北山猛邦「城」シリーズ第3弾『「アリス・ミラー城」殺人事件』あらすじとネタバレ感想

北山猛邦さんの『アリス・ミラー城』殺人事件のあらすじと感想をまとめました。

城シリーズと銘打っていますが作品間に関連はなく独立したものとなっています。タイトルに城が付いている物のうちの1冊という位置づけですね。

不思議の国のアリスをモチーフにした、「そして誰もいなくなった」を彷彿させるシチュエーションでの連続殺人事件でした。

「『アリス・ミラー城』殺人事件」書籍概要

鏡の向こうに足を踏み入れた途端、チェス盤のような空間に入り込む―『鏡の国のアリス』の世界を思わせる「アリス・ミラー城」。ここに集まった探偵たちが、チェスの駒のように次々と殺されていく。誰が、なぜ、どうやって?全てが信じられなくなる恐怖を超えられるのは…。古典名作に挑むミステリ。「BOOK」データベースより

  • 『アリス・ミラー城』殺人事件(2003年5月/講談社ノベルス)
  • 『アリス・ミラー城』殺人事件(2008年10月/講談社文庫)
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あらすじ

東北の海に浮かぶ江利ヵ島に8人の探偵と2人の招待側の人間が集まった。彼らの目的は島に建つ城「アリス・ミラー城」にあるとされる鏡、アリス・ミラーを探すこと。客らは漁船に分乗して江利ヵ島に渡った。先発隊は招待側と鷲羽、窓端、海上、山根、後発で観月、古加持、无田、无田の連れの入瀬で滞在期間は一週間。住んでいる者はおらず荒れ果てているのを簡単に清掃しただけのアリス・ミラー城では、食事はイギリス人ホストのルディと世話係として雇われた堂戸で準備するが、それ以外の生活全般は基本的にゲストたちがセルフで行うと言う。

城の遊戯室にはチェスの盤があり、盤上には白の駒が10個、何者かによって何らかの意図をもって並べられていた。まるで「誰もいなくなった」のインディアン人形のようだった。そして盤の真ん中に1つだけある黒の女王の駒は、盤上から駒を消す死神の見立てだろうと窓端が言った。

最初の夕食の席でルディはたった一つだけというルールを開示した。それは「『アリス・ミラー』を手に入れられるのは最後まで生き残った人間のみ」というものだった。ルディ自身、アリス・ミラーがどういった物なのか、どこに眠っているのかは知らず、生き残った全員に鏡を手に入れる権利があるので見つけたあとの処理は権利者が考えればいいという。簡単な自己紹介を済ませた後、ルディは自分は友人とともに日本語を勉強するために日本にやってきて住んでおり、イギリスでは国内文学を専攻していたのでルイス・キャロルや不思議の国のアリスについて訊きたいことがあれば尋ねてほしいと言うと、不思議の国のアリスにはモデルがいたという話をした。「そして誰もいなくなった」のように夕食に毒を盛られることもなく、初日は鏡探しを始める探偵もおらず和やかに終わった。

翌朝、アリスのように体を縮めなければ通れないような小さなドアのある部屋で、大きな鏡の上に腹部を真横に切り裂かれ顔を硫酸で溶かされていた男の遺体が発見された。集まったメンバーの中で唯一姿が見えないことから、遺体は鷲場と推定された。小さなドア(アリス・ドア)と窓には鍵がかかっており、複製ができないという鍵も何者かによって持ち去れていたため、窓を壊して室内に侵入する。遺体の口からドアと窓の2つの鍵が見つかり、鷲場の殺害は密室殺人と断定される。チェス盤の上から、白の駒が1つ消えていた。

探偵たちが密室の謎解きを始めた頃、无田は過去に江利ヵ島を訪れたことがある山根に森の奥にある「名無しの泉」に案内される。高度成長期時代の影響を受けたこの島は酸性霧に覆われ、泉は静かに透き通っているものの酸度が高く生き物が棲んでいないらしい。

密室殺人を調べていた窓端が、合わせ鏡の間で殺された。部屋は左右の壁に鏡がついているせいで無数の扉が存在しているように見える場所で、一緒に密室を調べていた海上は犯人が逃げる姿を見て追いかけたが、廊下に出た途端犯人は忽然と姿を消した。観月に問われ海上は目撃時の様子を語る。廊下に出たと見せかけて犯人は部屋に戻ったのではないかと考えた海上は部屋へと帰る。すると薄暗い中ぼんやりとした人影が遺体のそばに立っていた。スカートをはき、金色の髪をしたアリスを見たと海上は言った。

