北山猛邦「名探偵音野順の事件簿」シリーズ第1弾『踊るジョーカー』あらすじとネタバレ感想

北山猛邦さんの「踊るジョーカー」のあらすじと感想をまとめました。

ミステリー作家の白瀬白夜が語り手兼探偵助手、探偵役が大学時代からの友人で引きこもりの音野順というコンビがあっという間に事件を解いてしまう短編集でした。読み口が軽いのでちょっとした時間ですいすい読めてしまいます。

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「踊るジョーカー」書籍概要

推理作家の白瀬は、とっても気弱な友人・音野順が秘める謎解きの才能を見込んで、仕事場の一角に探偵事務所を開いた。今日も白瀬は泣き言をいう音野をなだめつつ、お弁当のおにぎりを持った名探偵を事件現場へ連れてゆく。殺人現場に撒かれた大量のトランプと、凶器が貫くジョーカーが構成する驚愕の密室トリック(「踊るジョーカー」)、令嬢の婿取りゆきだるまコンテストで起きた、雪の豪邸の不可能殺人(「ゆきだるまが殺しにやってくる」)など五つの難事件を収録。「BOOK」データベースより

  • 踊るジョーカー(2008年11月/東京創元社)
  • 踊るジョーカー(2011年6月/創元推理文庫)

踊るジョーカー

小説家の白瀬は住居とは別にマンションに仕事部屋を持っていた。2部屋あるうちの1部屋をひきこもりの音野の生活スペースとして提供している。白瀬の小説は過去にいくつもの事件の謎を解いた音野をモデルにしているため、印税などの半分は音野に渡している。その音野の生活スペースを、白瀬は探偵事務所として開設した。

最初の依頼人は南斉貴一、家の地下室で殺害されていた父親の事件で警察に疑われているという。被害者の父親は密室状態の中、腹部をナイフで刺され絶命した。地下室へと向かう階段の扉、地下室の扉と2つのドアがありどちらも施錠されていた。鍵は父親と南斉しか持っておらず、地下室の悲鳴を聞いた南斉が自分の鍵を使って開けた。もう一つの鍵は父親が手に握っていた。地下室には床一面にトランプが撒かれているという異常な状態で、父親の腹部を刺したナイフにもトランプの束が突き刺さっており、そのほとんどがジョーカーだった。

父親が亡くなったと思われる時間帯、屋敷にいたのは南斉と婚約者の藍子、屋敷の管理を任されている根津という男の3人だった。南斉と藍子には結婚を反対されているという動機、根津は20年以上こき使われているという動機があった。また半年前くらいから父親の部屋や身の回りからトランプが見つかるという気味の悪い事件が起き続け、精神的に参ってしまった父親は地下室にこもるようになったという。

殺害現場を見に、嫌がる音野を無理やり連れだし屋敷へと赴いた白瀬は、顔見知りの岩飛警部に威嚇されつつもトランプが床にばらまかれたトリックを見つける。またナイフに突き刺さっていた50枚のジョーカーの束が、端が揃わないバラバラの状態であったことから、音野はある実験の成功を見届けたのち密室殺人のトリックを暴いてみせた。

 

短編ということもあってか、もったいぶることもなくアッサリと音野が謎を解いてしまうので、話の展開が非常にスピーディーです。それにしても犯人は密室トリックといい殺害方法といい、かなり難易度の高いやり方を選んだものだなと思います。

時間泥棒

上野アサヒとカイの姉弟2人で暮らしている屋敷で、時計がなくなるという事件が立て続けに起こった。美術関係の仕事をしていた両親の遺産と遺品で不自由なく暮らしている姉弟は、なくなった時計はその辺の店で買えるくらいのものばかりで高価なものではないという。姉のアサヒの恋人だという長崎という男とともに探偵事務所にやってきたカイは、盗まれた時計の共通点としてアナログ時計であること、現在も動いていることなどを挙げた。デジタルや針が止まっている時計はとられてないらしい。また白瀬が岩飛警部に確認したところ、近隣で似たような事件は起こっていないという。

