東川篤哉『館島』あらすじとネタバレ感想

東川篤哉さんの「館島」のあらすじと感想をまとめました。

時代としては瀬戸大橋が開通する前(これから工事に取り掛かろうとする辺り)の198x年になっていて、そのことが非常に重要なカギを握っています。

ラストのすべての謎が解明されたあたり、頭の中に雄大な景色が浮かび上がりました。

「館島」書籍概要

天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致で描いた意欲作。驚愕のトリックが炸裂する本格ミステリ。「BOOK」データベースより

  • 館島(2005年5月/東京創元社ミステリ・フロンティア)
  • 館島(2008年7月/創元推理文庫)
created by Rinker
¥858(2020/10/30 04:41:54時点 楽天市場調べ-詳細)

 

芸術的な建築物をつくることで有名な天才・十文字和臣が、瀬戸内海に浮かぶ「横島」に4階建ての別荘を建てた。新年が明けて間もなく、彼はその別荘の巨大な螺旋階段の下で遺体で発見された。転落死かと思われたが墜落死と判断された。だが別荘およびその周辺のどこからも転落した痕跡がなく捜査は頓挫した。

そしてその年の夏、夫人の康子によって当時の関係者らが再び横島に集まった。

和臣の建てた別荘は、見た目が銀色、中心が螺旋階段になった六角形をしており、2階から4階までは円形廊下とそれぞれにトイレや風呂のついた6つの部屋からできていた。

また屋上はドーム状になっており、真ん中を屋根のない十字の廊下が走って4つの空間を作っていた。そのうち1つが和臣が使っていた部屋、2つが展望室、1つが階段となっている。廊下が交差する十字の真ん中に六角形の台座と日時計があった。

登場人物など

  • 201号室:十文字正夫。次男
  • 202号室:-
  • 203号室:吉岡俊夫。十文字家の主治医
  • 204号室:十文字康子。女主人。十文字工務店社長
  • 205号室:十文字信一郎。長男
  • 206号室:十文字三郎。三男
  • 301号室:-
  • 302号室:(三郎)
  • 303号室:相馬隆行。岡山県警の若手刑事
  • 304号室:鷲尾賢蔵。十文字工務店副社長
  • 305号室:栗山智治。フリーライター
  • 306号室:-
  • 401号室:-
  • 402号室:小早川沙樹。私立探偵
  • 403号室:野々村奈々江。淑江の娘
  • 404号室:野々村淑江。県議会議員
  • 405号室:図書室
  • 406号室:-
  • その他:青柳新之介。別荘管理人

あらすじ

夏に初めて別荘に滞在する相馬、沙樹、奈々江以外の部屋割りはすべて1月の和臣墜落死時と同じだった。和臣の捜査に関わっていた相馬、おばの康子に依頼された沙樹、年の近い奈々江の三人は最期に和臣が滞在していたと思われる屋上の部屋へと向かった。捜査状況を知っている相馬が、別荘内の案内がてら沙樹と奈々江に当時のことを説明していく。和臣は亡くなる前に2本半のビールを飲んだと思われる。ビールに目がくらんだ沙樹が、当時を再現するのが大切とばかりにビールを2本半空けてトイレに駆け込んだりと賑やかに調査を進めていると、長男の信一郎が奈々江を探してやってきた。信一郎と三郎は、奈々江の意思そっちのけで結婚相手の座を争っていたため、夫の座を射止めるべく奈々江をクルージングに誘いに来たのだった。

青柳が操縦するなか、別荘の取材にやってきた栗山、信一郎と奈々江がパラセーリングで空中遊泳を楽しんだ。

その日の晩、疲れた相馬はうたたねで晩餐に遅刻し、沙樹は調子よくアルコールを飲んでいた。日付が変わるころ電話で呼び出され奈々江の部屋へとほいほい向かった相馬は、彼女の部屋で酔っ払っている沙樹を見た。結局2時過ぎまで3人で飲み続け、最後に相馬は部屋を追い出された。部屋へ戻る前に信一郎が気になった相馬は屋上へと向かう。奈々江の部屋へ行く途中に屋上へと行く信一郎とばったり出くわしていたからだ。彼は屋上でデートだと仄めかしていたが、奈々江はずっと沙樹・相馬と一緒にいた。屋上への扉には鍵がかかっていたため確認はあきらめて螺旋階段を回りながら3階の自室へと戻った相馬は、酔っ払っていたせいかフロアを間違えて真上の奈々江の部屋に入ってしまい、奈々江の部屋でそのまま寝ていた沙樹にたたき出された。

翌朝、屋上につながるドアに凭れ掛かった状態の信一郎の絞殺体が見つかった。屋上には三郎もいた。だが三郎は奈々江の手紙で和臣の部屋に呼び出され、置いてあったワインを飲んだあと朝まで寝ていたと犯行を否認した。天候が荒れ警察が横島に行けなくなり、相馬は上司から現場保存を命じられた。三郎を空き部屋の302号室に閉じ込め、館内のすべての鍵を相馬が管理することにし、現場保存の名のもと青柳が洗濯しようとしていた全員分のシーツを洗濯室内に集めて保管した。

夜、螺旋階段の付近で怪しい動きをしていた栗山が墜落死した。302号室に監禁されていた三郎が窓から人が落ちるのを見たと騒いだため、確認した相馬が外で倒れている栗山を発見し、主治医の吉岡が簡単な検視を行った。彼によると栗山は3階以上の高さから落ちたと思われた。だが402号室の沙樹の部屋に栗山はいなかったし、屋上へ通じるドアには鍵がかかっていた。和臣の時と同じ不可思議な死に方だった。

事件記事を書きたかったらしい栗山はルポノートを残していた。その中に和臣が横島の土地を購入したあとに瀬戸大橋の橋脚が立つことが決定し、土地の一部を売却して多大な利益を得たことが書かれており、その経緯に何らかの陰謀を感じていたらしいことが書かれていた。だが当時の土地売買に詳しい管理人の青柳によると、和臣には何の企てもなく、横島の土地価格が跳ね上がったのは偶然らしい。

訳が分からない相馬に対し、沙樹は着々と事件の真相に迫っていた。相馬から聞き出した情報から犯人を特定し、康子夫人にこの別荘には何という名前がついているのかと尋ねる。夫人の答えは、館には名前がついていない、だった。答えに納得した沙樹は、犯人を罠にかけることを思いつく。

沙樹と康子夫人、途中から合流した相馬と奈々江が息をひそめて待つ中、ある人物が洗濯室へとやってきた。

まとめ

犯人の動機は思いもよらないものでした。あとになって伏線が張られていたことに気づくのですが、貼り方が不自然すぎて真意に全然気が付きませんでした。

犯人は和臣が建てた別荘の秘密を知る唯一の人物で、信一郎は自分の邪魔をする存在、栗山は館の秘密を知ったため殺したようです。

別荘の秘密は瀬戸大橋が完成すればわかるようになっていましたが、まだ工事にも入っていない今は、パラセーリングによって解明されました。

 

□□

犯人は誰か、どうやって殺したのかなどよりも、和臣氏が建てた別荘そのものが最大の謎で巨大な舞台装置になっていました。コミカルな文体にごまかされましたが、非常にスケールの大きな謎でした。