東川篤哉「烏賊川市」シリーズ第3弾『完全犯罪に猫は何匹必要か?』あらすじとほんのりネタバレ感想

東川篤哉さんの烏賊川市シリーズ第3弾「完全犯罪に猫は何匹必要か?」のあらすじと感想をまとめました。今回は招き猫や猫が多く登場するので混乱しますが、笑って読める貴重なミステリーです。

密室トリックや謎を解く過程は本格的で理路整然としているのに文体はライトノベルのように軽いので、ミステリーを読み始めたばかりの方にもおすすめの一冊です。

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「完全犯罪に猫は何匹必要か?」書籍概要

烏賊川市シリーズ3冊目となる長編ものです。10年前と今回、ビニールハウス内で起きた2つの不可解な事件と何でも屋が殺害された事件を、被害者が信奉していたという招き猫に絡めて解いていきます。

  • 完全犯罪に猫は何匹必要か?(2003年8月/光文社カッパノベルス)
  • 完全犯罪に猫は何匹必要か?(2008年2月 光文社文庫)

 

烏賊川市に住む探偵・鵜飼杜夫のところに豪徳寺豊蔵が依頼にやってきた。愛猫のミケ子を探してほしいというものだったが、猫探しなんてやりたくない探偵は依頼を引っ込めさせるため、家賃1年分の120万円を成功報酬としてふっかけた。だが豊蔵は了解し契約は成立した。

最初からミケ子を探し出す気がない鵜飼たちは、ミケ子そっくりのデブな三毛猫をミケ子と偽って報酬を受け取ろうという姑息な手段に奮闘する。

そんな頃、依頼主の豊蔵がビニールハウス内で殺されるという事件が起き、凸凹警察コンビ・砂川警部と志木刑事が捜査に乗り出した。

登場人物

  • 鵜飼杜夫:黎明ビルに事務所を構える私立探偵。よく家賃を滞納している。
  • 戸村流平:探偵助手
  • 二宮朱美:黎明ビルオーナー。三毛猫探しに協力する。
  • 豪徳寺豊蔵:元漁師で回る寿司屋「招き寿司」経営者。招き猫信奉者で、愛猫のミケ子探しを鵜飼に依頼する。
  • 豪徳寺昌代:豊蔵の再婚相手
  • 豪徳寺真一:長男。豊蔵の連れ子
  • 豪徳寺美樹夫:次男。豊蔵と昌代の実子
  • 豪徳寺真紀:長女。豊蔵と昌代の実子
  • 剣崎京史郎:豪徳寺家の居候。招き猫信奉者。
  • 桂木:豪徳寺家の執事兼料理人兼庭師
  • 矢島洋一郎:故人。10年前の殺人事件の被害者。医者
  • 矢島達也:豪徳寺家の主治医で洋一郎の息子
  • 岩村敬一:何でも屋。鵜飼とは旧知の仲
  • 砂川警部&志木刑事:警察

10年前の事件

午後9時半頃、矢島医院に豪徳寺豊蔵が訪ねてきた。午後9時に洋一郎と会う約束をしているというが、肝心の洋一郎は夕食後に外出したきり戻ってこない。足を悪くして車いすを使っていた妻の弓子は、豊蔵に車いすを押してもらいながら矢島医院から豪徳寺家までの道のりを一緒に探してみることになった。

だが洋一郎は見つからなかった。

息子が東京の大学に通っているため、車いすで一人きりになる弓子を心配して、豪徳寺豊蔵と昌代夫妻が0時頃まで矢島医院で付き添ってくれたという。

翌朝、豪徳寺家の畑にある使われていないビニールハウス内で洋一郎の遺体が発見された。死亡推定時刻は午後8時から11時の間だが、弓子と豊蔵が洋一郎を探して歩いたのが午後10時頃、その際ビニールハウス内を出入口から覗いたがペンライトを照らしても誰もいなかったという。

目撃者探しをした若かりし頃の砂川は、午前0時頃に酔っぱらってビニールハウス内で立小便をしたサラリーマンの証言を得た。ビニールハウス内はからっぽだったというが、酔っ払いの言うことだとその証言をスルーし、犯行時刻を午後10時から11時に絞って捜査と続けた結果、みごとに迷宮入りした。

事件発生

豪徳寺豊蔵が、畑の使われていないビニールハウス内で腹を刺され殺されているところを発見された。蒲鉾型のビニールハウスには出入口が2か所あり、豪徳寺家の屋敷がある側の出入口は開かなかった。そして反対側の出入口にはなぜか成人と同じサイズの大きな招き猫が置かれていた。

招き猫は、行徳家の正門に左右一対で置かれているうちの片方を移動してきたものらしい。

豊蔵の死亡推定時刻は、午後11時から翌午前1時の間とみられる。

発見者は豪徳寺家の長男と次男。昌代が豊蔵がいないと家中を探していたところに、正門の招き猫の1つがビニールハウスに移動していると聞き2人で見に行って遺体を発見したのだという。ビニールハウスの屋敷側の入口は長女の真紀が座った状態で縛られていて開かなかったという。

警察の凸凹コンビは、ビニールハウスに集まっていた野次馬たちと、ビニールハウス内で縛られたまま目の前で父親が刺されるのを見ていたという真紀から証言を集めた。

  • 午前0時以前、ビニールハウスに招き猫はいなかった
  • 午前1時、招き猫はいた
  • 午前2時、招き猫はいた
  • 午前2時半、招き猫はいなかった
  • 午前3時以降、招き猫はいた
  • 殺人が起こった時、招き猫はいた(真紀の証言)

