今村昌弘『魔眼の匣の殺人』あらすじとネタバレ感想

今村昌弘さんの「魔眼の匣の殺人」のあらすじと感想をまとめました。

独立した話かと思いきや、前作「屍人荘の殺人」の続編でした。しかも何だかシリーズ化して続きそうな感じで締めくくられています。

404 NOT FOUND | 謎はすべて解きたい
ミステリー小説、推理小説のあらすじや感想を中心に書いています。

前回がバイオテロ、今回が予知能力と舞台設定が特殊なクローズドサークルものというイメージが強い作品ですが、トリックや謎解き部分は王道で面白いです。

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「魔眼の匣の殺人」の書籍概要

「あと二日で四人死ぬ」閉ざされた“匣”の中で告げられた死の予言は成就するのか。『屍人荘の殺人』待望のシリーズ第2弾!! 「BOOK」データベースより

  • 魔眼の匣の殺人(2019年2月東京/創元社)
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登場人物

  • 葉村譲:神紅大学1年生。ミステリ愛好会会長
  • 剣崎比留子:神紅大学2年生。死人がでる事件に巻き込まれる体質で生き残るために推理力を磨いた結果名探偵になる。
  • 十色真理絵:高校2年生。予知能力者
  • 茎沢忍:高校1年生。真理絵を狂信的に慕っている後輩
  • 王寺貴士:バイク乗り
  • 朱鷺野秋子:墓参りで好見に戻ってきたばかりに事件に巻き込まれる
  • 師々田巌雄:大学教授。
  • 師々田純:巌雄の息子。小学生
  • 臼井頼太:オカルト雑誌「月刊アトランティス」の記者
  • サキミ:好見に住む予知能力者の老婆。元班目機関の研究施設の被験者
  • 神服泰子:サキミに心酔して好見に引っ越して身の回りの世話をしている
  • 班目機関:正体不明の組織で比留子が追っている。

あらすじ

娑可安湖集団感染テロ事件(「屍人荘の殺人」)でたった2人のミステリ愛好会で先輩の明智を失い、葉村は会長に就任し新たに比留子がメンバーに加わった。それから3か月後、比留子が伝手を頼って調査した結果、テロに関わっているとされる謎の組織「班目機関」が、W県の山奥にある旧真雁地区でかつて超能力研究を行っていたという情報をつかみ、その実験施設へと赴くことになった。

バスで曲がりくねった山道を進むうち、同乗していた高校生2人組のうち十色真理絵がスケッチブックを取り出して絵を描き始める。描き終えた直後バスは猪とぶつかった。幸い運転手ともども乗客に影響はなかったが、比留子はちらっと見たスケッチブックが、まるで猪との衝突事故を予言しているかのような絵だったことに興味を覚えた。

班目機関の研究施設があるという好見はいくつもの家が点在し生活の痕跡があるにも関わらず、なぜか人っ子一人いないという不思議な現象が起きていた。しかも村の入り口はフェンスが設置されていた。同じく好見が目的だったらしき真理絵と茎沢とともに村人を探し回っている最中、バイクでツーリングの途中ガス欠を起こしたという王寺と出会う。その後、好見の元住人で墓参りにきたという朱鷺野秋子、山道で車のトラブルで立ち往生していたという師々田親子と連れ立って、サキミなる人物の元へと向かうことになった。

秘境のような場所を進み古びた橋を渡った先の旧真雁地区にサキミの住居があった。班目機関が超能力の研究のために建てた箱のような施設にたった一人で住んでおり、かつて被験者として連れてこられた彼女は過去いくつもの事件を予言し的中させてきたことから、好見の住人はサキミの棲み処を「魔眼の匣(まがんのはこ)」と呼んで彼女を畏れていた。施設にはサキミの身の回りの世話をしている神服泰子のほかに、サキミに会いたいという先客がいた。オカルト雑誌「月刊アトランティス」の記者・臼井だった。有象無象の投書が雑誌に届く中、ある手紙が娑可安湖集団感染テロ事件を予言していた。他にも大阪での歓楽街ビル火災で多くの死者がでることも的中させており、臼井は再び届いた手紙の中にM機関が超能力実験が行われていたという文面をもとに、好見に取材にやってきていた。臼井や比留子たちと面会したサキミは、ある預言を告げる。それは「11月最後の2日間に、真雁で男女が2人ずつ、4人死ぬ」というものだった。翌日からの2日間がまさに予言の日で、好見の住人らが村から姿を消していた理由をようやく理解する。それとほぼ同時に唯一の橋が燃やされ、葉村たち10人とサキミは熊も出る鬱蒼とした山に囲まれた魔眼の匣に閉じ込めれられることになった。

9人の客は防音が効いた地下と1階の部屋に分かれて泊まることになった。風呂や食料品などは備蓄があったものの、住んでいるサキミと部屋を持つ神服、宿泊の準備をしていた葉村、比留子、真理絵、茎沢以外は着の身着のままの状態で救助を待つことになる。ガソリンを分けて貰いたかっただけの王寺はバイクに財布やお守りを残したまま孤立させられた状況を嘆いていた。

