東野圭吾「ガリレオ」シリーズ第9弾『沈黙のパレード』あらすじとネタバレ感想

東野圭吾さんの「沈黙のパレード」のあらすじと感想をまとめました。

だいたい犯人は見当が付くようになっているのでアリバイ崩しがメイントリックかと思っていたら、フーダニットとホワイダニットでした。騙されました。

久々のガリレオシリーズ、やっぱり面白かったです。

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「沈黙のパレード」書籍概要

突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。「BOOK」データベースより

  • 沈黙のパレード(2018年10月/文藝春秋)

東京の菊野市にある定食屋「なみきや」には佐織という看板娘がいた。人目を惹く美貌と明るい性格、並外れた歌唱力で歌手としてデビューを目指し音楽スタジオを持っている新倉の元で練習も積んでいた。だが19歳のある日、出かけて行ったきり佐織は戻ってこなかった。知り合いや近所の商店街、警察も必死に行方を捜したものの見つからないまま3年の月日が経ったその日、静岡の警察から連絡があり火事になった家の焼け跡から白骨が見つかったと言う。DNAの照合の結果、佐織だと分かった。

主な登場人物

  • 並木祐太郎:「なみきや」の主人
  • 並木真智子:祐太郎の妻で佐織と夏美の母
  • 並木佐織:並木家の長女。行方不明となり3年後静岡で白骨が見つかった
  • 並木夏美:佐織の妹。大学生
  • 高垣智也:佐織の恋人
  • 戸島修平:祐太郎の幼馴染で「トジマ屋フーズ」社長
  • 新倉直紀:元ミュージシャンの資産家。才能のある人間を発掘し世に送り出している。佐織には大きな期待をかけ「宝物」と言い大切に育てていた。
  • 新倉留美:新倉の妻。夫の夢を叶えるため佐織を育てていた。
  • 宮沢麻耶:書店の社長兼キクノ・ストーリー・パレードの実行委員長兼菊野チームの代表
  • 蓮沼寛一:佐織を殺害した犯人と目される。過去にも殺人罪で起訴されたが無罪を勝ち取った過去がある
  • 増村栄治:蓮沼の元同僚。菊野市に戻ってきた蓮沼が転がり込んだ先
  • 本橋優奈:故人。12歳。23年前の蓮沼の被害者
  • 湯川:物理学者。アメリカから帰国し菊野市にある研究施設にも通っている。草薙の親友
  • 草薙:警視庁の刑事。係長
  • 内海:草薙の部下の刑事。
  • 武藤:菊野署の刑事

あらすじ

警視庁の草薙と内海は管理官の間宮に呼ばれ理事官の多々良から、静岡県で起きたゴミ屋敷の火災について話を聞く。焼け跡から2体の白骨遺体がでた。一つは6年ほど前から姿を見かけなくなっていた家の住人の老女、もう一つは3年前に行方不明になった並木佐織だと確定した。老女の死に不審はなく、佐織の方は頭蓋骨に陥没のあとがあったが殺されたかは不明だという。老女には蓮沼寛一という息子がいたと教えられ、草薙は19年前の新米刑事だった頃に火事のあったゴミ屋敷へ行ったことがあったのを思い出した。

23年前の5月、12歳の本橋優奈が行方不明になった。目撃情報から不審人物が浮かび上がり、優奈の父親の会社の従業員達に捜査の目が向いた。従業員の一人が蓮沼だったが当時の捜査員は不審な点はなかったとしている。優奈が消えて1か月後、母親が遅い時間に娘を外出させた自分の責任だと遺書を残し飛び降り自殺した。事件から4年後、奥多摩の山奥で子どもの骨が見つかり優奈だと確定した。骨は焼かれてバラバラに切断された痕跡があった。遺体の焼却が可能な場所を探す一方、草薙は以前産廃処理を請け負う会社で働いていたことのある蓮沼に目を付け当時の上司に話を聞きに行く。蓮沼の容疑は深まり改めて蓮沼に話を聞きにいくが、蓮沼は何一つ答えない。捜査の過程で蓮沼が自宅の冷蔵庫を実家に運んだことを知った草薙たちは、当時からゴミ屋敷だった静岡の家から冷蔵庫を回収し調べた結果、優奈の血痕や肉片が見つかった。だが逮捕された蓮沼は完全黙秘を貫いた。裁判でも殺人を否認した以外は全て黙秘を貫く。結局状況証拠だけでは「殺していない可能性がごくわずかでもある」として蓮沼は無罪になった。

