東川篤哉「平塚おんな探偵の事件簿」シリーズ第2弾『ライオンの歌が聞こえる』あらすじとネタバレ感想

平塚おんな探偵の事件簿シリーズ「ライオンの歌が聞こえる」のあらすじと感想をまとめました。ライオンと称される言動の探偵・エルザと猛獣使いを自称する美伽のコンビが、今回も依頼人から持ち込まれる不思議な事件の解決に挑んでいます。

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「ライオンの歌が聞こえる」書籍概要

「平塚おんな探偵の事件簿シリーズ」第2弾。「亀とライオン」「轢き逃げは珈琲の香り」「 首吊り死体と南京錠の謎」「消えたフィアットを捜して」の4作品を収録した短編集。

  • ライオンの歌が聞こえる 〜平塚おんな探偵の事件簿2〜(2015年6月/祥伝社)
  • ライオンの歌が聞こえる 〜平塚おんな探偵の事件簿2〜(2018年7月/祥伝社文庫)

亀とライオン

家族よりもカメを愛する肥満体型のカメ馬鹿のカメ愛好家・武田から、庭の池から逃げ出したというカミツキガメの「ミツキちゃん」の捜索を頼まれたエルザと美伽は、10日間の区切りで依頼を引き受けた。だがどんなに探しても凶暴なミツキちゃんは見つからない。残すところ2日になって武田から連絡が入った。知り合いから相模川でカミツキガメを見たと教えてもらったので今から行くという内容だった。夜が更けた頃に2人も相模川へ到着すると、ペンライトの先にうつ伏せに倒れている男がいた。武田だった。川原の石で殴られて死んだと思われる彼は何故か裸足だった。

武田の妻に頼み込み依頼通り残りの日数もカメ探しが継続できることになったエルザと美伽は、凶暴なカメ捜索に行った武田が裸足なのはありえないと犯人探しに乗り出した。爬虫類と両生類の専門ショップで同じくカメ愛好家・浦澤が急に逃げ出したのを捕まえたエルザは、彼が武田にカミツキガメの目撃情報を教えた事、彼の履いていた靴が紐靴だったことに注目し、知り合いの刑事・宮前に武田の靴が紐靴だったかどうかを確認した。武田はマジックテープ式の靴を履いていた。

 

なぜ犯人は武田から靴と靴下を取り去って裸足にしたのか、という謎です。これが解ければ即犯人に行きつきます。犯人の動機には同情するものがありますが、自首していれば良かったですね。

轢き逃げは珈琲の香り

競輪場で知り合ったおばあさん・岩本和江と意気投合したエルザと美伽はスナック「紅」で一緒にご飯とカラオケを楽しんだ後、彼女を家のそばまで送った。別れた直後、悲鳴が聞こえて駆けつけると倒れた和江のそばに1台の車が停まっていた。運転手と思われる男は手に紙コップを持っており、そのまま車で逃走した。運よく和江は軽傷だったが、倒れた彼女の体にはなぜか温かいコーヒーが掛けられていた。そして翌朝、ひき逃げ犯と思われる男が花水川の河口で水死体となって見つかった。ひき逃げしたことを悲観しての自殺という見方で話は進んでいた。

病院に和江の見舞いにいった2人は、そこでひき逃げ犯・下村の会社の同僚だという南郷と花田、上司の梨岡が会社を代表してお見舞いと謝罪に訪れているのを見た。3人は事件当夜下村と一緒に飲んでいたが、彼が飲酒運転をしていたのは知らなかったと話す。

 

なぜ和江の体にコーヒーが掛けられていたのかというのが最大の謎です。立ち寄ったコンビニでコーヒーを購入したのをきっかけに、エルザが事件を推理し組み立てていきます。その推理の過程が見事で、まさしく推理小説といった展開でした。事件解決後も3人は競輪場で顔を合わせているようで、安心しました。今回の本の中で一番のおすすめ短編です。

首吊り死体と南京錠の謎

大学生・松原美咲の依頼で南京錠の鍵を外してほしいと言われた2人は、美咲の案内で湘南平のテレビ塔へと向かった。そこにはカップルが永遠の愛を誓って南京錠をぶら下げるという展望台の金網があった。2か月前に恋人を山での事故で亡くした美咲は、恋人との思い出の南京錠の開錠をエルザに頼んだのだった。数日後、美咲が登山部の部室で首を吊って亡くなっているのが、登山部のメンバーたちによって発見された。窓には鍵が掛かっており、出入り口であるドアはエルザが開錠した南京錠で施錠された状態だった。

美咲のバッグに探偵事務所の領収書が入っていたことから捜査にやってきた知り合いの刑事・宮前に事件について聞いたエルザと美伽は、美咲の死に不審を抱き、大学祭を利用して美咲が自殺したという登山部の部室へと調査に向かった。

 

南京錠を使った密室トリックとあと一つ、別のトリックが使われていました。依頼にやってきた松原美咲の意外な裏の顔が見えた回でした。労力の割に報いが少ない事件だったと思います。

消えたフィアットを捜して

エルザと美伽の後輩・飯田幸平に相談があると言われた2人は、飯田が体験した不思議な話を聞かされる。念願のランドクルーザーを購入した飯田は、仕事を終えると毎日その走りを楽しむのが日課になっていた。その日は砂浜を走った。砂浜を堪能し傾斜のついた砂山を上り切った瞬間、目の前に黒いSUV車がいた。とっさにお互いの車がハンドルを切り激突は回避された……と思った瞬間、茶色いフィアットが姿を現した。乗り上げるような感覚のあと飯田の車は防砂林にぶつかり、エアバッグの衝撃で飯田は小一時間ほど気を失った。だが目が覚めると周囲には何もなかったのだ。飯田とぶつかったフィアットは忽然と姿を消していた。

飯田を無理やり依頼人にした2人は事故を起こしたという現場へ行くが特に謎を解明する手掛かりは見つからなかった。そしてある屋敷の前に停められた車の中に宮前刑事を見つけた。

宮前は、資産家・大平香苗の事件を追っていた。香苗は先日上吉沢の溜池に車ごと沈んで亡くなっていた。いったんは自殺とされたものの、宮前は夫の真治に疑いの目を向けていた。夫は事件当日、飲み仲間らとスナックで楽しんでいたという。午後9時頃に真治を迎えにきた友人たちは、その時香苗の愛車、茶色のフィアットが駐車場に停まっていたのを目にしていた。

宮前からその話を聞いたエルザと美伽は、茶色のフィアットという共通点から2つの事件の関連を探っていく。

 

読み終わって「トリックに無理がありすぎる」と正直思ってしまいました。トリックを作るのはいいとして運ぶのは無理でしょう。運んだとしてもそのまま運ぶ理由がありません。バラバラ殺人などでもよくありますが、小分けにするとか見た目を変えるとか方法が色々あるなかで何故それを選んだのか犯人の考えが全く理解できませんでした。

私の中では腑に落ちない、いまいちの位置づけになった短編です。

 

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私の中で珍しく良い短編といまいちな短編がはっきり出来てしまった1冊となりました。車には詳しくないので、カリオストロの城でルパンが乗っていた車がフィアットだというのが、一つ勉強になりました。

 

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