知念実希人『仮面病棟』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「仮面病棟」のあらすじと感想をまとめました。

人質をとって病院に立てこもったピエロに当直で巻き込まれたバイトの医師・速水が、ピエロの目的を探っていくうちに病院の秘密に気づいていくというストーリーです。

拳銃を持って病院に押し入った割には人質を自由に動き回らせたり人が死ぬのを嫌がったりと、悪役のピエロにしては迫力が今一つで緊迫感が足りない気がした。

スポンサーリンク

「仮面病棟」書籍概要

療養型病院に強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。事件に巻き込まれた外科医・速水秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る―。閉ざされた病院でくり広げられる究極の心理戦。そして迎える衝撃の結末とは。現役医師が描く、一気読み必至の“本格ミステリー×医療サスペンス”。著者初の文庫書き下ろし! 「BOOK」データベースより

  • 仮面病棟(2014年12月/実業之日本社文庫)

第1章 ピエロの夜

先輩医師の小堺から頼まれて当直を代わった外科医の速水秀悟は、療養型病院にやってきた。田所病院はほとんど待機しているだけの当直なのにバイト代もいい。夜勤の看護師は、東野良子と佐々木香だった。3・4階の入院患者たちも安定しており、2階の当直室でテレビを眺めたりウトウトしていたところ、どこかで破裂音が響いた。まもなく内線が鳴り、東野が1階に降りてきてくれという。1階の外来待合室には、ラバー製のピエロの面を被った男と、その足元にうずくまった女性がいた。ピエロは速水に彼女の手当てをしろと言う。女性はピエロの手にある拳銃で腹部を撃たれていた。

女性は川崎愛美と名乗った。コンビニでいきなり襲われ逃げようとしたところを撃たれ、そのまま車に押し込まれ田所病院に連れ込まれた。愛美が死ぬと殺人犯になるので治療して助けろとピエロは脅す。愛美の容態は傷が痛みはするものの動けない程ではなかった。ピエロの持っているスマートフォンからは、覆面の男がコンビニから金を奪い女性を人質に取って逃走中というニュースが流れていた。朝になるまで病院に居座るつもりだが、速水たちが通報などの変な動きをしない限りは危害を加える気はないとピエロは言った。

入院患者と速水、東野、佐々木のほかはピエロと愛美しかいないはずの病院に、なぜか院長の田所が残っていた。入院患者の世話が必要だという田所の交渉により、人質となった5人は2階より上で一晩越すことになった。ピエロにバレないよう通報すべきだという速水の意見を、患者の危険に晒す事を理由に田所は頑なに聞き入れず、院長という立場と看護師を味方に引き入れ多数決で通報はしないことに決まった。速水のスマホを取り上げ、固定電話の本体と受話器を繋ぐコードを切るという念の入れように、速水は違和感を覚える。5人は自然と、田所・東野・佐々木の3人と、速水・愛美の2人に分かれるようになる。

上の階で人のうめき声が聞こえた。速水が駆け付けると初老の男がベッドから落ちている。男の腹部には手術痕があり縫合糸が故意に切られたため血が流れだしていた。東野によると腸閉塞の患者だが、なぜ傷口が開いているのかは分からないという。速水から話を聞いた東野や田所の様子もおかしい。ナースステーションでカルテを探した速水は「新宿11」と書かれたものを見つけた。

第2章 最初の犠牲者

男(新宿11)は新宿駅周辺に住んでいたホームレスで、脳卒中の後遺症で自分の名前を言うこともできないらしい。田所病院に転院後、おとといになって急な腹痛を訴え緊急手術をしていた。だが療養型の田所病院で手術をすること自体が異常だと速水は言った。また症状が出てから執刀開始までの時間が早すぎるのも気になる。何より手術に関わったのが、今晩の人質である、田所・東野・佐々木が気になった。カルテを見ていた愛美が挟まっていたメモに気づいた。新宿11、川崎13なども含め7人に入院患者の名前が書かれており、調べろとある。

カルテによると7人全員が田所病院で全身麻酔を使う大きな手術を受けていた。全てが緊急手術で、執刀医が田所、看護師が東野・佐々木と共通している。何かが隠されていると速水は感じた。別行動をとっていた田所が興奮して速水を探しに来た。5階の院長室に入っていないかという。7人のカルテを探している途中、5階から降りてくるピエロを見かけていたが速水はとぼけた。口論していると騒ぎをききつけたピエロが姿を見せ、金を探すために自分が院長室を荒らしたと言う。1千万円あればすぐにでも病院を出て行ってもいいというピエロに対し、院長は個人的な金だといい部屋の金庫にあった3千万円を渡す。だがピエロは3千万円を前にしても喜ぶ気配もなく、金以外にも何か隠しているものがあるはずだと怒りだす。撃ったら殺人犯になるという愛美の声で冷静になったのか、ピエロは1階に戻っていった。

田所・東野・佐々木が顔を寄せ合って何やら話している。速水と愛美もピエロの行動を話し合っていた。ピエロは強盗目的ではなく、最初から何かを探し田所病院に立てこもるつもりだったに違いない。そして田所は異様に通報を避けたがっている。田所病院には何か通報されたくない秘密があるのだろう。ピエロが現れた当初から精神的に危うい言動のあった佐々木がふらりとやってくる。愛美に何か囁きかけると、一人でふらふらと病室の階へと上がっていく。「もう一人いる」「院長に気をつけて」と言われたと愛美は首を捻っていた。

