知念実希人「天久鷹央の推理カルテシリーズ」第1弾『天久鷹央の推理カルテ』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「天久鷹央の推理カルテ」のあらすじと感想をまとめました。

タイトルだけ見ると「鷹央」は男性のように思えますが、天才的な記憶力や分析力を持つもののコミュニケーションに難点を抱える女性でした。

現役のお医者さんが書かれる医療系ミステリー。期待しかありません。

スポンサーリンク

「天久鷹央の推理カルテ」書籍概要

統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”には思いもよらぬ“病”が隠されていた…? 頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。「BOOK」データベースより

  • 天久鷹央の推理カルテ(2014年9月/新潮文庫nex)
created by Rinker
¥649(2020/10/31 06:11:26時点 Amazon調べ-詳細)

諸事情により外科医から内科医へと移り、研修のため天医会総合病院へと派遣された小鳥遊優は、病院理事長の娘にして副院長兼統括診断部の部長・天久鷹央の下に配属され、日々振り回されていた。統括診断部は鷹央のために作られた部署で、病院各科で診断困難とされた患者が回されてくる。また週に一日半、小鳥遊は救急部に出向していた。

救急部には3人の患者がいた。全身の痛みと右手の痺れを訴える男性、腹痛を訴えのけぞって苦しむ男性、意識不明のホームレス。診察を始めようとした小鳥遊のもとに、普段は病院の屋上に建てた「家」に籠もっている鷹央がやってくると、瞬く間に2人の患者の嘘を見抜いて小鳥遊の仕事を終えさせると、これから診断統括部に謎を持った人間がやってくるという。謎に敏感な鷹央は今までいくつかの事件を解決しており、噂を聞きつけた人からの捜査依頼が舞い込んでくることがあるのだ。

家出したペルシャ猫、盗まれた純金の皿といった依頼メールのうち、鷹央が興味を持ったのは河童を見た少年・遠藤幸太だった。深夜、家を抜け出した幸太は友達と2人で公園へと行った。肝試しをするためだった。公園には池があり近くに雷桜と呼ばれる巨木があった。それぞれの懐中電灯の光を頼りに雷桜に着いた2人は、ぬかるんだ地面に大きくて水かきのようなものがついた足跡を見つけた。足跡はまっすぐに池へと向かっている。その時池からボコボコっという音が聞こえ、驚いた幸太は転んだ拍子に懐中電灯を池に落としてしまった。友達が水面を懐中電灯で照らすと、泡が爆ぜていた。次第に数を増やしていく水面の泡の中に、何かが現れた。黒く光沢のある皮膚、巨大な目、異様に突き出た口元、黒い手……驚いた2人は河童に追い付かれないよう一目散に逃げだした。

河童を見つけるという鷹央に付き合って一晩雷桜で河童釣りをしたが、結局河童は現れなかった。

翌日診断統括部の外来にやってきた親子がいた。珍しくやる気を見せた鷹央が診察し、少年は母親の与えるビタミン剤の過剰摂取でビタミンA過剰症になっていたことが分かる。機嫌の良い鷹央に、昨日救急部にきた全身の痛みと腕の痺れを訴えて入院している男性も診てもらうが、鷹央は河童の方が気になるのか診察中もその話を蒸し返し、明日には池も浚って河童を探すなどと言っている。男性は筋肉痛と診断されすぐに退院の手続きが取られた。

その晩も小鳥遊は鷹央に引っ張ってこられ雷桜のそばで河童を待ち伏せることになった。暗闇の中で身を潜めている小鳥遊と鷹央の目の前を、黒い影が現れ池へと消えていく。シルエットはまさに河童と表現して差支えのない姿に見えた。ボコッという音がして水面に泡が生まれ河童が浮上してきた。河童を捕まえろという命を受けて、大学時代に空手をやっていた小鳥遊は、襲い掛かってくる河童に中段正拳突きを叩き込んだ。

 

