知念実希人「死神」シリーズ第1弾『優しい死神の飼い方』あらすじとネタバレ感想

知念実希人さんの「優しい死神の飼い方」のあらすじと感想をまとめました。

亡くなった人の魂を我が主様の所へ導く「道案内」が、ひょんなことから犬の姿になり人間界のホスピスで地縛霊予備軍たちの未練を取り除くうち、大きな事件の解決に自ら頭を突っ込んでいく、という話です。

登場人物の半数くらいがまもなく命が尽きようとしていることもあり、どこかせつない雰囲気が流れる一冊でした。

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「優しい死神の飼い方」書籍概要

犬の姿を借り、地上のホスピスに左遷…もとい派遣された死神のレオ。戦時中の悲恋。洋館で起きた殺人事件。色彩を失った画家。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。しかし、彼の行動は、現在のホスピスに思わぬ危機を引き起こしていた―。天然キャラの死神の奮闘と人間との交流に、心温まるハートフルミステリー。「BOOK」データベースより

  • 優しい死神の飼い方(2013年11月/光文社)
  • 優しい死神の飼い方(2016年5月/光文社文庫)
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第1章 死神、初仕事にとりかかる

人間たちから死神と呼ばれている高貴な霊的存在である”私”は地縛霊化が多い日本を担当していた。亡くなる時に未練を残すと地縛霊化し、魂を”我が主様”の所へ導くことができない=仕事の成績が悪いという評価になる。地縛霊化が多いのは人間の生活に問題があり、死後ではなく生前から関わっていかないと成績を上げるのは難しいと上司に進言したところ、その役目に”私”が抜擢された。要は左遷である。冬だというのに夏毛のゴールデンレトリーバーの体を与えられ放り出されるというおまけつきだった。下界に降りて数時間で凍え死にかけた”私”を助けたのが、丘の上病院というホスピスで看護師をしている朝比奈菜穂だった。菜穂にレオと名付けられた”私”は、そこで地縛霊予備軍たちの未練を断ち切る仕事にとりかかった。

菜穂の勤める病院は最大で10人しか入院できない小さな緩和医療病院で、入院中の患者は半数にも満たなかった。死神の本質で地縛霊予備軍の腐臭を4人と嗅ぎ取ったレオは、早速最初の患者の病室に忍び込む。生気がなく枯れ木のような印象を受ける南竜夫の未練を探るべく、レオは死神の能力の一つ、催眠をかけて南に話をさせた。

戦時中、肉親は死に叔父の世話になりながら工場で働いていた南には、お金持ちの屋敷に住む一つ年上の幼馴染の恋人・葉子がいた。葉子は東京の大学に進学していたが疎開で地元に戻ってきていた。身分の差に引け目を感じている南は葉子に対し腰が引けていたが、彼女の優しい雰囲気に負けとうとう自分に赤紙が届いたことを告白する。もうすぐ自分は死ぬという南に対し、葉子はまもなく日本は戦争に負けるととんでもないことを言い出す。事業家の父親は日本が負けるのを見越し、海外に逃げるため資産を宝石などの持ち運べるものへと替えているという。また葉子は父親の決めた男と結婚しなければいけないらしい。ショックを受ける南に葉子は駆け落ちを持ち掛けた。約束の夜、待ち合わせ場所にやってきた葉子だったが、持ってきた巾着袋の中身が飴玉だったのを見て「すぐに戻るから待っていて」と言い残し姿を消した。その後葉子を追って姿を現した婚約者に、葉子は南を捨て家に戻ったと言われる。その家の方向で突如空襲が起きた。丘の上に建つ立派なお屋敷は格好の標的なのだ。屋敷へと向かった南は、空爆を受けて瀕死状態の葉子から黒焦げになった飴玉を渡されごめんねと謝られる。戦後警察官になった南は独身を通した。年金生活を始めたのち末期の肝臓癌が見つかり丘の上に建つホスピスを進められる。葉子が住んでいた屋敷が終の棲家となり、彼女を守れなかった後悔とともに死んでいくのが運命だと南は思った。