海上は犯人を殺すと錆び付いた斧を手にした。だが犯人が簡単に名乗り出るわけがないから全員を殺すと言い出す。メンバーたちは海上の手から逃れるためちりぢりに逃げ出した。海上によって手錠で繋がれてしまった无田と入瀬は地下へと逃れる。奥には小さな空間があり、夥しい量の血があちこちに飛んでいた。血はまだ新しく、何者かがここで誰かをバラバラにしたらしいと考えた无田は、窓端が殺害された時に姿を見せなかった山根が被害者だと考える。

ルディと合流した古加持は協力して海上を屋上に閉じ込めることに成功した。寒空の下、数時間ほど待ち体力を奪われ大人しくなった頃に縛り上げることにし、他のメンバーたちを探し无田と入瀬の無事を確認した。ルディは窓端を殺した犯人が消えた謎が分かったという。合わせ鏡によって惑わされていたが、部屋の一番奥の扉の向こうに隠れる場所があった。犯人は廊下から姿を消したように見せかけ、部屋の奥の隠し部屋に逃げたのだった。

何者かによって屋上の鍵が開けられ海上は姿を消していた。古加持とルディは鷲場の遺体があるアリス・ドアの前で観月に会う。観月は密室は探偵たちを誘い出すための罠だと言う。密室の謎を解こうと引き寄せられた人間を一人ずつ殺していくための装置に窓端と海上が引っかかり、一人になったところで窓端が襲われた。ひとまず生きている人間は全員集まることにした。

海上の手から逃れた堂戸はすっかり怯えており、ルディの呼びかけにも耳を貸さず城外へと走って消えてしまった。堂戸を迎えに行くと言うルディは、数時間経っても戻ってこなかったら探しに来てほしいと古加持に伝え城を出た。チェス盤の白い駒は順調に数を減らしていた。その後、海上と山根のバラバラ死体が発見された。

翌朝、江利ヵ島に黒い雪が降り始めた。酸性雪だという。入瀬と手錠で繋がれたままの无田は、観月から古加持が死んでいることを知らされる。教会のような部屋で古加持の首に何重ものロープが巻かれ、上からぶら下がっている。観月は他の遺体も確かめに行くと言い森へと足を向け、木々の間に倒れている堂戸、名無しの泉で溺死しているルディを見つけた。鷲場のいる密室の謎を解いたという観月は、トリックを実践するといい一人で部屋に入っていった。だがいつまで待っても音沙汰がない。ドアについている小さな覘き窓から室内を確認した无田は、殺人犯と思われる人物と目が合い逃げ出した。遊戯室へ向かった2人は、部屋の前で死んでいる観月とその傍に立っている古加持を見つける。古加持は犯人を捕まえるために死んだふりをしていただけだという。観月は「4」と読めるダイイング・メッセージを残していた。残された白い駒は3つ。

突如として現れた人影が古加持の背後で斧を振り上げると、一瞬で彼の首を切断した。自身も襲われ斧で負傷しながら逃げ出した无田は階段から転がり落ちた。気が付けば手錠が軽くなっている。无田と繋がっているもう片方の手錠には、入瀬の腕だけがあった。

无田は激痛に耐えながら犯人と対峙した。そしてアリス・ミラー城を舞台にした連続殺人の動機を聞かされる。犯人が无田に向かって斧を振り上げた最後の瞬間、无田は観月が遺したダイイング・メッセージの意味を知った。

 

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犯人以外全滅のようです。殺害動機もめちゃくちゃな気がします。人間味のないパズルみたいな動機(本の中の情報で論理的に導かれる感じのもの)でした。

トリックはこの本自体に仕掛けられていました。いわゆる叙述トリックもので、登場人物として存在していたし作中でもキャラ達はいると認識していたものの、読者にだけ巧妙に存在を隠されていた人物が犯人でした。

一度読んだだけではチンプンカンプンなので、叙述トリックと知ってから読み直して「ああ、なるほど」と腑に落ちる本です。