有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」『インド倶楽部の謎』あらすじとネタバレ感想

有栖川有栖さんの「火村英生(作家アリス)シリーズ」最新作、『インド倶楽部の謎』についてまとめました。インドに伝わる予言書という、神秘的な雰囲気を漂わせる出だしからはじまったストーリーも、あっという間に読み終わってしまうほど今回も面白かったです。

犯人の名前などは書いていませんが、まとめたあらすじの中にネタバレが多く含まれていますので、まだ読んでいない方はお気を付けください。

スポンサーリンク

「インド倶楽部の謎」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズの25冊目で長編ものです。国名シリーズでは実に13年ぶり9冊目となるファン待望の一冊です。

  • インド倶楽部の謎(2018年9月 講談社ノベルス)

 

神戸の異人館街の中にある屋敷「インド亭」では、毎月一度、主人夫妻が特別な結びつきを感じる数人だけを招いた集まりが催されている。

いつもは目的もなく集まり、料理を楽しみ、とりとめのない話をしながら寛ぐのだが、その日は少し違った。特別なイベントが用意されていたのであった。

前世から自分が死ぬ日まで、全ての運命が記されているというインドに伝わる「アガスティアの葉」。このアガスティアの葉を使った公開リーディングをしようというのだ。集まったインド倶楽部のメンバー7人のうち、リーディングを行うのは屋敷の主人である間原郷太を含めた3人。インドから招いた先生を囲み、会はいつも通り滞りなく終了したが…。

登場人物

【インド倶楽部のメンバー】

  • 間原郷太:インド亭の主人で、神戸にある有名なナイトクラブ「ニルヴァーナ」のオーナー。48歳。公開リーディングを受ける。
  • 間原洋子:郷太の妻。一つ年上。
  • 加々山郁雄:プロモーター。郷太の友人でビジネスパートナー。50歳。公開リーディングを受ける。
  • 井深リン:ヨガのインストラクター。
  • 坊津理帆子:亡夫の事務所を引き継いで私立探偵をしている。39歳。公開リーディングを受ける。
  • 弦田真象:インド音楽に精通していてライブハウスや道端で演奏もする。自由人。35歳。
  • 佐分利英吾:臨床心理士。33歳。

【アガスティアの葉、公開リーディング関係者】

  • ラジーブ:アガスティアの葉を使って予言などを行うインド人。来日中。
  • 出戸守:コーディネーター

【その他】

  • 間原花蓮:間原夫妻の娘。高校生。
  • 兵庫県警捜査一課の面々:火村に事件の捜査協力を依頼する。

事件勃発

港湾内で作業をしていたショベルカーが、スーツケースを引き上げた。中には身元不明の男性の遺体が押し込まれており両手の指紋が焼かれていたが、兵庫県警は素人の仕業だと見当をつけた。地道な捜査の結果、男性は出戸守だと判明する。出戸の部屋で見つかったヨガ教室のパンフレットを元に「ヨガスタジオ・リン」経営者の井深リンに聞き込みを行うと、飛び込みで営業にきた出戸の仲介によって、インド倶楽部でアガスティアの葉によるリーディングが行われたことが判明した。

ヨガ教室で得たインド倶楽部の情報を捜査本部に伝えると、驚きの情報がもたらされる。今朝方通報のあった殺人事件の被害者が、インド倶楽部のメンバーの一人・坊津理帆子であるということだ。

兵庫県警の樺田警部から要請を受けた火村とアリスがそれぞれ京都と大阪から坊津の事務所へ駆けつけ、2つの事件のあらましを聞く。

  • 出戸と坊津の死因は、どちらも紐で首を絞められたことによる。
  • どちらのパソコンも、おそらく犯人の手によって水没させられていた。
  • 出戸と坊津は、出戸と井深が出会う2か月前から連絡を取り合っていた。
  • 坊津の手帳には、彼女がアガスティアの葉の公開リーディングを受けた際にラジーブが書いた坊津の命日が記してあり、その日付がまさに坊津の死亡推定時刻に重なっている。

などが新たに判明している。予言の的中を驚くアリスと、予言など意にも介さない火村は事件の捜査を始める。

インド倶楽部のメンバーのつながり

インド倶楽部のメンバー一人ひとりと面会していくうち、彼ら7人は150年程前のインドで仲間同士だったという同じ過去(前世)を共有しているらしい、ということが分かった。これが事実かどうかやオカルト的なあやしさは置いておいて、7人が「同じ世界観を当たり前のように共有している」というのがインド倶楽部のつながりの理由だった。

また7人が信じているこの前世の物語にメンバーを引き込んでいったのは、坊津だということも明らかになっていく。

また私立探偵である坊津は、ひそかに間原郷太の過去を探り、彼の秘密の証拠となる品も手に入れたらしいことも判明する。

事件の謎など

インド倶楽部のメンバーが共有している前世ですが、本気で信じている人、懐疑的な人、とスタンスは様々なようです。

その後の捜査により日本に滞在していたラジーブが見つかり、話を聞くことができました。ラジーブがリーディングを生業としているのは本当だが、

  • インド倶楽部でのリーディングは出戸からの特別な依頼であった
  • インド倶楽部で使ったアガスティアの葉は正しいものではなかった(出戸を通してあらかじめ参加者の情報を得ていたので、すらすらと過去を当てることができた)
  • インド倶楽部でのリーディングは単なるビジネスとしてこなした(顧客から依頼された通りのことを語っただけ)
  • 依頼者はボーツという女性であった。

などが本人によって証言されています。ラジーブ自身は2つの事件に直接関わっていないことが分かりました。

また花蓮の口から、風来坊のような弦田も就職を真面目に考えているらしいことが話されています。

坊津の足取りを追って出張した県警の野上刑事が、間原が前妻との旅行中に災害に巻き込まれ彼女と死に別れていること、坊津が調べていたのはその事故災害だったことが判明。その後、彼女が間原を呼び出して何やら要求をしたことなどが分かりました。

捜査で次第に明らかになっていく事実と、火村とアリスが聞き込みで知った情報を組み合わせて火村が明らかにした事件の全容と犯人は…。

読み終えた感想など

今回は特殊なトリックを使った事件ではなかったためか、トリックを解いて犯人を見つけるというより、判明した一つ一つの事実から犯人になりえない人を消していって、最後に残った人間とその人間の起こしただろう言動を照らし合わせて、「あなたは犯人です」と指摘した感じです。アガスティアの葉は事件の本質ではなくツールでしたね。

時間軸に沿った人物行動一覧でも作らないと、犯人を当てるのは難しいなとも思いました。あと犯人の動機がいまいち理解しきれませんでした。そんなことで2人の人間を手に掛けるかなと。それほどの強い衝動があの犯人に生まれたというのが驚きでした。

前世の話も突拍子がなくて難しい。辛辣な言い方になりますが、いい大人たちが寄ってたかって一つの妄想の中に浸って酔っているだけのような……前世を信じる人にとっては当たり前なのでしょうか?

推理の過程やストーリー展開など、いつも通り一気に読み進めてしまうほど面白かったのですが、扱う題材が特殊すぎて感覚的に「?マーク」がたくさん飛んだ話でもありました。

坊津が予言されていた命日が的中した謎は、ラジーブの口からはっきりと答えが出ていますが、それを事前に当てていた火村准教授はさすがです。

次回の新作も楽しみです。

 

その他の感想はこちら

有栖川有栖の人気シリーズ「火村英生シリーズ(作家アリス)」を読みたくなった時のおすすめの順番