東川篤哉「烏賊川市」シリーズ第2弾『密室に向かって撃て!』あらすじとほんのりネタバレ感想

行方不明になった銃が起こす密室殺人事件を扱った「密室に向かって撃て!」のあらすじと感想をまとめました。素人が起こした計画殺人ということで色々雑(?)な面もありますが、総じて読み応えのあるストーリーでした。伏線を張るのが上手な作家さんで、今回もいくつか気づかずに読み過ごしてしまいました。

「密室に向かって撃て!」書籍概要

烏賊川市シリーズ第2弾となる長編小説。食品会社経営の十条寺家で衆人環視の密室殺人が起こった。居合わせた探偵鵜飼とその仲間たちが事件の謎に挑む。

  • 密室に向かって撃て!(2002年10月/光文社カッパノベルス)
  • 密室に向かって撃て!(2007年6月/光文社文庫)

 

傷害と器物破損の容疑で逮捕に向かった烏賊川市の凸凹警察コンビ・砂川警部と志木刑事だったが、容疑者の男はなぜか拳銃不法所持でやってきたものと勘違い。志木刑事に向かって2発撃つと逃走した。だが4階からの脱出時に足を滑らせたのか転落して死亡。そして大変なことが分かった。男のどこからも銃が見つからないのだ。砂川と志木が下へと降りる間に通りすがった市民が持って行ってしまったものと思われた。銃は死亡した男が改造したもので弾は8発まで入れることができた。発射したのは2発、残り6発を入れたまま改造銃は行方不明となってしまった。銃の不正使用がされないようにと祈る警部たちだったが、2週間後、馬ノ背海岸で改造銃によるホームレス射殺事件が起こってしまった。

登場人物

  • 鵜飼杜夫:黎明ビルで探偵事務所を開いている。家賃を1年分滞納している。
  • 戸村流平:探偵の弟子
  • 二宮朱美:黎明ビルオーナー。家賃のため鵜飼を働かせる。
  • 十条寺十三:十条寺食品会長
  • 十条寺十一:十条寺食品社長
  • 十条寺道子:十一の妻
  • 十条寺さくら:十一、道子夫妻の一人娘
  • 佐野:十三のボディガード兼執事
  • 佐野友子:十条寺家の料理人
  • 神崎隆二:さくらの婿候補1。市議会議員の息子
  • 升村光二郎:さくらの婿候補2。居酒屋チェーンの息子
  • 田野上秀樹:さくらの婿候補3。烏賊川市大学の講師
  • 砂川警部&志木刑事:警察官

事件発生

以前から何度か仕事を回していたホームレスの金蔵が馬ノ背海岸で射殺された。木材店で貰って来た自前の墓標を手に海岸へと鵜飼と弔いに訪れた流平だったが、鵜飼と喧嘩をしてその場に取り残されてしまった。やけにトンビが舞う砂浜が気になって見に行くと、そこには野球バットくらいの骨付き肉が落ちていた。BBQの残りだろうと決めつけた流平は、砂浜で出会った十条寺さくら、十三の誘いで山の中に建つ十条寺邸へとお茶に招かれ、探偵の弟子として師匠・鵜飼の活躍を披露した。

黎明ビルに引っ越ししてきたビルオーナーの二宮朱美による家賃の取り立てを受けていた鵜飼は、十条寺十三の依頼を断り切れず引き受けることになった。依頼内容は孫・さくらの婿候補となる3人の男の女性関係にまつわる身辺調査だった。調査結果の報告に十条寺邸を訪れた鵜飼と流平は、件の3人の男たちが十条寺邸に揃っているのを知る。ゴールデンウィークを利用した集団見合いだと十条は言い、怪しさ満点のため元オリンピック候補のアマレス選手だった執事の佐野からヘッドロックを掛けられて追い出されようとしていた2人を助けてくれた。そして応接間で2人を歓待してくれる。野球中継を見ながら酔っぱらった2人はそのまま眠り込んだ。

夜の11時50分頃、一発の銃声音が聞こえた。目覚めた流平は、応接間の窓からこちらを覗く白い覆面の怪しい人物を見た。覆面が撃った弾は鵜飼の足をかすめたらしい。銃声に気づいた十条寺家の面々が応接間に集まってくる中、本館と張り出した崖に建つ離れ「飛魚亭」の間にある使用人棟から佐野と友子が出てきた。同じく銃声を聞いて目覚めたらしい。近づいてくる2つの懐中電灯が途中で二手に分かれた。本館に辿り着いた友子によると、飛魚亭に向かう階段で怪しい人影を見たと言って佐野が追いかけていったらしい。危ないと皆が注意を送る中、佐野が門に到着した。その時、飛魚亭の方から続けざまに2発の銃声がし、佐野が飛魚亭へと飛びこんでいった。銃を持った何者かと佐野が対峙している。十三からライフルを借りた十一、田野上、流平の3人は飛魚亭へと援護に向かった。間もなく飛魚亭というところで4発目の銃声音が響いた。

