東川篤哉「かがやき荘西荻探偵局」シリーズ第1弾『かがやき荘アラサー探偵局』あらすじとネタバレ感想

東川篤哉さんの新シリーズ「かがやきアラサー探偵局」のあらすじと感想をまとめました。かがやき荘でルームシェアをしている3人のアラサー女性たち(失業後アルバイト中)が、滞納している家賃をチャラにするため、事件解決を請け負うというものです。3人ともが職を失っているのに悲壮感なく陽気に暮らしているのは、読んでいてこちらも楽しくなってきます。

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「かがやき荘アラサー探偵局」書籍概要

かがやきそうな女たちと法界院家殺人時件洗濯機は深夜に回る週末だけの秘密のミッション委員会からきた男

  • かがやき荘アラサー探偵局(2016年10月/新潮社)
  • かがやき荘西荻探偵局(2019年4月/新潮文庫)

かがやきそうな女たちと法界院家殺人時件

父の急死によって会社が他人の手に渡り無職の日々を過ごしていた成瀬啓介は、親戚の法界院法子に呼ばれ彼女の住む豪邸を訪れた。約束の時間は午後8時。秘書だという月山静香の案内で本館へと向かう途中、離れに明かりがついているのに気が付いた。半開きになったカーテンの隙間からは映画が何かが流れているのが見える。静香は法子の遠縁の真柴晋作が住んでいると説明した。面会した法子から秘書見習いの提案を受け承諾した敬介はそのまま法界院家に泊った。翌朝、離れに向かったお手伝いのエリカが異常を発見。倒れた大型テレビの下に人間らしき足が覗いていた。2人がかりでテレビを持ち上げた敬介は、真柴が首を撃たれて息絶えているのを見た。真柴の首を貫通した銃弾がテレビ画面に届いて亀裂を作り、その反動で大型テレビが落ちてきたものと思われた。死亡推定時刻は午後7時~9時頃だが、8時頃に映画が流れていたのを目撃した敬介と静香らの証言から8時~9時の間だと思われた。だが警察は犯人を絞り込めず迷宮入り寸前、殺人事件が起きたとあって法界院グループはイメージダウン必至だった。

秘書見習いという名の雑用係の敬介の最初の仕事は、家賃の支払いが滞っているかがやき荘をどうにかすることだった。かがやき荘の住人・小野寺葵、占部美緒、関礼菜の3人は大家である法子が誰でもいいから犯人を捕まえてほしいと願っていることを敬介から知り、名乗りをあげた。

 

シリーズ最初の導入部と、かがやき荘のメンバーたちが探偵を始めるきっかけとなった事件です。警察が法界院家の外部に犯人を求めて迷宮入りしそうになっていることから、彼女らは敬介も含めた内部の人間たちの犯行説を取りました。推理小説好きの葵を探偵役、美緒と礼菜をサポートにして家賃滞納の強いきずなで結ばれた3人の見事な推理により、犯人は犯行を認めました。敬介たちが見たという午後8時の映画がポイントとなるアリバイトリックでした。

洗濯機は深夜に回る

アイドルコンサート後の飲み会帰りの礼菜とアルバイト帰りの美緒は、道端に洗濯機が捨てられているのを発見した。元電気店勤めの美緒によると容量も大きく比較的新しい機種だという。「区役所に連絡済み」という張り紙があるもののお誂え向きに台車に乗せられ放置してあるのをいいことに、美緒と礼菜は台車ごと洗濯機を拾ってかがやき荘に持ち帰った。重いので盗まれる心配はないと洗濯機は玄関先にいったん置き、台車のみ家の中に持ち帰った。

夜中の3時頃、外で変わった音がすると葵と礼菜が階下に降りていくと、目が覚めたらしき美緒も玄関口にいた。3人で玄関のドアを開けると、拾ってきた全自動洗濯機がなぜか雑巾を洗濯しているという怪奇現象が起きていた。

秘書見習いの敬介は、法子に頼まれて老婦人・北沢加奈子のマンションを訪問していた。一人暮らしをしている彼女が体調を崩したため、一時的に身の回りの世話をするという役目だった。一通りの世話を終え翌々日の訪問の約束をして部屋を辞去した敬介は、マンションのオートロックの前で敬介と入れ替わりに入っていく男を見た。まるでオートロックが解除されるのを待っていた様子だった。

翌々日、法子を伴って北沢家を再訪した敬介は玄関の鍵が開いていることに不審を抱く。中に入ってみると、一人の男が血を流した状態で倒れている。すでに息はなかった。男は前日マンションの共用玄関で敬介とすれ違った男だった。そして住人の北川加奈子は部屋から姿を消していた。

