知念実希人「神酒クリニックで乾杯を」シリーズ第2弾『神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶」のあらすじと感想をまとめました。

シリーズ2冊目です。前回は主人公の勝己の過去と深く関わりのある事件だったので読みごたえもあったのですが、今回は普通の事件(?)を扱っているため少々パワー不足感があった気がします。

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「神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶」書籍概要

顧客はVIP、けれど窮地にある人には手を差し伸べるのが信条の会員制医院「神酒クリニック」。ある日顧客から、意識のない女性の診察依頼が。全身ずぶ濡れの彼女はなんと記憶喪失。けれど突然「爆弾が爆発する」と呟き…。天才的な洞察力で人の心を見抜く精神科医の天久翼は、彼女・美鈴の記憶を取り戻すことに。彼女と、相次ぐビル爆破との関係は。そして翼の遅すぎる初恋は…。痛快すぎる医師達のノンストップエンタメ! 「BOOK」データベースより

  • 神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶(2016年4月/角川文庫)

登場人物

神酒クリニック

  • 九十九勝己:若手外科医。趣味は格闘技
  • 神酒章一郎:院長。凄腕の外科医
  • 天久翼:童顔で少年のような容姿ながら精神科医。黒宮の主治医でもある
  • 夕月ゆかり:産婦人科、小児科医で声帯模写が得意。
  • 黒宮智人:内科、麻酔科医
  • 一ノ瀬真美:ナース。運転が荒い。神酒の妹

その他

津田美鈴:何者かに追いかけられて記憶を失い梅沢邸に逃げ込んだ。クリニックの患者。

梅沢:化粧品会社の社長

第一章

神酒クリニックでは初孫に会いにハワイへ行ったクライアントの依頼で逃げてしまった猫の捕獲と不在中の世話をすることになり、勝己が猫に引っかかれたりしていた。昼間はクリニックのある巽ビル内の喫茶店、夜は真美の部屋で面倒を見ることが決まり和やかな雰囲気に包まれていた頃、別のクライアント・梅沢から緊急の呼び出しがあった。メンバー5人が梅沢宅へ駆けつけると、ソファに全身がびしょぬれで頭部から頬にかけてべったりと血をつけた女性が仰向けに横たわっていた。急いで処置を始める勝己たちに、梅沢はリビングで寛いでいた所に急に裏庭からこの女性が入ってきて倒れすぐに意識を失ったと話す。梅沢は妻と子どもの旅行中、愛人を自宅に連れ込んでいたため通報によって騒ぎになることを恐れたのと、女性が意識を失う前に「警察はいや」と呟いたため神酒クリニックに連絡をした。意識を取り戻した女性は自分の名前すら分からないと言う。

赤羽で見つかったので「赤羽」と呼ばれることになった女性は、しばらくクリニックで翼の患者として過ごすと決まった。赤羽は薄暗い部屋の中で三人の男たちに監視されながら4つの爆弾を作ったことを思い出した後、間に合わなかったと口にし意識を失った。ちょうどその時、ほとんどのテレビ局ではビルの最上階が突然爆発したというニュースを流していた。

神酒の意向により赤羽の正体や爆弾との関係を警察には秘密で探ることになった。記憶を無くした人間は翼でも読めず、精神的なショックを受けているらしい赤羽に催眠療法は危険だと言う。本人の希望で催眠療法にチャレンジしたものの家族というキーワードでパニックに陥りそこで中断した。

第二章

ビル爆破について犯行声明文がマスコミ各社に送られ一斉に報道された。神酒によると犯人はまだ爆破を繰り返すつもりらしい。赤羽が催眠療法時に見た光景を黒宮がスケッチしそれを手掛かりにある赤羽の自宅マンションを見つけ出したが、近づいてみると警察が規制線を張り家宅捜索が行われているのが分かった。おまけに刑事なのか2人組の男に尾けられ追いかけられる。真美のドライビングテクニックで何とか巻いたものの、赤羽が爆破犯だった場合神酒クリニックは共犯になってしまう。危惧するメンバーに対し、神酒は犯人だという確証がない限りは患者である赤羽を匿い、警察には自分たちが得た情報をこっそり裏から流すと改めて方針を伝える。