飛魚亭へと飛びこんだ3人が見たものは、左腕を撃たれた佐野だった。佐野は崖側にあるテラスへと向かった。そこには左胸を撃たれて死んでいる神崎隆二がいた。飛魚亭の中にはもう一人、眠りこけていた升村光二郎もいた。流平は十一らとともに飛魚亭の周囲を見回ったが、覆面の人物は忽然と姿を消していた。

捜査開始

重症の佐野と軽傷(医者いわくかすり傷)の鵜飼が救急車で運ばれ、砂川と志木がやって来た。現場を捜索した結果、飛魚亭と崖の間にある生垣のそばに持ち去られた改造銃が落ちているのを発見した。だが計7発発射された銃には1発の弾丸も残っていなかった。残り1発はどこへいったのか。また崖の先端に覆面が残したと思われるコートと靴、覆面、手袋などがあった。覆面人間は犯行を終えた後、銃と衣類を残して崖に飛びこんだと推測することもできる。一通り事件について関係者らに尋ねた2人の刑事は、次に入院している佐野の所へと足を運んだ。

鵜飼の要求でお見舞いのメロンを片手に病院へと向かった朱美は、同じ病室内にピンピンしている鵜飼と重症の佐野がいるのを知り、やってきた警部らの聞き取りに無理やり同席した。左腕を負傷した佐野の状態は重大で、もうボディガードとして使い物にならないかもしれないとのことだった。刑事や佐野の話を聞いて不可能犯罪の匂いを嗅ぎつけた鵜飼は、仮病を返上して退院すると、朱美を伴い十条寺邸へと向かった。

8発装填できる改造銃から発射されたのは

  • 銃を改造した人物による逃走時の威嚇発射で2発(その後銃は行方不明)
  • ホームレスで1発
  • 十条寺邸で4発

計7発で、残り1発が最初から装填されていなかったのか、どこか知らないうちに犯人が撃ったのかは不明。

  • 殺された神崎と一緒にいた升村は無罪を主張。警察らも升村を疑っていない。
  • 飛魚亭自体は密室ではないが、十条寺家および流平らが見守る中で事件が起き覆面の人物が姿を消した。いわゆる衆人環視の密室状態だった。

砂川警部は、覆面の人物が崖に飛びこんだというのは犯人による細工で、2発の連続した銃声音は立地を利用した「反響」によるものではないかと考え、志木に飛魚亭の前で銃を空に向けて撃たせた。再び飛魚亭で事件がと銃声に驚いて十条寺家の面々が騒ぎ出すというお騒がせな検証をした結果、警部の推理と実験は失敗に終わった。

鵜飼は自分たちがこの事件にかかわることになったそもそものきっかけ、お嬢様のさくらとチンピラの流平がどうやって知り合ったのかを2人に聞くと、肉だと答えが返ってきた。BBQの残りだと思われる肉を砂浜で発見したという話を聞き、何かに気づいたらしい鵜飼は埋めた肉を掘り出しに行く。鵜飼らを尾行していた砂川と志木に腐りかけの肉を渡して調べてもらった結果、肉から硝煙反応が出た。

犯人と犯人の使った銃のトリックが分かったと夜に推理ショーを行うという鵜飼とは別に、鵜飼より先に親密に十条家と関わっていた流平は、彼なりの推理で別のルートから犯人に辿り着いていた。鵜飼と答え合わせを行った結果、2人が考える犯人は一致していた。

犯人は

推理ショーの前に2人が答え合わせをしたので、そこで前置きもなくあっさりと判明してしまいました。流平が犯人に辿り着いたルート、鵜飼が犯人が銃を使ったトリックを解明することで犯人に行きつくルートという2通りの謎解きが行われました。

 

ミステリーの解答編としては変則的ですが、読み応えがあって良かったです。解答編に突入する前に犯人をバラされるという読者にとっては不意を突かれた格好になりましたが、鵜飼のトリック解明を読んでいくと、これができる人物が1人しかいない=犯人はすぐ分かるというのもありますが、先に犯人をバラした方がより説明に説得力が増すという側面もあったかと思います。

軽い文体なので内容も軽めかと思いきや、非常に読み応えのある一冊でした。

今回登場した十条寺さくらさんは、「交換殺人には向かない夜」にも登場します。お嬢さまなのに流平に惚れてしまってちょっと可哀そうな気もします。