東川篤哉「烏賊川市」シリーズ第5弾『ここに死体を捨てないでください!』あらすじとネタバレ感想

「ここに死体を捨てないでください!」のあらすじと感想をまとめました。最初から110番通報しておけばすんなり解決しただろう事件を、死体遺棄を思いついたばかりにたいへんな目にあった2人の若者と、お金にならないのに事件には首をつっこみたくなる鵜飼たちのそれぞれの行動が、最後に一つに集結して事件解決という流れでした。

スポンサーリンク

「ここに死体を捨てないでください!」書籍概要

烏賊川市シリーズの5冊目となる長編です。

  • ここに死体を捨てないでください!(2009年8月/光文社)
  • ここに死体を捨てないでください!(2012年9月/光文社文庫)

 

一人暮らしをしている妹・春佳から見知らぬ女性を殺して逃げてしまったと連絡を受けた有坂香織は、妹を守るため遺体を捨てることを思いついた。遺体の所持品から名前は山田慶子だと分かった。偶然出会った馬場鉄男を無理やり共犯者にひきずりこみ、被害者を入れたコントラバスケースを被害者のものと思われるミニクーパーにくくりつけて河川敷を目指した。だがいざ捨てようとするたび邪魔が入り、結局は山に捨てることに決め一路盆蔵山を目指す。道に迷いながらも辿り着いたのは、底なしと噂の三日月池だった。なんとか無事に車ごと死体を遺棄することに成功した香織と鉄男だったが、帰るのに必要な車は自らの手で沈めたばかりだった。ぐったりと疲れながらも真っ暗な山道を歩き続けてようやく見つけたのは、ペンション「クレセント荘」だった。

登場人物

  • 有坂香織:妹の部屋にある見知らぬ女性の死体を盆蔵山に運んで三日月池に沈める。
  • 馬場鉄男:香織を車で軽く跳ねたために死体遺棄の共犯者にされる。
  • 山田慶子:鵜飼探偵事務所の依頼人。被害者と思われる。
  • 橘雪次郎:クレセント荘オーナー。夜釣り好き
  • 橘 直之:クレセント荘経営者。雪次郎の甥
  • 橘 静枝:直之の妻
  • 橘 英二:直之の弟でクレセント荘のシェフ
  • 寺崎亮太:クレセント荘の常連客。不動産屋
  • 南田智明:クレセント荘の常連客。ログビルダー(丸太小屋専門の大工)
  • 豊橋 昇:クレセント荘の客。烏賊川リゾート開発社員でクレセント荘の買収交渉をしているためあまり歓迎されていない。
  • 有坂晴佳:自分の部屋に飛び込んできた女性をナイフで刺したと思い仙台に逃亡後、姉に助けを求める。その後は姉の指示通り地元グルメや野球観戦を楽しむ。
  • 鵜飼杜夫:私立探偵
  • 戸村流平:助手
  • 二宮朱美:探偵事務所が入っている黎明ビルのオーナー
  • 砂川警部:警部

来ない依頼人とクレセント荘の事件

香織たちがミニクーパーで死体遺棄に出発した頃、ミニクーパーが停まっていた駐車場では探偵の鵜飼が来ない依頼人を待っていた。名前は山田慶子。電話では翌日10時にくると言っていたのに午後3時になっても姿を現さないのだ。電話で景子はクレセント荘で不審な動きがあると漏らしていた。急遽夏休みを取ることに決めた鵜飼と流平、温泉に惹かれた朱美の3人は盆蔵山にあるクレセント荘を目指した。

何とかクレセント荘に宿泊できることになった香織と鉄男は、宿泊客の鵜飼が静枝に「山田慶子」がここに泊ったことがあるか尋ねるのを聞き驚きのあまり階段から転がり落ちた。なんとかその場をごまかしたものの落ち着かない。

午前0時前、赤松川渓流での夜釣りを楽しみにしているという雪次郎が軽自動車で出かけて行った。それを見送った朱美は、不審な行動をとっている鵜飼を見つけあとを付けていく。辿り着いたのはコテージ。そこには0時キックオフのサッカー日本対バーレーン戦の衛星生中継の試合観戦のため、クレセント荘の人々が集まっていた。

翌朝、赤松川のはるか下流で雪次郎の遺体が見つかった。川に流され滝に落ちたと思われる遺体はズタズタの状態だった。死亡推定時刻は午前1時頃とのことだった。そして雪次郎が夜釣りをしていたと思われる岩場では、なぜかクーラーボックスが木の枝に引っかかりぶら下がっていた。砂川警部は念のため他殺の可能性も考慮することにした。

