知念実希人『時限病棟』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「時限病棟」のあらすじと感想をまとめました。

リアル脱出ゲームの廃墟になった病院&命がかかったバージョンです。自殺したとされるある医師と深い係りを持つ5人が病院に閉じ込められ、タイムリミットのあるなか医師の死の真相を探っていくというストーリーになっています。

ラストといい仕掛け人の覚悟といい、なかなか壮絶な物語でした。

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「時限病棟」書籍概要

タイムリミットは6時間。脱出できるのか―― 最速一気読み! 究極のどんでん返し!! 目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。 なぜこんな場所にいるのか? 監禁された男女5人が、拉致された理由を探る……。 ピエロからのミッション、手術室の男、ふたつの死の謎、事件に迫る刑事。 タイムリミットは6時間。謎の死の真相を掴み、廃病院から脱出できるのか!?

  • 時限病棟(2016年10月/実業之日本社文庫)
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目が覚めた梓は、いつの間にか自分が病衣に身を包み病院のベッドに寝かされていることに気が付いた。訳の分からないまま梓は、自分と同じように院内に閉じ込められた人たちとともに仕掛け人「クラウン」が導くまま、病院からの脱出を試みることになった。

登場人物

  • 倉田梓:豊明病院の手術部ナース
  • 月村一生:景葉医大付属病院の外科教授
  • 小早川賢一:南陽医大世田谷病院の腹部外科医
  • 桜庭和子:派遣
  • 七海香:青藍病院の麻酔科医
  • 祖父江春雲:ジャーナリスト。芝本の事件を記事に書き世間を煽った。
  • 狭間洋之助:映画監督でリアル脱出ゲームの企画を手掛ける。田所病院で異常死する。
  • 芝本大輝:医師。狭間と組んで田所病院でのリアル脱出ゲームを企画していたが、狭間の死に関して祖父江が告発記事を書いたのを機に世間の注目を浴び、その後自殺した。
  • 鯖戸・南雲:刑事
  • クラウン:5人を病院内に閉じ込め、命を懸けた脱出ゲームを仕掛ける。
  • 田所病院:廃業済み。リアル脱出ゲームの舞台になる予定で芝本が購入した。今回5人が閉じ込められた場所。

第一章 クラウンのゲーム

梓たち5人は2階の透析室に並べられたベッドに寝かされていた。フロアの全ての窓は分厚い鉄板で塞がれ、階段は鉄格子と南京錠によって閉じられて上の階にも下の階にも行くことができない。力づくで逃げ出すことは不可能と知った5人は、ピエロのイラストともに壁に書かれた文字と、壁に埋め込まれたタイマーに注目する。

『襟をただし、真実を見つけるための鍵を探せ クラウン』

タイマーの数字は少しずつ減っている。過去に何度もリアル脱出ゲームに参加してルールを熟知している梓は、制限時間内にクラウンの指示を一つ一つクリアしていけば脱出できる筈と皆を説得し、鍵を探すことになった。残り6時間、指示の文言をヒントに見つけ出した鍵で、5人は1階へ続く鉄格子を開けることに成功した。

1階は外来の待合室だったのか広いフロアだった。その中心にいくつものポリタンクが並べられ有刺鉄線で囲まれていた。看板には、

『爆発物 さわるな危険! クラウン』

と書かれていた。時間制限内に病院から出られなければゲームオーバー、クラウンは全員を爆死させるつもりだと分かった。待合室にはフロア案内図が貼られており、1階に外来待合室、診察室、手術室があり、2階に透析室、医師当直室、洗面所、3階と4階が病室だと知れたものの、病院名は塗り潰されてどこの病院に閉じ込められているのかまでは分からなかった。職員用の通用口にクラウンからの指示と数字盤があった。

『0918の真実を探れ そうすれば扉は開かれる クラウン』

パネルに正しい数字を入力できれば扉が開いて脱出できるらしい。梓によるとこれが今回のゲームの最終目標なので、小さなミッションをクリアしていって脱出のための数字を手に入れなければならないようだった。