河童の正体は人間でした。黒いウェットスーツを着て酸素ボンベを背負ったダイバーの姿は、暗闇の中で子どもたちが河童と間違えても仕方のないシルエットをしていました。犯人は池の中に落ちてしまったある物を探すため潜ったところを、たまたま肝試しにやってきた子どもたちに見られてしまいました。鷹央は河童の正体をある医学的見地により見破っており、待ち伏せてこっそり待機させていた刑事に捕まえさせました。

人魂の原料

新人看護師の佐久間千絵は、夜勤で初めて一人で病棟の見回りをしていた。午前3時過ぎ、病室の患者の様子をうかがいながら翌日の検査の予定を呟きつつ、まもなく見回りも終わると思った時だった。遠くに見える病室の入り口辺りに、ゆらゆらと漂う青い炎を見た。「深夜に病棟に漂う人魂」の噂を思い出し千絵は悲鳴を上げた。

患者もおらず暇な救急室で、小鳥遊は研修医の鴻ノ池舞から、病棟に出る人魂の話を聞いた。舞は鷹央のファンで、小鳥遊と鷹央が恋人同士だという根も葉もない噂を病院中に明るく触れ回っている困った研修医だった。

鷹央はすでに人魂の話を知っており、小鳥遊を引き連れ内科病棟へと話を聞きに行く。師長立ち合いのもと千絵は、人魂を見たのは一度だけではないという。おまけに千絵が見回りの時にしか現れないため、誰もまともに取り合ってくれないのだという。ちょうどこの日は千絵が見回りの日、鷹央は肝試しと称して小鳥遊とともに見張りを続けるうち、廊下の中ほどで一瞬だけ青い炎が上がるのを見た。

炎が上がったのは817号室と818号室の中間くらいの場所だった。師長によると青い炎がいたずらだとしたら、犯人の目星はついているという。気胸で817号室に入院中の高校生で、喫煙しているところを千絵に見つかって報告され厳重注意、親にも怒られたのを恨み、復讐しているのだという。だが煙草もライターも取り上げられ、定期的に持ち物検査をされている自分には火を使ったいたずらができるわけがないと言い張る。ライターもマッチも使わず人魂を発生させるトリックはあっさりと鷹央によって見破られた。

だが高校生は人魂のいたずらは認めたが、一番最初の騒動だけは自分ではないという。確かに高校生の作った人魂は一瞬だけ燃えて消える炎だったが、千絵が初めて見た人魂は数十秒ほどゆらゆらと青く燃え続け、現れた場所も違っていた。

その話を聞いた鷹央は、817号室の別の患者、C型肝炎でインターフェロン治療中の40代男性とアルコール性肝炎の50代男性に、ある薬を飲ませるよう師長に耳打ちした。

 

最初の人魂は、犯人が驚かそうと意図して作り出したものではなかったようです。鷹央の指示で薬を服用した後ある行動に出た片方が、自業自得とはいえちょっと辛い目に遭いました。

不可視の胎児

産婦人科から手に負えないと判断されたある女性が統括診断部にやってきた。高校生の一人娘が妊娠したため中絶手術を受けさせたが、二週間ほど前から堕ろしたはずの赤ちゃんがお腹にもどってきたと言っているらしい。娘が入浴中に部屋に忍び込んだところ、陽性反応を示す妊娠検査薬が見つかり、つわりのような症状も出ているという。

産婦人科では確実に中絶が行われたことを示す検査結果もあった。中絶後に恋人と再び子作りをしたのではないかと問う鷹央に対し、母親は手術以降部屋で過ごさせており、一度も学校へも通わせていないと言う。鷹央は、翌日に再び娘を連れて統括診断部を訪れるよう指示した。

母親の過保護と過干渉、監視下に置かれた生活と意に反して中絶手術を受けさせられたことで、娘の美香はかなり気が立ち警戒心も露わな様子だった。お腹に子どもはいるし手術も受けさせないと言い張る美香を、中絶のためではなく胎児のためだと説得し、産婦人科で検査を受けることになった。

