北村薫「覆面作家」シリーズ第1弾『覆面作家は二人いる』あらすじとネタバレ感想

北村薫さんの「覆面作家は二人いる」のあらすじと感想をまとめました。

随分前に書かれた本ですが、2019年に新装版が出版されたので改めて読み直してみました。

家の中では内気なお嬢様、一歩外に出ると男勝りに性格が変わってしまう新妻千秋と、編集の岡部良介がコンビを組んで事件を解いていくシリーズの第1弾です。

「覆面作家は二人いる」書籍概要

  • 覆面作家は二人いる(1991年11月/角川書店)
  • 覆面作家は二人いる(1997年11月/角川文庫)
  • 覆面作家は二人いる(2002年2月/C★NOVELS)
  • 覆面作家は二人いる(2019年5月/角川文庫)※新装版
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覆面作家のクリスマス

「世界推理」編集部宛てに届いた「新妻千秋」を名乗る原稿を先輩編集者から渡された岡部は、電話番号も書いていない、性別すら不明の相手に面会するため、差出人の住所を頼りに家を訪れた。そこは世田谷の一区画を丸々使った大豪邸で、執事に案内された先にはとっても内気なお嬢様がいた。彼女が小説を書いた本人、新妻千秋だった。来る途中に目撃した不思議を、話を聞いただけであっさりと解いてしまった彼女の推理力に感嘆した岡部は、自宅の隣に建つ女子高で起こった殺人事件について話して聞かせた。

寮の一室で3年生が殺されていた。絵が得意な生徒で、自分で焼いた自慢の壺の絵を描いていたところを襲われたらしい。凶器はその壺だった。折しも女子高ではクリスマスパーティーの準備で賑わっており、ルームメイトの3人は演劇の練習のため不在だった。また仮装コンテストも予定されており、サンタが配るプレゼントなどもすでに袋に詰めて用意されていた。

事件が起こる前、被害者のファンだという1年生が彼女の部屋を訪れ、綺麗に包装された兎のオルゴールをクリスマスプレゼントとして渡してた。だが事件現場からは、このオルゴールが消えていた。

話を聞いた千秋は、被害者が貰ったプレゼントをその場で開封したかどうかを気にし、人の命が掛かっていると言うやいなや、女子高へ行くと言い出した。外出のため深層の令嬢のようなワンピース姿から動きやすいボーイッシュな格好に着替えた千秋は、家の門を出るや否や言葉遣いや性格がコロリと変わって岡部を驚かせた。

女子高で1年生から、被害者はデッサンに集中しており、渡したプレゼントは開封せず机の上に置かれたことを聞いた千秋は、これで犯人が分かったと岡部に言った。

 

犯人は同じ女子高の生徒でした。計画的な犯行ではなく、カッとなって衝動的にやったものであり、自分が犯人だと言う証拠を残さないためにオルゴールも持ち去ったのでしたが、逆にオルゴールが消えたことで犯行が明るみに出てしまいました。

岡部曰く、内では借りてきたネコ、外に出るとサーベルタイガーになる千秋は武術にも長けているようで、強力な一発を貰っていました。

眠る覆面作家

その後何編か作品を書いた千秋は、本名のままだと困るといって「覆面作家」というペンネームで雑誌デビューした。評判は上々だった。

千秋の希望で初めての原稿料を現金で渡すため、12時に水族館で待ち合わせることになった。千秋は風邪を引いて電話口でも咳をしていたが大丈夫だという。徹夜の岡部は、仮眠を取るつもりが寝過ごしてしまい慌てて待ち合わせ場所へと行ったものの、千秋には会えず仕舞いだった。

家に帰ると岡部の一卵性の双子の兄で警視庁の刑事・優介が、仕事中に凶悪な小娘に投げ飛ばされたといって腰を痛めていた。場所は水族館、どうやら千秋は岡部と優介を間違えたらしい。優介は、ある誘拐事件の張り込み中だった。

小学2年生の医者の娘・夕子が誘拐され、中学生の姉が電話を受け父に代わった。12時に水族館に一千万円を持ってこい、警察に知らせたら娘の命はないという内容だった。父親は言われた通りにお金を手に水族館へと行き、周囲を扮装した警察官らで固めていた。