時計の盗難で警察に届けるほどではないと考えた姉弟は、音野探偵事務所に依頼した。2人は上野家へと出向くと、なくなった時計があった部屋などを見て回る。

携帯電話を手に一人だけある部屋に残った音野は、5分後にその携帯に電話をかけるよう白瀬に頼む。依頼通り電話をかけ終わった後、部屋に戻ってきた音野は、白瀬と上野姉弟が談笑しているところでノートで筆談を始めた。そして2人は犯人に罠をしかけた。

 

筆談のあたりでピンとくるのですが、屋敷には盗聴器が仕掛けられていました。犯人は上野家の財産を狙っていたようですが、音野達によってその目論見は塵と消えました。

見えないダイイング・メッセージ

発明家の笹川昭夫が敷地内の離れで何者かに殺され、強盗殺人だとして捜査が開始された。離れには笹川しか開錠できないテンキータイプの金庫があり、今わの際に彼はポラロイドカメラで室内の写真を撮り何らかのメッセージを残した。おそらく金庫の暗証番号と思われるので、その番号を解読してほしいと息子の晃から依頼を受けた白瀬は、音野の拒絶をスルーして依頼を受けた。

写真自体は警察が証拠品と押収しているため、ポラロイド写真をデジカメで写したというデータを見せられた。そこに映っていたのは午前1時34分を示している立派な振り子時計、その隣の3段スチールラック。ラックの上段には賞状、中段には本、下段には枯れた観葉植物。それ以外は床と壁だった。

何の進展もないまま数日が過ぎ、白瀬と音野は岩飛警部から例のポラロイド写真を見せてもらった。写真には被害者の指紋しか残されていなかった。警察が到着した時離れに電気が付いていたかという音野の質問には、消えていたという返事がかえってきた。

暗号の解読に悩む白瀬に、音野は指揮者をやっているという兄が帰国すると伝える。3人で会食した際、強盗殺人と今取り組んでいる暗号の謎についての話をしたところ、兄の要はあっさりと暗号の謎を解いてしまった。

兄と別れた後、音野はポラロイド写真の矛盾点などを挙げある人物を犯人だと指摘した。岩飛警部も犯人の目星はついていたらしく、まもなく犯人が殺人容疑で逮捕された。

 

犯人は、笹川にダイイング・メッセージを残させるために犯行を行いました。金庫の暗証番号を知るためでしたが、笹川がメモではなくポラロイド写真を撮るという方法でメッセージを残したため番号が分からず、結果、白瀬と音野が出張るという事態になってしまいました。音野兄弟は名探偵の血でも流れてるっぽいです。金庫は無事開きました。

毒入りバレンタイン・チョコ

南大洋大学の研究室で青酸化合物が付着したチョコレートを食べた女子大生が倒れ、一命をとりとめた。チョコレートはバレンタインに合わせて女子大生とその友人2人の手作りで、事件当時は歯科治療中の教授を除く4人の学生がチョコを口にしていた。チョコは横から見ると台形になっている一粒チョコがそれぞれカップに入れられており、全部で32個が箱に詰められ、4人はランダムにチョコを手に取っている。カップとチョコの間には台紙が敷かれていた。

4人の大学生は前日にチョコを作った椎菜、被害者の栄子、買い出しを手伝った大広、武田で、武田の依頼を受け白瀬と音野は大学へと出かけた。毒物が付着していた台紙は栄子が食べた1つだけで、誰がいつどのような方法で毒物をチョコに混入させたのかは不明だった。現場に出張るエリート上司の高庭警視に一泡吹かせたい岩飛警部が珍しく2人に協力的で、立ち入り禁止の事件現場へ入ることを許可される。チョコと一緒に飲んでいたコーヒーや紅茶を入れた電気ポットからは何も出ていないことから、犯人は最初から栄子を狙っていたものと推測された。

