科だという美奈子に同意するものの、一つも「推理」をしていないことに気づいた四条は、ずっと抱いていた違和感をヒントに煙突館の秘密に気が付く。AIに向かって「推理」を行ったと申告し「真犯人」を指摘した瞬間、四条は気を失った。

 

突拍子もない設定の「館」でした。

わたしのミステリーパレス 澤村伊智

同じ会社の立浪匡にデートに誘われた新島美紀だったが待ち合わせ場所に匡はこず、友人だという三島という男から匡が車に轢かれたと伝えられる。三島の車で病院に向かう途中美紀の意識は遠ざかっていった。目を覚ますと、全てが巨大な家具の部屋に美紀は横たわっていた。しばらくして、デートで行くはずだった遊園地のアトラクション、巨人の家で小人気分を味わえる施設そっくりだと気が付いた。

フリーライターの殿田は記事のネタを探し、舞台のセットのような作り物めいた屋敷の噂を耳にして取材を申し込む。ミステリーパレスと玄関先に書かれた屋敷の主人は両角美紀というある巨大企業の相談役の婦人で、秘書の男とともに、自分の話を聞いた後にある手伝いをしてくれるならという条件で取材を受ける。手伝いの内容は話を聞けばわかるらしい。それはミステリーパレスが美紀が両角に見初められて結婚する前、恋人の匡の突然の死によって失われたデートを、残された証拠などから何十通りにも再現する場所であるという話だった。

 

ある女性の死んだ恋人への執念や妄執が生み出した館でした。生産性のない話です。

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館にまつわる難解なトリックを集めた短編集かと思っていたら、奇抜な館を集めた短編集でした。新本格の精神って何ですかね? 好きな作家さんも何人かいらっしゃるのですが、正直どの話もハズしすぎていて合いませんでした。