青崎有吾「裏染天馬」シリーズ第1弾『体育館の殺人』あらすじとネタバレ感想

青崎有吾さんの「体育館の殺人」のあらすじと感想をまとめました。第22回鮎川哲也賞受賞作とのことで楽しみに読み始めました。

犯人が残していったと思われる1本の傘から展開される推理に圧倒された1冊でした。

「体育館の殺人」書籍概要

放課後の旧体育館で、放送部部長が何者かに刺殺された。外は激しい雨が降り、現場の舞台袖は密室状態だった!?現場近くにいた唯一の人物、女子卓球部の部長のみに犯行は可能だと、警察は言うのだが…。死体発見現場にいあわせた卓球部員・柚乃は、嫌疑をかけられた部長のため、学内随一の天才・裏染天馬に真相の解明を頼んだ。なぜか校内で暮らしているという、アニメオタクの駄目人間に―。エラリー・クイーンを彷彿とさせる論理展開+抜群のリーダビリティで贈る、新たな本格ミステリの登場。若き俊英が描く、長編学園ミステリ。「BOOK」データベースより

  • 体育館の殺人(2012年10月/東京創元社)
  • 体育館の殺人(2015年3月/創元推理文庫)

 

放課後の風ヶ丘高校の旧体育館で放送部部長の朝島友樹が殺された。舞台袖の出入りできるドアには鍵がかかり、それ以外は部活動の人間たちの目がある中での犯行だった。目撃情報などから唯一密室内での犯行が可能とされた卓球部部長・佐川奈緒に容疑がかかり、後輩の柚乃は彼女の容疑を晴らしてほしいと、部室に住んでいるという天才・裏染天馬に依頼をした。

登場人物

【卓球部】

  • 袴田柚乃:1年B組。
  • 佐川奈緒:2年D組。部長
  • 増村:顧問

【演劇部】

  • 梶原和也:2年A組。部長
  • 三条愛美:2年C組
  • 志賀慶介:1年E組
  • 松江椿:1年G組

【放送部】

  • 朝島友樹:3年生。部長
  • 森永悠子:3年C組。副部長
  • 津田沼寛二:2年B組
  • 秋月美保:2年C組
  • 巣鴨康平:1年F組

【生徒会】

  • 正木章弘:2年D組。会長
  • 八橋千鶴:2年C組。副会長
  • 椎名亮太郎:1年。会計
  • 日比谷雪子:1年B組。書記

【その他】

  • 裏染天馬:2年A組。百人一首研究会の部室を私物化し住み着いているオタク。天才。
  • 向坂香織:2年A組。天馬の幼なじみで新聞部部長、好奇心旺盛で行動力もある。
  • 針宮理恵子:2年D組。不良
  • 早乙女泰人:1年A組。目撃者

【警察】

  • 仙堂:捜査一課の警部
  • 袴田:仙堂の部下で柚乃の兄
  • 白戸:所轄の刑事

あらすじ

その日、2年D組は6時間目の授業が早く終了したため、奈緒は卓球部の練習場所である旧体育館に午後3時に到着した。途中で出会った顧問の増村と一緒にストレッチを始めた頃、朝島が体育館へやってきて舞台裏へと入っていった。そのすぐ後にステージに幕が下ろされた。その後、5分間ほど職員室に忘れ物を取りに行くため増村は旧体育館からいなくなり、奈緒は一人でストレッチを続けた。まもなく一人の女子生徒が手ぶらで舞台下手袖へと入っていくのを奈緒は見た。増村が戻り1年生の柚乃たちもやってきた。バドミントン部もやってきて準備をしていた午後3時15分頃、太鼓を叩くようなドーンドーンという音を、体育館にいた人間が聞いた。

同じ頃、雨の中を傘を差しながら4人の演劇部員が小道具を乗せたリアカーにブルーシートをかぶせ、旧体育館に運んでいた。荷物があるのでいつも出入りは下手側のドアを利用しており、部長の梶原だけがドアの鍵を預かり管理していた。ドアはリアカーがギリギリすり抜けられるほどの幅で、先輩2人が前から引っ張り後輩2人が後ろから押すという形をとっていたが、ドアを半分通ったところで先輩2人が離脱したため後輩2人は外に取り残され事件の詳細を知らなかったが、叫び声を聴いていったんリアカーを外に出してから中に入り、念のため内側からドアに鍵をかけた。

