石持浅海『届け物はまだ手の中に』あらすじとネタバレ感想

石持浅海さんの「届け物はまだ手の中に」あらすじと感想をまとめました。

主人公は復讐のために人を殺しました。主人公自身が警察に捕まることを覚悟していたので、どういう決着がつくのかと楽しみに読み進めていたところ、最後は思いもしなかったところに着陸してしまうという、どんでん返し系ミステリーでした。

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「届け物はまだ手の中に」書籍概要

楡井和樹は恩師・益子の仇である江藤を殺した。しかし、まだ終わっていない。裏切り者であるかつての親友・設楽宏一にこの事実を突きつけなければ、復讐は完結しないのだ。設楽邸に向かった楡井は、設楽の妻、妹、秘書という三人の美女に迎えられる。息子の誕生パーティーだというのに、設楽は急な仕事で書斎にいるという。歓待される楡井だが、肝心の設楽はいつまで経っても姿を見せない。書斎で何が起こっているのか―。石持浅海が放つ、静かなる本格。「BOOK」データベースより

  • 届け物はまだ手の中に(2013年2月/光文社)
  • 届け物はまだ手の中に(2015年10月/光文社文庫)
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あらすじ

恩師を殺された復讐のため江藤を殺害した楡井和樹だったが、まだ計画は完了していなかった。道半ばで復讐計画から離脱したかつての親友・設楽宏一に、江藤殺害の事実を突きつけてようやく復讐は完成するのだ。江藤の遺体が見つかれば警察はすぐに楡井の所にやってくるだろう。あまり時間がない中、楡井は江藤を殺した証拠品を手に設楽邸を訪れた。

子どもの頃は楡井と同じようにクラスから爪はじきにされていた設楽だったが、大学時代の起業が成功し、今では豪邸と美人の妻、幼い息子を持つベンチャー企業の社長になっていた。一方の楡井は、江藤に復讐するため転勤のない公務員になっていた。ボストンバッグを手に設楽邸へ着くと、ちょうど息子の4歳の誕生パーティーが開かれるところだった。メンバーは妻のさち子と息子の大樹、設楽の妹の真澄、秘書の遠野。設楽は急な仕事が入ったようで書斎に籠っているという。じきに戻ってくるだろうという遠野の言葉を受け、さち子や真澄に誘われたこともあり、楡井は誕生パーティーに参加しつつ設楽との面会を待つことにした。

幼い頃から顔なじみの真澄と昔を懐かしんだり近況を話し合ったりとしつつ、さち子がふいに見せるこわばった表情や、不自然な言い回し、さりげなさを装った真澄のフォローなど、楡井はどこか違和感を感じずにはいられなかった。そのうち食事に飽きた大樹が、楡井のボストンに興味を示して開けかけた。中には設楽に突きつけるため凍らせた江藤の頭部が入っていたが、設楽邸を訪問する口実として持ってきていたメロンを誕生日プレゼントだといい、難を逃れた。農場試験場に勤めている楡井が新品種のメロンだと渡したが、設楽の様子を見に行っていた遠野は、そのメロンを見てなぜか表情を硬くしていた。

いじめにより疲弊していた楡井と設楽を救ってくれた恩人・益子は、江藤という男に殺されてしまった。江藤にとって殺す相手は誰でも良かった。たまたまその場に居合わせた益子が犠牲になった。だが江藤の親が金さえ積めばどんな犯罪でも無罪にするという悪徳弁護士を雇い、心神耗弱による責任能力の有無を争点に無罪を盗み取ってしまった。2人は益子の仇を取ることを誓ったものの、別々の大学に進学して数年後のある日、楡井の家を訪ねてきた設楽は研究室が決まったという。設楽の大学は早めに研究室を決め起業の準備をする学生が多い。設楽は公務員試験を受けるつもりだと言う楡井に対し「それもいいかもしれない」と返した。そして「復讐なんて益子先生は望んでない」という呟きを聞いた楡井は、設楽が起業を前にして復讐計画から降りたことを悟った。

パーティーが始まって30分経つが設楽は書斎に籠りっ切りだった。あまり時間がかかりすぎると江藤の頭部が解凍され血が染み出したり匂いが漏れバレるかもしれない。楡井はなるべく早く設楽と2人きりで会う必要があった。昼の2時を過ぎているのだから設楽もお腹が空いているのでは?と休憩を促す楡井に対し、真澄がそつなくフォローをし遠野が料理を持って設楽の所へと行ってしまい当てが外れる。しばらくして空になった皿を持って遠野が戻ってきた。まもなく楡井は違和感の正体に気づく。トイレを借りるフリをしてキッチンへ入ると生ごみ入れを覘く。案の定、そこには設楽の元へと持って行った料理がそのまま捨てられていた。

設楽は現在この家にいない。もしくは家にいるが食事ができる状況ではない。明らかに楡井に対し必死に何かを隠しているようなさち子・真澄・遠野の態度に対し、楡井はターゲットを大樹に絞った。2人だけで遊びながら、さりげなく大樹からパーティーが始まるあたりの状況を聞き出す。遊び疲れて大樹が眠ってしまうと、楡井は3人を前に本当のことを話してほしいと促した。

3人の不自然な言動をもとに楡井が組み立てた推理を話して聞かせると、3人は観念したのか楡井を2階の書斎へと案内する。部屋には荒んだ様子の設楽がいた。誕生パーティー中の会話から、書斎には冷凍冷蔵庫があるのは分かっていた。まっすぐにそこへ向かった楡井が冷凍庫のドアを開けると、そこには想像通りのものが収まっていた。

まとめ

復讐計画から降りて社会的な成功と幸せな家族を手に入れた設楽に江藤の生首を突きつけることを最終目標としていた楡井に対し、設楽もまた楡井に対し思うところがありました。設楽は設楽で楡井に失望していたようです。思い描いていたのとは違いましたが、楡井は無事(?)に江藤の生首を設楽に見せることができました。

復讐が完結したあとは野となれ山となれ、遺体が見つかり警察に捕まるのもやむを得ないといった様子の楡井でしたが、運命共同体としてそれは許されないと横やりが入りました。真澄を筆頭としたさち子・遠野の女性陣3人です。

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ハッピーエンドでいいのでしょうかね? 秘密を共有する人間は少なければ少ない方がいいと思いますが、結果的に結構な人数が運命共同体になってしまいました。いずれどこかから綻びが生まれ破綻しそうな気もしますが、目を覚ました大樹に対し「みんなで幸せになる方法を考えている」というさち子のセリフが最後効きました。