東川篤哉「かがやき荘西荻探偵局」シリーズ第2弾『ハッピーアワーは終わらない』あらすじとネタバレ感想

「ハッピーアワーは終わらない」のあらすじと感想をまとめました。シリーズ2冊目となりましたが、かがやき荘の3人は相変わらずアルバイトで食いつないでいるようです。家賃滞納が続くくらい生活に困窮している筈なのに、日々明るく飲みまくっている姿に何となく勇気づけられる気もします。

「ハッピーアワーは終わらない」書籍概要

かがやき荘西荻探偵局シリーズ第2弾。家賃滞納を推理でチャラにすべく3人のアラサー女子が事件に挑むシリーズ。「若きエリートの悲劇」「ビルの谷間の犯罪」「長谷川邸のありふれた密室」「奪われたマントの問題」の4作品を収録した短編集。

  • ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局(2019年6月/新潮社)

若きエリートの悲劇

3か月分の家賃滞納をカタにある人物の女性関係を探ることになった葵、美緒、礼菜の3人は、ターゲットである若きエリート取締役・磯村光一の後を付けていた。光一は香織という許嫁がいながら中々結婚に踏み切ろうとしないため、もしや別の相手がいるのではと怪しんだ社長の母親が法界院法子経由で息子の調査を依頼したのだった。だが光一は仕事が終わると寄り道もせずに自宅へと戻っていく。一度待ち伏せていた香織と食事をしたものの、彼女をマンションに送り届けて帰ってしまった。何の成果もあげられたなかった葵の所に深夜、法子から電話がかかってきた。青空児童公園で法子の知り合いが酷い目にあっているらしいから見に行ってくれという内容だった。美緒と礼菜を叩き起こして公園へ行った3人は、公衆トイレの裏で死んでいる光一を発見する。彼どういうわけか全裸だった。光一と仲が良く、元雑誌記者だった弟に事件を調べさせるという香織に対し、法子はうってつけの人間が余っているといい3人に探偵をさせることにした。

 

誰が光一を殺したのか、なぜ殺したあと全裸にしたのか、誰が何の目的があって法子に電話をかけてきたのかという三段階の謎に3人組が挑みます。光一には香織以外の女の影も男の影もありませんでした。無事に事件解決に導いた3人ですが、葵によると犯人を推理する必要がなかったとのこと。真相が分かれば確かに推理はいりませんでした。3人は無事に滞納中の家賃3か月分を免除することができました。

ビルの谷間の犯罪

アルバイトを終え帰宅中、野良猫を追ってビルの谷間へと入り込んだ礼菜は突然後頭部に衝撃を受け昏倒した。目が覚めると足元には女性の遺体、不審に思い手に取ったものは凶器らしきナイフだった。ちょうど通りかかった警邏中に警官に目撃された礼菜はパニックに陥りナイフを捨てその場を逃げ出した。お酒を飲みつつテレビのドキュメンタリーに感動していた葵と美緒は、突然やって来た刑事・神楽坂達の訪問を受けた。殺人容疑が掛かっている礼菜の行方を捜しているという。啓介から呼び出しを受けた2人は刑事らの尾行があるなか法界院家へ向かうと、そこには礼菜が匿われていた。礼菜の無実の訴えと法界院法子の命令で葵と美緒は真犯人を探すことになった。

被害者の不倫相手の男が被害者が発見された場所を挟むように建つマンションの5階に住んでいた。こんなに怪しいにも関わらず殺害時刻と思われる時間帯、男は仕事から戻ったきりマンションから出た様子がなかった。そのことはエレベーターと共用玄関に設置してある監視カメラからも証明されており、おかげで礼菜が容疑者第一候補となっているのだった。土曜日、向かいのビルの屋上からマンションを張り込む葵と美緒は、音楽をやっているのかビオラを持って出かける男を尾行したがあえなく見つかって怒られてしまう。2人を尾行していた神楽坂刑事からも怒られるのだが、葵はあることに気づき日曜日にもう一度尾行を行うと言い出した。

