有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」『英国庭園の謎』あらすじとほんのりネタバレ感想

有栖川有栖さんの火村英生(作家アリス)シリーズ「英国庭園の謎」のあらすじと感想をまとめました。何年振りかに読み直したので犯人も忘れているだろうと思っていましたが、意外と覚えているものですね。

細かいところは忘れていたので、時代の流れを感じながらも新鮮な気分で読むことができました。

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「英国庭園の謎」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズ7冊目で、国名シリーズ4冊目の短編集。「雨天決行」「竜胆紅一の疑惑」「三つの日付」「完璧な遺書」「ジャバウォッキー」「 英国庭園の謎」の6編で構成されている。

  • 英国庭園の謎(1997年6月/講談社ノベルス)
  • 英国庭園の謎(2000年6月/講談社文庫)

雨天決行

雨上がりの公園のあずま屋のそばに女性が倒れていた。巡回していた警察官が駆け寄ると、「許してあげて」と呟き息を引き取った。女性の名前は白石七恵、売り出し中のエッセイストだ。手荷物などは犯人によって持ち去られたらしく、何も残っていなかった。事件前夜、被害者と会っていた友人が、彼女がかけていた電話の一部を聞いていた。「それは駄目」「そっちの方はいいわ。雨天決行よ」。「雨天決行」は七恵が初めて出版した本のタイトルでもある。被害者のそばには女性もののパンプスの足跡が残っていたが、被害者のものかどうかははっきりとしていない。火村とアリスは、被害者の次の本を出そうとしていた出版社の編集、被害者が仲良くしていたスペイン人の料理人などに話を聞いて回る。

 

本のタイトルが雨天決行、雨の夜に犯行が行われたなど、「雨」が事件を解くポイントなのはピンときますが、雨を降っている状況を細かく想像しながら読まないとなかなか気づきにくい話でした。また、出版業界の専門知識(?)がないと「雨天決行」の謎は解けないです。火村先生、博学です。

竜胆紅一の疑惑(りんどうこういちのぎわく)

幅広い女性ファンに支持されている恋愛小説家・竜胆紅一が、出版社とアリスを介して火村に相談があるという。竜胆はスランプ中で何年も新作を発表していないし、出版社に預けている原稿の書籍化も頑なに拒否しているという。火村、アリス、編集の片桐の3人が竜胆邸を訪れると、ノイローゼに陥っている竜胆は、身内に命を狙われており先日もボヤ騒ぎが起きたところだと話し始める。3人にとっては極度の被害妄想のようにも思えるが、竜胆は家族からさりげなく話を聞いて尻尾を掴んでほしい、もしくは自分の疑惑が間違っているなら論理的に説明してほしいと希望する。

 

妻、長男、長女、長女の夫と、普通にいい人ばかりです。どうみても竜胆の被害妄想なのですが、ボヤだけは作為的なもので、火村は隣人にも話を聞いていました。火村准教授の竜胆へ出した答えは、出版社に預けている原稿を出版すること。ガソリンをまいて火をつけた犯人の動機がなんだかな…という本末転倒なものでした。人気作家も大変です。

三つの日付

アリスは大阪府警の若手刑事・森下から、日記代わりに付けていたという3年前の手帳を持って喫茶店「ナスカ」へ来てほしいと依頼を受ける。ナスカで待ち合わせた森下と火村から、ある事件で逮捕した男が3年前に起こした殺人事件について、アリス自身の証言が重要なのだと聞かされる。男がアリバイの証明にと提出した写真には、ナスカ店内でアリス、作家仲間の赤星楽、喫茶店のマスターと一緒に仲良く男が映っており、犯行日である3年前の3月22日の日付が刻印されていた。また写真を撮った日にアリスと赤星がそれぞれ日付入りで書いたサイン色紙もあり、そのどちらにも3月22日とあった。肝心の手帳にはろくなヒントはなかった。写真を撮った日は本当に3月22日だったのか、前日の21日ではなかったのか……火村に促されアリスは当時の状況を思い出していく。

 

その年は閏年だったため、旧式のカメラが閏年を認識できず日付のズレが生じ、本当は3月21日に撮影したものだと判明します。ではなぜ色紙の日付まで2人とも3月22日になっているのか。アリバイを崩すことではなく「なぜ日付を間違えたのか」が主題の話でした。

火村の推理でいったんは解決したかの思えましたが、真相は少し違ったものでした。火村の推理でもアリバイは十分崩せるのですが、よほど遺跡や歴史が好きな人以外には日付を勘違いした理由は解けないです。

完璧な遺書

自分を振った女を衝動的に殺してしまった。萩原は遺体を彼女の別荘に運ぶとともに、彼女が不倫相手との関係に悩んで自殺したと偽装することを思いつく。問題は遺書だが、ラッキーなことに彼女から貰った手紙の一部を丸々遺書のように偽装できそうだ。彼女が手紙を書く時にも使っているワープロも、彼女のオリジナル便せんも白紙のものが2枚ここにある。うまく使えば完璧な遺書を作成することができるだろう。すべてをうまくやり遂げたのに、警察は他殺を疑っているらしい。こうなれば警察が話を聞きに来た時が勝負だ。

 

犯人視点での話です。話を聞きにやってきた警察の中に火村准教授が混じっています。保存にフロッピーを使う時代のワープロなので、印字はインクリボンのはずです。だからそこを見れば過去の印字記録が一発で分かるので、遺書が偽装されたこともすぐ分かる…かと思っていたのですが、外れました。偽装の証拠はいくつもワープロに残っていたのですが、犯人のモノローグにもあるとおり、最後はいくらでもズルができる追い詰め方だったと思います。

ジャバウォッキー

アリスと火村のもとへ、山沖から電話がかかってきた。山沖は一年半前、通っていた大学の講師を刺すという事件を起こしたが、精神鑑定の結果無罪になった男だった。謎かけのような怪しい言葉を喋る山沖に「ジャバウォッキー」とアリスがあだ名をつけたのだ。山沖は火村に対し謎の言葉とともに犯罪予告ともとれる発言をして電話を切った。どうやらトラブルで人を刺して逃走中らしい。山沖との電話での会話から逃走ルートを特定した火村は、大阪にいるアリスに対しある無茶な指示を飛ばす。

 

最後は時間との勝負ということで、スピーディーな展開でした。鉄道や天体に関する知識がないと読んでいてもちんぷんかんぷんです。

英国庭園の謎

高級志向の食料品店「エム・グロリア」の創業者の一人・緑川隼人が金にあかせて作った英国式の庭園で、客を招いてあるゲームを開催している最中、ガラス製の灰皿で眉間を割られて死亡しているのが見つかった。ゲームの内容は、英国庭園のどこかに隠してある宝物を、散文詩の暗号を解いて見つけ出すというものだったが、参加者で解けたものはいないくらい難しいものだった。

 

一番初めに暗号を解いたのが火村だったのですが、メモがないと絶対に解けないと言い切るくらいなのでよほど難しいものなのかと思ったら、難しいのは確かなのですが天性の勘というかセンスが必要な暗号でした。暗号関係は昔から苦手なので、小説・漫画に関わらずいつも読み飛ばしてしまいます。なので暗号よりも、被害者の性格の悪さの方が強く印象に残りました。犯人に対するいやがらせ(?)のために、よくもあれだけ念の入ったおぞましいゲームを用意したものです。

 

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どの短編もちょっとした専門分野の知識が必要なミステリーという印象です。「海のある奈良で死す」で被害者になってしまった人物もかかわってくる「三つの日付」が、懐かしさもあり一番面白かったです。

 

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