苦い思い出のある蓮沼が再び草薙の前に姿を現したのだ。蓮沼と並木佐織の事件との関わりを調べるため草薙たちは菊野市へ足を運んだ。佐織の実家「なみきや」ではなぜ縁もゆかりもない静岡で佐織が見つかったのか訳が分からないと戸惑っていた。だが蓮沼の写真を見せた途端反応があった。当時佐織が店の手伝いをしていた頃、客で来てが佐織に対する目に余る行為があり出禁にした人物だという。また佐織には妹の夏美しか知らない恋人がいたことが分かる。店の常連客の高垣という男性で、店の客と付き合い始めたことを両親に憚って妹だけに打ち明けていたらしい。

佐織の失踪後、蓮沼は働いていた廃品回収会社を辞め姿を消していたが、仲の良かった同僚の増村のところへ度々電話をかけ、警察の動きを気にしていたらしい。蓮沼が佐織を殺害し遺体を静岡の実家に運んだという状況証拠は次々に集まってくるが、優奈の事件の二の舞を心配し逮捕には踏み切れない。任意同行した蓮沼はやはり事件に関しては黙んまりを決め込み、勾留期限が切れる直前、処分保留として釈放された。アメリカから帰国した湯川が菊野市にある研究施設に通っていることを知った草薙は、久々の再会を喜びつつも蓮沼が関わったと思われる事件について湯川に愚痴がてら話して聞かせた。

佐織の恋人の高垣、歌手になるためのレッスンをしていた新倉夫妻の所へも刑事が話を聞きに行く。大切な人を失ったことでそれぞれが心を痛め犯人に対して腹を立てていた。ナミキヤの常連客でトジマ屋フーズの社長・戸島が、佐織を殺した蓮沼が逮捕もされず釈放されたうえ、自分の情報を警察に売ったと「なみきや」にいちゃもんを付け慰謝料を請求したことに腹を立て、復讐を考えている佐織の父・祐太郎が復讐を実行して警察に捕まることになってはいけないと、「蓮沼に罰を与える」計画を立て高垣や新倉に声を掛け、それぞれが了承した。

キクノ・ストーリー・パレードは地元商店街の盛り上げるために始まった物語のワンシーンを再現しながらチーム戦の仮装行列だが年々参加者が増え、仮装も派手に本格的になり一大観光名物になっているイベントだ。なみきやの常連になり周囲から教授と呼ばれている湯川は、夏美の案内でパレードを鑑賞する。その途中、夏美は店に呼び戻される。ランチタイムの客が体調を悪くしたため祐太郎が病院へ連れて行き、母の真智子もそちらへ向かうため留守番を頼まれたのだ。キクノ・ストーリー・パレードのトリを飾ったのは宮沢麻耶率いる商店街チームで古い木造船を模した山車の上で海賊たちが宝物をめぐって戦いを繰り広げるという迫力のあるものだった。その後カエルみたいなゆるキャラ・キクノンの巨大バルーンが行列の締めくくりとなっていた。結局ランチ客に異常はなく安心して店が開くとパレードを終えた商店街の面々が「なみきや」に集まり祭りの余韻に浸る。そのさなか蓮沼が死んだらしいという一報が入った。

菊野市に戻ってきた蓮沼は、元同僚の増村が住む元会社の事務所で死んでいるのが見つかった。通報したのは帰宅した増村で、元々は物置だったという窓もなく天井も低い3畳ほどのスペースにレジャーシート、マットレスと布団を重ねて敷いた上に蓮沼は仰向けに倒れていた。目立った外傷も首を絞められた跡も争ったような痕跡もなかった。蓮沼を憎んでいる人間は大勢いるが、佐織の件もあり「なみきや」を中心に捜査が進められていった。だが蓮沼の死亡推定時刻の午後3時半から5時の間、関係者にはアリバイがあった。並木夫妻はランチ客に付き添って病院にいたという看護師らの証言があり、高垣は職場の後輩たちとパレードを見に来ていた。新倉夫妻もパレードを見に来ており商店街チームと挨拶をかわし、パレード後ののど自慢大会の審査員をやっていた。唯一1人でいたのが留守番をしていた夏美だが疑われる可能性は低い。蓮沼を泊めていた増村も観光客で賑わうのを避けネットカフェにいた。

蓮沼の死因は窒息死の可能性が高かった。また睡眠薬の成分も検出された。何者かが飲ませたと考えられるが、自分の立ち位置を理解している蓮沼が「なみきや」周辺の人間から貰ったものを口にするとは思えなかった。草薙たちと蓮沼が死んだ物置部屋を見に行った湯川は、部屋のドアに付けられている引き戸部分の金具が簡単に取り外せることをに気づいた。外すとドアには小さな小窓ができる。そこからヘリウムを流し込めば窒息させられるという。ヘリウムはパレードの最後に登場したキクノンを膨らませるのに大量にも必要だ。早速入手経路を調べようとした矢先、河川敷でゴミ袋に入れられたヘリウムのボンベが見つかった。祭りの当日、のど自慢会場で無料で配る風船用に用意したボンベのうちの1本だと分かった。風船係によると1本無くなっていたことが分かった。またゴミ袋から蓮沼の髪の毛が見つかったことで、蓮沼の死は事件性があるとみなされた。

