東川篤哉「鯉ヶ窪学園探偵部」シリーズ第2弾『殺意は必ず三度ある』あらすじとネタバレ感想

恋ヶ窪学園探偵部を主人公に据えたシリーズ第2弾「殺意は必ず三度ある」のあらすじと感想をまとめました。見事なまでに野球一色の本になっています。野球を中心としたストーリー展開、トリックに使われたのは球場、トリックの鍵を握る重要なアイテムも野球に関する物ばかりと、野球好きには挑み甲斐のあるミステリーになっているのではないかと思います。

スポンサーリンク

「殺意は必ず三度ある」書籍概要

恋ヶ窪学園探偵部シリーズの2冊目となります。

  • 殺意は必ず三度ある(2006年5月/実業之日本社ジョイ・ノベルス)
  • 殺意は必ず三度ある(2013年8月/光文社文庫)

 

恋ヶ窪学園野球部は毎年甲子園の地区大会1回戦で姿を消すという周囲の高校から喜ばれている部活だった。キャプテンの土山がいつも通り朝練のためグラウンドへ行くと、いつもと何かが違った。よくよく見るとベースが無くなっていたのだ。1塁、2塁、3塁、ホームベースと全て盗まれていた。

登場人物

  • 赤坂通:2年生。先輩2人に騙されて探偵部に入部した。
  • 多摩川流司:3年生。探偵部部長。
  • 八橋京介:3年生。関西弁の探偵部員。
  • 土山博之:3年生。野球部キャプテン。多摩川とは喧嘩友達。
  • 野口啓次郎:恋ヶ窪学園の野球部監督。第一の被害者
  • 桜井あずさ:3年生。生徒会長。龍ヶ崎家とは子どもの頃から付き合いがある。
  • 龍ヶ崎賢三:第二の被害者
  • 龍ヶ崎真知子:賢三の妻。車いす生活
  • 橋元省吾:賢三の甥。飛龍館高校の理事長秘書
  • 芹沢由希子:恋ヶ窪学園の世界史教師。龍ヶ崎家に居候している
  • 安西:龍ヶ崎家の家政婦
  • 吉野:第三の被害者
  • ビクター:龍ヶ崎家の真っ黒のラブラドール・レトリバー
  • 脇坂監督:飛龍館高校野球部監督
  • 祖師谷警部&烏山刑事:今回の事件を担当

第一の事件

探偵部の3人は恋ヶ窪学園と飛龍館高校の練習試合を観るため、会場である飛竜館球場へ向かっていた。そこで生徒会長の桜井あずさと出会う。彼女も試合を見に行く途中だった。飛龍館高校の理事長の龍ヶ崎家とは家族ぐるみで交流があるというあずさの案内で球場へと向かうが、方向音痴のあずさのせいで道に迷ってしまう。何とか無事に会場に着いたものの、恋ヶ窪学園野球部にはあるトラブルが起きていた。まもなく試合が始まるというのに、監督の野口が来ていないというのだ。

急遽キャプテンの土山を代理監督にして練習試合は始まった。同レベルの野球部らしい乱打戦を制したのは、土山の放った逆転サヨナラホームランだった。バックスクリーン直撃のボールを追いかけていった飛龍館高校の外野手が、よじ登ったフェンスの向こうに異常を見つけた。姿が見えなくなっていた野口が猿ぐつわにロープでグルグル巻きにされたうえで、首筋を刃物で切られて殺されていたのだ。死体のそばには新品のグローブとグローブの中に納まっていたボール、使い古しのベースが1つ置かれていた。そのベースは、先日恋ヶ窪学園のグラウンドから盗まれたものだった。

探偵部の多摩川と八橋は、今回の事件は飛龍館高校サイドの事件ではないかと推理する。被害者は恋ヶ窪学園の人間だが、盗んだベースをわざわざ置いて残したことから恋ヶ窪学園側に事件を押し付けようとしたのだと言う。

野口の死亡推定時刻は、遺体発見前夜の午後8時半~9時半だった。その当時の関係者らが主張するアリバイは以下の通り。

  • 龍ヶ崎賢三:妻の真知子・家政婦の吉野、ペットのビクターと散歩中、一塁側の出入口の鍵が開いているのに気づき、念のためグラウンドを横切って三塁側の鍵の確認へ行き、そこで芹沢と橋元と出会い、立ち話をしてから再びグラウンドを横切って戻った。
  • 龍ヶ崎真知子&吉野:賢三、ビクターと球場付近を散歩した際、一塁側の鍵が施錠されていないことに気づいた夫がグラウンドを横切って三塁側の鍵のチェックへ行くのを待っていた。
  • 芹沢由希子:夕食後、橋元に誘われて球場付近を散歩中、三塁側出入口で賢三がグラウンドからやってくるのに気づき立ち話をする。その後賢三がグラウンドを通って戻っていくの見送った。
  • 橋元省吾:由希子と同じ行動をとる。
  • 安西:龍ヶ崎の人間が散歩に出かけている間、家で留守番をしていた。
  • 多摩川&八橋&赤坂:一緒にヤクルトVS阪神戦を観戦していた

