畠中恵「つくもがみ」シリーズ第3弾『つくもがみ笑います』のあらすじとネタバレ感想

「つくもがみ笑います」のあらすじと感想をまとめました。こちらはつくもがみシリーズ第3弾で、これだけでも読めないこともないのですが、1冊目から順番に読み始めた方が登場人物の関係性も分かるのでおすすめです。江戸で起こるちょっとした騒動やミステリー現象を、つくもがみたちが解決する時代劇ファンタジーです。

「つくもがみ笑います」書籍概要

つくもがみシリーズ第3弾。損料屋の出雲屋に住まう付喪神たちが巻きこまれる騒動を書く短編集。「つくもがみ戦います二百年前悪の親玉見つかったつくもがみ笑いますの5編が収録されている。

  • つくもがみ笑います(2019年1月/角川書店)
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つくもがみ戦います

江戸の深川で損料屋(日用品などのレンタル)を営む「出雲屋」には、100年を超えて付喪神になった品物が多くいる。ある日いつも通り馴染みの料理屋に貸し出されたはずの付喪神、月夜見(掛け軸)、お姫(姫様人形)、うさぎ(櫛)、猫神(根付)、野鉄(根付)だったが、気が付けば知らない場所に閉じ込められていた。そこにやって来たのは、阿真刀(小刀)、文字茶(茶碗)、青馬(馬の置物)の3人の付喪神たち。3人は世直しをするために付喪神たちを集めているといい野鉄らにも協力を求める。世直しに興味がない出雲屋の付喪神たちにとっては迷惑なことで、逃げ出すために3人の付喪神たちと戦うことを決めた。

一方出雲屋では貸し出した品が届いていないことを知り、出雲屋の跡取り息子で付喪神たちの管理をしている十夜は、五位(キセル)たちの協力のもと父・清次とともに消えた野鉄らを探し始める。

 

野鉄たちは両国の賭場小屋に閉じ込められていました。そこで清次と十夜は無事に野鉄らと合流し、小屋の管理者である春夜と出会いました。

二百年前

出雲屋で徳川家からの拝領品の屏風「大江戸屏風」を一時的に預かることになった。持ってきたのは武家の篠崎で、出雲屋と付喪神の関係を人づてに聞いたのだという。この世に登場してから200年は経っているという大江戸屏風は付喪神化しているらしく、ある武家の根付である利休鼠が篠崎家の猫に追いかけられ屏風の中に入ってしまっていた。野鉄ら4人の付喪神たちは、付喪神仲間の利休鼠を助けるため屏風へと飛びこんだ。200年前の江戸の町を歩き回っているうち、野鉄らは自分たちをさらった3人の付喪神たち、阿真刀、文字茶、青馬と出会う。屏風からの脱出方法のヒントを得た付喪神たちは、出口を探して江戸の町を移動する。

一方出雲屋には春夜が訪れ、大江戸屏風の中で昔の江戸の面白い話を掴むために付喪神たちを集めていたことを話した。そのために野鉄らはさらわれたのだった。屏風が出雲屋にあると知り阿真刀たちを引き取りにやってきた春夜だったが、誰も屏風の中から付喪神を出す方法を知らなかった。

野鉄らは天守閣に出口があるに違いないと目をつけ、合流した利休鼠とともに城を目指した。

 

屏風の中では200年前の江戸があり、きちんと人々が生活を営んでいるという不思議な場所でした。十夜や春夜の機転で、阿真刀たちは以前壊されて消えてしまった仲間の付喪神・加羅刀と素々女を、野鉄たちは小判を屏風から持ち帰ってきました。

悪の親玉

賭場の元締めをしており自分は悪の親玉だと名乗る春夜の養父・阿久徳屋が出雲屋を訪ねてきた。春夜は捨て子で、他にも捨て子を多く拾った阿久徳屋は身なりの良い捨て子に一夜、二夜…と名付けて捨て直していたらしい。十夜はそのうちの一人ではないかといい、幽霊退治のため出雲屋の付喪神たちを借りたいと頼んできた。清次が断り話は終わったはずだったが、阿久徳屋が消えたと春夜が出雲屋にやってきた。阿真刀たちのとりなしで話を聞いた出雲屋の付喪神たちは今回に限り協力すると申し出た。阿久徳屋がいるだろうと思われるのは武家屋敷で、町人の十夜や春夜には手出しができない場所だった。

付喪神たちが忍び込んだ山白家では幽霊騒ぎが起きていた。屋根裏に潜んでいた付喪神たちは、助けに来たはずの阿久徳屋とそこでばったり出くわした。

 

付喪神たちが大好きなのに、乱暴に扱うので付喪神からは嫌われている阿久徳屋が可愛いです。どうやら春夜にも弱いようでしょっちゅう小言を言われているようです。幽霊騒動が気になり屋敷に残っていた人間味あふれる悪の親玉でした。

見つかった

貸し出していた品物、五位や猫神を引き取って帰る最中、十夜は賊に襲われたが、付喪神たちの機転で何とかその場を切り抜けた。数日後、阿久徳屋と春夜が何者かに襲われたと腕や頭にけがを負った状態でやってきた。十夜たちが襲われたことで付喪神が奮起する。騒動の元は十夜が捨て子だという話が、大江戸屏風から持ち出した小判が出雲屋にあるという話とともに武家連中に広まったことだった。十夜を引き取れば小判が手に入ると考えた一派と、付喪神の存在を否定する一派の仕業だった。

小判の誤解を解いて事件は解決したと思った矢先、頭上から落とされた鉢植えで阿久徳屋が重傷を負った。

その後、捨て子を拾っては引き取り先を探したり再び捨て直していた阿久徳屋自身が捨て子だったことが分かった。赤ん坊の頃、刀を2つ添えられて捨てられていた。阿真刀と加羅刀だった。2つの刀にはそれぞれ家紋が彫られており、組み合わせれば身元が分かるようになっている。昔阿久徳屋を捨てた武家の不都合のため、阿久徳屋は鉢植えで頭を狙われることになったのだった。

 

自身が捨て子だったので、捨て子だったり小さな子どもが放置されているのを見過ごせなかった阿久徳屋さん、荒っぽい家業の割に結構いい人です。

つくもがみ笑います

復活した阿久徳屋と十夜たちは、武家に関することだからと頼った山白家で「百年君」と呼ばれる付喪神の話を聞き、行方を探すことになった。100年も前、武家の世が長く続くことを願って「百年君」は作られたというが、一体どんな名品だったのか記録にも記憶にも一切残っていない。

阿久徳屋の人脈と付喪神たちの協力を得て、十夜らはようやく百年君がいる場所を突き止めた。

 

百年君は同じ付喪神の野鉄たちが驚いて興奮するくらい、それはそれは見事な付喪神になっていました。百年君の居場所が分かったところで武家に引き継いで十夜たちの仕事は終わりです。阿久徳屋の捨て子騒動もけりが付き、今回で一連の騒動はすべて決着となりました。

 

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物語中盤から登場した阿久徳屋が、まるで主役かというくらいの活躍ぶりでした。いいキャラです。いつか阿久徳屋さんを主役にしたスピンオフものが読んでみたいです。