雪次郎死亡時の関係者たちの行動は以下の通り。

  • 橘直之:15分間のバーレーン戦ハーフタイム中。コテージに残っていた。
  • 橘英二:同上。外の空気を吸うためコテージを出ていた。
  • 寺崎:同上。コテージを出て本館に行っていた。
  • 南田:同上。煙草を吸うためコテージを出ていた。
  • 鵜飼:同上。コテージに残っていた。
  • 流平:同上。トイレに行っていた。
  • 朱美:同上。コテージに残っていた。
  • 豊橋:部屋で寝ていた。
  • 香織:部屋で寝ていた。
  • 鉄男:部屋で寝ていた。
  • 橘静江:部屋で寝ていた。

クレセント荘から雪次郎が夜釣りをしていた場所までは、どんなに急いでも片道15分はかかる。ハーフタイム中以外一緒にいた人間たちのアリバイは成立し、雪次郎とクレセント荘の買収を巡って対立していた豊橋には動機がない(雪次郎が死んだあと経営権は橘兄弟に移るが、こちらとの交渉の方が雪次郎相手よりも難しいため)。

第二の事件

香織は妹と連絡を取り、遺体に刺さっていたナイフが妹のものではないことを知る。また妹が思い出した記憶から、人を殺したというのはパニックになった妹の思い込みで最初から死んでいた(妹以外の誰かが殺した)のだと分かった。死体遺棄はまったくの徒労だったが今更後の祭りだった。

香織と鉄男は、流平が三日月池に散歩に行くことを知り慌ててあとをつける。沈めた車を発見されたら大変だからだ。だがお調子者の流平は池につくやいなや服を脱いで飛び込み、そのまま溺れた。放置されていた小舟で流平を助けた2人は、そのまま何気ない風を装って池の捜索を行ったが、車と遺体はあとかたもなく消えていた。疑問に思う2人だったが、遺棄した際、そばにクレーン車があったことを思い出し、誰かが引き揚げたのだと結論づけた。

その誰かは香織と鉄男のあとをつけていた人間、つまり山田慶子を殺害した犯人だ。そして犯人は「山田慶子」の名前を知っていた鵜飼だと推理した。

一方鵜飼達も、様々な事象をつなぎあわせ挙動不審な香織と鉄男が来なかった自分の依頼人「山田慶子」を殺したに違いないと推理していた。鵜飼は慶子の姉と連絡が取れ、慶子が以前勤めていたのが「烏賊川リゾート開発」だったこと、その時の上司が豊橋だったこと、誰かと付き合っていたらしいことを聞き出していた。

夜の食堂で一方を脅迫をしている正体不明の2人の会話「鉄砲」「花菱旅館」「証拠」を偶然聞いてしまった鉄男は香織とともに廃業した花菱旅館へと行き、胸を撃たれて絶命した寺崎を見つける。2人を監視していた流平からの連絡で鵜飼達も花菱旅館へと向かった。110番通報をして砂川警部が駆けつけるなか、鉄男はつかまり香織は一人逃げ出す。

鉄男から死体遺棄の一部始終を聞いた砂川は、三日月池は2つあるという事実をみんなに教える。鉄男たちが死体遺棄した三日月池と、流平が溺れた三日月池は別の池だったのだ。

だが警部がみんなを連れて行ったもう一つの三日月池にも鉄男はピンとこない。そして警部の言う三日月池には絶対に死体遺棄ができないというある欠陥を指摘した鵜飼は、鉄男の聞いた「鉄砲」や、依頼に現れなかった山田慶子、慶子を殺した人物、橘雪次郎を殺したアリバイトリック、寺崎を殺害した犯人などすべてを一つに繋げる推理を披露した。

一方、川沿いに一人逃亡を続けていた香織は、自分たちが捨てたコントラバスケースがはるか上空の木の枝に引っかかっているのをみつけ、ある自然現象を想像した。それは奇しくも鵜飼が語って聞かせた推理と同じものだった。

犯人は

寺崎を殺した犯人は、凶器の銃を持って香織を追いかけ人質にとりました。そして鉄男ともども罪を被せ心中に見せかけて殺すために呼び出しをかけます。

香織を捕まえるため鉄男と一緒に呼び出し場所へと出向いた砂川警部と鵜飼たちですが、そこで突然彼らをおそってきたある物が、神がかり的な動きで犯人をとらえるのを目にしました。一瞬の出来事でした。

そしてミニクーパーと山田慶子の遺体は見つかり香織と鉄男も御用となりました。

 

手の込んだトリックでした。冗談みたいな話の流れがいきなり大がかりな真面目トリックにすり替わり、また冗談みたいな流れに戻るのはこの作者の真骨頂です。ただそうしないと物語が進まないのかもしれませんが、香織と鉄男の行動があまりに浅はかすぎて話に没頭はできませんでした。

□□

東川篤哉さんのその他の本の感想はこちら

コミカルなのに本格派、ユーモアミステリー作家・東川篤哉のおすすめ人気シリーズと順番