畠中恵「つくもがみ」シリーズ第1弾『つくもがみ貸します』あらすじと感想まとめ

畠中恵さんの「つくもがみ貸します」のあらすじと感想をまとめました。

時代劇ファンタジーで少しミステリーとは外れるかもしれませんが、大好きなシリーズの一つです。

「つくもがみ貸します」書籍概要

  • つくもがみ貸します(2007年9月/角川書店)
  • つくもがみ貸します(2010年6月/角川文庫)
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利休鼠

お紅と清次が切り盛りする古道具屋兼損料屋(レンタルショップ)の「出雲屋」には、100年が経ち付喪神になった品が多く集まっていた。出雲屋の付喪神たちは貸し出された先で見聞きしたことを仲間の付喪神に話して聞かせるのを楽しみにしており、人間を警戒しているものの、お紅と清次が話を聞くのは構わないらしく、よく部屋の奥でお喋りをしていた。

ある日清次はなじみの店で、武家の勝三郎を紹介される。次男の勝三郎には婿養子の話が持ち上がっており、家柄も石高も上の婚家から跡継ぎの証として鼠の値付けをもらっていた。だがその後、賊に襲われ、部屋に泥棒に入られた挙句、根付の鼠に足が生えて逃げてしまうという怪異に見舞われていた。勝三郎は出雲屋に大切な根付を見つけてほしいと頼んだ。

勝三郎の口利きで実家と婚家に無料で付喪神たちを貸し出し話を集めることにした清次は、勝三郎の婚約者にはもともと許嫁がおり嫁入りが決まっていたこと、だが婚家の長男の急死により婿をとらなければならなくなり破談になっていることを知る。また勝三郎に襲われた賊や泥棒の正体を知っているような言動があったことから、清次はある推測を立てた。

 

政略結婚が当たり前で階級社会の武家って大変ですね、という話でした。見つかった鼠の根付(利休鼠と名乗る)の証言で、自分で逃げ出したのではなく泥棒に持ち去られたことを知った清次は、嘘を吐いた勝三郎が縁談に乗り気でないことを見抜きました。

裏葉柳

死んだ時の無念から香炉に取り憑いてしまった裏葉柳は、新しく開店する料理屋「鶴屋」に出るという女の幽霊が、自分が生前想っていた女性ではないかと考える。

鶴屋は幽霊の噂を知らず、元の持ち主・大久間屋から騙されて格安で店を手に入れたのではないかと、開店準備を手伝いながら清次は心配する。幽霊が出る店など客が寄り付かず、早々に潰れるに決まっているからだ。

付喪神たちから集めた話によると、幽霊の正体は大久間屋の元女中らしい。大久間屋の子を身籠ったものの見捨てられ、子を産んだ後そのまま亡くなったらしい。話を聞いた付喪神たちは、幽霊の味方をして大久間屋を懲らしめると息巻いた。

開店当日、鶴屋は元店の主だった大久間屋を招いた。大久間屋は幽霊を警戒して護符を用意していたため付喪神たちも手を出せない。やきもきする清次と付喪神たちは、大久間屋の袖口にしまわれた護符を、鶴屋がそっと抜き出すのを目撃してしまった。

 

鶴屋は幽霊の話を知ったうえで大久間屋から店を購入していました。大福の売り歩きから大店の主にまで出世した大久間屋はやり手ではありましたが、その分、他人がどうなろうと知ったことではないという性格の持ち主でした。そして何か不都合が生じると自分だけがいつもひどい目に遭うと考える人でもありました。

話し合いでは解決できないと悟った鶴屋たちは、付喪神たちや幽霊が大久間屋を懲らしめるのを黙認しました。

秘色

お紅はずっと「蘇芳」という銘の香炉の持ち主を探していた。ある日鶴屋から蘇芳を名乗る人物が客としてやってきた話を聞いた清次は、消息を確かめるため鶴屋へと出向く。だが蘇芳は、清次が探していた蘇芳ではなかった。だが彼は一緒にいた客・浅川屋に蘇芳にまつわる話をしていた。

蘇芳の持ち主の(仮称)太郎は陽気な男で、古道具屋の娘のもとへと毎日のように通っていた。彼は商家の跡取り息子だったため、両親は家柄に見合う嫁を欲しがり、持参金がたっぷりつく大きな商家の娘との見合いを進めていた。娘の方も乗り気で太郎の気を引くため「蘇芳」と名付けられた高価な香炉をプレゼントした。太郎は受け取りを拒否したが娘も引かず、香炉は太郎が部屋にあずかる形となっていた。

