喜多喜久「死香探偵」シリーズ第1弾『死香探偵 尊き死たちは気高く香る』あらすじとネタバレ感想

喜多喜久さんの「死香探偵 尊き死たちは気高く香る」のあらすじと感想をまとめました。

 

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「死香探偵 尊き死たちは気高く香る」書籍概要

特殊清掃員として働く桜庭潤平は、死者の放つ香りを他の匂いに変換する特殊体質になり困っていた。そんな時に出会ったのは、颯爽と白衣を翻し現場に現れたイケメン准教授・風間由人。分析フェチの彼に体質を見抜かれ、強引に助手にスカウトされた潤平は、未解決の殺人現場に連れ出されることになり!? 「BOOK」データベースより

  • 死香探偵 尊き死たちは気高く香る(2018年1月/中公文庫)

第1話 交わり合う死は、高貴な和の香り

25歳フリーターの桜庭潤平は、高額のアルバイト料にひかれて人や動物の遺体で汚染された部屋をクリーニングする特殊清掃「まごころクリーニングサービス」で働くうちに特殊体質を身に着けた。死臭が食べ物の匂いに感じるようになったのだ。

ある日清掃現場へ向かった桜庭たちは風間という男と出会う。風間は犯罪現場に残る血液や排泄物、毛髪や空気などから犯人逮捕につながる情報を引き出すための分析技術開発を行っている大学教授で、ここには研究用のサンプルを採取に来たという。風間は死臭から被害者の死亡場所が寝室ではなくリビングだと言い当てた桜庭に目を付け、特殊体質のことを知ると自分の研究の助手に抜擢した。桜庭は特殊体質の影響で、食べ物の匂いがする死臭を嗅ぎすぎると、その食べ物自体が悪臭に感じるようになり食べられなくなるという弊害をもっていた。その弊害を治す代わりに桜庭は風間に協力する約束をし、風間に倣い死臭を死香と呼ぶようになった。

風間に連れていかれた現場で、桜庭はマツタケの匂い(死香)を嗅いだ。被害者は一人暮らしの72歳の男性で死因は撲殺、被害者は相手を警戒していなかったことから、犯人は家族か親しい人間ではないかと風間は考え桜庭を有力な容疑者だという被害者の娘のところへ連れて行った。死香は他者に移る、また死からの経過時間が短いほど死香は濃密になる……つまり殺害の瞬間、現場にいた犯人には明瞭な死香が移っているということになる。それを桜庭を使って嗅ぎ分けようというのだ。

娘の部屋からはカツオダシの香り(死香)がした。マツタケの香りもするが可なり弱いものだった。複数の香りを感じたことを話すと風間は別の殺人事件の可能性を考える。後日カツオダシの香りは別の民家で発見された独居老人の絞殺体の物だと分かった。

  • 被害者はマツタケの香り
  • 被害者の娘(容疑者)からはカツオダシと弱いマツタケの匂い
  • 別の現場から見つかった遺体からはカツオダシの匂い

桜庭の証言から空気を分析した風間は、入り混じる死香の理由をきれいに説明できるある仮説を立て、それが事件の真相であることを証明した。

 

風間が探偵役、桜庭が推理の材料を提供という関係でしょうか。直接手を下した事件においては、匂いだけで犯人が分かるという能力は最強ですね。

第2話 君に捧げる死は、甘いお菓子の香り

25階建てのビジネスホテルの一室で、床にあぐらをかき深くうなだれるような姿勢の41歳の男が、腹部に深々と包丁が突き刺さった割腹自殺のような恰好で死んでいるのが見つかった。ためらい傷がなかったことから他殺の可能性も考えられる。風間とともに現場へ入った桜庭はバニラの死香を嗅いだ。バニラは男と出入口を直線で結んだ形で匂っている。男がもたれていたベッドの枕元からもバニラの香りがするのを風間に伝えると、風間は嬉々としてそのあたりの空気も採集した。その後被害者の男の関係者、男の妻と愛人に会いに行くことになった。

妻がいる男の自宅からはバニラの匂いはほんの少ししかしなかった。妻が犯人ならもっと濃厚な匂いがするはずだった。おそらく病院で遺体と対面した時についたものと思われた。

