喜多喜久『「はじめまして」を3000回』あらすじとネタバレ感想

喜多喜久さんの『「はじめまして」を3000回』のあらすじと感想をまとめました。

恋愛系ミステリーかなと思って手に取ったのですが、普通にラブストーリーでした。特に推理するようなことはないのですが、あっと驚く結末が待っていました。化学を絡めた難しいものという予想に反した読みやすいストーリーでした。

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『「はじめまして」を3000回』書籍概要

高校二年の北原恭介は、友達の少ないリケイ男子。そんな恭介が、クラスの人気者・牧野佑那から生まれて初めての「告白」をされた。「昨日の夜、北原君に告白する夢を見たから」「予知が外れると、不幸が襲い掛かるの」冗談みたいなことを言って、ぐいぐい恭介の生活に入り込んでくる奔放な美少女。恭介の頑なな“リケイのメンタル”が次第に揺らぎ始め、ついに想いが“本当の恋”へと変わろうとしていた、そのとき…。恭介は、笑顔を絶やさなかった彼女が、「ある重大な秘密」をずっと抱えていたことを知る―。「BOOK」データベースより

  • 「はじめまして」を3000回(2018年6月/幻冬舎)

イントロダクション

人の顔と牛の体を持つ「くだん」という予言をする妖怪のことを教えてくれたのは、牧野佑那だった。呪いとしか思えない「くだん」の予知にまとわりつかれた牧野の人生がいいものだったとは思わないけれど、記憶の中の牧野はいつも楽しそうに笑っている。どんな手段を使ってでももう一度彼女に会うと北原は決めた。

第一章 告白

春休み、中学生の時にハマって以来趣味となっているプログラミングをして過ごしていた北原恭介は、歯の詰め物が取れたため母親に促されて渋々歯医者へと出かけた。そこで声を掛けてきたのが牧野佑那だった。不愛想な北原にも物怖じせず明るく話しかけてきた牧野は、4月から同じクラスになると不思議な事を言うが、春休みが明けて最初の登校日のクラス替えで、本当に同じクラスになったことが分かると自分の言ったことが本当になったと勝ち誇ったように笑った。

学校では北原は大抵一人でいる。それが苦にはならない。放課後は誰もいない教室で学校の課題や勉強をこなし、家ではプログラミングをするのが習慣となっている。見た目も良く明るく社交的な牧野と挨拶を交わすことはあっても、親しく話をすることはない。だが新学期がはじまって1ヶ月が過ぎたある日の放課後、北原は牧野から唐突に告白される。何かのドッキリだと考えた北原は冷たく断り家に帰るが、夜中近くになって牧野から話があると呼び出された。

小学生の頃、田舎の祖母の家で遊んでいた牧野は山の中に入り込み小さな祠を見つけた。その中に入っていた「くだん」と呼ばれる像の角をうっかり折って以来、「くだん」の呪いにかかり「必ず現実になる夢」を見るようになったと言う。その夢の通りに行動しないと、夢から反れる行動を取った人に不幸が襲い掛かり死んでしまうというのだ。牧野は「北原に告白してOKをもらう」夢を見て実行に移した。北原が付き合うと返事しなければ、北原自身が死んでしまうらしい。何かの冗談だと思うものの牧野は真剣だった。牧野の勢いに押される形で北原は改めて告白を受け入れ、2人は付き合うことになった。

第二章 約束

付き合うことになったものの北原と牧野の関係は挨拶を交わすクラスメイト以上のものにはならなかった。牧野は予知夢を実現させるために告白しただけで北原に恋心は抱いていないらしいし、次の予知夢を見るまで特に北原に用事はないようで話しかけてもこない。奇妙な告白から一か月が経った昼休み、誰もいない穴場の教室で過ごしていた北原のところに牧野がやってきた。夢でこの教室にいるのが分かったと言うと、自分をデートに誘えと北原に告げる。くだんのお告げらしい。遊ぶ約束をし連絡先を交換すると、牧野は北原がやっているプログラミングに興味を示してきた。第一志望は東大だが海外の大学も視野に入れているという北原に目を輝かせる。

翌日のデートはくだんの予知によりショッピングモールでの買い物になったらしく、牧野はあちこちの店を回り夢で見たというボールペンを探していた。そのボールペンを北原が買い牧野にプレゼントすることになっているらしい。その後は映画を見てごはんを食べると、予知夢をすべて実行し終わったとあっさりと牧野は帰っていった。

北原は夢を見ていた。夢の中でこれは夢だと認識しているとてもリアリティのある夢だった。初めて見たのは葬式のシーンだった。遺影は牧野でクラスメイトの姿がある。今回はどこかの家にいるらしく、階段を上った先が牧野の部屋らしく「YUUNA」というプレートがドアに掛かっている。勉強机の上には一冊の10年日記帳が置かれていた。最初のページには「お母さんへ 北原くんが困っていたら、これを見せてください」と書かれている。最初の日記を見ようとページを捲った瞬間、北原は目覚めた。

その話を牧野にすると、日記を書いたことはないと言いつつ面白がり、放課後一緒に日記を買いに行くことになってしまった。くだんの呪いが掛かった日からの8年分の出来事を思い出して記録するらしい。

7月に入り、くだんの夢の通り再びショッピングモールでデートをすることになった。今度はネックレスをプレゼントするらしい。何だか牧野にいいように振り回されている気がしつつも予知夢を実現し帰ろうとした北原を、牧野が自宅に誘った。母親に彼氏が出来たことを言う夢を実行に移したら母親に連れてくるよう言われてしまったという。渋々ながらも牧野の家にお邪魔した北原は、母親からこの日が牧野の誕生日だったことを知らされ驚く。また牧野の部屋が夢で見たのとまったく同じだったことに信じられない思いに駆られた。

