東川篤哉「烏賊川市」シリーズ第4弾『交換殺人には向かない夜』あらすじとネタバレ感想

烏賊川市シリーズ4作品目となる「交換殺人には向かない夜」のあらすじと感想をまとめました。

タイトルにあるとおり交換殺人ものですし、プロローグから交換殺人の話し合いが行われそうな場面が書かれていますし、実際の事件も交換殺人でした。ここまで交換殺人だと分かっていながら今回も綺麗に騙された一冊となりました。とても面白かったです。

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「交換殺人には向かない夜」書籍概要

烏賊川市シリーズ4冊目の長編ものです。3つのグループでそれぞれ起こった事件が最終的に一つの大きな事件(交換殺人)に集約されていくというストーリー構成。

  • 交換殺人には向かない夜(2005年9月/光文社カッパノベルス)
  • 交換殺人には向かない夜(2010年9月 光文社文庫)

第一のグループ(鵜飼・朱美)

鵜飼探偵事務所に依頼人がやってきた。著名な画家の息子と結婚して間もないという妻・善通寺咲子が、夫・春彦の浮気を疑って調査を依頼してきたものだ。浮気相手は春彦の遠縁にあたる遠山真里子で、現在は就活のため善通寺家に下宿中だという。自分が家を留守にしている間、春彦を監視してほしいという希望を叶えるため、鵜飼は運転手、うっかり探偵事務所のオーナーだと豪語してしまった朱美は家政婦として善通寺家に潜り込むことになった。

善通寺家のある盆蔵山の猪鹿村には大雪が降り始めていた。咲子との打ち合わせ通り善通寺家に入った2人は、春彦・真里子とともにグレーのスーツにベージュのコート、ピンクのケリーバッグ姿で外泊するという咲子の車を見送った。

夜になって鵜飼の運転する車で外出した春彦は、小一時間ほどで戻ってきた。水沼という将棋友達の家に40分ほど入っていったが、車で待機していた鵜飼には中で何をしていたのかまでは分からないという。また鵜飼によると、春彦と真里子が浮気しているような雰囲気は全然感じられないという。

夕食時、一本の電話が掛かってきた。その電話を受けた春彦の表情が変わり、それ以降明らかに挙動不審に陥るが本人は何でもないと言い張り、体調不良を理由に自室へと引き上げていった。

夜半過ぎ、部屋を抜け出し物置小屋からランタンとスコップを持ち出した春彦が、雪の中ひょうたん池のそばの小便小僧の像までいき、おもむろに像を移動させると露わになった土を掘り始めた。鵜飼と朱美がその様子を部屋から双眼鏡を使って監視する中、ある程度まで掘り進めた春彦は何やら叫び声をあげたかと思うと土を埋め戻し、像を元の位置に戻した。春彦がスコップを手にしたまま屋敷へ戻っていくのを待ち、鵜飼と朱美が小便小僧の下を掘り返したが何も見つからない。

屋敷へ戻った2人は、何やら探し物をしているらしき真里子と出くわす。春彦の姿が見えないのだという。3人で屋敷内を探すが確かにどこにもいなかった。スコップごと春彦は消えていた。咲子に連絡を取ろうと鵜飼が携帯に何度か電話をかけるが、真夜中とあってか繋がらない。

そんな時、車庫入れによく失敗するという真里子に以前車庫入れ中にひょうたん池に落ちそうになったことがないか鵜飼が尋ねると、心当たりがあるという返事がかえってきた。その際、小便小僧に車をぶつけ1mほど像がずれたがそのままにしているという。

真里子の証言をもとに、もともと小便小僧が立っていた辺りを掘り返した2人は、額のあたりに傷がついた白骨を発見した。

砂川警部に直接通報すると、最初は気のない返事をしていた警部だったが鵜飼のいる場所が善通寺家だと分かった途端、大雪で道が閉ざされてしまった猪鹿村へすぐに向かうと返事があった。

翌朝、家の周辺を調査していた2人は、生垣の向こうに抜ける穴を見つける。山の中腹に建っている善通寺家の生垣の先は斜面となっていた。うっかり斜面そばに落としてしまった携帯電話を拾おうとした鵜飼とそれをやめさせようとした朱美は、勢い余って2人揃って斜面を悲鳴をあげながら豪快に滑り落ちていった。

第二のグループ(流平・さくら)

以前事件で知り合った十乗寺さくらから流平のところへ電話が入った。友人に頼まれて「井上カメラ商会」に八ミリカメラを購入しにいくので映像関係に詳しい流平に付き合ってもらえないかという依頼だったい。購入後に友人宅に持って行くので1泊になるという。ちょうど探偵助手の仕事がキャンセルになった流平は、これ幸いとさくらの頼みを了承した。

さくらが言うには友人は奥床市にいるという。雪が積もり始めるなか電車で1時間ほど揺られ盆蔵山を越えた先の駅に降り立った2人の前に、猛スピードで近づいてくる車がいた。ブレーキ音を鳴らしながら目の前に停まったBMWから降りてきたのは、赤いドレスにゴージャスなコートを着た女性・水樹彩子だった。さくらにとってはお姉さん的存在だという。彩子の運転する車で向かったのは、彼女の別荘だという丸太小屋風の建物「ひまわり荘」だった。