  • 19時 男がホテルにチェックイン、フロントにあとで愛人が来ることを伝える
  • 19時3分 妻がホテルに現れて男とともにエレベーター方面に向かう
  • 19時50分 愛人から男へ電話。通話は2分ほど
  • 19時54分 妻が一人ロビーに戻ってくるとそのままホテルを出ていく
  • 19時57分 男から愛人に電話。通話は1分ほど
  • 20時25分 愛人がホテルに来る。フロントでキーを受け取る
  • 20時28分 愛人からフロントに怪我人がいるので救急車をと連絡
  • 20時30分 ホテル従業員が男の遺体を確認

男、妻、愛人は同じ会社に勤めており、結婚を機に妻は専業主婦になった。妻は買い物に出かけている時に夫がホテルに入っていく姿を見つけ、今回初めて浮気を知ったという。妻が犯人の可能性は低いとして家を辞去しようとしたタイミングで、男の同僚が妻を元気づけに来たが取り込み中と知りすぐに帰っていった。

愛人に会いに男が勤めていた会社へ行く。愛人は妻よりもバニラの香りが強かったが、発見者であることを考慮すると不自然ではない。愛人は男が自殺をほのめかすような事を言っていたと証言する。

後日桜庭が大学に通勤し風間の事務のアルバイトに励んでいると、妻が殺されたという一報が入った。桜庭たちが聞き込みを行った日、見舞いに来た同僚の男が犯人だった。酔っ払った男は妻に関係を迫り抵抗されているうちに勢い余って殺したらしい。桜庭はバニラの香りがベッドの枕元にも向かっていたのが気になっていた。そこには男の携帯電話や財布が置いてあった。桜庭の言葉を受け、風間は協力体制をしいている警察に連絡を取り現物を見せてもらう。携帯電話からは弱いバニラの香りがし、財布からは強いバニラの香りがした。その差について疑問を口にすると、風間はある仮説を思いついたという。死者のダイイングメッセージが今回の事件を複雑にしたと風間は言った。

 

男の死は事故でした。男は包丁を持ち出し浮気相手と別れるよう暴れる妻を宥めるうち、転倒した拍子に奪った包丁が刺さったようです。男のダイイングメッセージにより事後細工が行われました。

第3話 毒に冒された死は、黙して香らず

風間の出張旅費の精算書類を事務課に提出に行った桜庭は、事務員の大久保美乃里に一目ぼれした。大学でのアルバイトは水曜と土曜の2日間だけだが、さらに増やしてもらおうと考えるほどだった。そんな時、青酸カリによる毒殺の現場に向かうことになった。

被害者はアパートで独り暮らしの横尾という男で多額の借金があった。男は毒を飲んだすぐに後に吐瀉物をまき散らし近くにいた人間の体に掛かった。その人物がキッチンで汚れを洗い流したと思われる痕跡が残っており、すでに犯人ははっきりしていた。横尾の元恋人の女性で、事件当時部屋から出てくる姿を目撃されている大久保美乃里だった。美乃里は各研究室から出される廃棄薬物を業者に引き渡す手続きを担当しており、その際に青酸カリを盗んだと思われる。横尾からはアップルパイの死香がした。

だが聞き込みに行った美乃里の部屋からはアップルパイの香りは全くせず、彼女はシロだと桜庭は安心する。事件当時部屋に一人でいたという美乃里のアリバイは証明されなかった。桜庭の証言を受けた風間の助言により美乃里は容疑者から外れ、現場から立ち去った女性の正体が不明のままとなる。桜庭は警察犬よろしくアップルパイの香りの追跡をしたが、途中で香りが途切れ失敗に終わった。

事件にショックを受ける美乃里を励まそうと食事に誘った桜庭だが、1回目は体調不良でドタキャンされてしまう。2回目の誘いは成功した。待ち合わせ場所に来た美乃里にどこか違和感を覚えるもののその正体にたどり着けないまま会食が始まる。美乃里は捜査状況を気にしており、体調が回復していないのか途中に席を立ち嘔吐してしまった。真っ黒い吐瀉物に驚きつつも桜庭が介抱しようと背中に手を回した拍子に、美乃里の髪の毛がずれた。違和感の正体はウィッグだった。