日中、日向ぼっこをしながら思考を展開していたレオは、南の未練を解き放つ糸口を見つけ夜中に南の”夢枕”に立った。夢の中では犬の姿でも言葉が話せる。戸惑う南を夢だと無理やり納得させると、葉子は南を捨てて家を戻ったのではなく、ある物を取りに帰るために戻ったのだと証明する。それは駆け落ち後に必要になるもの、お金かそれに代わる何かだった。駆け落ちを察した婚約者に巾着の中身を飴玉に替えられたと知った葉子は、父親の財産のダイヤを取りに戻ったのだろうとレオは考えた。また聡明な葉子が突然駆け落ちを口にしたのは、婚約者から逃げるためというより赤紙が届いた南を死なせないためだったと分かり、ようやく葉子に愛されていたのを信じることができた南から腐臭が消えた。

第2章 死神、殺人事件を解明する

レオは菜穂に催眠をかけて丘の上の洋館がホスピスになった経緯を聞き出す。戦争で壊れた屋敷はしばらく無人だったが8年前に夫婦と息子の3人家族が綺麗に修復して引っ越してきた。だがその家族は日が沈んでからしか外に出ず、出る時も大きなサングラスにマスク、帽子と顔を完全に隠していた。また屋敷の窓という窓を内側から完全に塞いだため麓の住民達は「吸血鬼家族」と陰で呼んでいた。そして7年前、屋敷で殺人事件が起こった。夫婦は銃で撃たれ屋敷は荒らされており、街で宝石商をしていた金村という男が指名手配されたが未だに捕まっていない。ただ子どもの遺体は見つからず、屋敷の通いのお手伝いさんによると今まで一度も屋敷内で子どもを見かけたことはないらしい。不可解な事件で「呪いの館」というイメージが付き買い手がいなかったところ、自然に囲まれて環境が良く相場よりもかなり安かったことから、家具ごと権利を買い取ってホスピスに改装した。家具などはほとんど当時のままだという。

屋敷の片隅の日陰に3つの地縛霊化した魂がいるのにレオは気が付いていた。ここで殺された一家のものだが、7年という歳月が経っているせいか魂は劣化し言葉を交わす事はできなかった。

2人目の地縛霊予備軍は、孫という態度の悪い男だった。孫はレオの催眠によって7年前に人を殺したと告白を始める。孫の正体は殺人犯として指名手配されている金村で、7年前は店の資金繰りに困り明らかに堅気ではない鈴木という男からの借金をそろそろ自分の命で返済しなければならないところまで追い詰められていた。そんな時「吸血鬼家族」と噂の父親と息子が店を訪ねてくると、子どもが屋敷で見つけたという宝石の鑑定を依頼する。ただのガラスだと答えたが本当は数千万はするダイヤだった。これが十数個あるという。どうにかしてダイヤを手に入れたいと考えた金村は、鈴木から拳銃を調達し夜中に屋敷に忍び込む。そこで金村は胸元を血で染めた長身の男が手にダイヤを持って部屋から出てくるのと出くわした。とっさに男に向かって発砲するとダイヤを掴み逃げ出した。翌朝、香港への密航船を待つ間に、屋敷の夫婦が射殺され8歳の息子が行方不明という新聞記事を読む。金村は香港でダイヤを売り払い孫という身分を手に入れ成り上がったが、肺癌を患い死ぬなら故郷でと街に戻ってきた。勧められたホスピスがかつて自分が事件を起こした洋館だったのは、殺された夫婦の怨念だろうと金村は話した。

レオは金村の夢枕に立つと、金村の発砲した銃弾は6発だったが実際は7発の弾痕が残っていることなどから、銃を調達してきた鈴木が金村の態度から屋敷に金目のものがあり押し入ろうとしていることを察知し先回りしたことを証明した。夫婦を射殺したの鈴木たちで、金村が撃ったのは鈴木の仲間だった。夫婦を殺していなかったが自分のせいで殺されることになったことを知った金村は、憑き物が落ちたように彼らに対して償いをしたいと言った。目覚めた金村はすっかり人が変わり、弁護士を通じて香港で作った資産を世の役に立つ場所へと寄付する手続きなどを行い始めた。

