青崎有吾「裏染天馬」シリーズ第2弾『水族館の殺人』あらすじとネタバレ感想

青崎有吾さんの「水族館の殺人」のあらすじと感想をまとめました。

地元民御用達の水族館「丸美水族館」で起きた殺人事件の解決に駆り出された高校生・裏染天馬が、難解なアリバイ崩しに挑むシリーズ第2弾です。分刻みのアリバイで容疑者が二転三転し、付いていくのが大変でしたが読み応えのある一冊でした。

「水族館の殺人」書籍概要

夏休み真っ直中の8月4日、風ヶ丘高校新聞部の面々は、取材先の丸美水族館で驚愕のシーンを目撃。サメが飼育員の男性に食いついている!警察の捜査で浮かんだ容疑者は11人、しかもそれぞれに強固なアリバイが。袴田刑事は、しかたなく妹の柚乃に連絡を取った。あの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。“若き平成のエラリー・クイーン”が、今度はアリバイ崩しに挑戦。「BOOK」データベースより

  • 水族館の殺人(2013年8月/東京創元社)
  • 水族館の殺人(2016年7月/創元推理文庫)
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あらすじ

夏休み、風ヶ丘高校新聞部の香織、倉町、池の3人は、丸美水族館の取材に来ていた。万年人手不足の水族館では従業員たちが忙しそうにしており、バックヤードは慌ただしい雰囲気だった。館長の案内で目玉展示、体長が3m近くあるレモンザメがいる巨大水槽の前で取材を行っていた時、突然水槽内に飛び込んできた男がいた。イルカの飼育とショーを担当する雨宮だった。体に力が入っておらず、首筋から霧のように吹き出す血に刺激されたらしく、来場者らが見ている前でサメは雨宮に襲い掛かった。

館内がパニックになりながらも、倉町の指示で香織たちは殺害現場となった水族館スタッフらが管理するサメ水槽の部屋の現場保存を行い、血痕のついた足跡などを撮影していった。

雨宮が水槽に落ちてきたのが午前10時7分。写真が撮影された時間や、雨宮がはめていた腕時計からもその時間が殺害時刻と推定された。犯人は2階のサメ水槽の部屋で雨宮の首を切って殺し、水槽へと繋がる扉から突き落としたものと思われる。凶器の包丁はタオルに包んだ状態で現場から見つかった。

雨宮は上半身をサメに食われており、警察らによってサメは解剖されるため眠らされ水族館から運び出された。

また取材中の香織が、9時50分頃に2階のサメ水槽の部屋へと入っている雨宮を目撃してた。9時50分から10時7分までの関係者らのアリバイを調べれば、簡単に事件を解決できるはずだった。

容疑者は水族館スタッフのうち、犯行は不可能と分かっている人間を除いた11人、事務員4人、飼育員5人、獣医1人、アルバイト1人。サメ水槽の部屋は通常飼育員しか入らないものが、丸美水族館では人手不足のため事務員も清掃のため出入りしていた。通報を受けて駆け付けた捜査一課の仙堂と袴田が彼らの話を聞いた結果、全員が誰かと一緒にいたか監視カメラに映り続けていたかで、10時7分に一人になった人間はいなかった。

