東川篤哉「鯉ヶ窪学園探偵部」シリーズ第4弾『探偵部への挑戦状』あらすじとネタバレ感想

鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ「名探偵への挑戦状」のあらすじと感想をまとめました。

鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの前半(1、2冊目)で活躍した多摩川部長と八橋先輩も再登場し、その時に主人公だった赤坂君も腐った真鯉の着ぐるみ姿で参戦してくるという、いつもどおりの愉快な一冊でした。

「探偵部への挑戦状 – 放課後はミステリーとともに 2」書籍概要

「霧ケ峰涼と渡り廊下の怪人」「霧ヶ峰涼と瓢箪池の怪事件」「霧ヶ峰涼への挑戦」「霧ヶ峰涼と十二月のUFO」「霧ヶ峰涼と映画部の密室」「霧ヶ峰涼への二度目の挑戦」「霧ケ峰涼とお礼参りの謎」

  • 探偵部への挑戦状(2013年10月/実業之日本社)
  • 探偵部への挑戦状(2016年10月/実業之日本社文庫)

霧ケ峰涼と渡り廊下の怪人

鯉ヶ窪学園では三大イベントの一つ、体育祭を二日後に控えてそれぞれが準備や練習を進めていた。雨が上がり、親友の奈緒と一緒に下校しようとしてたところガツンという音と男の悲鳴を奈緒が聞いた。第二校舎と第三校舎つなぐ渡り廊下に、あおむけでひっくり返っている男がおり、側には三人のクラスメイトが心配そうに佇んでいた。倒れていたのは陸上部のワンマン部長・足立駿介で、何か角ばったもので額を殴られたらしい。目を覚ました駿介を保健室へと奈緒が連れていき、残った涼は三人とともに現場検証を始めた。

渡り廊下は鉄柱で支えられたトタン屋根がかかっており側面には1mくらいの板塀、中間付近は渡り廊下を横切れるようにと一部途切れている。その途切れた場所に駿介は倒れており、襲われた近辺の記憶を一時的に失っていた。

ぬかるんだ地面には、三人と涼、奈緒の足跡しか残っていない。トタン屋根にも登った涼だったが、駿介を殴ったと思われる角ばったものは見つからなかった。現場検証をしているところを見つかり注意を受けた涼たちだったが、その教師から事件があった時間頃、中庭を通っていく学ラン姿の背の高い男子生徒を見たという証言を得られた。ただ三階から見たため窓枠に邪魔をされ上半身しか見ていないという。だが背が高いというだけで容疑者にされた駿介のライバルには、当時バスケ部の練習中だったというアリバイがあった。

 

事件は体育祭当日、探偵部顧問の石崎先生によって解かれました。涼が記録しておいた写真・クラスメイト三人の足跡がきれいすぎることに疑問を抱き、そこからどういう事件だったかを瞬時に読み解きました。キーポイントは体育祭でした。それとほぼ同時に騎馬戦で卑怯な手段で優勝をもぎ取った駿介も事件当時のことを思い出したようです。それにしても足立駿介、敵を作りすぎです。

霧ヶ峰涼と瓢箪池の怪事件

体育祭が終わった後は文化祭だ。地学部のお化け屋敷「緋鯉惨殺館」に貸し出された赤坂を除いた探偵部の面々、部長の多摩川、八橋、涼は部費を稼ぐために「お好み焼き」の屋台に奮闘していたが、お好み焼きを上手にひっくり返せない部長によって「キャベツ炒め」を格安で販売する羽目に陥り、売れば売るほど赤字になるという惨状だった。

そんな初日が終了し反省会と称しささやかに盛り上がっていた三人は、学園の敷地内にある瓢箪池に立つイケメン・大島敦を見かける。次々と彼女を変えていく軽薄な男の様子をこっそりうかがっていると、くるぶしまで隠れるようなマキシスカートの髪の長い女が大島に近づいていくのを見た。女は右手に棍棒のようなものを持ち、大島の肩をたたいて振り向かせると同時にその棒を振りかぶった。殴られ池へと落ちた大島だったが、本人は切り付けられたと主張し、手当をした保健医も鋭利なもので切られているという。

涼は、好意を抱いている雪乃が大島と付き合い振られたことで大島を嫌っている中園という男子生徒から、大島を襲いそうな3人の女性の名前を聞き出す。大島をストーカーしている同級生、大島の現彼女に好意を抱いているテニス部の女の子、元彼女で大島に振られた気象観測部の雪乃。彼女たちのうち誰かが大島を襲ったのか。

聞き込みをしていた涼は、大島を殴った女がすぐに逃げていったことを思い出す。その手にすでに棍棒は握られていなかった。消えた凶器を探して瓢箪池に目を付けた探偵部は、池の中からカッターナイフを見つけ出した。

 

棍棒のようなもので殴られたように見えたが実は切られていたという謎にチャレンジする話です。凶器はカッターナイフだと判明しますが、どのようにしてカッターを棍棒に見せかけていたのか、なぜ棍棒のものなのかという疑問にチャレンジする三人でした。