牧野は幼い頃、父親に予知夢に反する行動を取らせたことで事故死させてしまったと北原に告白すると、もう二度と誰かが死ぬのが嫌だから予知夢は絶対に守るようにしていると言い、北原にも死なないでと約束させた。

第三章 解放

付き合っていることは2人だけの秘密にしていたが、噂として広まりつつあるらしい。牧野の親友の志桜里からは噂が事実かどうか鎌をかけられるし、昼休憩には穴場の教室にわざわざやってきた牧野に惚れている先輩に凄まれた。どこかで見たことがある顔だが思い出せず志桜里に確認すると、何度か牧野に告白しては玉砕している村岡だという。また志桜里は、牧野が北原と付き合っていることを認めたと教えてくれる。その牧野は、放課後に手を繋いで帰る夢を見たといい実行に移そうとする。夏休み前、北原と牧野の交際(?)は公になった。

夏休み、くだんの予知夢で2人で市民プールに遊びに行った。お盆になって、祖母の家で過ごしている牧野から、北原と山道を歩いている夢を見たと狼狽した声で電話があった。予知夢を実現するためには北原が動くしかない。急遽東京から新幹線で関西の山奥にある牧野の祖母宅を訪ねた北原は、たまたま自分も関西にいたと口裏を合わせ二人で山道を歩いた。その先にあったのは小学生の頃に牧野が折ったというくだんの像がある祠だった。持参した接着剤で角をくっつける。その作業が終わる頃、突然のどしゃぶりに見舞われ、牧野の祖母宅に戻る時には2人とも全身ずぶぬれ状態だった。おまけに落ちてきた岩で道がふさがれたらしく、北原は祖母宅に泊まることになり集まっている牧野の親せき連中の宴会に放り込まれることになった。

角を元通りにくっつけても呪いは消えなかったらしい。翌朝、また夢を見たと思い詰めたような表情で牧野は言った。そして北原に目をつぶって欲しいと言うと、いきなり平手打ちしてきた。さすがにバツが悪いのかそれ以降牧野からの連絡は途絶えた。そして希望者だけが受ける模試の日、北原は牧野が村岡とデートしていたという目撃情報を聞く。うたた寝の最中に再び牧野の葬式の夢を見た北原は、参列者のなかに村岡や牧野の親せきがいることに気づいた。彼らを初めて見た時、なぜか見覚えがあると感じていたのは夢で見ていたからだと分かった。

夏休み最終日、牧野に呼び出された北原は、村岡とデートしていたという噂は事実だと牧野に認められる。そのうち村岡と付き合う夢を見るかもしれないという牧野に、北原は2人の関係をリセットすることを提案する。牧野もそれを受け入れ、2人は再びただのクラスメイトに戻った。あれだけ熱中していたプログラミングに手がつかず、狙っていたプログラミング・コンテストの締め切りも間近だというのに北原はパソコンを立ち上げることすらしなくなってしまった。

放課後の勉強にも手がつかず、志桜里から牧野と別れたことを責められるのもうんざりで早々に家路につく。その途中、牧野に声を掛けられた。これは予知にない行動でもうすぐ事故が起こるという。首をかしげる北原のすぐそばで地面の陥没事故が起こった。陥没の原因は不明で、牧野が声を掛けなければ北原はその事故に巻き込まれて死んでいたと言う。自分のやりたいことを一生懸命頑張って欲しいと泣きながら最初で最後と牧野が抱き着いてくる。そしてさよならと言った瞬間、抱き着いていた牧野の体から力が抜けた。

北原や連絡を受けて駆けつけた母親の願いもむなしく、運ばれた病院で牧野は一度も意識を取り戻すことなく息を引き取った。

第四章 決心

持病もなく臓器や血管の損傷もないため、牧野の死因ははっきりしなかった。強いて言えば老衰に近い状態だったという。北原は葬儀には出なかった。学校にいる間も休憩中は人目を避けた場所で過ごしていた。

牧野の死から一か月ほどが経った頃、牧野の母親から連絡を受けた。牧野の部屋を整頓していたら日記が見つかったという。「お母さんへ 北原くんが困っていたら、これを見せてください」とあったので自分は見ていない、良ければその日記を読みに来てほしいというものだった。

その日記には、北原宛の手紙とともに牧野がくだんの呪いを受けた日以降のことがつづられていた。牧野によると、その都度予知夢を見ていたわけではなく、呪いを受けた日以来、小学校、中学、高校と過ぎていき北原が事故に遭う日までの8年と二か月分の日々が流れる長い夢を毎日見ていたらしく、自分が死ぬことも知っていた。

日記には牧野のすべてが詰まっていた。日記の中身が事実として信じるのか、牧野の妄想だと切り捨てるのか、決めるのは北原だった。北原はどんな手段を使ってでももう一度牧野と会うと決めた。

プロローグ

牧野佑那は目を覚ました。最後だからと北原に抱き着いたところで記憶が途切れているのに、なぜか自分の教室にいて制服を着ている。もしかして自分は死ななかったのだろうか。教室を出た牧野は、北原が好んで使っていた穴場の物理教室めがけて走った。思った通り、教室には北原がいた。そして北原から何度でも繰り返すことができる世界の秘密を聞くと、2人で「はじめまして」から始めることにした。

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「くだんの呪い」で少々現実離れした設定になっていますが、ラストのプロローグはSFの世界に突入している感じです。設定は重いのに牧野のキャラのおかげか明るく話が進むので、読みやすい1冊だったと思います。王道の謎解きものではないです。