伊坂幸太郎「陽気なギャング」シリーズ第2弾『陽気なギャングの日常と襲撃』あらすじとほんのりネタバレ感想

「陽気なギャングの日常と襲撃」のあらすじと感想をまとめました。前作の続編です。ちょいちょい前作の話題が出てきますので、読んでいなくても本編に影響はしませんが、前作を読んでからこちらを読む方が面白さも違って良いと思います。

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「陽気なギャングの日常と襲撃」書籍概要

陽気なギャグシリーズ第2弾の書下ろし長編小説。雑誌で連載していた4つの短編を前半に配置し、それらを展開する形で長編を書きおろした一冊。

  • 陽気なギャングの日常と襲撃(2005年8月/祥伝社ノン・ノベル)
  • 陽気なギャングの日常と襲撃(2009年8月/祥伝社文庫)

主な登場人物

  • 成瀬:冷静沈着、用意周到な嘘を見抜く男。市役所勤め。銀行強盗のリーダー格
  • 響野:演説の達人。胡散臭い事ばかりよく喋っている。喫茶店経営で、よく仲間が集まっている。
  • 久遠:スリの名人で仲間内で一番若い。人間より動物の方に優先順位がある明るい青年。
  • 雪子:ギャングの紅一点。正確な体内時計を持つ。
  • 祥子:響野の妻で、銀行強盗のことは知っている。

刃物男騒動(成瀬)

神奈川県の市役所4階にある地域生活課は、しょっちゅう色々なトラブルやクレームが持ち込まれる。4月に異動してきた大久保には中々辛い職場だったが、上司の成瀬係長はいつも落ち着いている。今回もまた門馬という定年退職した男性が窓口に来て、平日の日中から町をうろつき塀越しに家を覗く怪しい人間がいるので警備しろと言ってきた。大久保には手に負えなかった門馬をあっさりと返してしまった成瀬は、彼の言っていることは嘘じゃないという。成瀬には他人の嘘が見抜けるらしい。

大久保には彼女がいた。大手ドラッグストアを経営する彼女の父親が猛反対しているが、2人は結婚したいと考えていた。父親の説得は埒が明かないからいっそのこと1か月ほど家出しようかと彼女と冗談を言い合っていることを、出先で成瀬に話していた時だった。車が渋滞に巻き込まれ事故かを思っていたら違った。マンションの屋上に人がいた。若い男が年配の男を人質にとり刃物を突き付けているのだ。人質は門馬だった。野次馬の女性らに聞くと、怪しい行動をとっていた若い男にナイフを突きつけ詰問した門馬が、反撃を受けて逆に人質になってしまったらしいというのだ。若い男は薬物をやっているらしく、屋上で警官たちが説得に当たっているのを大久保らは見守るしかなかった。

ふと門馬の表情が変わったと成瀬が言う。きょろきょろと落ち着きがなくなり、何かを落とした。交通整理をしている警官の隙をついて門馬の落とした紙切れを拾った大久保は、横書きの数字が書いてあるのを成瀬に見せた。門馬の屋上から見える向かいのマンションで何かが起きているのを見つけたのではないかと成瀬は推測する。おそらくそれは押し込み強盗で、数字は門馬から見えるマンションの部屋の位置だと思われた。成瀬の推理に従って目的の部屋を見つけ出した大久保たちは、集まっていた警官に教え無事押し込み強盗犯は捕まった。薬物中毒男も無事確保された。

「幻の女」探し(響野)

会社の営業強化月間を無事に終えた藤井は同僚の桃井と飲みに行き、ぷっつりを記憶を失い自分の部屋のベッドで目を覚ました。朝の午前4時だった。電話が鳴っている、この時間に電話が鳴るのは異常事態だった。かけてきたのは桃井で、バイク事故を起こしたのだという。桃井によると昨晩の藤井は、全国チェーンの居酒屋<天々>に行った後、地下にあるバー<黒磯>に寄ったという。ずっと二人で飲んでいたそうだ。藤井を話して少し落ち着いたという桃井は、そのまま電話を切った。そのまま起きた藤井は、テーブルの上に残されている書き置きのメモを見つけた。「ノゾミ」という名前の女性らしいが連れ込んだことすら覚えていない。ノゾミなる人物がいったい誰で、どこで知り合ったのかさっぱり分からない。