翌日、脱出ルートを探していた面々だったが突然の地震による地割れで山の斜面が崩れ、臼井が小屋ごと崖下へと飲み込まれて行った。1人目の犠牲者だった。その直前、またもや真理絵がスケッチブックに絵を描き始めたのを葉村たちは見ていた。そして真理絵を信奉する茎沢から彼女が予知能力を持つことがバラされる。その後予定していたサキミとの面会で、彼女が班目機関の詳細は知らないこと、サキミの予言は当たり続けたもののあるしくじりによって結果的に班目機関は彼女を残して真雁地区から撤退したことを聞かされる。面会からの帰り、比留子が受付に飾ってあった4つの季節を模したフェルト人形が一つ消えていることに気が付いた。

その晩、個室で一酸化炭素中毒事故を起こしかけていた真理絵が予知して事なきを得た。比留子たちは真理絵の部屋で色々と話をし、彼女から亡くなった自分の祖父が班目機関で超能力研究をしていたこと、どうやら自分が祖父とサキミの孫であるらしいことを告げられ、その根拠となる祖父の日記を借り受けた。真理絵の予知能力はサキミからの遺伝だった。真理絵は祖母に会うため好見を訪れていた。祖父は何らかの事情があってサキミを施設に残したまま赤ん坊だけを連れて施設を出て行き、その後別の女性と結婚したと思われる。

夕食の席で真理絵は誰かが倒れている絵をスケッチブックに描いた。夕食のテーブルについていないサキミを心配して見に行ったところ、何者かに毒を飲まされて倒れているのが見つかった。サキミの部屋の前には、何者かが庭から折って投げ入れたと思われる赤い花が散らばっていた。比留子の応急措置によってサキミは一命はとりとめ、毒を持ったのは真理絵だと主張する師々田と同意した者たちによって、真理絵は一人で地下の自室に軟禁されることになった。

その後はサキミの看病をしている神服以外が集まり、一人ずつ好見に来るに至った経緯を話していく。トイレなどで席を外す人物がいればその都度時間をメモする。一通り話し終え残り24時間となった午前0時、トイレへと向かった神服が凄い剣幕で戻ってくると熊用の散弾銃が消えていると叫ぶ。持ち出せるとしたら真理絵だけだと地下の部屋へと向かうと、銃で胸を撃たれ仰向けに倒れている真理絵がいた。2人目の犠牲者だった。

深夜にも関わらず絶叫した茎沢が施設を飛び出していく。銃をロッカーから持ち去り真理絵を殺害して戻る時間はおよそ15分。全員のアリバイが成立し初対面の人間同士で殺害動機がない中、サキミの予言が動機ではないかと神服が言う。つまり男女2人ずつ、計4人が死んだ時点で生き残った人間の命は保証される。それゆえ犯人は、自分が死ぬ前に犠牲者を作ろうとした。翌朝、比留子の姿が消えた。大人たちが外を探す中、葉村は雪道に落ちている比留子のストールを見つけた。崖に向かって一筋の足跡が続いている。真っ先に駆けていった葉村と追い付いた面々は、岸壁に片方だけ転がっている比留子のスニーカーを見つけた。比留子は自殺とされ、預言の犠牲者は残り男性1人となった。

落ち込む葉村は自室にこもったが、そこには比留子が潜んでいた。彼女の自殺は、葉村と2人で演出した狂言だった。彼女はこれ以上の犠牲を食い止め犯人を見つけるため、自分が死んだと見せかけ犯人をあぶり出そうとしていた。サキミ・真理絵の事件の時に誰の目にも完璧なアリバイを持つ葉村は怪しまれることもなく動ける。自由に動けない比留子に代わり、何度となく真理絵の部屋へと足を運んだ葉村は、荒らされた部屋の写真を撮り犯人を特定する手掛かりとして粉々に砕けた時計を持ち帰って検証する。そしてある仮説を立てたものの、あっさりとくじける。

だが比留子は掛け時計を手掛かりに真犯人へとたどり着き、これから互いの人生をかけて犯人と死闘をすると葉村に告げ、関係者全員を集めた。

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最終的に男女4人が死に、サキミの予言は的中します。真理絵の祖父の日記からもサキミの予言からは逃げられない旨が記載されており、サキミの予言を元に事件や事故を防ごうとした班目機関の研究もその「どうしても逃れられない予言」によって自壊していきました。

特殊設定なのにゴチャゴチャせず読みやすいので、すんなりと作品の世界観に入っていけると思います。真理絵たちを殺害した犯人の動機が感覚的には理解しづらく、理詰めで説明されてようやく納得できました。

そして犯人が判明して一件落着かと思いきや最後の最後にもう一事件控えており、最後まで息つかせぬ展開に大満足の一冊でした。特殊すぎる設定の前作よりだいぶとっつきやすくなっていました。

クローズドサークル内で犯行を重ねる危険性というのが本の中には書かれていて、読み物としては面白いのですが、実際には犯人にとってはリスクしかない非現実的なものだと突きつけられるので、今後クローズドサークル物を読むときは犯人に同情してしまいそうです。