エコー検査で胎児の存在は確認されず、美香は想像妊娠だと判断された。だが小鳥遊は検査を受けていた美香の表情が痛みに耐えているようだったことが気になり鷹央に伝えると、一件落着で弛緩していた鷹央の態度は一変した。気のせいかもしれないと添える小鳥遊に対し、元外科医の判断を信じるという。数分前に産婦人科を出たという親子を探すと、駐車場でうずくまり痛みに苦しんでいる美香とそばでオロオロしている母親に向かって鷹央は誤診だった、美香は本当に妊娠していると言った。

 

腹痛が出ている時点で胎児は流産している状態とのことで、子どもは助かりませんでした。今回は謎解きよりも、赤ん坊を助けてほしいという美香に対する鷹央の言葉に打たれました。

オーダーメイドの毒薬

鷹央が誤診で訴えられることになったという。相手は河童事件の頃に診断したビタミンA過剰症の少年・宗一郎の母親・桃花。鷹央のあとを引き継いで小児科に入院し治療を受けているものの、病状は悪化したびたび意識障害や歩行障害を起こしているという。鷹央や小児科医の見立てでは、ビタミンA過剰症が改善したことで元々あった他の疾患が表に出てきたのかもしれないということだった。

宗一郎は喘息とてんかんの既往症があるものの薬のコントロールでここ1年以上発作などは起きていない。またあらゆる可能性を潰していくために検査をしているが、宗一郎に起きている症状は説明できないという。宗一郎の病室へと診察に行った鷹央は、付き添いの桃花と会う。鷹央に対して強く反発する桃花をいなしながら、鷹央は桃花が宗一郎に飲ませているという子ども用の栄養ジュースを見つけた。りんご、ぶどう、オレンジ、ももと様々な味のパックジュースが冷蔵庫に詰まっていた。主治医の許可は貰って飲ませているという桃花だったが、別の病院で看護師をしておりいわゆるモンスターペアレンツの彼女に押し切られて許可を出したらしい。鷹央は健康を害する成分が含まれていないか検査するといいジュースを持って行った。

病院内には鷹央のことをよく思っていない医者も多くいる。天医会病院の院長とその一派がそれで、鷹央が告訴されること自体病院の評判を落とすとして次の役員会で統括診断部の縮小を図るという。今回の訴訟を受けて中立派の票が縮小へと流れる可能性が高まっていた。形は縮小だが実質は潰されるようなもので、鷹央の統括診断部としての権限はなくなり、小鳥遊の居場所は消える。統括診断部存続のため、桃花に告訴をやめさせるため、鷹央は宗一郎の疾患に診断を下すという。

宗一郎が意識障害に陥ったと小児科から連絡が入った。病室へ駆け込んだ鷹央は空になったパックジュースを見つけ苛立ちを隠さない。息子にジュースを飲ませたのは離婚した父親だった。宗一郎が2歳の頃から飲んでいるものなので問題ないと思ったらしい。

だがジュースの検査結果に問題はなかった。ただのジュースだった。小児科で行った検査でも異常は見つからず病名がつかない。打つ手がなくなった鷹央だが役員会はすぐそこまで迫っていた。入院中に宗一郎が漏らしていた言葉を伝え聞いた鷹央は、役員会へ出席する自分に代わり、宗一郎の病室からあるものを全て持ってくるよう小鳥遊に指示した。研修医の舞の協力で病室に入ることに成功した小鳥遊だったが、桃花に見つかってしまう。激怒する桃花に追いかけられながらも、小鳥遊は役員たちのいる会議室へと飛び込んだ。

錚々たる顔ぶれが揃うなか、鷹央はこれから宗一郎の身に起こったことを解き明かすと言った。

 

病名は、宗一郎ではなく母親の桃花の方に付けられました。この病名はミステリー物を読んでいると目にすることがありますが、改めて恐ろしさを感じました。

□□

失礼ながら初めて知る作家さんで、何となく手に取った小説だったのですが期待以上に面白かったです。正直、個性の強い探偵役とそれに振り回される凡人の助手というキャラクターものかなと思っていました。

結構巻数があるので、早く続きを読まなければいけません。