有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」第1弾『46番目の密室』あらすじとほんのりネタバレ感想

有栖川有栖さんの記念すべき「火村英生(作家アリス)シリーズ」の1冊目のあらすじなどをまとめました。

今は34歳で年齢が止まっていますが、初登場時はアリスも火村も32歳。若いです。1冊目とあって二人の大学時代の出会いなども載ってます。

舞台も北軽井沢という関西圏から離れた場所。

犯人やトリックについてはぼかしますが、事件の概要などを感想を交えて整理しました。

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「46番目の密室」の概要

火村英生(作家アリス)シリーズの1冊目の長編。装丁を変えて何度か出版されています。

  • 講談社ノベルス(1992年3月発行)
  • 講談社文庫(1995年3月発行)
  • 講談社文庫《新装版》(2009年8月発行)
  • 角川ビーンズ文庫(2012年10月発行/イラスト:麻々原絵里依)
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北軽井沢では毎年「日本のディスクン・カー」と呼ばれている推理作家・真壁聖一が親しい顔ぶれだけを集めてクリスマス会を開いている。

1991年の冬、推理作家の有栖川有栖は、親友である英都大学社会学部の准教授・火村英生を誘って北軽井沢の真壁の別荘「星火荘」へと出かける。星火荘には推理作家と編集者たちが集まり、なごやかに会がスタートしたかに見えた。

主催の真壁は「密室の巨匠」と呼ばれるほど密室トリックを得意としており、今まで45個の密室作品を発表していた。現在は46個目を執筆中で、それをもって最後の密室作品にすると宣言し編集者たちを中心に驚かせる。

登場人物

【星火荘の住人】

  • 真壁聖一:星火荘の主人で、密室の巨匠と呼ばれる推理作家。50歳独身。
  • 真壁佐知子:真壁聖一の妹。離婚して星火荘に身を寄せている。
  • 真壁真帆:佐知子の高2の娘。
  • 檜垣光司:真壁家の同居人。高2。光司の父親が真壁の命の恩人であったことから、身寄りのない光司を招いた。

【招かれた人々】

  • 船沢辰彦:珀友社の編集者で、以前真壁と一緒にホテル火災に遭ったことがある。
  • 杉井陽二:青洋社の編集者で、少々気取った男。ロッククライミングが得意。
  • 安永彩子:ブラック書院の編集者で、真壁のお気に入り。
  • 高橋風子:推理作家。
  • 石町慶太:推理作家。アリスの1歳上の作家仲間。
  • 有栖川有栖(主人公):推理作家。
  • 火村英生:大学の准教授でアリスの親友。

【その他】

  • 鵜飼警視&大垣警部:群馬県警。
  • 怪しい男:星火荘の周辺をうろつく正体不明の男。顎から首にかけて傷がある。

ホテル火災

物語のプロローグは、とあるホテル火災の現場です。消防車が駆けつけすぐに消火活動がはじまります。また消防士たちがホテル内に取り残されている客を次々助けていきます。結局ホテルの客は全員無事、ただし勇敢な消防士が一人、救助活動中に殉職します。

のちのち、この火事に巻き込まれた客の中に真壁聖一と編集の船沢がいたこと、殉職した消防士の息子が檜垣光司であり、一家の大黒柱を失った檜垣家が生活に困窮していることを知った真壁が彼らを招いたことが分かります。

クリスマスパーティー

食事の席で、真壁が執筆中の46個目の密室作品をもって「密室物」を終えることを宣言しました。船沢たち編集者は抵抗を示しますが、真壁は天上の推理小説を目指したいと譲りません。

食事後もゆったりとした時間は続きますが、そこで石町慶太と安永彩子が付き合っていることがばらされ、また以前真壁と高橋風子に関係があったことが明らかになります。また石町が彩子とのダンスを断ったり、真壁が風子とのダンスを断ったりと、少々人間関係に問題がありそうなシーンが飛び出し、アリス達の記憶に違和感として残ります。

真壁の姪・真帆が目撃した怪しい男の話もありました。

白いイタズラ

なごやかな催しもお開きになり、各自2階にある客室へと戻ることに。するとそれぞれの部屋には不可解なイタズラが施されていました。

  • 船沢辰彦:靴の中に白ワインを注がれる
  • 杉井陽二:ベッドの中にリボンをつけた白杖が置かれる。
  • 安永彩子:窓ガラスに白のスプレーでハートマークが描かれる。
  • 高橋風子:カチコチと怪しい音のする白い熊のぬいぐるみが置いてあった(中に時計が入っていただけ)
  • 石町慶太:屋根裏部屋へと続く階段に石灰を撒かれる。
  • 有栖川有栖&火村英生:部屋中をトイレットペーパーで飾り立てられる

基本一人一部屋ですがアリスと火村は同室、部屋数が足りないのか石町は屋根裏部屋となっています。誰が何のためにこんなイタズラをしたのか、当然ですが犯人は名乗り出ません。

「白」がテーマだろうと火村が予測をつけますが、イタズラの目的は分からず仕舞いでした。

事件勃発

夜中に目が覚めたアリスは雪が降り積もる窓の外に不審な足跡を見つけ、階下へ降りていきました。あちこちの部屋を見て回り、真壁の書斎へと入った瞬間、何者かによって頭を殴られ気を失います。意識を手放す間際、アリスは書斎の暖炉に上半身を突っ込んで倒れている男の姿を見ました。