『手術室に向かえ 鍵は靴の中に クラウン』

靴の中から手術室へ入る鍵が見つかった。

『腹を割って真実を探せ クラウン』

真っ暗な手術室で無影灯と呼ばれる可動式の電灯だけが灯っていた。手術台には四肢を手術台に拘束されピエロの仮面をかぶった男が横たわっていた。

第二章 0918の真実

男はジャーナリストの祖父江春雲と名乗った。自宅の仕事場でピエロに襲われ、気が付いたら手術台に縛り付けられて拷問を受け、知っていることを洗いざらい話したが信じてもらえず今まで眠らされていたのだという。その言葉をきっかけに、梓、七海、月村、小早川、桜庭の5人もそれぞれが何らかの理由をつけて誰もいない部屋に呼び出され、ピエロに襲われここに連れてこられたのを思い出す。縛られていた男のみぞおちから下腹部まで、縦一直線に縫合されたあとがあるのに5人は気が付いた。

同じ頃、立川署の刑事・鯖戸と南雲は、署長の身内の依頼で行方不明になったジャーナリストの祖父江を探していた。祖父江は1年半ほど前の廃病院・田所病院での有名映画監督死亡事件において、監督と共同でリアル脱出ゲームのアトラクション企画を作っていた医師の芝本を、監督殺しの犯人として告発したのをきっかけに名を売った。深夜、監督の狭間が病院の入り口付近で血を流して倒れているのを芝本が見つけ近くの病院に搬送したが助からなかった。狭間は泥酔して窓から転落したものと思われていたが、祖父江の記事が状況を一変させた。マスコミに追いかけられプライバシーを次々に晒された芝本は、最終的に車ごと海に飛び込んだ。

5人は協力して祖父江に麻酔をかけ、縫合された腹部を開けた。祖父江の腹部からは小さなアンテナ付きのスイッチが見つかった。

『PUSH! クラウン』

スイッチを押した途端アラーム音が鳴り響き、壁がせりあがると新しく通路が出現した。通路の先の部屋には一面に雑誌の記事らしきものが貼られていた。そして赤い文字で書かれたメッセージ、

『田所病院からの脱出へようこそ‼ クラウン』

と、やけにリアルなピエロの人形が天井からぶら下がっていた。

田所病院という言葉で5人全員が芝本医師と何らかの関係を持っていることが判明した。月本は芝本の元上司、小早川は芝本の高校・大学時代の同級生、七海は芝本が狭間の緊急手術をした時の麻酔科医、桜庭は芝本の元妻、梓はリアル脱出ゲームを通じて芝本と交流があった。壁一面に張り付けられている記事は、全て祖父江が書いた芝本にまつわる記事だった。そして0918は狭間が転落死した日だった。つまりクラウンは、芝本がやったとされる狭間の死の真相を明らかにしろと言っている。

人形のピエロの手に張り付けられていた鍵で、3階と4階に行く南京錠を開けることができた。手術室にこれみよがしに置かれている金庫の鍵は、3階か4階にあるらしい。祖父江の様子が心配だという七海と月村を残し、3人で手分けして探すことになった。金庫にはICレコーダーが入っており、中身はクラウンに拷問されたという祖父江の告白だった。それによると当時の芝本に関する記事は、自分が調べたのではなく定期的に何者かによって送られてきた情報を描いたものだと言う。

同じく金庫にあった封筒から、事件後、月本が芝本を庇うどころか率先して病院をやめさせようとしていた会議の議事録が出てきた。また次の封筒から改ざんした形跡が残る七海が書いた狭間の手術の際の麻酔チャート、次の封筒から小早川と桜庭の不倫中の写真、最後の封筒からは芝本と梓の不倫を匂わせる手紙と「前橋梓」名義のカルテのコピーが出てきた。梓は事件のあった9/18、元旦那のDVにより病院で治療を受けていた。

どうやらクラウンは祖父江と5人に恨みを抱いているらしい。また今までの流れから5人の中に狭間殺しの犯人がいると考え、犯人もろとも残りの人間たちも爆死させるつもりかもしれない。一応犯人追及を試みたものの全員が自己申告のアリバイのため埒が明かなかったが、小早川が祖父江の情報提供者だったことが判明した。更に話し合いを重ねた末、梓は狭間が転落したという時間帯に芝本と一緒におり証拠の写真もあることを告白した。DV夫との離婚を有利に進めるため芝本と不倫しているかのような写真が表に出るのはまずく、芝本が追い詰められているのを知りつつ口を噤んでいた。

芝本が殺人犯でないことははっきりした。その後桜庭がうっかり口を滑らせた言葉が引き金になり、彼女が狭間を窓から突き落としたことが判明した。桜庭は、芝本が桜庭と小早川の不倫の証拠を田所病院に隠していると思い込んで深夜に病院に忍び込み、酔っ払って病院にやってきた狭間と鉢合わせしたらしい。9/18の死の真相が明らかになったので脱出できるかと思いきや、ピエロ人形から鍵が飛び出してきた。

