喜多喜久「死香探偵」シリーズ第2弾『死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る』あらすじとネタバレ感想

喜多喜久「死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る」のあらすじと感想をまとめました。

短編で最初に犯人が分かっていることが多い倒叙ものなので謎ときのプロセスは面白いのですが、ところどころに挟んでくる風間と桜庭をカップルとみなす他キャラの言動がイヤです。

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「死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る」書籍概要

人気作家のサイン本に一冊だけ付いた甘いチョコレートの死香。慰安旅行先の旅館で遭遇したセロリの香りと消えた死体。死香を「食べ物」の匂いに変換する潤平と、分析学のエキスパート・風間は不審な事件を次々と“嗅ぎ解く”が、バナナの甘い香り漂う殺人現場で風間に異変が。容疑者の謎の美女に過剰反応し、初めて潤平を現場から遠ざけて? 「BOOK」データベースより

  • 死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る(2019年2月 中公文庫)

第1話 歪んだ愛が招く死は、ほろ苦い香り

「まごころクリーニングサービス」の仕事が終わる頃、風間から掛かってきた電話と迎えで、桜庭は事件現場へと着いた。オレンジの香りがする死香を辿って自殺と考えた桜庭と警察の見解は一致していた。浜坂という男のアパートの住民は首を吊って死んでいた。遺体発見時、男のそばには綾羅木ハルという著者の本があった。売れっ子作家の綾羅木には「アヤラギスト」と名乗る熱心なファンがいるが、浜坂のその一人と思われた。本棚には綾羅木の著書がずらりと並んでいた。その中の1冊から桜庭はチョコレートの死香を嗅いだ。綾羅木のサイン本だった。

サイン本は浜坂のアパートから徒歩の距離にある本屋で販売されたものだった。前もって綾羅木が書店に足を運び、何十冊かにサインして販売したものだという。書店に向かった桜庭たちはバックヤードのペン立てにあった1本の油性ペンからチョコレートの死香を見つけたが、綾羅木が使った物かは不明だった。綾羅木にアポを取ってマンションへ行くと、彼の郵便受けにはファンレターと思しき封筒が溢れんばかりに突っ込まれていた。書店でサインをした経緯を話した綾羅木は、熱心なファンに家を突き止められて出版社を通さず直接ポストに投函され続けているというストーカー被害についても捜査を頼まれる。

チョコレートの匂いの元が分かった。浜坂の家とは1キロほどの距離にあるマンションに住む白石智花という女性のもので、絞殺されていたが部屋は荒らされた形跡がなく盗まれたものもなかった。白石もアヤラギストだったらしく引き出しの中から見つかった大量の見覚えのあるレターセットから、綾羅木を悩ませているストーカーは白石だと推測された。風間は油性ぺンだけが今回の仮説にうまくフィットしないと言い、それを解消すべく綾羅木の担当編集者に会うことにした。

面会は喫茶店、桜庭は編集のもつリュックからチョコレートの死香がするのに気が付いた。だが編集本人からは匂ってこない。その謎は油性ペンで解決した。編集はストーカーの白石に対し警告を行ったがファンレターは止まなかったため、直接彼女の家に乗り込んだところ首を絞められて死んでいるのを発見して怖くなって逃げた。その時死体に近づいたため、リュックとリュックに差していた油性ペンに死香が移った。その後油性ペンは書店で忘れペン立てに入れられることになった。編集は白石の親しい人物として浜坂の名を挙げた。

その後の警察の調べで白石の衣服から浜坂のDNAが見つかった。浜坂は白石のストーカーだった。自分が落選したサイン本を白石が購入したのを見て無理やり家に押しかけて手に入れたため、浜坂の部屋からチョコレートの死臭がする本が存在することになった。その後、逮捕されるのは時間の問題と考えた浜坂は自ら命を断った、というのが風間の仮説だった。

 

誰も幸せにならない後味の悪い事件だったと桜庭は心を痛めていました。

第2話 湯煙に霞む死は、青葉の香り

風間の研究室で1泊の温泉旅行に行くことになり桜庭も誘われ、会議に参加するという風間があとから合流することになり、桜庭は学生たちと一緒に電車と送迎バスで硫黄臭ただよう温泉地にある高級旅館へと向かった。宿へ入る途中、桜庭は男性従業員が押す台車からセロリの死香を嗅ぎ取った。その後旅館へと来た風間にフロントで見つけたというセロリの匂いがする封筒(手紙)を渡す。