黒宮が尾行してきた車がレンタカーだったことを思い出し、追いかけてきたのは刑事ではなく赤羽を監禁していた側の人間ではないかと仮説を立てた。監禁され爆弾を作らされていた赤羽は隙をみて逃げ出したものの、橋の上で追いつかれ頭部を殴られ川に転落した。犯人達は赤羽は死んだと考えたが、彼女は下流で岸に這い上がると殴られた衝撃を記憶を失ったまま町をさ迷い梅沢邸に逃げ込んだというものだ。そして赤羽が男達に追いかけられ橋の上で追いつかれたこと、自分の名前が津田美鈴だということを思い出した。

黒宮の調べで、美鈴が大手メーカーの研究職で優秀な技術者、時限爆弾を作るのは苦もないことが分かる。巽ビルの地下のバーでメンバー達が情報交換をしているところにクリニックと懇意にしている警視庁の桜井刑事が現れた。爆発事件の情報と交換に聞き出したのは、メンバーを追いかけてきたレンタカーを所有している店の情報だった。店に問い合わせ車が返却される日を知った面々は、返却される可能性のある店舗3つにそれぞれ分担して見張ることになった。

ゆかりと組んで見張ることになった勝己は、車の中でゆかりから一目ぼれした真美に積極的に行けとけしかけられ、近々開催される「大印象派展」に印象派の絵が大好きな真美をデートに誘うよう言われていると、例の男たちが車の返却に現れた。彼らを尾行した勝己だったが気づかれていたらしく逆に公園に誘い込まれ襲われる。ゆかりの機転で危機的状況を脱した勝己は、対峙した一人が相当高レベルのボクサーではないかと考えた。相手の特徴で絞っていった結果、男の正体は元日本ランキング1位でケガで引退したボクサー・タイガー雅次と判明した。その時、第二の爆破事件が起こった。

第三章

タイガー雅次の話を聞くため彼の所属していたジムへと行った神酒と勝己は、本名が成田雅次であること、引退後に就職した警備会社が大手の「日本セキュリティ保障」に買収されリストラされたため、ヤクザまがいの用心棒をし傷害で逮捕された過去があることを知る。「日本セキュリティ保障」の社長は神酒クリニックのクライアントだった。巽ビルの喫茶店へと戻った2人は、先々月に美鈴の夫と娘が荒川の河川敷に車ごと転落、炎上して死亡していたことを皆から知らされる。美鈴は家族を失ったショックで記憶を封印していると考えられるため、彼女が自ら記憶を取り戻すまで家族の事故については内緒にすることになった。

今一番必要な情報が三番目の爆破場所だと認識を持ったメンバー達は、黒宮の検索・分析能力で次の爆破場所の目星を付け美鈴とともに向かった。ゆかりと勝己の連携プレーで警備員から鍵をすり取ったメンバー達はビルの最上階へと向かう。捜索の結果見つけたまだ作動していないタイマー付の黒い箱を見た美鈴が、爆弾に間違いないと言う。今までの爆破パターンから考えて通報しても間に合わないと知った神酒は、自分が時限爆弾を解除すると言い出す。結局解除できなかったものの美鈴が時限式の構造を思い出したおかげで爆破を防ぐことができた。警備員の足音に気づき慌てて逃げた勝己達は、気分が悪くなった美鈴のために公園のトイレに寄ることになった。勝己、真美、美鈴の3人で公園に向かい、真美と2人きりになったタイミングで勝己は真美を「大印象派展」へのデートに誘うことに成功する。

