堀川アサコ「幻想」シリーズ第4弾『幻想探偵社』あらすじとネタバレ感想

堀川アサコさんの「幻想探偵社」のあらすじと感想をまとめました。

こちらは幻想シリーズ第4弾となっていますが、これだけ読んでも特に不都合なく読み進めることができます。

記憶を失い塵芥となって消えてしまう幽霊を怨霊化させて救うため、中学生のユカリと海彦が死因を調べていくというファンタジー要素のあるミステリー小説です。

「幻想探偵社」書籍概要

幻想探偵社(2014年10月/講談社)

幻想探偵社(2015年7月/講談社文庫)

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白妙東中学校野球部エースの2年生、中井海彦は、父から受験のため野球を2年生までで辞めるよう言われたことからスランプに陥り、クラブ活動を休止していた。

ある放課後、クラスメイトの楠本ユカリが落とした生徒手帳を拾いあとを追いかけたところ、ユカリは古ぼけた雑居ビルの中へと入っていった。エレベーターは「たそがれ探偵社」のある6階に止まったようだ。テレビでしか見たことのないような分かりやすいヤンキーに追い立てられるようにしてエレベーターに乗り込んだ海彦は、探偵事務所でくつろぐユカリを見つけた。

ヤンキーは依頼人だった。自分を「大島ちゃん」と呼んでほしいといい、名前以外何も覚えていないので、身元やどうして死んだのかを調べてほしいという。ヤンキーは幽霊で、たそがれ探偵社は幽霊専門の探偵事務所だった。このままだと消えてなくなってしまう大島ちゃんを一度怨霊化させてから成仏させるため、事務所の所長の青木の命令でユカリと、うっかり幽霊が見えてしまった海彦は、大島ちゃんの死の原因を調べることになった。

登場人物

  • 中井海彦:白妙中学2年生。スランプで野球部を休止中。
  • 楠本ユカリ:代々幽霊が見える家系に生まれる。
  • 大島順平:依頼人の幽霊。明るくてお調子者。通称「大島ちゃん」
  • 青木:たそがれ探偵社所長
  • 星野奏一郎:予備校講師。15年前まで白妙中に勤めており、秋星の庭を造った時の顧問。
  • 秋川福巳:銀行員。造園作りの天才で、15年前に秋星の庭を造るがその後は園芸から離れる。
  • 有馬和夫:幽霊
  • 須藤湖々菜:5歳くらいの女の子。幽霊?

15年前の事件

大島ちゃんが白妙東中学の生徒手帳に見覚えがあったことから、2人は卒業アルバムを調べることから始めた。今から15年前のアルバムに大島ちゃんの面影を残す写真を見つけた。名前は大島順平だった。近所の荒物屋、サッカー部コーチ、家庭科教諭の写真も見つけたため3人から話を聞き、彼らの記憶をつなぎ合わせたところ以下のことが判明した。

  • 15年前、秋川福巳という園芸部部長が今や学校の名物となっている「秋星の庭」を作った。その時の顧問が星野という教師で今は予備校で働いている。
  • 大島順平は不良で、好きな女子が秋川に好意を抱いていたため、腹いせに秋川の手掛けた庭をめちゃくちゃにした。
  • 顧問の星野が怒って大島に呼び出しをかけたが、大島は来なかった。その日を境に大島は姿を消した。
  • この事件に責任を感じた星野は学校を辞め予備校に就職した。臨時顧問として庭の手入れには来ている。

次に銀行員をやっているという秋川と予備校講師の星野にも会うが、目新しい情報は得られなかった。だが数日後、秋川が歩道橋の階段から転落して死亡した。酒に酔っての事故かと思われたが、ひざの裏に殴られたような跡が見つかっていた。秋川が酒の席で変な中学生に待ち伏せされたと漏らしていたことから、ユカリと海彦も警察で事情を聴かれる。

サラフィアのカルテ

死人が出たことで、中学生の手には負えないと青木から大島の調査を外された2人は、代わりに別の仕事を与えられる。次々と店をオープンしては短期間で閉鎖する呪われた空き店舗の調査だ。

そこは有馬和夫という老人の幽霊が、本人の意思とは無関係に祟っていた。呪われた店はもともと和夫が本屋を営んでいた場所で、何かやり残したことがあって成仏できないらしくポケットに二千円を持っていた。万引きされた本を買い戻すお金ではないかと推察した2人は、おぼろげな和夫の記憶を頼りに中古書店を回るが見つからない。

結局有馬和夫の思い残したものとは、幼馴染と飲んだ時の勘定だった。肉屋のリキちゃんにお金を渡せた和夫は、2人が探そうとしていたのが「サラフィアのカルテ」という自費出版本だったことを思い出し、成仏していった。

2人の須藤湖々菜

肉屋にいつも豆腐ハンバーグを買いに来る幼女・須藤湖々菜がいた。たまたまドーナツショップにいたママ友集団の話を聞いていた2人は、彼女らの持っていた心霊写真に湖々菜の顔を見つけた。湖々菜のあとをつけた2人は、彼女が須藤という家に入っていくのを見た。その家には派手な格好をした若い女性と、彼女の子どもと思われる赤ん坊がいた。ネグレクト気味の赤ん坊を、湖々菜は豆腐ハンバーグで育てていたのだ。

その後、若い女性の名前も須藤湖々菜だと分かる。15年前、幼い湖々菜は、白妙東中学校に入り込み何か見てはいけないものを見てしまった。その衝撃で心の部分だけが幽体離脱して時間を止めてしまったらしい。ユカリや海彦の介入で、小さな湖々菜は体へと戻っていった。

秋川のお別れ会

青木が図書館で借りてきた「サラフィアのカルテ」は、詳しいミイラの解説書だった。その中に破り取られた大島の生徒手帳が栞のように挟まっていた。青木の前に借りた人がはさんだまま返してしまったようだが、なぜ大島の生徒手帳なのか。

進展がないまま中学の文化祭が近づいてくる。秋星の庭も一般に公開されるため、星野が臨時顧問として手入れにきていた。職業柄記憶力がいいという星野は、ユカリを見つけて声をかけてきた。亡くなった秋川のお別れ会を開くことになり、縁があったからとユカリも招待される。だがお別れ会では、秋川とは一度しか会っていない中学生のユカリはほぼ蚊帳の外だった。

一方海彦は、サラフィアのカルテを自費出版した佃山という人物に会いに行っていた。彼にとってサラフィアのカルテは、法医学者になるという諦めた夢の集大成であり自慢でもあったため、読者からの手紙を大切にファイリングしていた。その中でも取り分け熱心だったという読者の名前に海彦は見覚えがあった。

まとめ

海彦が手に入れた手掛かりを元に、事件は一足飛びに解決へと向かいました。そして大島ちゃんの遺体も無事に見つかりました。

と書くと深刻なようですが、自分の遺体を見つけた当の本人があっけらかんとしているのでそれほど重苦しいシーンではなく、むしろあっさりと流されました。

自分を酷い目にあったことを思い出したのか無事に消えそうな幽霊から怨霊へと変わった大島ちゃんは天国へと旅立っていき、今回の功績により栄転した青木に代わって「たそがれ探偵社」の所長として戻ってきました。

 

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全てが15年前の大島順平失踪に関係しているというのが早い段階から分かり、ちょっとずつ外堀も埋められていくのですが、肝心のところだけは最後まで開陳されないので、ジリジリしながら必死にページをめくり続けました。綺麗にオチがついてすっきりしました。

青木さんは、幻想シリーズ1作目の「幻想郵便局」の青木さんです。たそがれ探偵社から栄転して登天郵便局に異動になったのですね。