手紙を書いたのは調理場で働く滝川という男だったが、現在行方不明のため投函せずフロントで預かっているらしい。無断欠勤が続いたため従業員寮の滝川の部屋を訪ね、そこで手紙を見つけたとのことだった。従業員寮では同じく調理場担当の大田が案内してくれた。大田によると滝川は一人でいるのを好むらしく、誰ともつるまなかった。滝川の部屋からは濃厚なセロリの匂いがした。間違いなくこの部屋で誰かが命を落としたのだ。

桜庭の調査の結果、従業員の中に死香をまとった人間はおらず、何者かが滝川の部屋から遺体を台車で外まで運び、車に乗せ換えてどこかへ連れて行ったと考えられる。その中で栗橋という調理場担当の男が滝川を目の敵にし、いちゃもんをつけて怒鳴ったり、陰で暴力を振るっていたことを知る。栗橋は寮を出て一人暮らしをしていた。アパートの駐車場にあった栗橋の車から、桜庭はセロリの匂いを嗅いだ。少なくとも遺体の運搬には関わっている。

その後、警視庁管轄外のため地元警察の協力を得られないなか、一人で遺体が埋められていると思しき場所の探索を始めようとしていた風間に桜庭も協力する。特殊清掃で遺体がない状態の部屋には幾度となく入ったことはあるが、遺体に直接会ったことはない。山中でセロリの匂いを辿っていった桜庭は、土の中から噴水のように眩しいばかりの光の粒がふきだしている箇所を見つけた。

 

その後滝川の遺体が土の中から発見され、一緒に見つかった煙草の吸殻から栗橋とその手下が逮捕されました。犯人達に死香が移っていなかったのは硫黄の温泉に浸かったためとのことです。

第3話 艶やかな香り、自由の彼方の死より来たる

中沢澄乃は自分が愛した男を手にかけ、その傍に男が仕事のパートナーに選んだ女を眠らせると、ペットのコモンマーモセット(小型の猿)のソウタに自分が脱出したあとに窓の鍵を閉めさせるというトリックを施した。だが帰り道ソウタが逃げてしまい探しても見つからない。仕方なく澄乃はソウタを諦め、第一発見者になるべくスマホを取り出した。

いつもは嬉々としてサンプル採集に現場へと向かう風間が乗り気でないらしく、桜庭は一人で現場に向かうことになった。目的地へ行きすがら顔見知りの刑事に事件のあらましを聞く。亡くなったのは画家の天芥時雨という男でドライヤーのコードで首を絞めて殺された。発見者は近所に住む中沢澄乃。天芥の家で食事をし帰宅したがバッグを忘れたことに気づいて取りに戻ったが応答しないのを不審に思い、窓を覗いて天芥が倒れているのを見つけて通報した。警察が窓ガラスを割って侵入し、死んでいる天芥とソファで眠っている座間倫花という女性を発見、目を覚ますと同時に携帯をたたき割るという不審行動に出たこともあり殺人容疑で座間を逮捕したものの黙秘中だという。また天芥と座間から出た睡眠薬は、食事の時に飲んだと思われるワインのコルク栓からも検出されているが、瓶とグラスは見つかっていない。座間は天芥のモデルをしており、澄乃は天芥の元恋人だった。

バナナジュースの死香は、座間の寝ていたソファではほとんど香らず、リビングの窓に続いていた。犯人は天芥を殺害した後窓から脱出した。だがその窓は施錠されていたため警察が仕方なくガラスを割って侵入した場所だった。座間は犯人によって陥れられたらしい。大学へ戻って報告すると、風間はやる気のない様子で座間の無実が分かれば十分だから、事件から手を引くと言った。だが最後まで事件に向き合うべきだと考えた桜庭は、一人で座間の面会に行った。座間は桜庭にも何も喋らなかったが、目の前に真実が差し出されたら素直に認めると言った。

