喜多喜久「科警研のホームズ」シリーズ第2弾『毒殺のシンフォニア』あらすじとネタバレ感想

喜多喜久さんの「毒殺のシンフォニア」のあらすじと感想をまとめました。

前作が4月からの半年間、今回が翌年3月までの半年間の話になっています。今回の顔ぶれでのシリーズがこれでいったん区切りがついた形で終了しました。

スポンサーリンク

「科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア」書籍概要

科学警察研究所―通称「科警研」の本郷分室の三人の研修生たちは、研修期間が延びたことで、「解決が困難な、不可解で難解な案件」すなわち「面白そうな事件」を選定し、調査に取り組んでいた。鋭い洞察力と推理の切れ味で、かつて警察関係者から「科警研のホームズ」とまで称されていた室長の土屋は、相変わらず事件より大学の研究に夢中な様子であったが、あるときそんな彼に異変が…。「BOOK」データベースより

  • 毒殺のシンフォニア(2019年10月/宝島社文庫)

第1話 毒殺のシンフォニア

残暑の厳しい9月に北上、伊達、愛美の3人の科警研本郷分室の研修生が今回取り組む事件は品川のホテルで起きた毒殺事件。シンポジウム2日目の夕方の懇親会で参加者の一人・大学教授の羽鳥が突然意識を失って倒れ、そのまま亡くなった。羽鳥に持病はなく、死因を調べたところ血中と、羽鳥が直前まで飲んでいたワインから猛毒のフグ毒・テトロドトキシンが検出された。直接テトロドトキシンを服用した場合一般的に20分以内に中毒症状が出るが、羽鳥は致死量の10倍の量を摂取していたため死に至るまでの時間は短かったと思われる。150人ほどいた参加者の中から容疑者を絞り込むための科学的な裏付けのある手法の提案が、分室に求められた。3人は室長の土田に相談し、10日間は3人だけで捜査することになった。

懇親会参加者は全員が大学や企業の研究者で、足のつかないルートで毒物を調達したと考えられる。まずは伊達の提案である参加者らの証言を細かく集め、懇親会が始まってから事件が起きるまでの人の動きをコンピューターで再現することにし、参加者全員にアンケートを取ることになった。伊達が入力する間、北上と愛美はアンケートを拒否したり曖昧な回答の人間を訪ね説得することになった。

助教の能代剛史は羽鳥教授の元教え子でアンケートへの回答を拒否した人物だったが2人の説得に応じて拒否を撤回した。能代は伊達のシミュレーションによると一度も羽鳥のテーブルには近づいておらず、ワイングラスに近づき毒を混入したと思われる容疑者ランクは97位だった。だが師弟関係にあった能代が羽鳥と挨拶すらしていないことに北上はすっきりしないものを感じた。

捜査本部では、羽鳥に強い恨みを持つ人物として能代剛史、佐伯康隆、枝川春香の3人の容疑者が挙がっていた。彼らは同学年で羽鳥の研究室で大学・大学院時代を過ごしている。また能代の妹・美月も羽鳥の研究室に所属し佐伯とは恋人関係、枝川は同じサークルの先輩だったことから美月を妹のように可愛がっていたが、羽鳥の強い叱責により心を病み自殺していた。3人の容疑者は事件当時、懇親会が始まる前にカフェ4人で羽鳥と話をしたので懇親会場では別の場所にいたと証言しており、シミュレーションでも同様の動きが見て取れた。仮にカフェで毒物を摂取させたとすれば倒れるまでに3時間の時間差が生じる。毒物を詰めたカプセルの可能性も考えたが、羽鳥の胃の中からカプセルの成分は検出されなかった。

約束の10日間が過ぎ土屋と事件について話をしていた北上は、テトロドトキシンの合成ルートの資料に目をやりあることに気が付いた。それをきっかけに容疑者3人が綿密に計算して羽鳥を懇親会場で殺害する方法を編み出した「本当の凶器」に行き着いた。

 

毒殺は毒殺なのですが専門すぎて(化学的すぎて)読んでていてさっぱり分かりませんでしたが、科学者らしい手法で殺害したのだということは分かりました。主犯格の自殺を見抜いた土屋により、犯人側は誰も死なずにすんだようです。

第2話 溶解したエビデンス

11月、警視庁の身元不明相談室の小金沢沙織が分室にやってきた。奥多摩の山中にある製材工場跡地に置かれた強い異臭を放つまだ新しいドラム缶から、茶褐色のどろりとした液体に漬かった白骨化した男性の遺体が発見された。タンパク質を分解する液体に漬かっていたため白骨化が進んでいたが、巨大なーハンマーで叩きつけたかのように胸骨が砕けていたという。衣服を脱がせてからドラム缶に入れられたと思われ、唯一の証拠品らしきものが7524という数字が彫られている楕円形のプラスチック片だった。難航している白骨遺体の身元特定への協力が今回の分室の仕事だった。