ひまわり荘の近くにも別荘は建っている。すぐ隣の建物から大喧嘩を繰り広げる声がした。中にいたのは権藤源次郎・英雄親子だった。流平の体を張った仲裁の甲斐もなく彩子によって喧嘩が中断すると、3人は英雄をひまわり荘へと誘い話を聞いた。もともと仲の悪い親子で、源次郎が別荘に来ると知っていたら自分は来なかったと言い、英雄は自分の車で烏賊川市へと帰っていった。

夜、食事を終えた3人は、雪の降るなか歩いてすぐのところにある清水旅館の温泉へと行く。男湯には先客がいた。ひょろりとした中年男性と源次郎だった。源次郎の体にはいくつもの傷跡があり、そのうちの1つは3年前、顔を隠していたがおそらく長男の一雄にナイフで刺されたものだろうという(英雄は次男)。しばらく音沙汰がなかったが、最近周辺で一雄の目撃情報がいくつかあり、今度一雄が顔を見せる時は自分を殺しに来た時だと源次郎が豪語する。中年男性の方は地元の人間だといい、源次郎は悪徳リフォーム業者だから気を付けろとアドバイスをくれた。

真夜中を過ぎ、女優兼映画監督の彩子が学生時代に「映画監督サイコ」という当時話題になった映画を撮った話をきっかけに、3人でその問題の映画を見ることになった。上映中、流平とさくらはおかしな物音を聞いた。

午前4時頃、さくらに起こされた流平は、権藤源次郎の家の様子がおかしいと教えられる。部屋の明かりがついているのに窓ガラスが割れているというのだ。大雪のなか部屋のガラスが割れたまま平気だというのは確かに異変だった。物音に起きてきた彩子とともに権藤の家へと行った3人は、割れたガラスの向こうに血まみれで横たわっている源次郎の遺体を発見した。何者かに殴られたらしい。彩子が110番するあいだ遺体を見ていた流平は、額の傷口に泥のようなものが付いているのを発見した。泥のついた凶器といえばスコップではないかと流平は推測する。スコップを振り回してガラスも割れたのだとすればつじつまも合う。

また「映画監督サイコ」の上映中に聞いたおかしな音は、犯行時のものではないかと考えた流平は、映画の上映開始時間と音が聞こえた時に流れていたシーンから、犯行推定時刻を午前1時51分18秒と計算した。

昼間喧嘩をしていた英雄に電話をしてアリバイを確かめると、駅前のスナックで友人とカラオケをしていたといい、証人もきちんといた。

翌朝、居眠りをしているあいだに彩子の姿が見えなくなっていた。心配した2人が外を探すと、雪の小道に立つ彼女を見つけた。彩子の指さす先には一人の男が横たわり、体の上には雪が降り積もっていた。

呆然とする3人の背後から、絶叫とともに滑り落ちてくる2つの影があった。

第三のグループ(警察)

烏賊川市の鶴見通り路上に女性の刺殺体があった。第一発見者の男によると、午後7時過ぎ、雪が降り始めたためスリップ事故に気を付けながら車を運転していると、歩道にいた女性がいきなりふらふらと車道に飛び出してきたのだという。慌てて車を停めたのでぶつかりはしなかったものの女性は倒れてしまった。腰のあたりにナイフが突き刺さっており既に息絶えていたそうだ。

女性はグレーのスーツにベージュのコートを身に着けていた。

雪が苦手な砂川警部が戻るなか、志木刑事と上司には礼儀正しいが後輩の志木にはぞんざいな女刑事・和泉は周辺の聞き込みを始める。和泉は女性なら持っている筈のバッグを被害者がもっていないことを不審に思う。おかげで身元が分からない。

鶴見通り近くの「井上カメラ商会」で尋ねると、事件が起こる直前にその女性がショーウィンドウに体をぶつけながら通りすぎて行ったのを見たという。バッグは持っていなかった。

雪が降っていたためか人通りは少なく、通行人のほとんどが雪に注意を払っていたためかろくな目撃情報が得られない。夜中をすぎて人通りが絶えたため、2人は休憩を取ることになった。たまたま入った喫茶店で念のため確認すると、被害者らしき女性が紅茶を注文したことが分かった。そして被害者はサングラスにコートの男が現れるとすぐに一緒に店を出ていったという。被害者はピンクのケリーバッグを持っていた。

警察署に戻る途中、雪のため路駐をして放置されている車を狙った車上荒らしを見つけた。慣れない雪道で取り逃がしてしまったが、車上荒らしが狙っていたベンツに和泉が疑問を覚える。大雪とはいえ高級車をコインパーキングに入れることもなく無造作に路上に放置していくのだろうか。ナンバーを問い合わせると、善通寺春彦の所有する車だった。

被害者はもしかすると春彦の妻かもしれない。話を聞いた砂川警部は思った。

事件の真相は

今回の事件は交換殺人に違いない。事件が起こった時、アリバイが確実な人間が今回の犯人だと探偵は断言しました。

確かに交換殺人でした。まぎれもない交換殺人だったのですが、事件を計画した2人の思惑が異なった結果、複雑で紛らわしい事件へと発展していったのでした。

 

3つのグループはそれぞれの視点でのみ話が進んでいきますが、読んでいるこちらは3つ同時進行で頭に事件を創造(想像)しながら進めていくので……見事に騙されました。完全にネタバレになってしまうのですが、交換殺人を隠れ蓑にした叙述トリックです。

どのあたりがトリックなのかは、実際に手に取ってみて騙されてみて下さい。頭が混乱する分解決編ですっきりして気分の良い一冊でした。

 

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