知念実希人「天久鷹央の推理カルテシリーズ」第3弾『密室のパラノイア』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「密室のパラノイア」のあらすじと感想をまとめました。

病院内で起こる医療や疾病にまつわる不可思議な現象を解き明かしていくシリーズでしたが、今回はとうとうある事情により殺人事件の真犯人を見つけなければならなくなりました。時間との闘いでもあり手に汗握る展開でした。

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「天久鷹央の推理カルテIII 密室のパラノイア」書籍概要

呪いの動画によって自殺を図った女子高生。男性に触れられた瞬間、肌に異常をきたす女性。そして、密室で溺死した病院理事長の息子…。常識的な診断や捜査では決して真相にたどり着けない不可解な事件。解決できるのは、怜悧な頭脳と厖大な知識を持つ変人女医・天久鷹央、ただ一人。日常に潜む驚くべき“病”と事件の繋がりを解明する、新感覚メディカル・ミステリー第3弾。「BOOK」データベースより

  • 天久鷹央の推理カルテIII 密室のパラノイア(2015年5月/新潮文庫nex)

閃光の中へ

天医会総合病院の精神科に、高校生の木村真冬が飛び込み自殺を図ったとして入院してきた。だが本人は自殺などしていないと主張し、見た人間は自殺するという噂の「呪いの動画」を見た直後、気が付けばホームから線路に転落していたのだという。一緒に動画を見ていた双子の姉・真夏には異変が起こらなかった。真夏も真冬が自殺するはずがないといい、主治医や親を含め周囲の大人達が真冬が自殺を図った前提で話を進めるのが悔しいという。呪いの動画に好奇心を刺激された鷹央は、双子の話や呪いの検証をするため件の動画を送るよう真夏に頼んだ。

呪いの動画は出回っており多くの人間が見ていたが、実際におかしな行動をとったのは真冬と車道に出て撥ねられた女子高生の2人だという。鷹央に付き合い無理やり動画をみた小鳥遊だったが、ひたすら強い光がうごめく画像が続き時折変な映像が脳裏に浮かんでくるという気味が悪いものだった。鷹央によるとサブリミナル効果を狙い様々な映像が紛れ込んでいたという。そして鷹央の想像が正しければ、真冬にあることを確かめれば事件は解決すると言った。

そんな時、姉の真夏が自宅マンションの階段から転落して搬送されたと連絡があった。彼女もまた自殺を図ったとして精神科に入院させられそうになったものの、自殺はしていないという本人の強い拒絶と鷹央の横入りにより、急遽鷹央が双子の身の上に起きた事件の解明をすることになった。真夏は鷹央に呪いの動画を送った後、もう一度見れば何か分かるかもしれないと動画を再生し、その直後気持ちが悪くなり気が付けば階段から転落していたという。

鷹央は入院中の真冬、真夏、母親、主治医、小鳥遊を連れて地下のある部屋に行くと、面白いことが起きるといい室内の電気を落として暗闇にした。そして室内のスタンドライトを目が痛くなるほど激しく点滅させた。まもなく小鳥遊たちは、明滅する閃光の中、ふらふらと前に向かって歩きだす真夏と真冬の姿を見ることになった。これが呪いの正体だと鷹央は言う。

 

真夏と真冬は、普段は全く生活に支障のない病気を持っていたことが鷹央によって証明されました。それを「呪いの動画」が刺激したようです。双子は呪いでも自殺でもないことが分かり、あとは適切な科に任せて事件は落着となりました。

拒絶する肌

男の人が怖いという岡崎雅恵が精神科にやってきた。交際中の恋人と関係を進めようとしたところ体がおかしくなるという。触れられた所が痒くなったり息苦しくしくなったりしているうちに男性自体が怖くなり、受診にきた。恐怖症の程度を確認するため、指導医に言われ鴻ノ池舞は患者の縫合を終えたところだという同僚の研修医の男性を連れてきた。握手は平気だった雅恵だが、触れた手のひらは真っ赤に腫れあがっていた。恐怖症ではないと判断した精神科医により、統括診断科に連絡がきた。

入院した雅恵の診察にやってきた鷹央は小鳥遊に雅恵と握手するよう言う。症状をおさめるため薬による処置を行ったあとだったためか、小鳥遊との握手で異変は現れなかった。中学の頃に盲腸の手術をしたと雅恵から確認した鷹央は、一人で納得したように頷いた。

薬の影響が消えた頃に鷹央に言われて小鳥遊が雅恵の採血を行うことになった。病室へと向かう途中、見舞いにきた雅恵の恋人と会う。入院患者の処置を終えた鴻ノ池もやってきて人懐っこく恋人と握手をすると、病室へと促す。小鳥遊が採血しても雅恵に異変は現れなかった。恐怖心という精神的なものが体に影響したかもしれないと穏やかに話していたところ、恋人が触れた雅恵の手がみるみる赤く腫れあっていった。明らかなアレルギー症状だと小鳥遊は思ったが原因は分からない。恋人の手から逃れた雅恵はベッドの上であとずさり、そのまま落ちていった。