友人の響野の喫茶店でその話をしていると、響野の妻・祥子がその女が実在するのかどうか確認してみればいいと言い出し、自分はこれから雪子と会う約束があると響野と藤井を店から追い出した。1件目の天々はまだうっすら記憶があるが女はいなかった。先に2件目の黒磯へ2人は向かった。黒磯のマスターは、藤井と桃井はずっと二人で飲んでいて、帰りも藤井は店を出てすぐにタクシーに乗ったという。取り留めのないことをずっと喋り続けられる響野は、初めて来た黒磯のマスターに麻薬に厳しい国は本当にあるのかと問いかけた。さきほど喫茶店で話題にのぼった話だった。唐突な質問にも関わらずマスターは、向こうの言葉を話せるので一度行ってみますかと落ち着いて答えた。

そんなやりとりをしている間、藤井はあるシーンを思い出していた。ワインをこぼしたのだ。肘がグラスにあたり、自分の隣にいた女性が「やっちゃった」と声をあげるのを聞いた気がする。だがマスターの証言と異なるし、響野も幻の女はいなかったと決めつける。後輩に電話をかけてみると、昨晩酔っぱらった藤井からの着信を受けたという。その時藤井は2人だったと言っていたと証言した。

黒磯を出た2人は家電量販店の店先に並べられたテレビが、屋上の男が逮捕され人質も無事だったというニュースとその事件の隣のマンションにいた押し込み強盗を捕まえたというニュースを目にする。2つの事件は関連があると響野は言った。おそらく2つの事件の犯人は共犯だったのだろう、屋上に注目を集めている間に強盗が逃げる段取りだったに違いないと独自の見解を述べた。

歩いていると見知らぬ男に声を掛けられる。ストリートミュージシャンだった。藤井が昨晩自分の演奏を褒めてくれたのが嬉しかったらしい。男は、藤井が女連れだったことを覚えていた。

ノゾミがいなかったと証言したのは、一緒に飲んでいた桃井、黒磯のマスター、後輩。全員が知り合いだと響野は言った。いつの間にか幻の女はいない派から藤井を信じる派に鞍替えしていた。桃井が起こした事故が原因になっているのではないかと響野が推測する。ノゾミは藤井のマンションへ行ったが眠り込んでいる藤井に愛想を尽かして桃井に連絡を取った。ノゾミを乗せて走っている最中に桃井は事故を起こした。藤井が記憶を失っていることを知った桃井は、とっさに自分に有利な目撃証言を仕立てることを思いついた。ノゾミだ。知り合いよりも偶然通りかかった人間の証言の方が信ぴょう性があると考えた桃井は、知り合いらに根回しをして回った。かくして幻の女が出来上がった。それが響野の考えた「幻の女」の結論だった。

誰が送ったか不明な人気芸人の舞台チケット(雪子)

鮎子は会社に内緒でダイニングバーでのダブルワークをしていた。月曜日の朝、隣の席の美由紀が色々話しかけてきたが、鮎子がパソコンを立ち上げパスワードを入力すると、課長が鮎子を呼んでいたことを思い出したと言い出す。だが課長は鮎子に用はなかった。自分が席を立った隙を狙って美由紀がパソコンを触ったのではないかと警戒した鮎子だったが、パソコンはいつも通り動き、減ったファイルや見知らぬファイルも見つからなかった。

最近派遣でやってきた雪子に相談した鮎子は、話しやすさから秘密のアルバイトのことも打ち明ける。雪子も強盗のバイトをしているので大丈夫だと返してきた。鮎子はダイニングバーでいつの間にかレジに置かれていた鮎子宛ての公演チケットの謎についても相談してみた。最近なかなか人気の芸人が出演しており取りにくいチケットなのだと美由紀が喋っていたものが、差出人不明のまま鮎子の手許に1枚ある。劇場へ行ってみてはどうかと雪子は言った。2枚あるチケットの1枚を鮎子に渡し、もう1枚を自分が使うかもしれない。つまり当日、差出人の正体が分かるかもしれないと。