つまり10時7分、全員に強固なアリバイがあった。容疑者は0人になった。

9時50分~10時7分の容疑者11人の行動

  • 和泉(飼育員):飼育員室におり10時すぎ隣の事務室へ行った。飼育員室から出た時芝浦と会い、事務室では綾瀬、船見、津と話をしていたところ館長が血相をかえて飛び込んできた。
  • 船見(事務員):事務室にいた。10時2~3分頃津と綾瀬、その後和泉が事務室にやってきた。10時7分頃館長が来た。
  • 津(事務員):9時47分~10時2分まで資料室で休憩、10時3分に事務室に戻った。
  • 綾瀬(事務員):10時過ぎまで館長室にいたあと10時2分頃コーヒーを淹れに事務室へといった。館長室の小窓から津が資料室から戻ってくるのが見えた。
  • 滝野(飼育員):9時50分過ぎに飼育員室を出て女子ロッカー室で探し物をしていたが見つからず、10時前に部屋に引き返そうとしたところ水原に呼び止められ、作業室の前の廊下で雑談していた。階段から声をかけてきた芝浦と挨拶した。館長の悲鳴を聞くまで水原と一緒だった。
  • 水原(事務員):作業室でポスターのサンプルを印刷し、9時57分頃、ちょうど見かけた滝野に声をかけてデザインの相談をしていた。
  • 大磯(飼育員):9時40分ごろ芝浦と一緒に1階の調餌室で作業開始。途中メモ帳を取りに行くため芝浦が部屋から出ていったが、10時5分前には戻ってきた。その後は2人で作業を続けていた。
  • 芝浦(飼育員):忘れてきたメモ帳を取りに行くため2階の男子更衣室へと行く。研修中の大磯に一人で作業させるためしばらく更衣室で時間を潰したあと、10時3分に調餌室に戻った。
  • 代田橋(飼育員):9時40分過ぎに飼育員室を出た後2階のサメ水槽の部屋を通って、担当の淡水魚のエサやりを9時55分頃まで行った。その後は獣医の所で病気にかかったクマノミについて話をしていた。
  • 緑川(獣医):9時40分少し前に1階医務室に入り、古いカルテをチェックしていた。9時57分頃にやってきた代田橋とずっと話をしていた。
  • 仁科(学生アルバイト):掃除している姿が監視カメラに映っていた。

裏染天馬出動

事件解決を最優先する仙堂の判断により、兄の袴田から柚乃経由で天馬の出動要請がきた。住み着いている百人一首研究会の部室の壊れたエアコンを、学校側にばれないよう買い替える手配をするという条件でアリバイ崩しを引き受けた天馬は、袴田の話と現場の写真からあっさりと犯人の行った時間差トリックを見破った。雨宮を殺害し水槽に突き落とした=犯行時刻は10時7分と思われていたが、ある仕掛けにより犯人が現場にいなくても死んだ雨宮を水槽に落とせることが判明したからだ。

そこから逆算し、天馬は9時57分頃に現場である2階のサメ水槽の部屋を立ち去ったという仮説を立てた。その時刻、はっきりとしたアリバイを持つ者はいない。容疑者は絞られるどころか0人から11人に逆戻りした。

その後、サメ水槽の部屋に残されていた証拠品などから、天馬は獣医の緑川が犯人だと絞り込んだものの、緑川がいたという医務室には医療器具等は一切なく、実態はカルテ保管庫だった。ある医療道具を期待していた天馬の思惑は外れ、推理は行き詰った。

犯人が雨宮を水槽に落とした時差トリックの検証を学校のプールで行う為、強制的に死体役で参加させられた柚乃は、検証中に汚したプール清掃の際、バケツとデッキブラシを持つ姿を見た天馬があることに気づいたらしい雰囲気を感じた。

2階のサメ水槽の部屋に残されていたバケツとモップが事件を解く鍵だったらしい。バケツとモップ、いくつかの証拠と古臭い論理で犯人が分かったと天馬は言った。

まとめ

重箱の隅をつつくような細かい論理展開で容疑者を絞っていき、最後に残った人物が犯人でした。本編はとにかくアリバイ崩しに重点が置かれていたため、なぜ雨宮が殺されなければならなかったのかという動機などが全く分からない状態で、アリバイ崩し以外の側面から犯人にたどり着くのは難しいと思われます。

意外な人物が犯人で、動機については逮捕後に天馬の推測という形で一応明らかにはなっていますが、自分のことしか考えていないどうしようもない犯人としかいいようのないものでした。憎かったから殺したとストレートに言われる方がまだマシです。

 

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1作目の「体育館の殺人」にも通じますが、論理重視の推理展開が非常に細かいです。パズル的なミステリーが好きな人なら挑み甲斐のある本だと思います。