死因をしっかり調べた方がいいという土屋のアドバイスで、3人は個々の方法で身元特定を目指すことにした。北上は胸骨を激しく砕くほどの凶器についてコンピューターを使ってシミュレーションしたが、エネルギーの数値が大きすぎて特定に至らない。愛美は遺体が使っていた液体からDNAを抽出しデーターベースでの検索を試みたが、DNA自体が液体のおかげでボロボロになっており思うような成果が得られていない。伊達は知り合いを頼って頭蓋骨からの復顔を試みたが作成したデータとデータベースとの照合を試みたがこちらもうまく行っていなかった。だが愛美の提案した方法で検索をかけると、ある工業大学の助教・長山清仁という研究者がヒットした。

長山は行方不明になっており母親のDNAと照合した結果、白骨は長山だと断定された。学生時代からの付き合いで長山の同僚だという下浦に連絡を取り話を聞くと、研究室を辞めて故郷に戻り学習塾を開くが軌道にのって長山から電話するまでは連絡しないでほしいと言われていたらしく、行方不明になっていることは知らなかった。研究室の退職理由に心当たりはないが、その頃に何か深刻な悩みを抱えていた様子だったという。白骨が長山だと確定したことにより捜査が一気に進み、彼が将来を考えていた恋人と破局した後に大学を辞めたことが判明した。また大学を辞めアパートを引き払った長山はホテルを転々としており、そこで中学時代の同級生・平岩文紀と会っていた事も分かった。

だが平岩は既に死亡していた。長山の遺体が見つかった場所から30分ほどの山道でカーブを曲がり切れず対向車のダンプカーと正面衝突、借りていたレンタカーごと大破炎上した。長山のドラム缶を放置した帰り道、人を殺して動揺しハンドル操作を誤ったのかもしれないと愛美と北上は想像した。工場跡地へと出向いた愛美が持参した試薬で証拠の検出を試みるなか、北上はどこで殺人が行われたのかという疑問にかられた。そして敷地の周りの林の中から、断片が黒く焼け焦げて折れた木とそこに突き刺さった小さな金属片を見つけ、持ち帰った。

これまでの捜査結果などから、多額の借金を負った平岩が長山から金を借り殺害したと見ることができるが、遺体の処理が非常に回りくどく手間がかかることに研修生3人は引っかかっていた。そこに姿を見せた土屋は、現場で見つかった金属片が純度100%のアルミニウムだったことを聞くとドラム缶に残っていた液体を調べると言いとアドバイスする。アルミニウム濃度が高ければほぼ凶器が確定するという。その結果、3人は長山を殺したのは平岩ではなかったことを知ると、ある人物のところへ話を話をするため向かった。

 

今回の凶器も専門的なものでした。平岩は犯人ではありませんでしたが事件の協力者でした。

第3話 致死のマテリアル

金塚広が「仕事」仲間の久慈昌夫の家を訪ねた時、違和感を覚えた。いつもノルマをきっちりとこなして商品を仕上げ、金塚が訪問する時間には必ず起きて迎える久慈が出てこない。ガレージへ行った金塚はうつ伏せに倒れている久慈を見つけるが既に息をしていなかった。通報する前に徹底的に証拠を消さなければならないと金塚は証拠隠滅作業に取り掛かった。

新年が明け科警研の所長・出雲が分室にやってきた。ある会社が製造した石油ファンヒーターから死者も出ている一酸化炭素中毒事故が複数発生し、回収に当たっているものの未だに千台以上が未回収のままという事件があったことを話すと、先日ガレージ内で問題のファンヒーターを使っていた男性が急死し状況は一酸化炭素中毒事故を示しているものの、死因に不明瞭な点があるとして分室に協力依頼をする。北上達3人は新年の挨拶も兼ねて室長の土屋がいる大学の研究室に向かった。

被害者は久慈昌夫、金属アクセサリーを作って生計を立てていたらしく死亡当時も制作作業をしていたとみられる。ファンヒーターの燃油タンクは空になっており、ヒーター使用中に久慈は亡くなり燃料が尽きるまでヒーターは作動し続けていたものと思われた。久慈の遺体は一酸化中毒の症状を示しておらず死因は酸素不足による呼吸不全だと分かったこと、またファンヒーターによって一酸化炭素は生成されたものの致死量よりかなり小さい数値だったことが判明している。また通報者は姿をくらませたため誰なのか分かっていない。

3人は捜査担当者に連絡をとりガレージを見せて貰うが、ガラスを溶かすのに使う電気炉や作業台、ティッシュやゴム製のマット、ラジオ、デスクライトなど資料通りの室内で一酸化炭素中毒を起こしそうもない広さの室内だった。捜査官によると久慈は作業の音がうるさいと通報している近隣住人とトラブルを起こしているが、肝心の住人が神経質で全く話に応じてくれないらしい。その住人がネットゲームにはまっていることを知った伊達の案で、何とかゲーム世界で仲良くなると久慈のところを訪ねてくる男の存在を聞き出し、コッソリ撮影していたという男の写真を入手する。度々久慈を訪ねていた男の正体が金塚広だと判明したが、金塚は2週間ほど前に死亡していた。発見が遅かったため腐敗が進んでおり死因は特定できず、既に荼毘に伏されていた。金塚の行きつけのスナックに残されていた歌声と久慈の遺体発見の通報者の声を照合したところ、通報者は金塚で間違いないと判定されたが肝心の久慈の死因の特定には至らないままだった。