だが当日、公演に間に合わないことが分かった。美由紀に決まっていたイベントの司会が、彼女が怖気ついて降りてしまい、ベテランの鮎子にお鉢が回ってきたのだ。先輩の佐藤も鮎子を推していると課長から聞き、鮎子は司会を引き受けることにした。そのことを伝えると雪子が送迎役を買って出た。自分なら間に合わせることができると自信たっぷりだった。雪子のドライビングテクニックと赤信号に一度もひっかからなかったおかげで、公演には余裕で間に合った。だが、結局鮎子の隣は空席のままで差出人の正体へ不明のままだった。

公演が終わるのを待っていた雪子にその話をすると、正体に気づいたらしき雪子が劇場に戻っていった。警備員らの隙をつき、立ちはだかる大のギャンブル好きだという劇場オーナーと勝負をして見事に勝った雪子が向かった先は楽屋だった。

差出人も分かってすっきりしたた鮎子は、雪子から驚きの話をされる。あの時の美由紀の不審な言動は、鮎子のパソコンからあるものを削除するためだったらしいこと。美由紀自身もある人に頼まれて動いただけだったということ。ある人の正体を聞き、急に鮎子はそわそわしはじめた。

いきなり殴られた男の話(久遠)

ある夜のこと、公園内を歩いていた和田倉は男に肩を叩かれ振りむいたところでいきなり殴られ、倒れたところをさらに蹴られた。そこへ久遠が通りがかり、男は逃げていった。最近は借金取りの姿も見えないし、男の正体は分からないと和田倉は言う。和田倉はギャンブルで借金を作り、奥さんに逃げられていた。警察に届けるほどでもないという和田倉に、久遠がやり返すか?と尋ね財布を見せてきた。先ほどの暴漢とすれ違った時、そいつが落としていったものだと久遠は嘯いた。

免許証はなかったが歯科医院の診察券があった。暴漢の名前は熊嶋、翌日が予約日と分かり、いつの間にか和田倉は久遠と一緒に歯科医院を張り込むことになった。熊嶋を待つ間、久遠は和田倉の借金の相手が花畑実という嘘か本当か分からない名前の人物だと聞きだした。久遠に話していないが、和田倉は花畑に犯罪の手伝いを強要されていた。そうこうするうち歯科医院にやってきた熊嶋を見つけ話を聞くと、その財布は電車の中で掏られたものだと返事が返ってきた。久遠は熊嶋の財布を掏った男から、更に熊嶋の財布を掏ったらしい。

数日後、職場での昼休憩で外に出た和田倉はたまたま姿を見かけたからと待ち構えていた久遠とともに蕎麦屋へ入った。蕎麦屋には偶然にも熊嶋が女性とともに食事をとっていた。彼らはすぐに店を出ていったが、和田倉は動揺していた。熊嶋が連れていた女性に心当たりがあったからだ。和田倉は彼女のことを、素性も分からないまま付けていたことがあった。

ある日、休みを取った和田倉はある場所へと向かおうとしていた。借金を盾に花畑に強いられている犯罪の片棒を担ぐためだ。部屋に忘れた携帯電話を取りに行き車に戻ってくると、なぜか助手席に久遠が座っていた。久遠は、公園で和田倉を殴ったのは熊嶋で間違いないと言い切り、和田倉になぜあの女性の後を付け回していたのか尋ねた。熊嶋は彼女の恋人で、彼女の後を付けてくる和田倉を不気味に思い殴る蹴るの暴行を働いたのだった。

和田倉は女性のことは何一つ知らなかった。花畑にあるマンションの裏手に行くように言われており、指示の中にあったマンション名と部屋番号の住人が彼女だったのだ。下見のためにマンションを訪れ、出てきた彼女の後をつけたのが相手にバレていたらしい。和田倉は強盗の運転手にされていると久遠は言った。おそらく今彼女の部屋には強盗がおり、和田倉が到着するのを待っているのだろう。行かなければ自分の借金はどうなるのかと絶望を感じていた和田倉に、久遠がラジオをつけてニュースを聞き始めた。ある屋上で刃物を持った若い男が人質を取ったが結局掴まったというニュースと、その事件のすぐそばのマンションで強盗が逮捕されたというニュースだった。ちょうど和田倉が向かうマンションだった。

