有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」第3弾『ロシア紅茶の謎』あらすじとほんのりネタバレ感想

火村英生(作家アリス)シリーズの記念すべき国名シリーズ第1弾「ロシア紅茶の謎」のあらすじと感想をまとめました。ロシア紅茶というとジャムを使っているので、そのあたりにトリックが?などとあちこちに想像を働かせながら読んだ記憶があります。

激しいネタバレは避けていますが、あらすじでピンと来る人もいるかもしれませんので、読む際にはお気を付けください。

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「ロシア紅茶の謎」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズ3冊目となる短編集で、国名シリーズ第1弾となる。「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ルーンの導き」「ロシア紅茶の謎」「八角形の罠」の6作品で構成されている。

  • ロシア紅茶の謎(1994年7月/講談社ノベルス)
  • ロシア紅茶の謎(1997年7月/講談社文庫)
  • ロシア紅茶の謎(2012年12月/角川ビーンズ文庫)

動物園の暗号

動物園の猿山で飼育員の男が撲殺されていた。被害者が右手に握りしめていたものは、パズル好きの被害者が作って同僚たちに解かせようとしていたオリジナルの暗号問題だった。捜査をすすめるうち、被害者は同僚の誰かを強請っていたらしく最近羽振りが良くなったことが分かる。生き物の名前ばかり羅列した暗号を解けた同僚はいなかった。火村は、被害者が旅行好きの同僚にかけた言葉にヒントを得て暗号を解くと、そこに犯人の名前が浮かび上がった。

 

ダイイングメッセージものです。被害者は強請っていた相手を暗号の答えにしていたらしく、犯人に襲われた際にとっさに暗号パズルを思い出したものと思われます。難しくて解けません。一目でピンとくる人と、ずっと考え続けても分からない人とにすっぱり分かれる暗号でした。読んでいるとナイトサファリに行きたくなりました。

屋根裏の散歩者

ロングヘアの女性ばかり狙う通り魔殺人が起きている頃、古びたアパートの住人兼大家の老人が、はりつけにされているような恰好で死んでいるのが見つかった。どうやらこの老人は、夜ごと屋根裏をはい回って他の住人たちの生活を覗き見るという悪趣味な楽しみを持っていたらしく、住人の中に通り魔がいることを知ったため殺されたものと思われた。老人は住人たちに独自のニックネームを付けた覗き見日記を残していた。それによると5人の住人は「大」「太」「く」「ト」「I」であり、そのうち「大」が通り魔だというのだ。

 

暗号もの?と言っていいのか微妙な話です。部屋の天井から住人たちをこっそり見ていたという老人が自分だけが理解できればいい日記に書いた符号なので、ヒントといえばその設定くらいです。老人の行動を忠実にトレースした火村だけが解けました。警察の捜査が進むのを待っていればそのうち犯人は逮捕されたのでしょうが、それを待てずアクションを起こして犯人をあぶり出した火村准教授は、本当に殺人犯に対しては容赦ないです。

最後の最後に老人がはりつけのような恰好で死んでいた理由が分かるのですが、火村の違法ともいえる行動に対する驚きが強くて、そこはすっかり忘れていました。意外と無茶するものですね。最後まで行き届いた短編という印象です。

赤い稲妻

雷鳴が轟くある大雨の夜、外国人モデルの女性がマンションのベランダから転落して死亡した。部屋には他に人がおらずドアチェーンも掛かっていたことから自殺と見られたが、被害者が落ちる所を目撃したという火村の教え子が、ベランダにはもう一人いたと証言する。同じような頃、線路で立ち往生していた車が列車に轢かれるという事故があり、中から運転手と見られる無残な姿の女性が見つかった。列車事故で妻を亡くした男には愛人がいた。それがマンションから転落したモデルの女性だった。1時間ほどの間に相次いで2人の女性を亡くした男にはアリバイがあったが、火村は男のアリバイは嘘だと見抜く。

 

アリバイを証明する男の言葉が嘘だと言い切る火村の根拠が最後に唐突に出てきたので、普通に読んでいると、決定打を最後まで隠した不意打ちのような印象がありました。

そこに至るまでにほぼ落ちる手前まで追いつめていたので、とどめの一言というインパクトとしては凄く効果的で、印象に残るシーンでした。

ルーンの導き

日本人1人を含む多国籍な人々の集まりの最中、中国系アメリカ人の男性が何者かに殺害された。被害者は何かを伝えたかったらしく、ルーン文字の書かれた石を4つ握っていた。集まりのメンバーは被害者を入れて6人。その中の一人は火村の同僚ジョージ・ウルフ先生だった。被害者は集まりを主催した夫妻の友人で日本の本をアメリカで出版する仕事をしており、夫妻以外とは全員初対面だという。

 

ルーン文字とかルーン占いという魅力的なアイテムにすっかりミスリードされましたが、至って普通の(?)謎解きでした。ルーン文字に何か意味があるのかと思っていましたが、ルーン石以外でも成り立つダイイングメッセージでした。ただ出版と漢字の知識がないとメッセージは解けないです。

ロシア紅茶の謎

年の瀬が押し迫った頃、神戸に住む作詞家が青酸カリが混入したロシア紅茶を飲んで死亡した。事件当時は年忘れパーティーの最中で、メンバーは被害者の妹、イラストレーター、プログラマー、インテリアデザイナー、モデル、被害者の6人。被害者は近々婚約する予定で、婚約者はプログラマーの元恋人だった。またインテリアデザイナーとモデルは被害者に振られた過去を持ち、イラストレーターは被害者のせいで失恋したことがあるという。妹以外が全員犯行動機を持つが、被害者のカップに青酸カリを入れることができた人間はいないという。また青酸カリを持ち込んだと思われる容器も見つかっていない。一体誰が、どうやって被害者のカップだけに青酸カリを入れることができたのか。

 

可能だろうけれど実際にやる人はいないだろうなというパズル的なトリックでした。事件当時の様子を関係者たちが再現するシーンがあり、ところどころ怪しそうな場面が出てくるのに見事に引っかかり、そちらにばかり気を取られてしまいました。ミスリード上手です。

八角形の罠

アリスが原作を手掛けた推理劇「八角館の殺人」のゲネプロ(本番前の、本番を想定した通し上演)に参加したアリスと火村は、劇団内に巻き起こっているいざこざを目にする。ゲネプロ後に1階の練習室へと場を移した劇団員たちは、人気俳優が退団することを宣言した直後に起きた停電の暗闇のなか、彼が何者かに毒針を刺され殺されたことを知る。火村の機転によって事件直後に自由に動けた関係者はいない。にもかかわらず、凶器の注射器は2階にある観葉植物の鉢から見つかった。また警察の捜査が開始されるなか、煙草を吸った容疑者の一人が苦しみ出し「だましやがった」という言葉を残して息絶えた。

 

実際に原案を手掛けた舞台のノベライズとのことで、謎解きイベントらしく小説にも「読者への挑戦状」が挟まっています。楽しそうですね、おそらく解けないでしょうが私も参加したかったです。

2人目の事件が起きた後に消去法で犯人が分かるので、どういうトリックを使ったのかが問題でした。関係者の言動に謎を解くヒントが散りばめられているので、一時も気が抜けない公演だったのだろうなと推察されます。時間が戻るのなら参加したいです。

 

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