トイレに降りてきたという石町に起こされたアリスは何故かラウンジで目を覚ましました。自分が目撃した光景を話し一緒に書斎へ確認に行くと、鍵が掛かっていて開きません。中に怪しい人物が隠れているかもと石町を見張りに残して火村を起こしに行くアリスは、階段に白い足跡を見つけます。イタズラによって寝室の階段に撒かれた石灰を踏んだ、石町のスリッパの跡です。そしてその石町の足跡の上を歩いたらしき、誰かの痕跡を見つけます。この痕跡を残した人物こそがアリスを殴って気絶させ、隙をついて2階に逃げた犯人に違いないとあたりをつけました。

扉の見張りを石町に任せて外から書斎に回り込んだ火村とアリスは、アリスの見た光景が見間違いでなかったことを知ります。暖炉で上半身を焼かれて死んでいるのは、真帆の話していた怪しい男だと検討をつけます。部屋は密室でした。

星火荘にいる全員を起こして回ったアリス達は、真壁聖一だけがいないことに気づき、まだ探していない地下の書庫へとぞろぞろと向かいます。書庫には鍵がかかっており声を掛けても反応がありません。火村が力づくでドアをぶち破って入ると、ここでも暖炉に上半身を突っ込んだ遺体がありました。真壁聖一本人でした。

事件の謎など

一番の謎は、

  • 犯人は誰か(動機は何か)
  • どうやって密室の中で2人の人物をやったのか(密室を作り上げた方法)

それ以外の謎としては、

  • 事件前夜の白いイタズラの犯人は誰か、何の目的でやったのか。
  • イタズラと事件はどう関係しているのか。
  • 怪しい男は何者なのか、なぜ戸締りがきちんとされた星火荘の書斎で死んでいたのか。

これ以外の小さな謎としては、書斎と地下書庫ではそれぞれ灯油を使って身体を燃やされていたのですが、使用した灯油缶の保管場所が家の裏口(書斎に残っていた灯油缶)と物置(地下書庫に残っていた灯油缶)と異なっていました。

  • なぜ手近に調達できる裏口の灯油缶を使わず、わざわざ物置の灯油缶を使ったのか。

あたりでしょうか。

地下書庫の真壁の直接の死因は、庭に転がっていた重そうな壺で頭を殴打されたこと、書斎の男はガラス製の灰皿で頭を殴打されたこと、書斎の密室のみ糸とセロテープを使った簡単なトリックであったことが判明しています。

また怪しい男と一緒に燃やされていた紙片は、真壁が執筆中の46番目の密室トリックのメモであったことも分かります。

そして怪しい男の正体は、例のホテル火災時に救出された客の一人。煙に巻かれて動けなくなり、たまたま通りかかった(逃げている途中の)真壁と船沢に助けを求めて冷たくあしらわれたことを恨んでいるらしいこと、星火荘の隣家の無人の別荘に無断で入り込んで、星火荘を見張っていたらしいことが明らかになりました。

 

警察に捜査協力する形で屋根裏部屋の窓から屋上へ登って煙突を検証したり、怪しい男が滞在していた無人の別荘を調べ続ける火村と、彼に同行するアリス。暖炉に繋がる煙突からは、人の出入りができないことも分かりました。

推理を続けるうち、火村とアリスには犯人が分かりました。まずは先に犯人の名を挙げるアリス。すると火村は、自分が考えている人物とは違うと返してきました。

どちらの推理が正しいのかは……誰にでも分かります。

犯人は誰か

完全なゲストの火村はともかく、知った顔ぶればかりのアリスにとっては誰が犯人でも辛い結果になります。

その気持ちを汲んだのか、火村は、自分が警察より先に犯人を見つけられたら自首の機会を与えることができると考えたようです。犯人を憎み叩き落としたい彼にしては優しい行動です。

今回は「皆を集めて推理ショー」はありません。ひそかに犯人のみを呼び出していました。

呼び出された時点で観念していたのか、犯人は初めから自首を口にし、火村によって明らかになった密室の謎を補完し、犯行の動機などを全て語り終えました。

 

□□

 

密室の巨匠・真壁聖一の裏の顔ともいうべき姿が明らかになった事件でもありました。そして密室は、もともと犯人の計画にはなかったものでした。

犯行の動機も意外なものです。あとになってネタバレが仕込まれていたことに気づきますが、犯人の告白があるまでは分からないですし、犯人当てにはなくても構わない情報でもあります。推理作家が集められているので「密室トリックのネタ」に関することかなーと思っていたのが見事に騙されました。

シリーズ一冊目とあってか、まだ今のような打ち解けた雰囲気でのやりとりが火村とアリスの間に見られません。

文中のあちこちに散りばめられていた謎がパズルをはめていくように綺麗に全部回収され、すっきりできる一冊でした。

改めて読み直していて気づいたのですが、アリスが火村の推理現場に立ち会ったのは今回の事件が初めてでした。もう何度も助手として活躍していると思い込んでいたので、意外でした。

時が経っても新たな発見がある「46番目の密室」、ぜひ読んでみて下さい。

 

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