犯罪の片棒を担がずに済んでよかったと言う久遠は、和田倉が借金を作ったカジノのことを尋ねたあと、2人が出会った公園で車を降りた。花畑から何か怒りの連絡があるかもしれない、もしくは警察が強盗から何か聞き出して訪ねてくるかもしれないと怯えていたが、事件から数週間経っても和田倉の生活に変化はなかった。

強盗と誘拐

例のごとく銀行強盗を働いている最中、成瀬は客の中に見覚えのある顔を見た気がした。後日職場で正体が分かった。大久保の彼女だ。さりげなく大久保に聞いてみると、彼女は家出を決行中と呑気な答えが返ってきた。毎晩連絡するよう約束していたが昨晩は連絡がなく、代わりに彼女の父親から「誘拐とはどういうことだ」という電話がかかってきたという。

大久保の彼女・良子は誘拐されていると結論づけた成瀬は仲間に召集をかけた。強盗の最中、良子のすぐそばには怪しそうな男がいたのだ。怪しい人物には久遠も目を止めており、こっそり財布を掏って発信機を仕掛けて戻すというファインプレーを行っていた。

響野と久遠が発信場所へと行くことになった。古いビルの一室で、新聞の勧誘を装って部屋を訪ねた久遠は例のごとく胡散臭い言動をし、出てきた2人組の男に部屋に連れ込まれてしまった。わざと捕まったのだ。

部屋には良子がいた。彼女をさらった2人組に同情しているようで、自分が逃げると彼らがお金を受け取れなくて困ると言ってとどまっている。2人組はうかつな誘拐犯だった。良子と久遠の前でもうっかり名前を呼びあうものだから、良子は2人のフルネームや誘拐に至る事情まで把握していた。大手ドラッグチェーンを営む良子の父親は、地域の小さな薬局のそばに店を建てて片っ端から潰していくという質の悪い事業展開を行っている。誘拐犯たちは被害者の一人だった。呆れながらも久遠は良子を連れて逃げるのやめ、誘拐に付き合うことにした。

引っ越し業者を装って久遠と良子がいるビルに向かった成瀬たちはひと悶着ありながらも、身代金の受け取りに行く誘拐犯たちの後を追っていた。だが誘拐犯たちが身代金を取りに車の外に出ていったタイミングで別の男たちが車に乗り込み、久遠を車外に放り出して発車していった。どうやら別のグループに良子が攫わていったらしい。車外に蹴り落される際、久遠は例によって男の財布を掏っていた。

免許証の名前は花畑実だった。久遠が助けた男・和田倉を借金をネタに脅し、犯罪の片棒を担がせようとした人物だった。花畑は和田倉が通って借金を作ったカジノに深く関わっている。さらった人間はカジノのVIPルームに閉じ込めるという話を和田倉はしていた。おそらく良子はそこにいる。だがカジノは一見様お断りの場所だった。

雪子が以前勝負をしたある劇場のオーナーが大のギャンブル好きだというのを思い出した。彼はそのカジノの常連だった。彼に連れていってもらればカジノに入ることができる。響野と久遠がその役目を引き受けた。

一方成瀬は別ルートでカジノに侵入することにした。別のカジノ客とさりげなく仲良くなり、自分が金持ちであることを匂わせる作戦だった。使うお金は強盗で手に入れたものだ。

  • カジノに入る
  • VIPルームから良子を助ける
  • 良子を家に帰す

これらのミッションを達成するため、いよいよ4人は計画を実行に移した。

まとめ

カジノ内部に入るには全員が写真を撮られます。久遠は花畑に顔を見られていたため、本人たちの懸念通り侵入がバレていました。カジノ内を攪乱した隙に良子を助け出すつもりが、逆に追い詰められてしまいます。

最終的にこの事件にどう決着がつくのか、ラストはネタバレなのでここでは控えますが、最初の4つの短編がすべて伏線になっているのが凄いです。