ヘリウムガスによる窒息死と捜査の方向が決まる中、内海だけがなぜ犯人はそんな周りくどいやり方で犯行を実行したのか疑問に持つ。またヘリウムガスを蓮沼のいる事務所まで運んだ車があるはずだが、Nシステムにも引っかからない。内海は久しぶりに会った湯川に自分の疑問をぶつけてみると、湯川には何か閃くものがあったらしい。内海に調べてほしいことがあるといい、蓮沼を殺害する動機を持つ人間は佐織に関わるものだけではないと23年前の優奈の事件の遺族たちを調べるよう進言する。一方で湯川はなみきやでいつものように夕食をとりつつ、戸島がやってくるのを待った。相席になると世間話がてらトジマ屋フーズで加工品を扱っていることや冷凍機のタイプなどを聞き出す。少し突っ込んで聞きすぎたのか、湯川が帰った後戸島はトリックがバレたのかもしれないと警戒心をあらわにし、高垣や新倉に連絡を取った。

本橋優奈の母親は失踪直後に自殺し父親も6年前に亡くなっていた。草薙は自殺した母親・由美子が若い頃に両親を亡くし施設で暮らしていたことを知ると、由美子の縁者を片っ端から調べるよう内海に命じた。まもなく増村が父親違いの由美子の実の兄だと分かった。つまり優奈の伯父であり、蓮沼に殺意を抱いていた可能性もある。増村と由美子の兄妹仲は良好だったという話があるにも関わらず、増村は妹がいたことは認めたものの交流はないと言い張り由美子が亡くなったことも知らなかったと空とぼけたまま沈黙した。

湯川により草薙や鑑識の協力のもと物置部屋で実験が行われ、蓮沼を窒息させたのは窒素だと軌道修正された。つまりヘリウムボンベが見つかったのは犯人側のトリックでありフェイクだった。また戸島の会社では冷凍設備に液体窒素を使っているのが分かり、パレードの日に液体窒素が減っているのも分かった。増村と戸島は共犯だ、だがこの2人以外にも共犯者がいる可能性がある。高垣も後輩たちと行動していたが30分ほど空白の時間があった。内海のちょっとした思い付きから、ようやく液体窒素を蓮沼のいる事務所まで運んだ方法が判明した。そして警察に呼ばれた高垣は、目的も中身が液体窒素とも知らないまま、用意されていたい車を使って荷物を事務所に運んだことを話した。蓮沼を懲らしめるため、液体窒素を用意したのは戸嶋、それを中継地まで運んだのが新倉、更に事務所に運んだのが高垣と分かった。最後に蓮沼を液体窒素で窒息死させたのは誰か。湯川はなみきやへと行って当日にアクシデントが起き計画に狂いが生じたという自分の考えをぶつけ祐太郎に意見を求めるが、祐太郎は沈黙を続けてくれている人たちに顔向けができないと何も話さなかった。なみきやを出た湯川に、犯人が自供したと言う連絡が入った。

まとめ

犯人の自供を受けて、増村が23年前から続く事件の全容を話し始めた。増村もまた蓮沼への恨みを抱き、同僚のふりをして蓮沼の懐に入っていた。そして気を許した蓮沼が優奈の殺害を認める発言とその動機を語るのを聞き改めて復讐を誓った。増村は同じ蓮沼に身内を殺害された遺族として並木祐太郎に会いに行ったのだ。

増村と祐太郎は蓮沼殺害計画を立て、凶器に液体窒素を使うことにし、店の常連で幼馴染の戸島に調達の相談にいったところ意図を見抜かれてしまった。そこから協力者が増えていった次第だった。

戸島たちはに蓮沼を殺害するつもりはなく「罰を与える」つもりだった。その間アリバイを作っていた増村が、罰を与え終わった後の蓮沼にとどめを刺す予定だったが、犯人によって蓮沼は殺害されてしまった。

殺害方法、犯人とも明らかになり事件は落着したかに思えたが、湯川はまだ解けていないものがあるといい、ある人物に会いに行った。そして佐織の死の真実を知ることになる。

 

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犯人が分かるまではゆったりと流れていた事件が、急展開しまくりで最後まで一気読みしてしまいました。蓮沼の悪辣さが際立っていたからこそ、そんな人間を手にかけて一生を棒に振るのはやり切れない話だと思います。