東川篤哉「平塚おんな探偵の事件簿」シリーズ第3弾『ライオンは仔猫に夢中』あらすじとネタバレ感想

シリーズ第3弾「ライオンは仔猫に夢中」のあらすじと感想をまとめました。このシリーズではよく動物が登場するのですが、この度探偵事務所に白猫が増えました。事件に巻き込まれて大変な目に遭ったのですが、回復後は可愛がられているようで安心しました。

動物好きにもおすすめの1冊です。

「ライオンは仔猫に夢中」書籍概要

「平塚おんな探偵の事件簿シリーズ」第3弾。「失われた靴を求めて」「密室から逃げてきた男」「おしゃべり鸚鵡を追いかけて」「あの夏の面影」の4作品を収録した短編集。

  • ライオンは仔猫に夢中 〜平塚おんな探偵の事件簿3〜(2017年9月/祥伝社)

失われた靴を求めて

とある会社社長・小松から一人暮らしをしていた娘・静香の自殺について調査を依頼された。警察は自殺と断定したがどうにも信じられないという。小松からいまいち信用を得られなかったエルザと美伽は、小松の運転手・守屋を監視役に付けられ、彼の愛車で事件の調査に乗り出すのだった。彼は異様な綺麗好き、愛車好きだった。静香は生前、付き合っている相手との関係に悩んでいたらしい。彼女の死は職場の不倫相手・沢井との仲が破綻したことによる自殺とみなされていたが、小松自身は静香を振った覚えはないと言う。目撃者らの話から、静香が父親から送られたブランド物の赤いハイヒールが無くなっていること、静香が自殺した夜遅く何者かが何かを手に彼女の部屋から出ていったこと、赤いハイヒールが自殺翌日質屋で売られていたこと、ハイヒールを売った人物は道端に落ちていたから拾っただけと主張していることなどが分かった。

 

ばらばらの事象が、エルザによって一つの結論へと組み立てられていきます。自殺は覆され犯人は無事に捕らえられました。登場時は高圧的で自分中心的な父親という印象だったのですが、後半になるにつれただの娘思いのいい人だったことが分かりました。その分、父親にとっては少々苦い結末となったようです。

密室から逃げてきた男

行きつけのスナック「紅」からただ事でない電話が掛かってきた。親戚の大学生が殺人事件の容疑者になり逃げて来たのだと言う。紅のツケをチャラにするため、エルザは彼・松崎の無実を証明することになった。現場は大学のサークル仲間で高嶺の花の山野夏希の部屋で被害者は夏希本人。ワンルームマンションでドアは鍵とチェーンが掛かっており、一つだけあるベランダに面した窓にはしっかりとクレセント錠が掛かった状態、つまり密室の中で彼女は頭を打って死んでいた。昨晩サークル仲間と飲んで記憶をなくした松崎には事情が分からないが、目が覚めると死んだ彼女、彼女の飼っていた白猫と二人きり(二人と一匹)という状態だった。翌朝8時にドライブに迎えに来たサークル仲間3人に部屋にいるところを見られた松崎は、玄関を巨体で強行突破して仲間の一人に重傷を負わせたまま紅に逃げ込んだのだった。松崎は酔っぱらった勢いで夏希を襲い抵抗されているうちに彼女を突き飛ばして死に至らしめた、と思われているらしい。エルザと美伽は関係者らの話を聞くうち、現場から白猫が消えていることに注目した。

 

猫を使った密室トリックでした。猫好きなら絶対にしないトリックを使ったことで犯行がバレてしまいましたが、エルザたちが犯人を指摘するより先に松崎の口を封じようと動き出した犯人は、100キロ近くある松崎の巨体の抵抗に遭いほぼ自滅したのでした。飼い主を失い野良になるはずだった白猫は、エルザに貰われていきました。

おしゃべり鸚鵡を追いかけて

階段から落ちて亡くなった一人暮らしの叔父が可愛がっていた鸚鵡のおーちゃんが逃げたので捕まえてほしいという依頼を受けたエルザと美伽は、虫取り網を手に奮闘するがなかなか捕まらない。カミツキガミのミツキちゃん事件(亀とライオン)で知り合ったペットショップの店長に用意してもらった罠でおーちゃんを捕える作戦も加えた。家の中でカゴで飼われていたはずのおーちゃんが何故玄関のドアを開けたと同時に外に逃げてしまったのか、違和感を覚えつつも漸く大木の上にとまるおーちゃんを見つけたエルザは、網を片手に木登りを始めた。もうすぐおーちゃんに届くという瞬間、何者かが放ったボウガンによってエルザが射られてしまった。叔父の死は事故ではなく誰かに突き落とされたものかもしれない。動けないエルザに代わって使命感に燃える美伽は一人でおーちゃんを捕まえたが、肝心のおーちゃんは犯人の名前を喋ってくれなかった。

 

 

ペット好きならではの行動が犯人を焦らせ、エルザに怪我を負わせることになりました。探偵のエルザをライオン、助手の美伽を猛獣使いに例えるシーンが多々出てきますが、どう見てもエルザの方が思慮深いことが改めて分かりました。

鸚鵡におーちゃんと名付けた今回の依頼人によって、エルザが引き取った白猫はミーコと雑に名前が決まってしまいました。それにしても鸚鵡って結構長寿なんですね。

あの夏の面影

平塚で有名な銀行頭取の娘・大原詩織が恋人の浮気調査の依頼にやってきた。相手は英会話スクールの講師・寺山、彼女から見せてもらったスマホの写真はどれもイケメンが写っていた。バレンタインデーをきっかけに付き合い始めたが、最近彼の様子がおかしいと言う。単純な浮気調査だったため怪我のリハビリにと受けた2人だったが、調べていくうちに寺山は、昨年の夏に英会話スクールの講師仲間と生徒数人で海辺で一泊した際に出会ったぽっちゃり女子を気にして調べていたことが分かった。一旦事件にけりがついた時、探偵事務所に立ち寄った刑事の宮前から去年の夏に起きた放火事件の話を聞いたエルザは顔色を変えた。燃えたのは無人の空きビルだったが、ビルのオーナーは寺山が勤めている英会話教室の経営者だったのだ。

 

単純な浮気調査が保険金詐欺事件へと発展してしまいました。何気ないことも見逃さないエルザは、さすが探偵事務所の社長です。刑事として一人犯人に立ち向かった宮前でしたが、あっさりと倒されてしまいます。いつも思いますが、宮前刑事の見せ場ってないですね。詩織さんには強く生きていってほしいと思います。

 

□□

東川篤哉さんのその他の本の感想はこちら

コミカルなのに本格派、ユーモアミステリー作家・東川篤哉のおすすめ人気シリーズと順番