 

殺されていた男は加奈子の親戚で、たびたび部屋を訪れては金をせびっていたことが分かりました。前回の実績をもとに、家賃を払うか北沢加奈子を見つけるかしろと要求されたかがやき荘の3人は、加奈子の行方を捜すため聞き込みをはじめました。加奈子の写真を持ち手当たり次第に聞いて回っていたところ、美緒と礼菜が拾った洗濯機を最初に狙っていたという男と出会います。男は洗濯機が捨てられる場面を見ていたと言い、台車を押していたのは加奈子だったと証言しました。洗濯機が夜中に回っていた謎と殺人事件、加奈子失踪事件がきれいに一本の線で繋がりました。

週末だけの秘密のミッション

法子→敬介経由でとある老夫妻の夫・松原浩太郎の浮気相手を調べることになった3人は、毎週金曜日になると車で出かけるという浩太郎を尾行することにした。1回目の尾行では、浩太郎は工事現場のそばに車を停めたきり誰かと会う様子もない。1時間半ばかり駐車した後自宅に戻っていった。翌週の2回目も工事現場へと車を停めた……と思ったらしばらくして急発進した。速度を緩めることなく走り続ける浩太郎の車を追いかけたが、結局赤信号にひっかかり尾行は失敗に終わった。3回目は美緒一人で尾行を行うことになった。葵と礼菜はバイトだからだ。浩太郎の車はゆっくりと走り続け善福寺公園のそばで停まった。あの車は本当に浩太郎が運転しているのだろうか、好奇心にかられた美緒はそっと浩太郎の車に近づく。間違いなく車には浩太郎が乗っていたのを確認し、法界院家から借りた車へと戻った美緒は背後に人の気配を感じたと思った瞬間、何者かに突き飛ばされ頭を車に打ち付けて意識を失った。

額に傷を負ったものの無事だった美緒たちのもとに、法子から捜査中止の通達が届いた。中止は依頼主の意向で、今までの働きを考慮して家賃は半分だけまけてくれるという。美緒の個人的な恨みから3人は、美緒を突き飛ばした犯人を見つけることにした。浩太郎の友人に話を聞くことができた美緒たちは、好みの女性の話をしていた時に浩太郎が「しーちゃん」というニックネームを口にしていたことを聞き出す。

 

浩太郎は浮気をしていたのではありませんでした。ですがある目的があって、毎週同じ曜日に車で出かけていたのです。美緒を突き飛ばした犯人を捜す過程で、浩太郎の謎も解決した3人は、美緒の額のけがを盾に無事家賃を免除してもらうことに成功しました。

委員会からきた男

コンビニバイト帰りの葵は、西荻向上委員会副委員長の吉田という紳士風の男に声を掛けられる。西荻窪の地位向上を目指して活動しているというその団体は、新しい小冊子の発行を予定しており葵のインタビューを載せたいという。美緒と葵に怪しまれつつも架空団体でなかったこと、吉田の雰囲気が葵の好みだったことからインタビューを受けた。その後表紙も葵にしたいと言われ、後日改めて吉田と会うことになった。写真撮影とあってお洒落をしていった葵だったが、吉田からは委員会の予算でもっと素敵な格好をさせたいといわれ、服、靴、髪型といつのまにか吉田の意見で仕立て上げられ、西荻窪駅をバックに撮影に臨んだ。

撮影が終わると吉田から夕食に誘われる。タダ飯に惹かれ連れていかれた落ち着いた雰囲気のイタリアンでアルコールを飲んだ葵は、帰り際、自分の呂律が回らないことに気が付いた。体もやたらと重い。朦朧としはじめる意識のなか、ちゃんと家まで送ってくれるという吉田の声を聞いた。

 

姿かたちを吉田の思うように変えられていく。マイフェアレディーのような展開ですが、葵自身は「注文の多い料理店」を想像しています。あれこれと着せられて最後に何が出てくるのか……目が覚めた葵は見知らぬ屋敷にいることに気が付きました。緊迫した雰囲気のはずなのに、どこか笑いが漏れるのはさすが東川さんといったところです。

紳士然としていた吉田の正体が割と衝撃でした。

 

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アラサー女子3人が集まれば姦しく、それなりに見栄やら何やらでルームシェアも上手くいかない気もしますが、全員クビ同然に失業してアルバイトをしていること、3人の性格が違うこともあってうまくかがやき荘での生活が続いているようです。特に滞納している家賃の支払いもしくは立ち退きを求めてやってくる敬介に対しては、アイコンタクト以上に連携が取れていて素晴らしいです。

タイミングよく第2弾も発売されましたので、また読んで感想を書きたいと思います。

 

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