そんな時火事が起き、古道具屋の主人は火傷を負い避難先の寺で亡くなり娘だけが残された。古道具屋もすべて焼け、娘一人では店の再建は困難だと思われた。

そんな時、高額の香炉「蘇芳」がなくなった。だが太郎の部屋に保管してある香炉を持って逃げた人物はおらず、太郎が古道具屋の娘のために売ったのではないかという噂が流れ、そのうち太郎自身も姿を消した。今も太郎の行方は分かっていない。

太郎という人物は、おそらくお紅が探している「飯田屋佐太郎」ではないかと清次は考え、浅川屋に会いに行く。そして権平という協力者とともに関係する店に話を聞いて回り、付喪神らの噂話を聞いた清次は、香炉「蘇芳」のありかに見当をつけた。

 

「蘇芳」はある人物によって太郎の部屋から持ちだされ、隠されていました。蘇芳を持ち逃げした手段、動機ともなかなか切ない話ではありました。

似せ紫

清次は古道具屋兼損料屋「出雲屋」の貰われ子だった。お紅は古道具屋「小玉屋」の看板娘で、親戚筋の清次はしょっちゅう小玉屋を訪れ、1つ違いのお紅のこと「姉さん」と呼んで慕っていた。小玉屋にはお紅に会うため佐太郎が毎日のように顔を出し、清次は内心苦い思いをしていた。

ある日佐太郎の母が小玉屋にやってくると、お紅が飯田屋の嫁に相応しいか判断すると言って櫛を手渡す。この櫛を使って店を興せるくらいのお金を用意できれば嫁として認めるというのだ。結婚はともかく売られた喧嘩は買うタイプのお紅は、清次の知恵を借りながら5両の櫛を「蘇芳」と同じ作者が作った香炉「三曜」を買える85両にまでお金を増やしていた。

そんな時火事が起きて小玉屋は焼きだされ、父がやけどで体調を悪化させ急死した。「蘇芳」紛失のごたごたで見舞いが遅くなったという佐太郎は、お紅と清次に、自分は江戸を出ると告げる。長崎か大坂へ行き自分の店を持つのが夢だと語った佐太郎は、できればお紅に待っていてほしいと言う。飯田屋へ帰った方がいいというお紅は、行方知れずの「蘇芳」の代わりにと「三曜」を渡すが、自分の決意は固いと「三曜」を割り佐太郎は江戸を離れた。

 

お紅と清次、蘇芳(佐太郎)にまつわる過去の話を、付喪神たちが話していました。

蘇芳

4年前に江戸から姿を消した飯田屋佐太郎が、叔父を伴い飯田屋に姿を現した。江戸を出た佐太郎は、大阪で大きな店を営んでいる定右衛門の所へ身を寄せたのち米相場で儲け、「すおう屋」という小間物屋の主人になっていた。

数日後、佐太郎の母が出雲屋へとやってきた。佐太郎が姿を消したが知らないかというものだった。江戸で戻ってきた佐太郎は、探し物があるといい定右衛門と二人で毎日で歩いていたが、昨日から戻ってこないのだという。

真っ先にお紅に会いにくるだろう佐太郎が一度も出雲屋へ訪れなかったことを不思議がる清次は、佐太郎と定右衛門の身の上に不測の事態が起きたのではないかと考える。

出雲屋では、付喪神たちは勝手にお喋りをするものの人とは口をきこうとしない。お紅と清次もそれを黙認していたが、佐太郎たちの無事を一刻でも早く確かめたいお紅は、なかば脅す形で付喪神たちの協力を得る。

何かあった場合は自力で飛んで逃げることのできる付喪神を携帯して2人を探し回っていた清次は、ある質屋の蔵に入り込み、中に閉じ込められている2人を見つけた。だが何者かに殴られ、気を失ってしまう。

 

佐太郎が探していたのは、「蘇芳」「三曜」と同時に作られた三つ目の香炉「七曜」でした。それを持ってお紅にプロポーズに行こうと考えていたようですが、お紅の気持ちは佐太郎にはありませんでした。

 

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姉さんと呼ぶお紅がずっと「蘇芳」を探していることを知っていた為、清次は自分の気持ちを押し隠していましたが、最後に報われたようです。

続編では夫婦となって出雲屋を続ける二人や、養子の十夜と付喪神のやりとりなど、少しずつ関係性が変化していく「出雲屋」の話を楽しむことができます。