土屋が新たな情報を持って分室にやってきた。金塚は偽造した古いレアコインを海外のオークションで売りさばいていたらしい。作っていたのは久慈で、金塚は偽造の証拠を消すために久慈の携帯を持ち去ったり通報だけして姿を消したのではないかと考える3人に、土屋は久慈と金塚の死因についてある仮説があるらしく、当時現場を調べた鑑識職員が体調不良を起こしてないか尋ねた。

 

久慈は偽造コインを作る過程でファンヒーターの生成した一酸化炭素に反応して生まれた化学物質により死亡し、証拠隠滅を行った金塚も作業中にその物質を吸い込み亡くなったようです。

第4話 輪廻のストラテジー

2月下旬、次に持ち込まれる事件が3人の研修生にとって分室での最後の事件になるだろう。昼休みから戻った3人はいつもやる気がなさそうな土屋から手を貸して欲しい事件があると言われ驚く。「輪廻のひかり」という新興宗教団体の教祖が一か月ほど前に突然死した。持病はなく書類上は心不全となっているが、何らかの手段で殺人が行われた可能性も否定できない。教団幹部は、教祖は輪廻のために自らの意志で心臓を止めたと主張している。3人はこの事件に取り組むことになった。

教祖は六道光寿という42歳の男性。毎月1回、透明な箱に入り24時間の座禅を行うという公開修行をしており、修行終了後に箱から出てきたところで倒れ傍にいた幹部に体を支えられたものの既に脈はなかったらしい。箱は横4m、高さ2.5m、奥行き2mほどで左右と側面は白く、前後と上は透明になっており、信者の見学は自由だった。教祖の葬儀の場で生前に残したビデオメッセージが公開され、輪廻が存在することを証明するため自分はこの肉体を捨て新たにこの世に生まれるという趣旨の内容だった。また教団No.2の幹部・宇佐美より二代目教祖の発表がなされた。六道の愛人が妊娠しており、生まれてくる子どもこそが六道が輪廻を経て新たに再生した姿=二代目の教祖だという。六道には妻と子どもがいるため、教団は妻派と宇佐美派に分裂したという。

教祖の死因を特定するため愛美は教祖が運ばれ死体検案書を書いた医者に話を聞くが、不審な点はなかった。また毎回撮影している修行の様子のビデオを確認したが不審な点はない。病院で保管していた教祖の血液からも不審なものは見つからなかった。北上は教祖が修行していた箱を見せて貰うことにし、宇佐美の案内で箱が設置されているホールを調べた。箱はステージ上に設置されており、箱の扉は外側からしか開けられず、修行を終える3分前に宇佐美が傍で待機することになっていた。ステージの奥には教祖専用のトレーニングルームがあり体型維持に努めていたという。

北上達は個別に調べた情報を持ち寄り土屋も入れて進捗を話し合った。伊達は箱の扉の前に掛かっているカーテンをくぐる前とくぐった後の教祖の様子を詳細に検証し、箱の中にいた男と倒れた男が90%以上の確率で別人であると判定し、六道には影武者がおり公開修行はその人間が行っていたという証拠も見つけていた。愛美は六道の血液を調べた結果二酸化炭素中毒で死亡したと考えているらしい。それを受け北上はトレーニングルームにあった酸素カプセル内にいる六道に高濃度の二酸化炭素ガスを吹き込んだ可能性を指摘する。だが肝心の入れ替わる手段が分からない。透明な箱の後ろには黒い緞帳がかかっているが、誰かが緞帳に隠れて移動すれば必ずバレる。だが緞帳を隠れ蓑に移動した形跡はない。ステージ上にはセリがあったが動かせばそちらもバレる。衆人環視の中どうやって入れ替わったのかと頭を悩ませる3人に、土屋がインターネットで検索したある航空機製造メーカーのサイトを示した。そこに書かれている文章を読んだ3人は入れ替えトリックの真相に気づくと証明するために動き始めた。

 

潤沢な資金があるからこそ可能で素人では出来なさそうなトリックで、教祖の死は自ら心臓を止めたのではなく、人の手によって息を止められたことが証明されました。

□□

3人の研修は終了し本郷分室は閉鎖されることになりましたが、一年後をめどに土屋のいる大学内に「科学警察研究講座」が新設されるようです。これでシリーズは終了かと思ったのですが、新章としてスタートするのでしょうか? 楽しみに待ちたいと思います。