青崎有吾「裏染天馬」シリーズ第4弾『図書館の殺人』あらすじとネタバレ感想

青崎有吾さんの「図書館の殺人」のあらすじと感想をまとめました。

密室トリック、アリバイ崩しときて今回はダイイングメッセージとなっています。第2弾の「水族館の殺人」の分刻みのアリバイ崩しに比べると、だいぶ読みやすくなっていました。

「図書館の殺人」書籍概要

期末テスト中の慌ただしい9月、風ヶ丘図書館で死体が発見された。閉館後に侵入した大学生が、山田風太郎の『人間臨終図巻』で撲殺されたらしい。しかも現場には一冊の本と謎のメッセージが残されていた。警察に頼まれ独自の捜査を始めた裏染天馬は、ダイイングメッセージの意味を解き明かせるのか?ロジカルな推理、巧みなプロットで読者を魅了する“裏染シリーズ”第4弾。「BOOK」データベースより

  • 図書館の殺人(2016年1月/東京創元社)
  • 図書館の殺人(2018年9月/創元推理文庫)

あらすじ

期末テストを控え、風ヶ丘高校2年生で図書委員長をしている城峰有紗は、駅向こうにある市立風ヶ丘図書館へと行った。通い慣れた図書館には従兄弟で大学生の城峰恭介がおり、司書の久我山と話をしているところだった。夏休みの宿題のために来ているという。

こぢんまりとした図書館は、1階にカウンターと児童書コーナー、2階に開架エリアや閲覧スペースがある。「日本の小説」コーナー、「ま」行の作家棚そばのスツールが、有紗の定位置だった。「『鍵の国星』 森朝深零」館内専用シールが貼られた背表紙を視界に入れつつ、有紗は英語の教科書と単語帳を取り出した。

夜11時頃、テスト勉強に疲れた有紗は、気分転換のため図書館そばの自動販売機にやってきた。ここにしかお気に入りのアップルサイダーが置いてないからだった。外に出たあたりで恭介の母、有紗の叔母から恭介が9時半頃家を出たきりで戻ってこないがお邪魔していないかというメールが入った。母一人子一人のためか叔母は少々過保護気味だった。自転車を脇に置きアップルサイダーを飲んでいた時、何かが勢いよく自転車にぶつかってきた。

翌日、早番のため司書の那須と、修復した本を気にし早めに出勤した上橋は、館内がいつもと違うことに違和感を覚えた。戸締りをしたはずのドアが開いており貸出カウンターには血のような染みが見える。2階へと向かった2人は、書架の前で人が死んでいるのを発見した。図書館の常連、城峰恭介だった。

登場人物

図書館関係者

  • 梨木利穂:館長兼司書
  • 那須正人:司書
  • 上橋ひかり:司書
  • 久我山卓:司書
  • 寺村輝樹:司書
  • 桑島法男:元司書

風ヶ丘高校関係者

  • 袴田柚乃:1年生
  • 裏染天馬:2年生。探偵
  • 城峰有紗:2年生。本好きな図書委員長。恭介の従姉妹

その他

  • 仙道:警部
  • 袴田:刑事で柚乃の兄
  • 城峰恭介:被害者の大学生
  • 城峰美世子:恭介の母

 

城峰恭介は「ま」行の作家の書架のそばに倒れていた。死亡推定時刻は夜10時頃、凶器は本、犯人は先に右目の上あたりを殴ったあと、よろめいた恭介を左から殴りそれが致命傷となったらしい。うつぶせになった頭の近くには血が広がり、落ちてきた本が散らばっていた。足元には恭介の持ち物と思われるトートバッグ、ポケットの中にはカッターナイフが入っていた。

特異なのは、恭介の顔のそばの床に「く」と読める文字らしきもの、落ちた本の1冊「ラジコン刑事」の表紙に「〇」がどちらも血で書かれていたことだった。〇は登場人物の一人・主人公の顔を囲っていた。ダイイングメッセージだと警察は考えた。ラジコン刑事の主人公の名前は久我山。司書の久我山に注目がいく。