凶器のトリックは文化祭ならではの物を使って作られていました。なかなか浅はかで陰険な犯人でした。

霧ヶ峰涼への挑戦

文化祭2日目、ミスコンを見に行く多摩川と八橋に屋台の留守番を任されていた涼のもとへ、不評のためお役御免になったと腐乱した真鯉の着ぐるみ姿で赤坂がやってきた。赤坂からミスコンのチラシを手に誘われた涼は、屋台を「準備中」にして二人で会場となる第一校舎の屋上へと向かうが、待っていたのは「ミス鯉高祭」ではなく「ミステリ・コンテスト」、ミステリ研究会の大金うるるだった。

屋上から第二校舎の4階で揉み合いをする男女の殺人シーンを目撃した涼たちは、急いで現場へと向かう。だが現場と思われる教室の扉は内側からガムテープで目張りがされており、涼と赤坂の二人がかりで開けた扉の向こうには、背中からナイフの柄が突き出た格好で倒れ伏している「死んでる・一年大野」だった。絵具で赤く染まったシャツには「致命傷」と書かれている。涼が屋上で見た殺害シーンはミステリ研究会の演じたもの、つまり、大金うるるから探偵部・霧ケ峰涼への挑戦状だった。

教室内の犯人が隠れそうな場所、掃除用具入れはからっぽだった。うるるの誘導で階段へと向かった涼たちは3階の踊り場で「重要な目撃者・一年倉橋」という大きなプレートを提げた子から、10~20分ほど前にマスクにサングラスの怪しい女が凄い勢いで階段を駆け下りていったと教えてもらう。

また4階の廊下に戻り「さらに重要な目撃者・一年吉田」から、事件発見時、現場となった教室の扉は全開になっており、廊下に男が立っているのをみただけという証言を得る。その男は赤坂のことで、マスクにサングラスの女は見ていないという。

犯人はいかにして密室から脱出したか。うるるは「この密室の謎は、あるひとりの人物に、あるひとつのことを質問すればたちまち解ける」とヒントを与え、涼を悩ませるのだった。

 

結局ミステリ研究会からの挑戦を解決したのは、顧問の石崎先生でした。涼に呼び出され概要を聞いただけですぐに謎を解いてしまいます。うるるというのはダイキンのエアコンのブランド愛称(うるるとさらら)で、涼とうるるはエアコン仲間ということもありライバル意識をもっているようです。エアコンが謎解きのヒントになっているのは盲点でした。

霧ヶ峰涼と十二月のUFO

年末押し迫る冬休み期間中の補修で学校に行った涼は帰り道、UFOおたくの地学教諭・池上冬子と会い、具材がほぼベーコンのハンバーガーを食べるため喫茶「ドラセナ」へ向かっていた。その途中男の悲鳴が聞こえる。場所は恋ヶ窪協会、格子状の門扉の向こうの庭に黒い服の男が仰向けに倒れているのが見えた。気絶していたのは神父で両手をバンザイするように投げ出している。1mほど離れたところには子供の頭ほどの石が転がっていた。ぬかるんだ地面に残る足跡は、冬子と涼以外には神父本人のものしかなかった。救急車と警察を呼ぶ間、UFOの仕業だと興奮する冬子だったが、あることに気づいてUFO犯行説を取り消す。

神父が倒れているのを見てやってきたシスター・アンジェリカは、事件が起こったと思われる時刻、部屋の窓を奇妙な物体が横切るのを見たと証言した。それは庭の外へ向かって飛んでいった。また救急車で運ばれて行った神父の身体の下には、縦長の穴が掘られていた。

その穴にはクリスマスツリーのもみの木が植えられており、クリスマス翌日に神父が一人で片づけたあとだという。シスター・アンジェリカの証言で、隣人の佐久間と協会敷地内へと枝葉を伸ばす楓の木でトラブルがあったことを聞いた冬子は、警察の力を頼って佐久間宅の庭へと向かった。

 

事件を解決したのは冬子先生でした。UFO犯行説を取り下げたのは、12月はUFOが現れないからという理由なのが先生っぽくもあり、せっかくの名探偵ががっかり探偵になってしまう所以でもありました。鯉ヶ窪学園は生徒だけでなく先生も癖がある人物が揃っています。

犯人は誰?ではなく、どういう状況で神父以外の足跡のない庭で彼は仰向けに倒れていたのかという謎でした。

霧ヶ峰涼と映画部の密室

部員の星野真澄から借りた映画部のDVDを返すため部室へと行くと、加藤という男子生徒が出てきた。自分は歯医者で遅くなったが他の部員たちは撮影のために出払っているという。真澄は頭を怪我して欠席中と話した加藤は、涼に真澄の代役を頼んだ。部員たちがお金を出し合って購入したという40インチの薄型テレビの隣の戸棚にDVDを片付け、加藤は涼を伴って撮影現場である近所の雑木林へと向かった。部室棟を出る直前、忘れ物があると部室へと戻っていった加藤を待つ間、涼は出入口の近くに隠れているだろう不良・荒木田の煙草の煙を目撃した。