第3章 死神、芸術を語る

レジャー施設を作るためホスピスを買い取りたいという人間がいた。菜穂によると今の患者が全員いなくなったあとホスピスは廃院になるらしく、何かと理由をつけて病院の中を見たがるその男を菜穂は毛嫌っていた。院長によって敷地内に入ることは禁じられていて、男は門の外からいつも院長を電話で呼び出していた。

3人目は内海という30前後の若い男だった。絵を描くことが自分の生きる意味だと考え、生活に必要な金さえあればあとは一日中油絵を描いて過ごしたかった。自分の作る色に自信を持っており、真夜中になっても展望台で瞼に焼き付く光景を絵にしていると「吸血鬼家族」と噂の父親と息子がやってきた。息子は内海の描く絵をきれいと褒めとても気に入ったようだ。大学卒業後に賞を獲って以降絵が売れ始めていたが、親子が気に入って買ってくれる事を優先し、親子が買わなかった絵を画廊に持ち込んでいた。ある日親子が殺人事件に巻き込まれたことを知った内海は警察の制止を振り切り屋敷へと無理やり押し入る。だがあれだけ好きだと言いたくさん買ってくれた内海の絵は屋敷のどこにもなく、本当は気に入られていなかったと自信をなくした内海はそれっきり絵が描けなくなった。まもなく病気を患った内海は何の縁かかつて親子が暮らしていた屋敷を終の棲家とすることになった。

レオは内海の夢の中で、親子が本当に内海の描いた絵を大切にしていたことを証明する。目を覚ました内海は自分の記憶を頼りに隠し扉の下にある地下室を発見した。そこは病気で日光を浴びることができない少年が日中過ごしていた場所で、部屋のあちこちに内海の絵が飾られていた。また7年間見つからなかった少年の白骨が発見された。殺人犯が屋敷を襲った時、夫婦はとっさに息子を地下に逃がしたがその際の怪我がもとで息子も亡くなっていた。

自信を取り戻した内海は、再び油絵を描き始めた。

第4章 死神、愛を語る

レオが未練を断ち切った南・金村・内海の3人は目に見えて体調が改善し、夢の中の出来事だと言い聞かせたにも関わらずなぜか妙に親しみを込めた目でレオを見るようになった。そしてまた例のホスピスを買い取りたいという男が強引に病院内に入り込むと、レオしかいないのをいいことに1階の食堂や団らん室へと入り込んだ。あまりに強引に交渉をする男に対し、院長は買い取りの話を白紙に戻すと言った。男は捨て台詞を吐いて帰っていった。

レオは4人目の地縛霊予備軍を探すがなかなか見つからない。2階の病室フロアを抜け院長室などがある3階へと範囲を広げた結果、4人目が見つかった。レオを助けてくれ住む場所やごはんをくれた菜穂だった。住み込みの看護師だと思っていた菜穂は院長の娘だった。うっかり菜穂に正体をバラシてしまったレオは、菜穂の未練を取り除くべく通いの医師・名城に告白するよう説得する。もうすぐ死ぬ自分に告白されても迷惑だろうと躊躇う菜穂だったが、最終的に告白を決意し、2人は付き合うようになった。

第5章 死神、街におりる

4人全員の地縛霊化を防いだレオだったが、同業の「道案内」から2週間ほど後にホスピスにいる7,8人が死にほとんどが地縛霊化すると言われる。事故や自然災害で地縛霊化することはほぼない。つまり2週間後、ホスピスで殺人事件が起きるということだ。我が主様の意に反した行動をし自分の存在が消されるかもしれない危険を知りつつも、誰も見殺しにできないと判断したレオは菜穂にすべてを話し協力を求める。何が起きるのか調べ未然に防ごうというのだ。

