有栖川有栖「ソラシリーズ」第3弾『論理爆弾』あらすじとほんのりネタバレ感想まとめ

有栖川有栖さんのソラシリーズ第3弾のあらすじと感想をまとめました。ミステリーシリーズは、たいていどこから読んでも大丈夫なものが多いですが、今作は主人公であるソラの成長も描いているので、最初から順番に読むのをおすすめしたいシリーズです。

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「論綸爆弾」書籍概要

南北に分断された日本を舞台に、禁止されている探偵を目指す少女・空閑純を主人公としたシリーズ3冊目。九州の山奥にある深影村を舞台としたクローズドサークルもの。

  • 論理爆弾(2012年12月/講談社)
  • 論理爆弾(2014年9月/講談社ノベルス)
  • 論理爆弾(2015年9月/講談社文庫)

 

特別書下ろし「論理爆弾 事件前夜 黒田邸にて」(講談社BOOK倶楽部)

 

 

母・朱鷺子の失踪の謎を追って単身九州の深影村に入ったソラは、「民宿おがた」を拠点に母の手がかりを求めて回ることにした。一方、深影村から山一つ越えた場所ではテレビを騒がせる大事件が起こっていた。日本へ亡命した男の命を狙って北(北海道)からの工作員8名が山の中に逃げ込んでいるという。警察による山狩りのなか、ヘリコプターが山に激突し、深影村への唯一のルートであるトンネルが封鎖されてしまった。北が絡む事件も担当する中央警察の明神は現場へと向かう。

登場人物

  • 空閑純:通称ソラの探偵志望。17歳。
  • 緒方永治:民宿おがた経営。木地師。
  • 緒方直美:永治の妻
  • 緒方順平:永治の息子。不登校の中学生。
  • 友淵隆介:友淵家当主。長男を自殺で亡くして以降精神不安定な状態。
  • 友淵華絵:隆介の妻
  • 友淵隆一:長男(故人)
  • 友淵隆二:次男
  • 友淵美華:長女
  • 白瀬幸子:友淵家家政婦
  • 和住弓彦:深影村駐在。元刑事。
  • 和住初枝:弓彦の妻
  • 茶部美濃子:拝み屋の老婆
  • 棚干基夫:茶部とは犬猿の仲
  • 緒方竹雄:製材所の三男
  • 鉾田仁平:消防団団長で神社の掃除などをしている
  • 油原健吉:医師

第一の事件

ヘリコプター事故によって封鎖されてしまった深影村で母の痕跡を追うソラは、宿泊の延長のため郵便局でお金をおろすことにしたが、往来で茶部と棚干が大喧嘩をしているところに居合わせてしまった。駐在の妻・初枝のとりなしで一旦は事なきを得たが、その後駐在所に友渕家の家政婦・幸子がすごい剣幕で飛びこんでくる。茶部の家へ行くと、首を絞められた彼女の死体があったのだという。慌てて巡回中の夫に連絡を取り茶部の家へと向かわせたが、到着した弓彦によると遺体はどこにもないという。引き続き茶部の姿を探したが見つからない。拝み屋をしている茶部は呪いの依頼も受けているらしく、密やかな依頼を受けて外出したのではないかと結論づけられた。

第二の事件

早朝、深影村を流れる渓谷の崖下から、深影神社の宮司・当摩善之助が倒れているところが見つかった。妻によると、昨晩医者の所へ行くと言って出ていったのを最後に見たきりだというが、医師・油原は善之助の訪問は受けていないという。また宮司夫妻の仲は冷え切っていて、喧嘩も絶えなかったという。

事故か事件か自殺かはっきりとしないなか、駐在の弓彦は善之助の着ていたブレザーのポケットから薄くて平べったい石を見つけた。石には黒いインクで人の顔のようならくがきと、「Z」ともよめる記号が書いてあった。

第三の事件

深影村へやってきた母の目的が友淵隆一と会うことだと知ったソラは彼に面会を求めるが、ノイローゼ気味だった隆一は二年前に投身自殺していることを家族から聞く。友淵家の長女・美華と仲良くなったソラは、友淵家の応接室と隆一の部屋に盗聴器が仕掛けられていたことを知らされる。隆一には何か秘密があるに違いないと睨むものの、彼が深影村に戻ってくる前にやっていた研究はリニアモーターカーにも使われる超電脳磁石だった。

美華に村の洞窟を案内してもらうことになっていたソラは、しきりにデートに誘ってくる竹雄を伴い3人で出かけることになった。3人は洞窟の奥で2つの遺体を発見してしまう。一つは幸子の証言通り首を絞殺された茶部の遺体、もう一つは行方不明になっていた棚干の刺殺体だった。

駐在の到着を待つ間、遺体の所持品を調べていたソラは茶部と棚干から平たい石を発見した。石にはらくがきがあり、民宿の息子・順平から聞いた「オチムシャくん」というキャラクターだということが分かった。茶部の石には1、棚干の石には3という数字が書いてあった。

第四の事件

平和な深影村に次々と死体が増えていく中、美華に呼ばれたソラが友淵家へと向かっている途中、道のすぐそばにある側溝を流れていく人物がいた。ソラの機転と鉾田の迅速な対応によりその人物は助けられ一命はとりとめたものの、意識は戻らずヘリコプターで運ばれていった。被害者は友淵隆二だった。

その後の警察の調べにより、犯人は村に備え付けている消火用のホースから隆二めがけて水を発射して側溝に叩き落したことが分かった。ホースのそばにはオチムシャくんのらくがきとともに4と書かれた石が残されていた。

不可解な事件が続くなか村への滞在を粘り続けていたソラだったが、母の息災も事件の犯人も分からないまま、とうとう深影村からの撤退を余儀なくされる。

村を出るヘリコプターの到着を待つまでの時間、竹雄の案内で最後に村をもう一回りすることになったソラだったが……。

犯人は

ほとんど手掛かりらしい手掛かりもないまま事件だけがとりとめもなく起きている印象でしたが、犯人もとりとめもないものでした。全員が顔見知りな鄙びた田舎の村で起こった事件なので明確な殺意なり犯行動機があったはずですが、動機から犯人を絞るのは不可能に違い事件でもありました。

 

タイトルの「論理爆弾」は、ある論理によって起爆するコンピューターウイルス、通称「桜吹雪」を直接的には指しているのかと思われます。

深影村に北(北海道)からのスパイの存在を匂わせていましたが、それが意外な形でソラの助けになり、母の消息を知る重要な手がかりを掴む一因になっていました。

 

□□

今回はソラが単独で動いていたためか、中央警察の明神や父・誠との交流はありませんでしたが、ソラが手に入れた相棒の新ケータイ(スマートフォン)の「ワトソン」を通じて、多岐野での親友2人とほんの少し繋がりました。

クローズドサークルといってもヘリコプターは飛んでますし、山越えをする体力と装備と覚悟があれば深影村を出ることは可能です。事件に関する部分だけならクローズドになっています。

母の行方を探すという縦糸に、行く先々で出会う人と事件という横糸を絡ませながら進むソラシリーズはようやく母の居所を示す糸口を掴むところまで来ました。先はまだまだ長そうなので早く続きを読みたいところです。