だが突然やってきた車がトイレから出てきた美鈴を攫った。雅次とその仲間と思しき男達だった。真美が勝手に拝借したバイクで後を追った2人は何とか美鈴を取り戻す。三つ目の爆弾はどさくさに紛れて黒宮が持ち帰っていた。美鈴によると残る爆弾はあと1つ。拉致された車の中で30枚くらいの古そうな絵画を見たという美鈴の言葉をきっかけに、それを見た真美も今の時代まで捨てられずに残っていたのが奇蹟なくらいの駄作だったと切り捨てる。またタイミング良く警備員の足音が聞こえたのは、定期巡回ではなく爆弾の確認のためだったのではないかと話し合う。つまり警備員が犯人の一人だという説だ。黒宮の調べで爆弾が仕掛けられた3つのビルの警備を請け負っているのは、全て「日本セキュリティー保障」だと分かった。

雅次達がクビになった腹いせに爆破しているにしては、犯行声明に警備会社への非難が掛かれていないのは不自然だと神酒は言うものの、「日本セキュリティ保障」が一連の事件に何らかの関係があると考え、美鈴にあるものを作って欲しいと依頼した。

第四章

最初の爆破事件の際、重傷を負い入院中の警備員を訪ねたメンバー達は、一緒に組んでいた相方の警備員が「日本セキュリティー保障」に吸収合併された「ユニバーサル警備」の社員だったことを聞き出す。「ユニバーサル警備」は鴨志田と猿渡によって設立された会社で、成田雅次も社員の一人だった。鴨志田、猿渡ともにアメリカの民間軍事会社に勤務経験があり中東地域への派遣が何度もあるという。現在の鴨志田は「日本セキュリティー保障」の役員に収まっているものの冷遇されているらしい。

4つ目の爆破は明日の夜起きるという神酒により通常業務をこなしていた勝己は、真美から美鈴が攫われたという連絡を受けた。真美の車を借りて買い出しに出かけた際のことらしく、路地に停められた車からは警察には知らせるなという文言の入った脅迫状が残されていたという。美鈴を助けるには犯人達を拘束し監禁場所を聞き出すしかないとして、爆破を止め彼女を救うためクリニックのメンバー達も決着をつける覚悟を決めた。

「日本セキュリティー保障」は「大印象派展」に貸し出された美術品の保管を請け負っていた。それらの作品は最新のセキュリティーを誇る地下金庫室に収められる。金庫室の扉を開けられるのは社長の東海のほかは副社長と会長のみで、常務の鴨志田に権限はなかった。ゆくゆくは「日本セキュリティー保障」でのし上がり牛耳る予定だった鴨志田は、東海によってその目論見は潰された。よって唯一信頼できる相棒の猿渡と組み仲間を集め、退職金代わりにこれらの美術品を全部奪うことにした。鴨志田や猿渡、キュレーターら美術館関係者が見守るなか作品が地下金庫に収められたのが確認された。その直後、地下金庫のある施設に爆弾をしかけたという脅迫が届いた。差出人は過去3件の爆破事件を起こした「真実の牙」を名乗っている。美術品は別の場所に避難することに決まり、再び金庫の扉が開く。そこが鴨志田の狙い目だった。

鴨志田たちの計画を無事潰したメンバーだったが、美鈴の拉致のことは知らないという。勝己は対峙した成田から、当時美鈴が夫と娘の復讐をするために爆弾を作ろうとしていたことを知り仲間に引き入れたと知らされる。当初事故だと思われていた夫と娘の死は、不倫中のカップルの飲酒運転による追突だったことが、逃げた罪悪感に耐えきれなくなった女性が美鈴に告白したことで発覚した。復讐の記憶を取り戻した美鈴は拉致されたのではなく、自ら拉致を偽装して姿を消したのだ。成田から復讐の相手を聞いた勝己や翼は、美鈴が向かったであろう復讐相手の家へと急いだ。

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復讐を遂げるつもりで爆弾をセットした美鈴は勝己たちの説得に応じようとしませんでしたが、ある事実をゆかりから聞かされ思いとどまりました。作った爆弾が事件を起こしたため全くの無罪放免とはいかないようですが、神酒や桜井によって美鈴の罪状も情状酌量がつくのではないかということです。

また飼い主がハワイに行っている間だけ面倒をみていた猫ですが、そのままハワイに住み続けることになるようで、真美が新しい飼い主になりました。猫がメンバーに加わったくだりで続編の雰囲気も感じる終わり方でした。