ピエロがやってきて愛美を連れ去り、止めようとした速水は殴られ気を失った。ピエロにも、ピエロの暴挙を止めようとしなかった田所達にも腹を立てた速水は一芝居打ってピエロを脅し愛美を取り戻す。だがずっと姿を消していた佐々木を探した速水たちは、胸にナイフを刺され倒れている彼女を見つけた。

第3章 開く扉

愛美によると連れ去れている間、ピエロはずっと近くにいたという。その後は速水と交渉していた。少なくともピエロは佐々木を殺していない。速水と愛美は、佐々木が言い残した「もう一人」を探すことにした。

ピエロの目をかいくぐって1階におりた2人は、1階の手術室に隠しエレベーターがあるのを見つけた。エレベーターは手術室と5階のある部屋を繋いでいた。ホテルの一室のような部屋で、中心におかれたベッドには中学生に満たないくらいの少年が眠っている。カルテや点滴、手術痕などを見た速水は、少年が腎不全を患っていたことを知る。田所病院の秘密……少年はこの病院で移植手術を受けた。おそらく新宿11の腎臓を。田所病院は身寄りのない患者を積極的に引き受け、裏で7人の患者などから違法な移植手術を行っていたのだ。3千万円はその報酬だろう。

速水に秘密がバレた田所は、自分は確かに犯罪者だが移植を受けた人間からは感謝されている、人助けだと開き直る。ほとんどが昏睡状態で寝たきりの患者から臓器を取りだしているので問題ないというが、中には手術後に意識を取り戻した人間もいたらしい。おまけに田所病院から給料をもらっている速水もある意味共犯だとまで言い切った。口止めを持ち掛ける田所に対し、速水は7千万で手を打つと答えた。愛美と折半すると話したが、当の愛美からは軽蔑され目も合わせて貰えない状態に陥った。

ピエロが隠しエレベーターを見つけ5階にあがってきた。激昂している東野から佐々木を殺したと責められて動揺し、自分ではないと言い返した時、サイレンの音が聞こえてきた。田所病院はパトカーに取り囲まれた。

第4章 仮面の剝落

通報した犯人探しが始まった頃、田所の携帯に警察から連絡が入る。ピエロから速水が交渉役に指名され、警視庁の角倉に現在の状況などを簡潔に説明説明していく。マスコミも現れ病院の外でのリポートの様子がスマートフォンの映像を通じて速水達の目にも映る。ピエロと4人の人質が一か所にとどまり重苦しい雰囲気の中、速水は考え続けた。そしてある仮説を立てる。

再び掛かってきた角倉の電話に、速水はピエロの指示を無視して食事の用意を依頼する。怒り出すピエロとの口論の末、速水の主張が通った。ピエロは病院の裏口まで食事を取りに行くよう田所と東野に命じる。田所はその隙をついて、過去に移植手術を受けた人間らのリストを処分しようと試みた。有名人らが多く名を連ねるリストは、何があっても隠し通さねばならないものだからだ。だが口論に乗じてピエロと交渉して手を組んでいた速水により、その目論見も失敗に終わった。ピエロの目的は金ではなく、田所が隠し持っていた移植者リストを手に入れ公表することだという速水の仮説は当たっていた。ピエロの恋人は田所病院の入院患者で、違法な手術の被害者だった。

ピエロの正体を知った田所は豹変した。隠し持っていたメスでピエロを刺すと、奪った拳銃で秘密を知った全員を殺すという。すでに正気ではなかった。速水の必死の抵抗で愛美を逃がし警察が突入してくるが、大騒ぎのなか何発かの発砲音を聞きながら速水の意識は途絶えていった。

救急車の中で目を覚ました速水は、手当てを受けながら救急隊員から自分以外の全員が死んだことを知らされた。65人の入院患者は全員無事とのことだが、ピエロ、田所、東野は射殺されていた。田所と東野を撃ったピエロが最後に自殺を図ったものと思われる。だが川崎愛美だけは、警察がどこをどう探してもいないという。事件から数日経っても彼女の存在は記録にも残っておらず、速水の勘違い(記憶障害)となっている。

記憶をたどっていった速水は、65人という数字に疑問を持つ。64のベッドと特別室に眠る少年を合わせて65人と警察は言ったのだが、人質になっていた夜、病室のベッドが一つ空いていたのをはっきりと覚えている。愛美は外に逃げたのではなく、病室に逃げたのではないかと考えた時、速水には事件の真相が見えた。

□□

後日、速水が当直を代わった先輩医師・小堺が何者かに殺害されました。小堺も田所病院で違法な手術に関わっており、復讐の対象の一人だったようです。”川崎愛美”を名乗る女性が今回の事件の裏におりピエロすら操っていました。

何も考えずに先に「時限病棟」を呼んだのですが、「仮面病棟」とリンクしていたのですね。「仮面病棟」事件が起きてその後同じ場所で「時限病棟」事件が起きるという、事件自体に関連はありませんが舞台設定が同じでした。

http://ak0507.com/chinenmikito-jigenbyoutou-1667