図書館関係者、図書館そばの工事現場の人間、被害者の母親の美世子らの証言をまとめると、

  • 1か月ほど前に図書館の施錠方法が変わり、コンピューター制御のパスワード制になった。
  • 図書館の通用口がパスワードで開閉できるようになっており、司書しか知らない。パスワードは共通のものを使っている。
  • 容疑者はパスワードを知っている司書の5人と元司書の桑島。
  • 事件当日は恒例の司書の会議があり、夜8時頃スタッフ全員が一緒に帰宅した。
  • 館長の方針もあり、あやまって来館者が残っていたりしないよう見回り・戸締りはしっかりしている。
  • 午後8時に電灯が消えた後は一度も窓が明るくなることはなかった。ただ、午後9時半、午後10時、午後11時頃の3回、図書館2階で小さな光を目撃した。
  • パスワードを入力するテンキーやドアの指紋は拭き取られていた。
  • 恭介が倒れていた場所からは彼のものであるA型の血液型が検出され、1階のカウンターの血はB型だった。つまり事件当時、恭介以外の人間が襲われた可能性がある。
  • 帰宅後の恭介は、図書館で借りてきた本を読んでいた。夜7時頃駅前で雑誌を買ってくると言い15分ほどで戻ってきたが、本は買えなかったらしい。
  • 9時20分頃、再び雑誌を買うため他の店を探してくると言って出かけたきり戻ってこなかった。

期末試験中の天馬が呼ばれた。現場を見た天馬は、恭介のポケットにあったカッターナイフの刃が欠けていることに気づき、2階のトイレで破片を見つけた。また司書の5人に、昨日(事件当日)と比べ見た目が大きく異なる人物がいるかどうか尋ねる。答えはノーだった。警察がこだわるダイイングメッセージは、犯人の細工も考えられるため意味がないと一蹴した天馬は、目撃者が見たという3回の光は懐中電灯によるもので、現場から懐中電灯が見つからなかったことから犯人が持ち去ったと考える。

期末テストのさなか、試験勉強のために集まった学校の図書室には、カウンターに有紗もいた。従兄弟が被害者だったためか表情も暗い。有紗の隣へと腰を下ろした天馬は、ある2つの推理を語って聞かせた。

1つは有紗が風ヶ丘図書館に足しげく通っていた理由。もう1つが事件当夜、有紗が図書館の近くにいて何かを目撃したのではないかということ。どちらも当たっていた。

有紗は一つの推理小説を書き上げた。それを読んだ恭介は出来を誉め、ある提案をした。1冊の本にして図書館に忍ばせること。館内専用シールを貼られた本は、図書館内でしか読むことができない。図書館へ行って自分が書いた本が読まれているのを確かめる、それが2人だけの秘密で有紗の楽しみになっていた。

また事件当夜の午後11時すぎ、アップルサイダーを飲んでいた有紗にぶつかってきた人物がいた。元司書の桑島で頭から血を流していた。鍵の国星加えて事件が起きた日の昼、恭介が久我山と会話していたことを聞いた天馬は、彼が恭介にパスワードを教えた人物ではないかと推理する。事件は有紗の書いた本「鍵の国星」を中心に回っていると天馬は考える。「ま」行の作家棚に差していた有紗の本は現場から発見されていない。

桑島が捕まり、事件の半分が明らかになった。桑島は「鍵の国星」を読んでおり、本好きの元司書ということもありそれが図書館の本でないことを見抜いていた。そして恭介が本に関わっていることを知り接触した。鍵の国星のアイデアやトリックを自分のものにするためだった。作者である従姉妹に相談したいという恭介と別れたものの、念のため彼の住所などを把握しておくため夜9時半頃図書館に忍び込んだ。カウンターのパソコンを操作して城峰恭介のデータを引き出したところ、何者かによって頭を殴られ昏倒した。気が付いたのは10時50分くらいだった。懐中電灯を使い1階を軽く見回り2階へと行ったところ、恭介の遺体を見つけた。閉館時には確認した「鍵の国星」は、どこを探しても見つからなかった。

動物の血を使って、実際の図書館での血の乾き具合などをこっそり実験した天馬は、仙道や袴田たちと事件について話し合っていた。その最中、ダイイングメッセージという言葉に反応した有紗は、用事があるといい先に帰っていった。犯人の条件はいくつかあるが容疑者はゼロだという天馬は、柚乃がふと漏らした言葉を聞いた途端、犯人が分かったという。できるだけ多くの捜査員を集めてほしいという天馬は、謎解きの前に有紗を止めに行くと言いだした。

まとめ

有紗は彼女だけが知っている情報でもって、ほぼ直感的に天馬より先に犯人に行き着いたようです。犯人に襲い掛かられていたところを間一髪で助けられました。が、代わりに仙道警部がもつれ合った犯人と一緒に階段から転げ落ち、犯人をかばって大けがを負いました。

犯人が逮捕されたあと、改めて事件の全貌を語りました。桑島に秘密がバレた恭介は「鍵の国星」を回収するためにこっそり図書館へ忍び込み、犯人に襲われたのでした。ダイイングメッセージは半分が本人、もう半分は犯人の細工でした。

 

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ダイイングメッセージをヒントに論理的に犯人像を絞っていく過程は、いつも通りの見事な展開でしたが、犯人の動機がいまいちしっくりきませんでした。