高庭警視が栄子の自作自演説を唱える中、入院中の栄子に会いに行った音野、白瀬は見舞に来た椎菜に用意してもらった余ったカップと、岩飛警部が持っていた証拠品のカップとを比べ、証拠品の台紙が厚紙ではなく磁石だったことに気が付く。犯人が毒物を混入させた手口が分かったという音野は、栄子を除く関係者全員を集め、砂糖を毒物に見立て狙ったターゲットだけに毒入りチョコを食べさせた方法を実演してみせた。

 

毒物が致死量以下だったことから、栄子を狙ったものの殺すつもりはなかったようです。動機はあまりにも身勝手すぎるものでした。犯人は巧妙に栄子たちを誘導して毒入りチョコのトリックを仕掛けていましたが、現場に決定的な証拠を残していた事には気づきませんでした。

ゆきだるまが殺しにやってくる

ちょっとした事件の依頼をこなした帰り道、音野と想像力と発想力を必要とするしりとりをしていた白瀬は運転が疎かになり山の中に入り込むとそのまま道に迷った。日が暮れ氷点下の気温、圧雪によるアイスバーン、次第に崩れていく天候……不安に駆られつつも山道を辿っていくと、突然大きな雪だるまが現れた。あちこちに作られている雪だるまの先に、豪邸が現れた。豪邸の主は2人を快く泊めてくれるばかりか、娘の結婚相手を決める「雪だるま作り」に参加させてくれるともいう。

雪だるま作りは今年20歳になる美子自身の発案で毎年行われているものの、なかなか目に適う雪だるまが作られないのか結婚相手は決まらず、今年の参加者は藤原と神谷の2人だけだった。屋敷には白瀬と音野以外は主の笹宮、娘の美子、藤原、神谷、住込みのお手伝い・深津で全部だった。藤原と神谷が屋敷の玄関口と裏手に別れて雪だるま作りにいそしむ中、夕食のため食堂へと向かう途中、音野が雪だるまが動いたと驚く。食堂には笹宮親子がおり、すでに食べ終わった笹宮が葉巻を吸い始めるといつものことなのか換気扇が回り始める。深津が外の2人を呼びに行こうと食堂を出てすぐ、彼女の悲鳴が聞こえた。音野が動いたと驚いた雪だるまのすぐそばに、藤原が倒れていた。

凶器は雪だるまの腕の部分に突き刺さっているバール、藤原はそれで頭を殴られて殺されたらしい。白瀬たちが雪だるまを見てから深津が悲鳴をあげるまで約10分、その間に藤原は殺されたと思われる。だが現場には誰の足跡も残っていなかった。その10分に唯一アリバイのない神谷が犯人と疑われ、彼の部屋からスタンガンも発見されるものの、音野は濡れ衣だと判断する。神谷は雪だるまの作りすぎで利き腕の右手がしもやけになっておりバールが握れなかった。雪だるまが藤原を殺したとしか思えない状況だった。

吹雪で警察も駆けつけられない中、深津の案内で屋敷内や殺害現場の検証を行った音野は、事件の真相が分かったと言う。犯人はあるトリックによって10分間の間に藤原が殺されたように見せかけたが、実際は2~3時間前に殺されていた。つまり全員にアリバイがないことを踏まえ、音野は犯人の仕掛けたトリックを暴いていった。

 

動機がひどいです。トリックは悪天候を利用した大掛かりなものでしたが、そこまでして人を殺さなくてももっといい方法はたくさんあると思います。あまりにも幼稚な犯人でした。

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長編物をダイジェスト版にした感じの短編ばかりで、かなりサクサク読めました。三流作家(?)で収入の半分を音野にあげて部屋も提供して……って生活大丈夫かなといらない心配をしてしまいました。