北村薫「覆面作家」シリーズ第3弾『覆面作家の夢の家』あらすじとネタバレ感想

北村薫さんの覆面作家シリーズラストとなる「覆面作家の夢の家」のあらすじと感想をまとめました。

1話目から双子の兄が結婚式を挙げていたり、最終話では別のカップルが誕生したりと華やかな1冊でした。つかず離れずな関係の岡部と千秋もようやく1歩踏み出したようで、ほんわかする短編集でした。

「覆面作家の夢の家」書籍概要

12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。そこに秘められたメッセージの意味とは!?天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者、岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴えわたる“覆面作家”シリーズ第3弾。「BOOK」データベースより

  • 覆面作家の夢の家(1997年1月/角川書店)
  • 覆面作家の夢の家(1999年10月/角川文庫)
  • 覆面作家の夢の家(2003年2月/ C★NOVELS)
  • 覆面作家の夢の家(2019年9月/角川文庫)※新装版

 

覆面作家と謎の写真

岡部の双子の兄・優介が、洋々出版の静美奈子と結婚した。義理の姉となった同業の美奈子と、今度取材のために千秋とディズニーランドへ行くという話をしていたところ、彼女から不思議な写真の話を聞いた。結婚退職した元同僚の家へ遊びに行き、その時に見ていたアルバムの中に心霊写真を見つけたというのだ。

写真を撮った日、美奈子はその友人の女性とディズニーランドへ遊びに行っていた。天候が合わず延期を繰り返し3回目の日曜日にようやく晴れたからだ。二人はディズニーランドを堪能し、途中チュロスを売っている列があったが、並んでいる人が多かったので写真だけ取ってスルーした。アルバムの写真の中には、その前の年まで同じ編集部にいた男性が列に並んでいる姿が写っていた。アルバムの持ち主の友人に見せると、彼女もびっくりしていたらしい。

その男性はニューヨーク勤務中だった。ツテを頼って本人に確認したところ、その時期に日本に戻ってはいないとのこと。

千秋にその話をすると、岡部は彼女に「この話で一番不思議なのはどこか」と尋ねられた。

 

真相が分かってみれば他愛のないものでした。何かを意図して心霊写真を作り出したのではなく、アルバムを見た美奈子が心霊写真だと思いこんでいたのでした。

覆面作家、目白を呼ぶ

新人作家・金山真奈美との顔合わせのため、岡部は自家用車で福島へ向かった。真奈美はファンクラブに入るほどハチに詳しく、応募原稿もハチを効果的に使っていた作品だった。ファミレスで真奈美との打ち合わせ中、彼女の職場の女性が昼食のためやってくると、真奈美の態度がおどおどしたものへと変化した。どうやら店長よりも強い主任らしい。真奈美は岡部に、このまま帰るのなら主任の車のあとをついて行けば半分の時間ですむといい、岡部もそうさせてもらうことにした。

ファミレスの出発間際、真奈美は岡部と主任に自分の車から出してきた冷えた缶ジュースを手渡してくれた。道はカーブが続く山道だった。慣れているらしい主任のあとを危なっかしくついてく岡部だったが、ふいに主任の車の様子がおかしくなった。急激な蛇行をはじめたあと急ブレーキをかけて一時的に止まったものの、車はバランスを崩し谷底へと落ちていった。

あまりの不自然な事故死から、缶ジュースに睡眠薬が入っていたのではないかと疑った岡部だったが、缶は未開封だった。話を聞いた千秋は主任と真奈美の家へ行くと言い出す。建設ラッシュなのか、どちらの家も新築だった。主任の夫から彼女が以前刺されてからハチを怖がっていたことを聞くと、真奈美の家へと行き彼女を乗せて車は出発した。

主任がスズメバチを怖がっていたという話を千秋がしていた時、車の外にハチが現れ窓に群がる。とたんに真奈美はパニックになった。

 

目白は、鳥ではなく虫の方でした。事故前後の話を聞いた千秋は、ハチを使ったトリックが使われていたことを見抜き、真奈美を乗せた車に目白を呼び寄せたのでした。排気ガスに寄ってくるそうです。

覆面作家の夢の家

ミステリー作家、美佐子の趣味の一つに1/12のドールハウスがあった。覆面作家の千秋が実際に起きた事件も解決していると聞いた美佐子は、ある事件解決の依頼をした。ドールハウス内の殺人事件だった。

美佐子がドールハウスにはまるきっかけとなった歌人で和歌史にも詳しい学者・藤山が、美佐子宛にドールハウスを送ってきた。殺風景な室内に男がうつぶせに倒れている。その背には凶器と思われる矢が突き刺さっており、突き出された右手の人差し指のあたりには「恨」という血文字が書かれていた。

矢に刺されている男は藤山自身らしい。以前美佐子とダイイングメッセージについて話をしていた時、藤山がダイイングメッセージの問題を出すと言い送られてきたのがこのドールハウスだった。藤山と美佐子の関係から、矢はキューピッドの矢、つまり犯人は美佐子でないかと話し合う3人だったが、恨みを買った覚えはないと美佐子は言う。藤山が倒れているドールハウスは架空の部屋ではなく実際にある部屋なのではないかと思いついた3人は、藤山に連絡をとり彼の大学の研究室へと出向いた。ドールハウスは藤山の研究室を模したものだった。

研究室内を探索して得られたヒントと、藤山が和歌に詳しいこと、藤山自身の暗証番号が1886であることを聞いた千秋は「恨」の解読に成功したものの、その先に行き詰ってしまった。

そんな頃、突如帰国してきた千秋の父親のヒントで、無事にダイイングメッセージは解読できた。非常に回りくどく犯人の名前を示していた。

 

死ぬ間際に回りくどいメッセージを残すことはないと思いますが、今回はダイイングメッセージにかこつけたプロポーズだったので、苦労した分感動もひとしおだったでは?と思います。

ドールハウスのダイイングメッセージ、堀川百首、百人一首と本当に手の込んだメッセージでしたが、ハッピーエンドに終わり楽しい短編でした。

 

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ラストは人の死なない殺人事件が起こり、2組のカップル誕生で幕を閉じました。

これで終わりかと寂しい気もしますが、シリーズものとしてはとても綺麗な終わり方で良かったです。