雅恵はまもなく意識を取り戻し、女性の医師の手で頭部の縫合処置をするところだった。その話を聞いた鷹央は血相を変えてやめるよう叫ぶ。病室では顔を真っ赤に腫らして雅恵が再び倒れて意識を混濁させており、彼女を取り囲むようにいた形成外科医や精神科医、鴻ノ池らが何が起こったのか分からず立ち尽くしていた。病室に飛び込んだ小鳥遊はアナフィラキシーショックだと叫びすぐに処置しなければまずいと焦っていたところ、鷹央が注射器を持って現れた。

 

雅恵は中学の頃に受けた手術であるアレルギーを発症していたことが、血液検査の結果からも分かりました。男性アレルギーではなかったようです。

密室で溺れる男

派遣期間を大幅に短縮し、あと1か月で派遣元の大学病院へ戻るよう医局から小鳥遊へ連絡がきた。拒否することはできない。その原因となったのは、派遣元の病院で医師が足りなくなったからだった。小鳥遊の先輩医師・桑田清二がある殺人事件の重要参考人となり、勤務できない状況に陥っていた。このまま逮捕となれば医師不足は確実となるため、小鳥遊が病院へと戻ることに決まった。統括診断部には別の医師が派遣されてくるという。天医会総合病院では、鴻ノ池や鷹央の姉・真鶴もコンビ解消を惜しんでいた。鷹央自身も解決策を模索したらしく、桑田が巻き込まれた事件について調べていた。

事件は桑田の実家で起きていた。桑田の実家も病院を経営しており、父親は理事長、叔父は医院長をしている。桑田には母親が違う兄がいるが、素行が悪く何度も警察の世話になったこともあり現在は勘当同然で何をしているか分からない状態だった。被害者はその兄・大樹だった。理事長である父親の誕生祝と病院の35周年を祝うパーティーの開催中、どこで知ったのが兄が現れて騒ぎ、止めに入った桑田の両襟を掴んで2発食らわせたあと屋敷を追い出された。その後、なぜか3階の書斎から兄が内線で助けを呼ぶ苦しそうな電話を受けた父親や叔父、手伝いに来ていた病院関係者らが駆け付けたところ、部屋の真ん中に倒れた兄がいた。叔父が処置をほどこしたが、運ばれた病院で亡くなった。3階の書斎には鍵がかかっており、父親と桑田しか鍵を持っていなかった。また窓の鍵も全て施錠されているのが関係者の証言やカメラの映像からも確認されている。密室内で倒れていた兄の最も特異なのが、死因が溺死だったことだった。周囲に水も水道施設もない中での溺死に、何者かが兄を別の場所で殺害した後運んだと警察は見た。犯行時刻に車の中にいたというアリバイが曖昧で、書斎の鍵を持っている人物・桑田に容疑がかかった。パーティーでは桑田が病院の後継者として発表される予定だったが、延期となってしまった。

桑田の無実が証明されれば医師不足は解消され、小鳥遊も天医会総合病院に残ることができる。桑田の父親からの依頼も受け、鷹央は本格的に事件の解決に取り組むことになった。

パーティー中に兄から負った傷は大したことがなく、病院に行くよう促されたものの結局車内で時間を潰していたと桑田は言うが、傷口の縫合跡や病院関係者らの証言から鷹央は犯行時間帯、桑田は女性と逢っていたのではないかと推理する。そのことをぶつけると離婚協議中の女性と一緒にいたことを認める。離婚が成立するまでは穏便に済ませたいと黙っていたらしい。女性の方は桑田に容疑がかかっていることから積極的に証言することを主張するが、時間が経ってからの証言は口裏合わせの可能性もあり信用されなかった。

警察は桑田の逮捕状を請求するらしくリミットは残り少ない。桑田は犯人ではないと考える刑事の協力も得て、鷹央は事件の検証を続ける。記念パーティーということで専属のカメラマンが雇われて父親に密着していたおかげで、3階に駆け付けた父親が鍵を開け、叔父が兄に緊急措置を行う一部始終が映像として残されていた。その映像からある人物の不自然な動きを見つけた鷹央は、その人物を罠にかけてあぶりだした。その人物は長年兄・大樹と通じていたことを認めたものの、犯人ではなかった。

密室の謎・溺死の謎ともに解けないまま桑田の逮捕が決まり、小鳥遊と鷹央の間に諦めのムードが漂い始めた頃、医師として桑田の怪我の具合から想像した当時の状況を口にした小鳥遊の言葉で、鷹央が自分の勘違いに気が付く。「星だ」と呟いた鷹央は密室で何が起こったのか全部分かったといい、夜中にも関わらず急いで関係者全員を集めるよう指示した。

 

色々な条件が重なり合うと、密室内で溺死という状況が作り出せるのですね。鷹央が解き明かしたものは、その後警察によって依頼された複数の医師の診断からも正しいとされ事件は解決しました。桑田の逮捕も回避され、小鳥遊は引き続き派遣の残り期間も診断統括部に所属となりました。

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結構シリーズが続いているようですが、小鳥遊は派遣でやってきているので、いつかは元の病院に戻る日がくるのですね。この先どうなるのか楽しみにしつつ続きを読みたいと思います。