『がっかりした? うなだれちゃった? なら、そのまま院長室を探してみて クラウン』

ゲームは終わっていなかった。院長室は5階にある。罪を告白して放心状態の桜庭に麻酔で眠り続ける祖父江の様子見を任せ、4人で院長室へと向かった。その後クラウンの指示で、2階から4階のどこかのベッドにある何かを探すため手分けをすることになる。梓は七海と一緒に4階の捜索に当たった。ベッドのシーツを剥がしたり中を探ったりしている最中、梓は何かが破裂するような音を聞いた気がした。気のせいかと思ったが七海にも聞こえたという。耳を澄ませると階下で声が聞こえる。

1階まで駆けおりた梓は、手術室の奥で泣き叫ぶ小早川に抱きかかえられた桜庭の姿を見た。彼女の着ているワンピースからは大量の血が流れていた。

祖父江の行方不明が本人の意思によるものではないと考えた鯖戸と南雲は、芝本の父親に会いに行った。芝本の両親は離婚しており、芝本は母と暮らし、父親と妹はカナダで暮らしていたが定年を機に父だけが日本に戻ってきていた。芝本の父親は研究者、母と妹が医師をやっていた。父親は祖父江のことは知らないというものの、鯖戸は祖父江の拉致に絡んでいると目を付けた。

第三章 紅蓮病棟

桜庭は銃で撃たれていた。だがボディチェックをしたものの4人とも拳銃を所持しておらず、また銃声音から手術室にやってくるまでの間に犯行が可能だった人物もいない。クラウンが銃を持って病院内に身を潜めているのではないか。梓と七海がカードを見つけた。

『ミッションクリアおめでとう! けど、ごめんね。まだゲームは終わりじゃないんだ。僕を泣かせて、隠された本当の指令を見つけてね クラウン』

本当の指示も見つけた。

『0419の真実を探れ 誰が芝本大輝を殺した? そうすれば扉は開かれる 嘘つきピエロに閻魔様の罰を クラウン』

1年前の4/19は芝本が車ごと海に飛び込んで亡くなった日であり、5人が脱出ゲームに巻き込まれた今日でもあった。設定されたリミットは芝本の命日だった。

「嘘つきピエロに閻魔様の罰を」というヒントから残った4人は、芝本が亡くなった日に残した留守番電話の音声を聞く。その中から、芝本が何か重要な書類を田所病院に隠したらしいことが分かる。それを探さなければならないようだが、ガソリンが爆発するまで1時間を切っていた。

梓がモーター音に気が付いた。隠し扉の向こうにエレベーターがあり、VIP用の病室へと繋がっていた。クラウンはこれを使って桜庭を殺害したのか。桜庭が殺害された時の状況、聞こえてきた音……小早川に2階にある病衣を5階の院長室に運ぶよう頼んだ梓は、その結果をもって自分たちを拉致してゲームを始め、桜庭を殺したクラウンの正体が分かった。

鯖戸と南雲は芝本の関係者を当たったものの、元上司の月本、同期の小早川、元妻の桜庭と全員が行方不明になっていた。何かが起きている。鯖戸は麻酔科医の七海が務めている病院を訪ねると、受付で七海を呼び出してもらった。

エピローグ

梓によってクラウンの正体が暴かれた。だが脱出に必要な数字が分からないままクラウンは姿を消す。爆発まで15分、梓たちは芝本が隠したという書類を見つけ出す。それはある医療関係者の不正の証拠だった。芝本は狭間殺しで世間から叩かれたのを苦にして自殺したのではなく、不正を行った人物を告発しようとして殺されたというのが真実だった。クラウンが姿を現した。

鯖戸たちがようやく田所病院に辿り着いた時、全身が衝撃に襲われた。目の前の病院が黒煙をあげ炎に包まれているのを、為すすべもなく見ていることしかできなかった。

□□

田所病院から脱出したのは2人です。狭間殺しの犯人、芝本殺しの犯人、復讐に燃えるクラウンと少ない人数の中に色々入り乱れつつも、スピーディーな展開で読みごたえがありました。

一見無関係と思われた人たちが、ある人物を中心に繋がっているのが分かり最終的に事件の真相に辿り着くという展開に「キサラギ」を思い出しました。

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