犯行時刻と思われる時間帯に一人になったことがあるのは賢三だけだった。だが複数の目撃者がいるなか賢三が一塁側から三塁側まで往復して戻ってくるのに費やした時間では、到底バックスクリーンまで行って殺人をして戻ってくるのには時間も手間も足りなかった。

探偵部行きつけのお好み焼き店「カバ」で事件について話し合っていた3人は、偶然立ち聞きしていた飛龍館高校の脇坂監督を捕まえ、飛龍館高校の理事長が脇坂をクビにして野口を新たな監督に据える話の真相についてぶつけてみた。脇坂と野口は高校の同級生で、当時は飛龍館高校野球部のエースと4番だったそうだ。だが高校卒業後に社会人野球に進んだ野口は、酒に酔って高校の後輩とバイクの2人乗りをしている時に少女をはねるという事故を起こし、会社も野球も辞める羽目に陥っていたという。

第二の事件

何やら急いでいる風の桜井あずさを見かけた多摩川部長が呼び止めると、彼女は賢三が亡くなったのでこれから龍ヶ崎家に行くのだという。彼女に同行して龍ヶ崎家で芹沢由希子から事件の詳細を聞くと、鳥居と祠があるだけで神主不在の神社で背中にナイフが突き刺さっている状態で発見されたのだという。発見されたのは早朝だが、殺されたのは昨晩だろうという。昨晩からずっと賢三と連絡が取れなくなっていたのだ。

芹沢によると、野口の事件と賢三の事件は関連があるという。なぜならば賢三が殺された現場には、ベースとグローブとボールが置かれていたからだった。

第三の事件

探偵部は恋ヶ窪学園野球部の土山から新たな証言を得ていた。野口が殺されたと思われる時間帯、土山はまさに犯行現場である球場の外周を走っていて、理事長と男が一緒にいる姿を見かけたというのだ。場所は三塁側出入口のあたり。土山の証言が正しいとするならば、あの日、賢三、橋元と一緒にいたという芹沢由希子のアリバイが成り立たなくなる。

探偵部の3人と桜井、芹沢は、芹沢の部屋で事件の検証を続けていた。2つの事件に共通するアイテムは見立ての為ではないかと探偵部の先輩たちは言う。野口監督が捕らえられて殺されホームベースとキャッチャーミットが残されていたのは野球でいう「補殺(捕殺と犯人が勘違いした)」、賢三が刺殺されベースとファーストミットがあったのは「刺殺」を指している。恋ヶ窪学園で盗まれたベースの残りは2つ。それが意味するのは「併殺(ダブルプレー)」、つまり2人同時に被害者になると言うのだ。

芹沢の部屋から出たところで、階下からドスンという音が聞こえてきた。音がしたのは芹沢の真下の部屋つまり家政婦の吉野の部屋だった。行ってみると倒れた本棚の下から手足が見える。急いで本棚をどかすと、その下にうつ伏せに倒れ肩のあたりにナイフが突き刺さった吉野の姿があった。そばには2つのベースとグローブ、ボールが置いてあった。今回の見立ては、「併殺」ではなく「挟殺(ランナーを塁と塁の間に挟んで両側からボールを持った選手が追いかけてアウトにするプレー)」、つまり本棚に挟まれて刺されたという意味だった。

関係者と警察を飛龍館球場に集め、探偵部の先輩2人が行った推理は、芹沢由希子犯人説だった。

犯人は

推理の過程もトリックも過不足ないように思われましたが、彼らは重大な思い違いをしていました。今までの推理を根本からひっくり返す重大な思い違いです。それによって再び推理は0に戻ります。

そんな時ある人物が声をあげました。考える可能性は一つしかない、犯人はあなたであると。

 

野口監督を殺害したトリックがこの一連の事件で最も難解な、不可能犯罪ものでした。図解がないとまるで理解できないので、ぜひどういった目くらましが使われていたのかを実際に本を手に取って読んでみて下さい(図解があっても混乱していますが)。第二・第三の事件は犯人側の動機という点で少し趣旨が変わったようで、ほぼおまけのような扱いになっていました。

 

□□

壮大なトリックの割には、キャラたちの性格が軽すぎるので、ライトノベルを読んでいるかのようにサクサクと読み進められる一冊でした。

 

東川篤哉さんのその他の本の感想はこちら

コミカルなのに本格派、ユーモアミステリー作家・東川篤哉のおすすめ人気シリーズと順番