有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」『怪しい店』あらすじとほんのりネタバレ感想

夜寝る前に少しだけ何か読みたいと思った時、有栖川有栖さんの本は最適です。

読み口は軽いのに仕掛けられたトリックは謎だらけで、その分、それらの不可解さがすっきりと解明された時の満足度がとても高いからです。私にとっては、脳が満足して良い眠りにつくことができる作家さんの一人です。

今回は短編集「怪しい店」のあらすじと感想をまとめました。犯人などのミステリーの核心には触れていないつもりですが、多少のネタバレは含んでいます。

スポンサーリンク

「怪しい店」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズの22冊目であり、「古物の魔」「燈火堂の奇禍」「ショーウィンドウを砕く」「潮騒理髪店」「怪しい店」の5編からなる『店』をテーマとした短編集です。

  • 怪しい店(2014年10月/KADOKAWA)
  • 怪しい店(2016年12月/角川文庫)
created by Rinker
¥704(2020/10/28 06:46:04時点 楽天市場調べ-詳細)

 

「ショーウィンドウを砕く」は日本テレビ系ドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」(2016年1~3月)で実写ドラマ化しました。

古物の魔

骨董品店が舞台。骨董品店「あわしま」で主人が殺された。発見したのは被害者の甥であるアルバイト従業員。同業者から話を聞くうち、最近の被害者は女に貢ぐため金を必要としていたようで商売の仕方が荒っぽくなり、周囲から評判を落としていたことが分かってきた。また形見の机を買い戻したいと交渉していた客がおり、その机の引き出しを火村が調べると二重底になっていた。

 

短編なので登場人物も少なく、犯人の見当もつけやすいと思っていたのですが、やはり分かりませんでした。というより骨董品業界の話が面白くて夢中で読んでいたら、犯人のことは頭からすっぽりと抜け落ちていました。骨董品店が事件現場とあって、凶器がある骨董品なのですが、これを知らずに買って飾ってたら……怖いですね。

燈火堂の奇禍

古書店が舞台。頑固で独特のこだわりをもって古書店を経営している店主が何者かに殴られららしく、犯人を追うようにヨロヨロと店の外に出てきたところで倒れた。時絵ばあちゃん(火村の下宿先の大家)の誕生日プレゼントを持って京都に来たアリスは、近所で起こったこの事件に興味を持った。

 

経営者の頑固さが招いたともいえる事件でした。「こだわりのラーメン屋」などに通じる頑固さがあり、どうしても手に入れて読みたいから本を買うのに、このような対応をされたら私なら腹を立てて二度と行かなくなりそうです。首をつっこんだのはアリスですが、解決したのはもちろん火村准教授。結果的に店主も無事で、関係した人たちもそこまで悪人ではなかったようですが……本好き同士だからこそ起きたタイミングの悪い事件だったかと思います。

殺人事件ではなかったせいか、日常のほのぼのとしたシーンが多く見られました。

ショーウィンドウを砕く

サイコパス気質を持つらしい犯人が、恋人に対して完全犯罪をもくろみ、実行した話。夕狩が興した大阪の芸能プロダクションは、売れっ子タレントを東京の事務所に引き抜かれたのを機に経営が悪化の一途を辿っていた。社長の夕狩は、若くて奔放な金の使い方をするタレント兼恋人をずっと可愛く思っていたが、会社の金策が尽きた時彼女を葬ることを決意した。

 

終始犯人視点で話が進みます。サイコパスらしく犯行動機が怖いです。こんな理由で殺されては、たまったものではないです。完全犯罪だと思っていたものが、火村の手により次々とボロが出てくる様は痛快でした。気づかないうちにアリスと火村に一芝居打たれ決定的な証拠を掴まれるあたりは、犯人が間抜けというより2人のタッグが阿吽の呼吸といえるほど見事なものでした。

単に私の理解不足なのでしょうが、犯人が想像の中でショーウインドウを壊すシーンはよく分かりませんでした。頭ではひとまず納得できるのですが、感情がついていかない感じがして、なぜここがタイトルになるのか未だにすっきりしません。

潮騒理髪店

火村が旅先で時間つぶしに入った理髪店と、その町で見た不思議な光景「列車に向かってハンカチを振る美人」を理髪店に絡めてアリスに謎を提供する話。

 

火村とアリスが電話をしている中で全ての話が進みます。火村が目にした光景と理髪店の店主との会話で知り得た情報を元に一つのミステリーを仕立て、アリスにこの謎が解けるか?とふっかけます。鄙びた田舎での他愛ない日常の一コマを切り取ったような、爽やかな話でした。

たまたま入った理髪店が「今日で閉店する」と知った火村が恐縮するシーンがあるのですが、この事象もまた謎の行動をとる美人にも影響を与えただろうと見立てるくだりが好きです。短編という限られたページ数で語られるものを余すところなく活かしていると思います。

それにしても、電話でも謎を出し合うという2人の仲の良さは凄いです。

怪しい店

アリスが偶然見つけた「みみや」という店。何をする所だろうという疑問は、女性店主が被害者となったことで判明した。それは人の悩みをアドバイスなどをすることなく、ひたすら「聞く」という商売だった。被害者とトラブルを起こした客の存在も明らかになり、また被害者が客から聞いた悩みをネタにゆすりを行っていた事実も判明する。

 

ただの被害者かと思っていたら、とんでもない裏の顔が出てきました。お店もそれなりに順調にいっているのに、何故その方向へ行ってしまうのでしょうね。それなりでは満足できなかったのでしょうか。正職に就かない旦那を養っているという優越感を感じていたような描写もあり、楚々としたたおやかな女性像を想像しながら読んでいたのですが、我の強い人だったのかもしれません。

最後は犯人に罠を仕掛けるのですが、一か八かみたいなところは火村らしくないなと感じてしまいました。普通に理路整然と追いつめていけそうな相手だった気もしますが。予想通りの行動をとる犯人でしたので、賭けは勝ちました。手っ取り早く解決したかったのでしょうか。

 

以上、「店」にフォーカスした短編集のまとめでした。「ショーウインドウ~」は舞台が店ではないのですが、お店でのある行為が重要なキーとなっているので、店というくくりなのかな?と思います。それともショーウインドウの時点で店と認定していいのでしょうか。やはり私の中であいまいな作品です。

 

その他の感想はこちら

有栖川有栖の人気シリーズ「火村英生シリーズ(作家アリス)」を読みたくなった時のおすすめの順番