風間に非効率だから手持ちのカードはオープンにしろと言われ全てを話して聞かせると、風間は事件の真相に辿り着いたようだった。やはり犯人は美乃里だった。なぜ横尾の吐瀉物が掛かった美乃里からアップルパイの匂いがしなかったのか、なぜ黒い胃液を吐いたのか、なぜウィッグをしていたのか……風間から説明を聞いた桜庭は、美乃里に自首を促した。

 

殺害の瞬間に現場にいたのになぜ死香が移らなかったのかという謎を解く話でした。

第4話 裁きがもたらす死は、芳ばしき香り

岩田猛志はターゲットが目の前を通り過ぎていったのを待ち、背後からバッドで頭を何度も殴りつけ殺害した。これで「裁き」は三度目だった。だがまだ容疑者リストには10人以上の名前が並んでいる。次の準備にとりかからなければならない。岩田はターゲットの手からこぼれた煙草を拾うと、頭から流れる血で消した。

風間から連絡を受け、桜庭は通り魔殺人の3人目の犠牲者が発見された現場に向かった。死香は燻されたベーコンの香りがした。その中にかすかにウィスキーの香りがする。連続通り魔を考慮すれば前の犠牲者の死香が犯人に移り、それが今回の現場に移ったと思われる。犯人は余計なことをせずに立ち去ったと考えられるが一か所だけ匂いが濃い場所があった。そこには血まみれの煙草の吸殻があり、被害者が亡くなる直前まで吸っていた煙草だった。

警視庁には風間の研究のための専用部署があり担当は曽根という刑事だった。曽根から前2件の被害者のプロフィールを見せてもらう。3件には共通点があった。男性、都内勤務、帰宅途中に人気のない路上で襲われている、亡くなる直前まで喫煙をしていた。また3人が関係する場所(会社や自宅など)が、高円寺にあった。

休日のある日、岩田は高円寺駅周辺の地区清掃活動にボランティア参加していた。高円寺からは引っ越したが、会社の宣伝ビラを巻くと小遣い程度の金がもらえるのでボランティアがてらビラ撒きもすると周囲に説明していた。清掃活動をこなしつつ目的の物が見つかると別の袋に取り分ける。そこで3人目の事件現場のTVカメラに白衣姿で映っていた男か女か分からない人物を見かけた。

休日を利用して高円寺に出かけた桜庭だったが収穫はなかった。特殊清掃のバイト中、給油に寄ったガソリンスタンドで思いついたことを風間に告げる。それは犯人が事件後車で逃走中にセルフ式の給油所を利用していたら、液晶パネルや紙幣投入口に死香が移ったのではないかというものだった。都内のセルフ式給油所は300以上ある。警察の協力を仰いでも全部の給油所から匂いを取り寄せるのは簡単ではないし、実行できたとしても「あたり」を引く可能性も低いと言いつつも、風間は桜庭の意見を採用した。

警察の努力により集められたサンプルの中から桜庭はベーコンの死香を嗅ぎ取った。それを風間は分析し根拠のあるデータとして警察に提供し、警察は該当の給油所近辺の監視カメラを解析すると、またたくまに容疑者を20人程に絞り込んだ。該当者の家をしらみつぶしに当たって嗅ぎまわった結果、桜庭はあるマンションの郵便ポストから探し求めていた死香を嗅ぎ取ることに成功した。

 

岩田は高円寺に家族で住んでいた頃、ポイ捨てされた煙草の火が原因で家が火事になり妻と娘を失っていました。岩田は放火犯を見つけ復讐するため、清掃ボランティアで拾い集めた煙草に付着したDNAと、ビラを配って集めた血液のDNAから高円寺に住む喫煙者リストを作成していました。ですが犯人を絞り込めないため、リストの人間を片っ端から殺害するという荒業に打って出ていました。

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話自体は面白いのですが、桜庭潤平25歳、低身長小柄で見た目はしょちゅう女の子と間違えられるという設定がどうにも受け付けません。高身長見た目も格好良い、唯我独尊気味の性格の風間と桜庭の関係が周囲に誤解されるという設定も受け付けません。しょっちゅう差し込んでくる狙いすぎ?な設定が気持ち悪く感じるせいかもしれません。話は面白いのにもったいないです。