有栖川有栖「火村英生(作家アリス)シリーズ」『朱色の研究』あらすじとほんのりネタバレ感想

「朱色の研究」ときくと、真っ先にコナン・ドイルのシャーロックホームズシリーズの一作「緋色の研究」を思い出します。実際にこの本のタイトルは「緋色の研究」をもじったものとのことです。

いつもお馴染みの大阪府警、京都府警、兵庫県警の管轄から飛び出して、和歌山県で起きた過去の未解決事件にからむ3つの事件を解決する長編ものです。なるべく決定的なネタバレは避けているつもりですが、お気を付けください。

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「朱色の研究」書籍概要

火村英生(作家アリス)シリーズ8冊目で、5冊目の長編作品。

  • 朱色の研究(1997年11月/角川書店)
  • 朱色の研究(2000年8月/角川文庫)

 

英都大学の火村のゼミに所属する学生・貴島朱美が、2年前に起きた未解決の殺人事件を調べてほしいと頼みにきた。彼女は中学生の頃両親を事故で亡くし、身を寄せた伯父の家で放火事件が起き伯父が焼死するのを目の当たりにしたという体験により、夕焼けを怖がる「オレンジ色恐怖症」になっていた。

放火犯は捕まっておらず、また2年前の夏、和歌山の別荘に滞在中に知り合いが殺されるという事件にも巻き込まれていた。

登場人物

【2年前の和歌山の事件関係者】

  • 貴島朱美:英都大学の学生で火村の教え子。和歌山県の周参見でおきた殺人事件の調査を火村に依頼する。
  • 宗像庄太郎:故人。朱美の伯父。両親を亡くした朱美を離れに住まわせ、面倒を見ていた。放火事件で焼死。
  • 宗像真知:朱美の伯母。
  • 宗像亜紀:朱美のいとこ。
  • 宗像正明:朱美のいとこで亜紀の兄。カメラマン。アリスの近所にある「オランジェ夕陽丘」で一人暮らしをしている。
  • 山内陽平:朱美の伯父(真知の兄)。浮き沈みの激しい生き方をしており、以前は宗像家に居候することもあった。一時期大野夕雨子と付き合っていたが円満に別れている。
  • 中村満流:正明の友人。カメラマン。
  • 六人部四郎:正明の友人。ライター。陽平の会社でアルバイトをしていたこともある。
  • 升田:宗像庄太郎の仕事仲間。
  • 大野夕雨子:2年前の未解決事件の被害者。亜紀にピアノを教えていた。

オランジェ夕陽丘の事件

アリスの住むマンションからほど近い豪華分譲マンション「オランジェ夕陽丘」は、バブルがはじけた影響で全80室のうち10室しか入居者がいないため、幽霊マンションとも呼ばれていた。

ある早朝、アリスの家に不審な電話がかかってきた。火村が泊っているはずだといい、今すぐ2人でオランジェ夕陽丘の806号室に来いという。怪しみながらも電話に従いマンションへ行くと、正面玄関も806号室も開いており、浴室には男性の遺体があった。遺体は殺害されたあと、浴室まで運ばれたようだった。火村の助言により同じマンションに住む宗像正明に確認してもらうと、被害者は伯父の山内陽平だという。

容疑者として事情を聞かれたのが、正明の後輩で2年前の和歌山の事件関係者でもある六人部だった。六人部は、深夜からアリス達がマンションに訪れる直前までの4時間半の間、ずっと一人きりで806号室にいたと言うのだ。だが殺害も遺体の運搬も否認し、自分はあるプライベートなことで脅迫の手紙を受け取り、その指示にしたがって806号室にいただけと主張する。犯人がよこした手紙の指示は、難しくはないが回りくどいものだった。

警察は六人部に容疑をかけているが、火村は六人部は嘘は言っていない(=犯人ではない)と考える。

  • なぜ犯人は、その日、火村がアリスのマンションに泊まったのを知っていたのか。
  • なぜ2人を第一発見者にしたのか
  • 犯人が六人部に出した指示で、一番おかしいところはどこか

火村は、彼が朱美の依頼を受けて2年前の事件の調査に乗り出すことを知った犯人が、今回の事件に関わっている。つまりオランジェ夕陽丘事件の犯人は、和歌山での殺人事件関係者であり、電話の呼び出しで火村を指定したが、本当はアリスだけでも良かったのだろうと推測を立てる(アリスが第一発見者になると、確実に火村に連絡をするだろうから)。

警察の捜査で決定的な証拠が見つかったことから、火村は犯人のトリックを見破り、六人部や警察らとともに当時を再現し、六人部の無実を証明してみせた。

大野夕雨子の事件

オランジェ夕陽丘での事件で、関係者たちから改めて和歌山の事件の捜査協力を取り付けた火村は、アリス、朱美とともに和歌山県の周参見へと向かう。

2年前の6月、事件が起きたのは宗像家の別荘から50メートルほど離れた浜辺だった。被害者である夕雨子は別荘から椅子を持ち出し、お気に入りの風景の中読書をしていたところを犯人に襲われたものと思われた。

  • 夕雨子の体には2か所の傷があり、棒状のもので殴られたもの(致命傷)と背後の崖から投石されたものと分かっている。
  • 崖の上に車を置いて写生をしていたという元警察官の証言から、特徴的な形をした石が投げられただろう時間帯が分かっている。
  • 夕雨子は昼過ぎに殴られて絶命したあと犯人によって椅子に座らされ、数時間後に崖から石をぶつけられたものと思われる。

事件当時、しつこいくらいの繰り返された事情聴取でも容疑者はいたが、升田が撮影していたホームビデオの映像などからもアリバイが認められ、迷宮入りとなっている事件だった。

改めて現場へ足を運び、関係者の話を聞き、升田の撮ったビデオなどを見て回った火村は、翌朝、別荘から見える崖に元警察官の車が停まっているのを目にした瞬間驚き、アリスに犯人はXとYがいると告げた。

 

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和歌山の事件解決とともに、宗像家の放火殺人、オランジェ夕陽丘での殺人事件が一気に片付きました。全部繋がっていたのですね。

結局最後までオランジェ夕陽丘事件の犯人が、アリス(火村)に挑戦的な電話をかけてきた理由が分かりませんでした。ばれないから殺してしまえと夕暮れのお告げがあった、とのことですが、だからといって火村が名探偵という噂を人づてに聞いていたのだとしたら、自らを窮地に追い込むような真似をするかな?と思います。名探偵であればあるほど、火村を巻き込むことは自らの首を絞めるだけな気もしますが。

自分が思いついたトリックが素晴らしすぎて、誰かに披露したかったのでしょうか。選んだ相手が悪いです。

 

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