 

登場人物が少ないので犯人はすぐ分かります。というより犯人はほぼ分かっているので、部屋にいた人間がどうやって外で被害者を殺害することができたのか、という謎になります。被害者の横たわっていた場所がビルとビルの隙間であること、その隙間は約1mくらいという小さなものであることなどがヒントになっていました。

謎解きよりも3人のキャラクターと友達甲斐があるのだかないのだか分からないやり取りを楽しむ話という回でした。

長谷川邸のありふれた密室

有名料理店「はせ川」の長谷川夫妻との会食後、長谷川邸へと招かれた法界院法子は酔い潰れて秘書見習いの啓介とともに一泊することになった。案内された離れには客室が3つあり、一番奥は「はせ川」の料理人で夫妻の娘・綾子と近々結婚予定の富田がおり、残り2つを法子と啓介が使うことになった。翌朝、長谷川家の住み込み家政婦・早苗が起こしに来たが富田の部屋からは何の反応もない。法子と啓介が外に出て窓から覗いてみると、包丁でわき腹を刺され死んでいる富田を見つけた。包丁は、家の主人でもある長谷川のものだった。ドアと2つある窓のうち1つは施錠され、鍵の掛かっていなかったもう1つには鉄格子がはまっており人の出入りは不可能だった。凶器の所有者長谷川と、鍵の管理者である妻に容疑がかかりそうななか、法子に依頼された「かがやき荘」の3人が事件解決に挑むことになった。現場を検証した美緒は、外にある物干し棹に包丁をくくりつけて槍に見立ててた殺害方法に気が付いた。

 

誰も出入りできない部屋の中で人が死んでいたという密室殺人ですが、美緒が見つけたトリックは犯人によるミスリードでした。密室ができた方法は特別な策を弄したものではなく、確かにありふれたものでした。

奪われたマントの問題

コスプレイベントからの帰り道、礼菜は戦隊もののキャラであるゴスロリファッションに紫のマント姿で歩いていた。近道のため公園内へと足を踏み入れたところ、後ろにいた何者かに頭部を殴打され救急車で運ばれる。ルームメイトの敵討ちのため立ち上がった葵と美緒は、礼菜からマントが奪われていることを知らされる。テレビの懸賞で当たったマントは、マニアにとってはお宝同然の価値があるものらしい。事件当時の目撃者の話を辿って辿り着いた古着屋「めずらし堂」の望月は、犯行時間帯に公園にいたことは認めたが、すぐに知り合いと偶然会い一緒に深夜まで飲んでいたと主張し、その際、ゴスロリファッションにマントの女性とすれ違ったと証言する。望月の知り合い・骨董品屋の山下も同様の証言をし2人の言うことに食い違いはない。しらみつぶしに目撃証言を集めて歩いた葵と美緒、巻き込まれた啓介は、礼菜と同じコスプレをしている女性の存在をつかみ彼女のアパートを訪れた。施錠されていない玄関を恐る恐るあけた3人は、部屋で死んでいる女性を発見した。

 

お宝マントを手に入れることが礼菜襲撃の目的と思われていましたが、別の狙いがありました。犯人は割とあっさりと葵の口から出てくるので、なぜ犯人はマントだけ持ち去ったのかという謎を解いていくことになります。

「ビルの谷間の犯罪」に引き続き、礼菜が被害者になっています。無事で何よりですが、立て続けに殴られて頭大丈夫でしょうか。

今回は家賃チャラのためではなく友達のために動いたので無報酬という形になりますが、最後に救済措置があったようで良かったです。でも5か月滞納しても大丈夫とは大家の法子さんも太っ腹です。

 

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シリーズ2冊目とあって葵の探偵ぶりもこなれてますし、大家の法界院法子とのやりとりにも図々しさが増しています。面白いのは間違いないのですが、事件に取り掛かるきっかけがワンパターン化している気もします。

 

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