澄乃は張り紙をしてソウタの行方を捜していたが一向に見つからなかった。澄乃の計画では重要な証拠となるソウタも始末しなければならない。澄乃の家の近くまで行った桜庭はペットの猿の存在を知り、動物を使った密室トリックを思いついたが現場からは猿の毛などの痕跡は見つかっていなかった。澄乃のところへ一人の男が尋ねてくると、道端でコモンマーモセットを見つけて動物病院に運んだところ飼い主が探していると聞いてやってきたという。猿は衰弱していて治療の甲斐なく死亡したと男は言う。内心澄乃は安堵した。

桜庭が一人で捜査を続けているのが風間にバレたので、改めて一緒に事件を考えてほしいと頼む。渋々引き受けた風間に今まで調べたことを話すと、密室の謎を解く仮説を思いついたといい、「共犯者」を呼び出して話を聞くといった。

 

風間が乗り気でなかったのは、座間に苦手意識を持っていたからでした。座間は風間の実の姉で、携帯を壊したのも黙秘を続けたのも部下にコモンマーモセットが死んだと嘘を澄乃に伝えたのも、すべて澄乃が自首する猶予を与えるためでした。

第4話 安らかな死は、蠱惑的な香り

ある一定の条件に当てはまる人間を、ある一定の条件下で自殺させた時、得も言われぬ芳香に包まれる。その香りを味わうため、月森は4人目の自殺者を育て、自殺へと導いたのだ。

泉崎という男が自殺した部屋を訪れた桜庭は「まただ」と呟いた。ここ以外に3件の自殺現場で、桜庭はパンの死香を嗅いでいた。どうやら条件が整えば死香は似るものらしい。風間担当の刑事・曽根が大学の研究室にやってきて、過去4件の自殺を検証することになった。亡くなった4人は自殺時に医者の処方箋が必要な抗不安薬を服用していたがいずれも処方された形跡がなかった。また全員がアルコールを摂取していた。それ以外にも、全員が30代後半~40代前半の男性、独身で一人暮らし、それぞれの事情により無職もしくはフリーターで精神的に落ち込んでいたという共通点があった。また泉崎が投稿していたSNSから度々「タナカ先生」という言葉が登場するのが桜庭には気になった。風間と桜庭は、自殺した人間がかつて掛かっていた精神科のある病院を一つずつ回ることにしたが、特に収穫もなくタナカという医師も見つからない。

次の獲物を見つけるため月森は病院の駐車場で張っていた。医師の月森は様々な患者の死を看取っているうち、亡くなった患者から花の香りがするのに気付いた。胃がんを患っていた30代後半の田中という患者が病気を苦にして病院内で自殺を図った。第一発見者となった月森は、田中から放出される今まで嗅いだことのない香りの虜になり、検証の結果「40代前後の男性でアルコールと薬剤を服用しての自殺」をした人間の香りが最も良いことを知って以降、条件に当てはまる自殺願望者を探して育てた。獲物を探す月森の視界に見覚えのある男2人組(もしくは男女ペア)がいた。記憶をたどって検索した結果、片方が大学教授の風間だと分かる。風間の研究テーマを知り月森は高揚した。

風間の研究室に「タナカ」という差出人から1から順番に数字が振られた20本の封をした試験管とUSBメモリが届いた。アリを選んで小さい順に数字を並べたものがロックを解くパスワードだという。風間の分析結果と桜庭の嗅覚が一致した。20本のうち7本からパンの死香を嗅いだのだ。USBメモリの中身には”死の香り”を知った風間の話を聞きたいという呼び出しの手紙だった。

タナカ(月森)は、桜庭と同じで後天的に特殊体質を身に着けた人物だった。タナカは自殺者を作っているのを仄めかしたうえで自分の能力は風間の研究の助けになるとして、タナカにとって特別な死香の再現を依頼してきた。風間が断ったことを知った桜庭は、病院というヒントがあるだけでタナカの正体をまるで絞り込めないという状況を打開すべく、「死香を感じる代わりに本物が悪臭に代わる」という特殊体質を利用してタナカをあぶり出す案を思いついた。

 

月森は自分の能力に陶酔しすぎて「花の香りがする」などと余計な情報を与えすぎでした。直接月森が手を下したわけではなく、誘導があったとはいえ自殺した人間は自ら死んでいったので逮捕には至りませんでしたが、今後月森には警察の目が光りそうです。

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ミステリー物にこれみよがしなボーイズラブ的要素はいらないと思うのです(別にボーイズラブは否定していません)。わざとらしいのがどうにも目について仕方ないのです。