伊坂幸太郎「陽気なギャング」シリーズ第3弾『陽気なギャングは三つ数えろ』あらすじとほんのりネタバレ感想

「陽気なギャングは三つ数えろ」のあらすじと感想をまとめました。監視カメラなども充実し銀行強盗も難しくなってきた昨今、2年ぶりに銀行に押し入った4人がある事件をきっかけに窮地に立たされる話です。

「陽気なギャングは三つ数えろ」書籍概要

陽気なギャグシリーズ第3弾の書下ろし長編小説。

  • 陽気なギャングは三つ数えろ(2015年10月/祥伝社ノン・ノベル)
  • 陽気なギャングは三つ数えろ(2018年9月/祥伝社文庫)

 

ワーキングビザを使って海外に行っていた久遠が帰国し、成瀬、響野、久遠、雪子の4人の陽気なギャングたちは2年ぶりに銀行強盗をした。その際、警備員が投げた警棒が久遠の左手に当たり負傷してしまった。勇敢な警備員の呪いか、久遠のけがは10日経っても治っていない。

あらすじ

強盗から数日後、4人はとあるホテルで顔を合わせていた。大学生になった雪子の息子・慎一のアルバイト先なのだ。嫌そうな顔をする慎一をものともせず様子見にやってきた4人はラウンジカフェに居座り、そこから見えるとあるホテル客について他愛のない会話をしていた。その男は自分が落とした小銭を拾おうともせず他人に拾わせ、歩きながらスマートフォンを操作して人にぶつかると文句を言っている。いつもの癖でその男からパスケースを掏った久遠は、男が火尻という週刊誌記者であることを知った。

パスケースを返すため男の後を追った久遠は、火尻が泊っているらしきフロアの一室から物音がするのを聞いた。部屋からは目出し帽の人物が飛び出していく。体勢を立て直して後を追おうとした久遠だったが、すでに廊下のどこにも目出し帽はいなかった。物音がした部屋には目出し帽に殴られた火尻がいた。警察に通報しなくていいのかと尋ねる久遠に対し、火尻は極秘の特ダネを狙っているので警察沙汰にしたくないのだと返す。火尻が狙っていたのは、このホテルにいるらしき失踪中のアイドル兼女優の宝島沙耶だった。

火尻は久遠の左手に巻かれている包帯に目をやる。ちょうどその時、テレビからは銀行強盗中に犯人の左腕に警棒を投げつけたと武勇伝をあちこちで語る警備員が映っていた。

雪子が車で慎一をアルバイト先に送っている時、何者かに尾行された。久遠は当り屋の老人に慰謝料を請求されるという事件が起こった。成瀬には電車内での痴漢の容疑がかけられた。全員がそれぞれの機転で事なきを得た。自分には何も起きていないという響野のところにはオレオレ詐欺まがいの電話が掛かって来ていたが、妻の祥子がさくっとスルーしていた。

火尻はハイエナ記者で、彼の書いた記事によって過去に何人もの被害者が出たらしいが、当の本人は大衆が求めているものを提供しているだけというスタンスで全く意に介していない。どころかギャンブルによる多額の借金を抱えているようで、金になると踏めば脅迫・ゆすりすら厭わない人物だった。そして火尻は、宝島沙耶のネタをスクープできなかった。

久遠の怪我をきっかけに4人が銀行強盗犯であることをかぎつけられ、4人は火尻から大金を要求された。記事に書かれたくなければ金を寄越せということだった。だが金を渡せば記事にしないという保証はまるでない。

一方で4人は火尻が殴られた事件を調べていた。彼が宝島沙耶の居場所を知っていたこと、沙耶が泊っているフロアに火尻が簡単に部屋を取れたことなどから、ホテル内に火尻襲撃犯の内通者がいるのではないかと疑う。沙耶自身も襲撃の協力者ではないかと目星をつけた成瀬らは、彼女の出版記念のサイン会で沙耶とコンタクトをとることに成功した。

沙耶の恩人が火尻の記事によって死に追いやられていた。また沙耶と同じく火尻の被害者の関係者らが結託して、ホテルでの火尻襲撃をもくろんだことが分かった。

火尻が借金をしているカジノグループから顧客情報を奪い、借金の根拠となる情報ごと消すという取引をした4人は、手先の器用な久遠と突出した運転技術をもつ雪子らが害虫退治会社に扮し、カジノグループの拠点であるマンションの部屋に放った毒グモもどきを除去するためと偽って室内に入り込み金庫を開けることに成功した。

だが必要なものを手に車に戻ったところでカジノグループの面々にバレ、追いかけられる羽目に陥った。何者かが久遠たちのことをカジノグループに密告していたらしい。

火尻との取引のリミットが迫る中、雪子と久遠はカジノグループの追跡を受けながら、火尻と対峙しながら時間を引き延ばそうとしている成瀬たちの待つ店へと向かう。

感想など

どんなに向こうに有利な取引をしたところで確実に銀行強盗の件を記事にするだろうと思われる卑劣な記者・火尻をふりきるため、4人が取った作戦はカジノグループからの顧客情報奪取でした。もちろんそれはフェイクで、裏にはもっと大きな狙いがありました。

火尻襲撃犯らを協力者にして彼らが企てた方法で見事火尻は退治されるのですが、その辺りは実際に読んだ方が気分がすかっと晴れます。火尻が悪徳で卑劣な分、爽快感が気持ち良いです。

これから読むという方は、ぜひカメに注目して読んでみて下さい。

成瀬が銀行強盗からの引退をほのめかす記述も出てきており、このシリーズももしかしたらこれで終わりかもと思うと寂しいです。また何年後かに陽気に銀行強盗をしている4人が読みたいです。