真紀の言葉と豊蔵の死亡推定時刻を重ねると、犯行は午前0時から1時の間に狭まることになる。この時間帯の豪徳寺家他関係者のアリバイは以下の通り。

  • 昌代:午前0時に映画が始まるまで美樹夫、矢島と一緒にいた。その後は自室で寝ていた。
  • 真一:夕食後に自室で野球の試合を見たあと、午後11時50分頃から翌2時頃まで、徒歩5分のバーで飲んでいた(マスターの証言あり)
  • 美樹夫:午後11時45分頃、矢島達也が訪ねてきて一緒に映画を見ていた。その後はおしゃべりをしていて矢島が帰宅したのは午前3時頃。
  • 真紀:午後11時にビニールハウスに呼び出されたのち薬で眠らされ縛られた。目が覚め父親が殺される所を目撃されたあと再び助けがくるまで眠らされる。
  • 剣崎:みんなと夕食を摂った後は自室の土蔵に戻り、午前0時前に友人宅へ行き明け方まで麻雀をしていた(友人の証言あり)。屋敷を出る際、矢島と出くわした。
  • 矢島:11時45分頃達也を訪ね、午前3時頃帰宅

またそれ以外の証言など。

  • 豊蔵はミケ子を溺愛しており、家族の誰にも触らせなかった。
  • 父が亡くなる間際「ミキオ」と言い残した(真紀の証言)。
  • 豪徳寺は昌代との再婚の際、自分の姓ではなく昌代の姓を名乗った(改姓した)。

死亡推定時刻の関係者のアリバイは成立していた。

第二の事件

豊蔵の死によって120万円の三毛猫探しが中断されては困ると、鵜飼・流平・朱美は遺族に契約続行の直談判をするため豊蔵の葬式会場に乗り込んだ。

そこで鵜飼と流平は、左右の区別を50%の確率で間違えるというおっちょこちょいの何でも屋・岩村と出会う。葬儀を終え、猫に関するあれこれを入れられておもちゃ箱のようになった豊蔵の棺桶を出棺するという頃、トイレの個室で岩村が殺されているのを流平が見つけた。腹を刺され、なぜか傷口には味噌汁を掛けられているという不思議な遺体だった。

  • なぜ岩村は葬儀会場に来たのか
  • なぜ岩村は味噌汁をかけられていたのか
  • 岩村を刺した凶器はどこに消えたのか

捜査をすすめるうち、豊蔵の事件があった日に岩村は何でも屋の依頼を引き受けていたという。友人の証言や岩村が残した痕跡などから、おそらくその依頼は「豪徳寺家の正門にある招き猫を、ビニールハウスまで運ぶこと」だったと推測された。依頼主は不明のままだった。

遺族を契約書を盾にむりやり納得させ三毛猫探しを継続していた鵜飼は、砂川警部と志木刑事が事件について話し合っているところにうっかり出くわして盗み聞きをした際、猫の声真似をしつこく続けたことにより砂川警部の絶妙なコントロールで額に石をぶつけられ矢島医院に駆け込んだ。

そこで10年前の事件について新たな情報を得た。当時豊蔵は、洋一郎の持っていた招き猫を譲ってほしいと再三交渉していたらしいのだ。だが矢島によると、今も昔も招き猫は一体も持っていないという。いったんは引き下がった鵜飼たちだったが、その後、矢島に改めて猫を飼っていなかったか尋ねる。当時東京にいた矢島は、存命だった母に聞いた話だと前置いたところで、やせ細った三毛猫を洋一郎が保護した話をしてくれた。

一方凸凹コンビは、豪徳寺家の納屋で半分に切ったフラフープのようなものをいくつも見つけた。それはまるで蒲鉾型のビニールハウスの屋根の骨組みのようだったが、大きさは小さく素材も頼りない。だが10年前は迷宮入りにした砂川警部は、今回の密室トリックの謎に気が付き、改めて午前2時の招き猫を証言した人間に尋ね直し、事件の真相に迫るのだった。

犯人は

事件の真相を見抜き、豪徳寺家の正門を張っていた凸凹コンビの前に姿を現しました。犯人を捕まえたあと、砂川警部は豪徳寺の人たちと鵜飼探偵事務所の人々をビニールハウス前に集め、事件に使われたトリックを明らかにするのです。

招き猫はアリバイ工作のために使われていました。

知らないうちに犯罪の片棒を担いでいた岩村は、犯人にとって不利な証言をする存在になってしまったため犯人の手によって口止めされました。味噌汁は、木は森の中に隠せ理論です。

一連の事件はすべてミケ子と招き猫に端を欲した事件で、元凶は豊蔵でした。

 

□□

ミケ子を探していた鵜飼が10年前の事件を、トリックを見破った砂川警部が今回の事件を解決するという構造で、どちらの事件も同じトリックを使っていました。ビニールハウスのトリック、頭で想像するだけではなかなか複雑でも難しいです。

普段は無能を装っていますが、砂川警部も案外頭が切れる人でした。

自力でミケ子が戻ってきたため鵜飼の契約は不成功となりましたが無事に大金をゲットでき、10年前の事件も解決し、ミケ子に偽装するためさらわれた野良猫たちも元の居場所に戻って暮らし……と基本ハッピーエンドで終わってめでたしめでたしな話でした。

 

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