離脱した2人のうち部長が舞台袖から顔をだし、幕を下ろしたのは誰かと問う。朝島だと奈緒が答えると、梶原は仲間に幕を上げさせた。ステージの上、演台の横にもたれかかるように座った朝島が現れた。胸には深々とナイフが突き刺さっており、目撃した柚乃は叫び声をあげた。

朝島の死亡推定時刻は午後3時3分~3時15分までの間。殺害現場は舞台上手袖。犯人は朝島を殺害したあとステージ上まで引きずって移動させていた。

ステージ上手の外へと通じるドアには鍵か掛かり、下手のドアもそこから入ってきた演劇部の手によって鍵が掛けられていた。下手側の出入口の横にはトイレがあり、針宮恵理子がずっと立っていたが演劇部員以外誰も見なかったと証言した。

朝島の左胸には血まみれの生徒手帳、ズボンの左ポケットには同じく血まみれのティッシュ、右ポケットには携帯、財布、鍵、後ろ右ポケットにはタイトルのないDVDが入っており中身は学校紹介のために放送部が製作した映像が入っていた。

また下手側男子トイレに男物と思われる新品の黒い傘、上手側舞台袖のポスターが置いてあるうえに女子の制服のリボンが置いてあった。どちらもその日の昼休憩終了時にはなかったと用務員が証言した。傘からは指紋は検出されなかった。

旧体育館のステージ2階には放送室があり、2か月ほど前にビデオやDVDが見られるよう機器の引っ越しが行われており、鍵の管理は職員室にあるもの以外だと放送部の朝島が行っていた。彼の右ポケットから出てきた鍵の一つが、旧体育館放送室のものだった。

旧体育館放送室を利用するのは、放送部、演劇部、生徒会の人間だけだった。

10万円の報酬で天馬に奈緒の容疑を晴らさせることに成功した柚乃に対し、天馬は5万円の追加で犯人を見つけるところまでやると言う。奈緒の口添えもあり、天馬は捜査を続行した。

まもなく血を抜いた朝島の生徒手帳のメモから、彼が午後3時10分に誰かと待ち合わせるため、ステージの幕を下ろし上手側のドアの鍵を開けていたことが判明した。何かの取引を行う予定だったのかもしれない。

放送部にアリバイ確認に向かった天馬たちは、秋月美保という部員が風邪で休んでいること、気が弱い彼女が以前カツアゲをされて悩んでいた時、朝島がカツアゲ現場の証拠を映像に残し、それを持って相手を説得しカツアゲをやめさせたことがあるというエピソードを聞き出した。朝島は改心したカツアゲ相手に証拠のDVDを返したと言う。それを同じことが今回も起こったのではないかと天馬は考えた。だが今回の犯人は、反省することなく朝島を殺害する事を選択した。

その後、早乙女という1年生から、事件直後に秋月が旧体育館の上手側からずぶぬれになりながら逃げていく姿を見たという証言を得られた。彼女は朝島を殺した犯人に自分も狙われるかもと怯えていたものの、舞台袖に残したリボン、太鼓のようなドーンドーンという音は自分だと説明した。危険な相手と対峙するという朝島の依頼を受けて、援護のため体育館へ行ったが秋月だったが、到着した時すでに彼は殺されたあとだったという。奈緒が見たと言う女子生徒も彼女だと思われた。

秋月の説明で自分の推理の補強ができた天馬は、犯人が分かったといい、関係者らを一堂に集めた。みんなの前で、天馬は4つの条件で犯人を絞ることができると説明を始めた。

天馬が推理をしている最中、ひそかに警官らによって逃走できなくされていた犯人は、犯行を認めた。動機は犯人のある行為を映像に撮られてためだった。それが公開されれば犯人は全てを失っていた。

まとめ

犯人は逮捕され、横柄な態度で捜査をかく乱するため怒りに震えていた仙堂も最後は天馬の推理を認め感謝の意を表しました。

今回の事件の解決によってトータル20万円を手に入れた天馬は、おそらく全てをおたくグッズにつぎ込むものと思われます。

また実行に移したのは犯人ですが、そうせざるを得ないよう影で糸を引いていたのは別の人間でした。こちらは犯罪には絡んでいないのでしらばっくれますが、天馬により裏で糾弾されました。

 

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ところどころアニメの専門用語(登場人物?)らしき単語が天馬の口からでてきてハテナマークが飛び交いながらも、全体的にはあまりそこに気が行かず、集中して読み終えることができました。天馬と同じアニメが好きな人なら、そこも含めて楽しめるかもしれません。