有栖川有栖「ソラシリーズ」第2弾『真夜中の探偵』あらすじとほんのりネタバレ感想まとめ

「真夜中の探偵」は前作「闇の喇叭」に続くソラシリーズ第2弾となっています。奥多岐野から舞台を大阪へと移し、消息を絶った母親探しを始める前段階といった位置づけでしょうか。

少しずつ探偵としての信念や心構えを自分の中ではっきりとさせていく姿を描いている「真夜中の探偵」のあらすじと感想をまとめました。

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「真夜中の探偵」書籍概要

探偵行為が禁止されている日本で、探偵になることを決意した空閑純(そらしずじゅん)の成長を描いていくソラシリーズ第2弾。

  • 真夜中の探偵(2011年9月/講談社)
  • 真夜中の探偵(2013年6月/講談社ノベルス)
  • 真夜中の探偵(2014年8月/講談社文庫)

 

第二次大戦後、北海道が日本から独立し日ノ本共和国と称して敵対するようになり、日本は徴兵制度を敷くようになった。また国の安寧を脅かすとして法律で私的な探偵行為は禁止され、探偵たちは廃業を余儀なくされた。

警察類似行為で父・誠が逮捕され裁判を待つ身となった。高校を辞めたソラは奥多岐野を出て、叔父夫婦の暮らす大阪で一人暮らしをしていた。親友との連絡を絶ち、叔父の提案も断って一人暮らしをしているのは、反社会的と言われている探偵になって母を探すためだった。だが現実は甘くはなく、ソラはアルバイトを掛け持ちする生活でいっぱいいっぱいだった。

登場人物

  • 空閑純:アルバイトで生計を立てている17歳。高校には通っていないため独学で勉強している。
  • 空閑誠:拘留中。ソラの父。かつては凄腕の探偵「調律師」として活躍していた。
  • 空閑朱鷺子:行方不明。ソラの母。「水無月」という探偵名を持っていた。
  • 森脇貞雄:父の弁護士。
  • 押井照雅:依頼人と探偵を引き合わせる仲介者で、表向きは画廊経営者。
  • 真行寺晴香:押井の仲間
  • 花隈慎一:押井の仲間
  • 常田啓介:押井の運転手。探偵を希望し、森脇を介して押井に直談判して今のポジションに収まった。
  • 梅沢千景:押井の家政婦。
  • 斉藤康子:押井の家政婦。
  • 砂家兵司:元探偵「金魚」。凄腕だったらしいが廃業後はやさぐれている。
  • 三瀬竜馬:ソラのアパートの隣人。訳ありの雰囲気を出す。
  • 陶崎ミサ男:呪術連続殺人犯で5人の女性を殺し死刑が執行された。裁判の最後「約束も守った」という言葉を発していた。
  • 明神警視:中央警察の人間で誠とソラに特別な注意を払っている。

仲介者との出会い

大阪に戻ってきたところで生活に追われて母の手がかりを見つけるどころか探偵活動すらできないソラ。一方拘留中の誠のところへは、中央警察の明神が面会に訪れていた。誠から情報を引き出そうとするが、誠の口も堅い。明神は尋ねた。「韮川士郎」を知っているか。朱鷺子が追っていた不可解な死に方をしたフリージャーナリストだ。「ブラキストン・コンフィデンシャル」は? 頭から離れない謎の言葉であり、知っているなら教えて欲しいと誠は答える。明神にも答えることのできない謎の言葉だった。日ノ本共和国と日本に関わる秘密だと想像がつくが、具体的なことは何一つ分かっていない。

森脇弁護士を通じてソラに会いたいという人物がいると連絡が入った。仲介者だという。尾行を撒くため慣れない変装と化粧をして常田と落ち合ったソラは、彼の運転する車で仲介者・押井の待つ屋敷へと向かった。押井は仲介者としては開店休業中であるが、朱鷺子の関わった事件について知っていることをソラに教えると言う。

その中でアパートの隣人・三瀬の正体を知らされる。北海道を含め日本を7つに分けてしまおうという「分断促進連盟(分促連)」のメンバーで、探偵の両親を持つソラの資質に目を付けて寄ってきただろうから、近づかないようにと忠告する。