映画撮影中、カメラのバッテリーを取りに部室へと戻った男子・増村が、部室からテレビがなくなっていると不思議そうに話す。部長の優子、増村、加藤の3人について映画部の部室へと向かった涼は、先ほど目にしたテレビが忽然と姿を消しているのを確認した。4人で探し回った結果、使われていない焼却炉のそばに画面を割られた状態でテレビが置かれているのを発見した。

部室棟には両端2か所に出入り口があり、片方はずっと演劇部が練習中、もう片方が荒木田が隠れて喫煙していた。どちらもテレビを持った人物の出入りはなかったという。また部室の窓の外には柵が巡らされておりテレビの移動は難しい。涼と加藤が部室をあとにした午後3時から4時過ぎまでの間、映画部は密室状態に置かれていたことになる。いったい誰が、どうやってテレビを部室から焼却炉まで運んだのか。

 

探偵は推理おたくの探偵部顧問、石崎先生でした。どうも霧ケ峰涼さんという主人公は、実践的な探偵部にいるにもかかわらず、難しい謎を前にすると人を頼るようです。

密室は犯人が意図して作ったものではなく、偶然の重なりで作られたものでした。

霧ヶ峰涼への二度目の挑戦

午後3時頃、雪が降り積もる空き家で赤坂が刺殺された。即死だったらしい。同じ部屋にいた涼はコーヒーに入れられた睡眠薬で眠らされており、6時頃にやって来た大金うるると妹のさららに起こされたのち、現状を把握する。道路から空き家の玄関までの間に残っている足跡は涼と赤坂のもののみで、二人乗りで来たと思われる自転車のタイヤ痕と軒先に立てかけられている自転車は確認できた。つまり涼は容疑者だった。だが涼は赤坂を殺していない、おそらく大金姉妹の犯行だった。だがいったい2人はどうやって雪で閉ざされた密室で犯行を行ったのか。

という設定で大金うるるに再び勝負を挑まれた涼は、石崎先生に助けを求めることを禁止され、一人で謎の解明に当たることになった。「善意の隣人」役からは、怪しい人は見なかったが、午後3時過ぎに男のやられたという叫び声を聞いたという証言を得る。外に出るとマッチ売りの少女よろしく「善意の売り子」が空き家の前を通った午後3時過ぎ、男女の足跡とタイヤ痕らしきものを見たと証言した。

うるるに連れられて行ったゲームセンターの「善意のお客さん」は、午後2時半頃、二人がゲームセンターで遊んでいる姿をはっきりと見たというが、3時から6時近くまではバラバラで遊ぶ2人の姿を目にしただけだった。午後3時、姿かたちがそっくりな2人のうち片方が自転車で空き家に来て赤坂を殺害し、もう片方がゲームセンターで1人2役をしてアリバイを作ったと睨んだ涼だったが、涼が目を覚ました午後6時頃、うるるとさららは揃って空き家にいた。涼の推理だと、3時過ぎにはあったタイヤ痕によってゲームセンターでアリバイを作っていた方が空き家に入れないことになってしまう。

 

孤軍奮闘する涼でしたが、思わぬ犯人側のミスによって密室トリックは暴かれました。大金姉妹、なかなかの策士です。

霧ケ峰涼とお礼参りの謎

鯉ヶ窪学園では、3月1日に卒業前の3年生による先生へのお礼参り解禁が行事化していた。

瓢箪池に浮かぶテニスボールを取ろうと網を手にした元テニス部の武田の手伝いをするつもりが邪魔をしたり、ふがいない野球部に鯉の滝登りノックをしたりと日々過ごす涼だったが、瓢箪池とはまた別の半月池の畔で、体育教師の柴田が大きなマスクをした男子学生に何かで殴られ池に落とされるところを目撃した。男子学生は両手でガッツポーズをしたあと凄い勢いで逃げていった。

追いかけた涼は、小競り合いをしている男女を発見。男の方はマスクをしていた。男がぶつかったのにろくな謝罪もなく去ろうしたことが原因でもめていた。男は潔白を主張し、急いでいたのは彼女との待ち合わせがあったからだという。

柴田が襲撃されるところを見ていた涼と友人の奈緒は、犯人が柴田を殴った直後に派手なガッツポーズを取ったことを思い出す。当然その手には凶器は握られていなかった。凶器は池の中かと瓢箪池よりもきれいな半月池をのぞき込むののの、鯉が泳いでいるばかりで凶器は見つからなかった。いったい犯人はどんなトリックを使って凶器を消し去ったのか。

 

またもや石崎先生が謎を解きました。思いもかけないものを凶器として使っていたため、犯人に対して全く同情の余地が生まれませんでした。個人的にはまれにみる凶悪犯です。

ちなみに3年生のお礼参りと同様、先生にもお礼参り返し(?)の恒例があるようで、無事に犯人は柴田の反撃に遭いました。

この話でもって探偵部の名物コンビ・多摩川部長と八橋が卒業しました。寂しいです。