菜穂には事件を起こしそうな人物に心当たりがあった。父がホスピスの売却を断った男・工藤だ。貰った名刺をもとに工藤の会社に出向いたレオと菜穂だったが、呼び出した工藤はホスピスに来た男とは全くの別人だった。工藤と名乗った男はいったい何の目的でホスピスを手に入れようとしたのか。その後図書館で調べた結果、7年前、非合法の高利貸しをしていた3人組の暴力団が人を死なせるという事件が起きていたのを知る。そのうちの1人が工藤と名乗っていた男だった。新聞記事には近藤とあった。

7年前、金村が丘の上の洋館に強盗に入ろうとしたのを察知した近藤達3人は、先回りして夫妻を射殺しダイヤを奪った。その直後やってきた金村が仲間の1人を撃ちダイヤを持ち去った。3人は残りのダイヤを手に入れられないまま屋敷から逃げたのち事件を起こして逮捕された。出所した近藤達は、今はホスピスに姿を変えた洋館の中にまだダイヤがあると考え手に入れようとしたが、院長に買い取りを白紙に戻された為強引な手段に出ようとしている。とレオは読んだ。

第6章 死神、絶体絶命

近藤より先にダイヤを見つけ警察に届けてしまえば襲撃される心配がなくなると考えたレオは、菜穂の協力で南、金村、内海の3人を団らん室に集めて正体をバラすと事情を説明し一緒にダイヤを探すことになった。だが手分けをして心当たりを探したものの結局ダイヤは見つからなかった。

その日、大木が倒れて道がふさがり、名城や婦長をはじめ院長、菜穂、入院患者らがホスピスで孤立する。おまけになぜか携帯電話が圏外になり車のタイヤが全てパンクしている。良くないことが起きていると感じたレオは、近藤の姿を見つけた。レオ達が未来を変えるために動いたせいで、2週間後という予定が変わり近藤達の襲撃が早まってしまったのだ。近藤達はホスピス内にいる人間を全て殺しダイヤを奪おうとしている。

レオの案で全員の協力のもと近藤の仲間2人を何とか抑え込んだものの、近藤に追い詰められピンチに陥った。

第7章 死神のメリークリスマス

全員が手足を縛られ身動きが取れなくなったなか、レオと菜穂は連携を取って何とか近藤を地下に閉じ込めることに成功しかけたが、最後の最後でレオも近藤と一緒に地下室に残されることになった。全員を殺すつもりだった近藤がレオを見逃すはずがない。菜穂たちが無事なら良いと犬の人生を終えることを覚悟したが、菜穂たちはレオを助けるため地下室の扉を開けてしまう。今度こそ絶体絶命に陥った時、レオは高貴な存在として野蛮なことはしないと自らを戒めていた「人に噛みつく」という攻撃を近藤にしかけた。最終的に近藤は死に、魂は我が主様の所へいくどころか穢れきっているため道案内も手が出せず、突然現れた触手によって存在ごと消えていった。結局ダイヤはどこにもなかったが、事件は完結した。

ホスピスでクリスマスパーティーが開かれた。南と金村はほとんど食事ができないほどになっていたが全員で最後になるだろうクリスマスを楽しむ。倉庫にしまわれていたクリスマスツリーを眺めていたレオは、ツリーの飾りの中にダイヤを見つけた。7年前、ダイヤを見つけた少年は本物とは知らないまま飾りつけに使っていたのだ。このダイヤを使ってホスピスを継続してほしいと頼む菜穂や南たちに、患者の希望は叶えるという方針の院長は了承することになった。

エピローグ

年が明けてすぐ南と金村が亡くなり、その2か月後内海が亡くなった。そして桜が満開になる頃、菜穂も息を引き取った。全員眠るように死んでいった。

レオは今も変わらず丘の上の病院で人気者のペットとして過ごし、やってくる患者の未練を断ち切るために働いている。

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人間の事など我が主様のもとへと連れて行くだけの物だと思っていたレオが、犬として人と関わっていくうち人間の温かさを感じたり助けたいと強く思うようになったりと成長していく話でした。

今回は犬で、第2弾は猫なので楽しみです。