【母・朱鷺子の追っていた事件について】

  • 幣鴻太郎という福岡に住むルポライターが、森脇弁護士を通じて友人の不審死について捜査を依頼した(8/27)。警察が本気で調べてくれないので探偵を雇うことにしたそう。
  • 友人の名前は韮川士郎というフリージャーナリストで、軍事関係の取材記事などを書いていた。死ぬ少し前から大きなネタを掴んで世界中に名を馳せたいと語っていた。
  • その韮川が自宅マンションで首を吊っていた(6/21)。密室だったため警察は自殺と断定したが、幣は納得しなかった。自力では自殺をひっくり返せそうもないので探偵に頼むことにした。
  • 朱鷺子が単独で引き受け、8/29に幣と会って話を聞き調査に取り掛かる。
  • 朱鷺子が九州へ行かなければならないようなので会いたいと幣に電話し(9/1)、9/3に博多駅で幣と会い1時間ばかり話した。それっきり朱鷺子の行方が分からなくなった。話の内容は大したものではなかったと幣は言った。
  • 幣死亡(9/4)。警察は事故死として処理。
  • 9/3夜、福岡からかけた朱鷺子の電話を誠が受ける。変わったことがないか尋ねる程度。
  • 9/4夕方、朱鷺子からの電話を誠が受け、出張が延びるとソラに伝える。
  • 9/6午後10時過ぎ、朱鷺子から誠へメールが入る。「困ったことが起きた。連絡は奥多岐野の実家にする」という内容。
  • 探偵である花隈の弟が朱鷺子を探しに行ったが、11/12の電話を最後に消えてしまった。
  • 韮川は幣に「ブラキストン・コンフィデンシャル」という謎の言葉を残した。

押井達とソラの面談中、砂家という男が押し掛けてきた。探偵業を廃業してから生活がうまくいっていないらしく、時折押井に金の無心にくるらしい。その場は追い返した押井だったが……。

事件勃発

押井の所有する京都の無人の別邸の車庫で、砂家の遺体が発見された。棺桶を連想させるような木箱に両手両足を拘束された状態で入れられ、蓋は釘で打ち付けられていた。砂家の名前で箱の中に閉じ込められているので救助を乞うという手紙を受けとって出向いた巡査が、不審な木箱を発見し壊したところ、水があふれ出てきたという。

砂家は、水で満たされた密室状態の木箱の中で溺死させられていたのだ。発見時は死後から2~3日経っていた。まるで彼の探偵名「金魚」を溺れさせたかのようだったため、警察は彼の過去の稼業と関連があるのではないかと捜査を始めた。

砂家は被害者遺族の依頼で陶崎ミサ男の起こした呪術連続殺人事件を追っていたが、結局犯人が自首したため尻すぼみに終わったという。

砂家の腕時計にはカメラが仕込まれていた。中から三瀬とソラが写っている写真が出てきたが、砂家がどちらをターゲットにしていたのかは不明である。

警察が捜査をすすめる一方で、押井宅でも自分たちがまきこまれた事件について秘密裏に捜査会議が開かれその中にはソラもいた。砂家を不可解な密室で溺死させたのはアリバイ作りのためだとソラは主張、会議メンバーで検証したところ家政婦も含めアリバイが成立するのは、仕事で韓国出張していた花隈と、休暇を取って湯布院へ団体旅行へ行っていた常田だけだった。

朱鷺子を見つけたいという押井に、ソラは自分を探偵として雇ってほしいと売り込むが実績がない人間を雇えないと一蹴される。実績を作るため、ソラは本格的に砂家の事件を解決することにした。

京都の別邸にある車庫へと出向き現場を見たソラは、全員のアリバイを無意味にするトリックを思いつき三瀬に披露するが、三瀬の証言によってふりだしに戻ってしまう。だがふとした瞬間、二段仕掛けのトリックに気が付いた。

謎を解こうとするソラに三瀬は問う。計画殺人の犯人を警察に突き出すということは、犯人を絞首台に送ることだ。その覚悟がソラにはあるのか。

犯人は

ソラがトリックを見破ったのと同時期に、犯人は自ら警察へ出向くことを選びました。犯行動機は怨恨。砂家が依頼を受けて犯人を捜していたにも関わらず、犯人である陶崎ミサ男と接触して金品を受け取り、新たな殺人を犯すのを見逃したことを恨んでの犯行でした。密室はアリバイ作りと同時に、恨みつらみを砂家にぶちまけゆっくりと水を満たしていき彼に死の恐怖を味わわせるための装置でもありました。

 

事件とそのトリックを解く場面はあっさりと済みました。ソラが探偵として成長していく過程に重点が置かれているようですので、謎解きは控えめにしているのかもしれません。

本編のプロローグとエピローグに朱鷺子と呼ばれる女性が登場しました。プロローグでは大阪市内で朱鷺子とソラがニアミスかとドキドキさせられましたが、エピローグでひっくり返されました。この辺りはさすがミステリー作家さん!です。

どうやら朱鷺子さんは記憶を失って北海道で保護されているらしいです。少しずつ過去の事件も動き出しているようで、続きが楽しみです。

 

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ソラシリーズ1「闇の喇叭」のあらすじと感想はこちら