有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」第2弾『ダリの繭』あらすじとネタバレ感想

人気シリーズ2冊目「ダリの繭」のあらすじと感想をまとめました。長編らしく登場人物も多く、最初は混乱しますがそのうち話の中に入ってスラスラ読んでいってしまうお話でした。

サルバドール・ダリは不勉強で名前を知っているくらいなので、事件のキーとなった「ダリ髭」を画像検索してみました。誰もが振り返る凄い髭でした。これを現代日本でトレードマークとするのは、なかなかの強者だと思います。

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「ダリの繭」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズ2冊目となる長編ものです。愛蔵版と角川ビーンズ文庫下巻に掌編「シュルレアリスムの午後」が収録されている。

  • ダリの繭(1993年12月/角川文庫)
  • ダリの繭(1999年12月/角川書店【愛蔵版】)
  • ダリの繭(2013年5月(上)・6月(下)/角川ビーンズ文庫)

 

アリスの最新作の完成と火村の33歳の誕生日の祝いを兼ねてフランス料理店で乾杯しているところに、ダリ髭で有名な大阪の宝石商・堂条秀一が秘書の女性を伴って入店してきた。「ジュエリー堂条」の2代目社長である秀一は、シュールレアリスムの巨匠・サルバドール・ダリを崇拝しており、会社を大きくすることに生きがいを感じていたようで特筆するような趣味も結婚歴もなく、六甲にある別宅には繭の形をした真っ暗な水槽のようなフロートカプセルを設置し、よく中に浮かんで瞑想などを行っていたという。

ある週明け、秀一が出社してこないことを不審に思った専務の秀二、営業部長の湯川、秘書の優子が六甲の別宅を訪ねると、フロートカプセルの中から撲殺された秀一の遺体が見つかった。彼の顔からは、トレードマークであるダリ髭がそり落とされなくなっていた。

登場人物

  • 堂条秀一:ダリ髭で有名なジュエリー堂条の社長。
  • 堂条秀二:秀一の弟でジュエリー堂条の専務。
  • 吉住訓夫:広告代理店勤務でジュエリー堂条担当。印刷会社で営業をしていたアリスの友人。秀一、修二の腹違いの弟。
  • 湯川元雄:ジュエリー堂条の営業部長。
  • 相馬智也:ジュエリー堂条の商品企画室長。
  • 長池伸介:ジュエリー堂条のデザイナー。
  • 鷺尾裕子:ジュエリー堂条の社長秘書。

事件勃発

顔なじみの兵庫県警の樺田からアリスの元へ吉住訓夫について問い合わせが入った。朝刊で読んだばかりの堂条秀一殺害事件の関係者だという。驚くアリスに樺田は吉住が秀一の腹違いの弟であることを教え、火村に捜査協力を依頼したのでそのうち連絡がいくだろうと告げる。

大阪のアリスのマンションを拠点に六甲へ通うことになった2人は、捜査情報を教えられる。

  • 殺害現場はリビングで、血痕をふき取った跡が残っていた。
  • 凶器は見つかっていない。
  • 殺されたあと裸にされフロートカプセルに入れられた。
  • 下着以外の服は持ち去られており、下着もカゴを被せて隠されていた。
  • 40分に設定してあるフロートカプセルのタイマーが50分になっていた。
  • 遺体からダリ髭がなくなっている。
  • 晴天続きで犯人の足跡や車のタイヤ痕などを見つけるのは難しい。
  • 近隣に人家がないので目撃者を探すのも難しい。

裸で入らなければならないフロートカプセルに指輪をしたままの遺体があったことから、カプセル内での犯行は否定されている。

またフロートカプセル内に血が広がっていないため、殺害された後なぜか血が止まるまでの間放置され、その後裸に剥かれてカプセル内に入れられたと推測でき、現場はちぐはぐなことが多くて不快であり、何か犯人にとって予定外のことが起きたようなドタバタ感を感じると火村は言う。

関係者らのアリバイから犯人を特定することは難しく、兵庫県警の野上は、吉住が何かを隠していると指摘した。

捜査開始

まもなく関係者の口から、秀一がデザイナーの長池と優子を取り合っていたことが分かった。三角関係かと思われたが、優子、長池の両者からは社長(秀一)には話していなかったがすでにプロポーズを受けており、恋の結末自体はついていたことが明らかになった。

ジュエリー堂条の従業員が事件発覚の朝、通勤電車内で吉住と会話していたことが分かった。その路線は吉住の通勤では使わない場所であり、警察の吉住への疑惑がさらに深まる。友人を心配するアリスの元へ、吉住本人から相談があると連絡が入った。見てほしいものがあるとコインロッカーへ連れていかれたアリスと火村は、吉住を尾行していた刑事らとともに、血まみれの服が入ったバッグを目にすることになった。

吉住の話

  • 事件当夜、兄(秀一)に呼ばれ、フロートカプセルに入った。
  • カプセルから出ると、畳んで入れたはずの自分の服がぐしゃぐしゃに乱れ血が付いていた。
  • カプセルの部屋から出たところで兄の遺体を発見した。すでにダリ髭はなかった。
  • 冤罪を恐れ逃げることにした。兄の服は無事だったので、脱がせて自分が着た。
  • 自分がフロートカプセルを使った痕跡を隠すため兄をカプセルに入れ、血痕などを消してから逃げた。
  • 血の付いた自分の服を処分するため船に乗ったが、海に投げ捨てることができずコインロッカーに入れた。港から乗った電車内で、ジュエリー堂条の従業員に声を掛けられた。

証言に齟齬がないため、火村は吉住の話を一応信用して捜査をすすめることにした。つまり、直接手を下した犯人と、犯行後に偽装した人間は別ということになる。

凶器が見つかった。以前社員旅行先で長池が面白がって買った土産屋のオリジナル商品「パールヴィーナス」という美的感覚を疑うような像だったが、長池本人はその像なら今でも自宅に飾ってあるといい、警察も確認した。パールヴィーナスは2体あった。凶器となった像から企画室長の相馬の指紋が検出されたが、彼の事件当夜のアリバイも証明された。

火村はアリスに、長池がパールヴィーナスを買ったという鳥羽へ行こうと誘う。

犯人は

最初に火村が指摘したとおり、犯人にとって予定外のことが起きていました。パールヴィーナスをわざわざ1体用意していたことから、当初は計画殺人の予定だった模様です。

火村はアリス達の前で推理を披露するより先に直接犯人に電話をかけていたようで、犯人は自首を決意しました。

事件は被害者である堂条秀一を中心に動いていたのですが、人騒がせで迷惑なおっさんだなという印象です。彼の弟から、彼の理想の女性像の話を聞いた時、ちょっと気持ち悪いとも思ってしまいました。経営者としては優秀な人物でしたが、要するに被害者にはあまり良い感情を持てませんでした。

 

□□

シリーズ2冊目でホームズとワトソンの土台作り(?)もあってか、アリスと火村の良好な関係を分かりやすく前面に押し出した回でもありました。32歳でスタートしたシリーズで1歳年をとった回でもあります。その後は34歳で定着するので、貴重といえば貴重ですね。

アリスのトラウマとなった高校時代の恋についても出てきます。「スイス時計の謎」で後日談を知るまではずっと胸の内に引っかかったままだったのだろうと思うと、能天気なようでいてなかなか辛い過去をもっています。吐き出せる親友がいて良かったです。

 

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