11時半頃、持ち場にいた優介に声をかけてくるマスク姿の女がいた。「なんだ早いじゃないか」と言いながら優介に向って約束の金を出せと両手を突き出してくる。優介がとぼけると、怒ったような口調で帰ると言い出した。ここで帰られて誘拐犯の仲間に連絡を取られてはダメだと咄嗟に背後から羽交い絞めにしようとしたところを、思い切り投げ飛ばされた。女はそのまま逃げていった。

12時、身代金の受け渡し現場に犯人はこず、自宅に火が燃える音とともに警察を呼んだから子どものいる部屋に火をつけたという犯人の怒ったような電話がかかってきて、電話を取った医者の妻がパニックになっていた。だが13時過ぎに夕子は解放され、無事に戻ってきた。火事の電話はお金をとれなかった腹いせに脅しただけだろうと結論付けられた。

マスクの女はおそらく原稿料を受け取りにきた風邪っ引きのサーベルタイガーの千秋だろうと分かったが、誤解を解くことはしなかった。

その後、岡部を投げ飛ばしたことを反省していた千秋は岡部から、身代金の受け渡しで気を揉んでいる時間帯、医者の家では妻が刑事にお茶を出そうと用意をしていたところ、中学生の姉が2階から降りてきてクッキーの缶を持っていってしまったという呑気なエピソードを聞き、医者の家に行くと言い出した。

 

優介から聞いた話をそっくりそのまま伝えた岡部、妹が誘拐されている時にクッキーを食べる姉、警察に通報したことを怒る犯人、身代金がなくてもあっさり解放された妹。これらのことから、千秋は即座に事件の全容と医者一家のデリケートな人間関係を読み取っていました。

風邪が完治していない千秋を背負って家まで送り届けた岡部は、見事に風邪を貰いました。

覆面作家は二人いる

先輩編集の雪絵には、デパートで万引きなどの見回りをするガードマンの姉・月絵がいた。このところ急に売り場からCDが消えるという事件が起こっているという。また挙動不審な女子中学生が売り場から出ようとしたところ警報が鳴った。だが彼女の持ち物からは売り場のものは一つも見つからなかったという不思議も起き、首を捻っているという。

早速岡部はその話を千秋に持ち込み、雪絵、月絵と会う段取りをつけた。そんななか優介に千秋のことがバレ、誘拐事件の誤解を解くとともに千秋の人格が変わる話をする。すると優介は、千秋には自分たちと同じそっくりな人間がもう一人いて、岡部の隙をついて素早く入れ替わっているに違いないという。

月絵との待ち合わせ日、雪絵、千秋とともにデパートを訪れた岡部は、例のCD売り場で、ある女子中学生が万引きの現行犯で捕まるのを目撃した。雪絵の娘・花絵だった。雪絵は、最近の娘がお小遣い以上のCDを所持していることや、部屋にあった小説の中に渡した覚えのない1万円札が挟んであるのを見つけ、密かに悩んでいた。

娘が目の前で事務所に連れていかれる姿を見てしまいショックで気を失う雪絵のそばで、千秋がぽつりと「良かった」と呟いた。

 

娘の花絵は万引き犯ではありませんでしたが、ある目的があって店員に捕まったのでした。

月絵が体験した不思議な出来事は、万引きグループたちが警報器を鳴らさずCDを盗っていくために行っていたことで、千秋はすんなりとその秘密を解き明かしました。

対策をとり後日捕まった万引きグループを問い詰めたところ、千秋の推理通りのことを行っていたのを認めました。

千秋は二人いるという優介の言葉が正しいかどうか、注意深く千秋を観察していた岡部は、千秋は一人だけしかおらず、家の内と外で性格が変わることを改めて知りました。そして覆面作家の一冊目の出版も決まったようです。

 

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だいぶ昔に「お嬢様は名探偵」というタイトルでテレビドラマ化されたのを見たのが、このシリーズを読むきっかけでした。懐かしいです。再放送しないものでしょうかね。